神様は残酷で気紛れだ   作:マスターBT

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ほんと、お待たせしましたぁ!そして、進まない物語。弐式の開発とかに視点置いてるから進みが大変ゆっくり


進む開発、縮まらない心

「…ISの整備ってこんなに難しいのか…」

 

 一夏は日課にしている筋トレを終わらせ、今は沢山の参考書と睨めっこをしていた。

 退院して学園に戻ってからの彼は、毎日、腕立て伏せを200回、右手だけで100回、左手だけで100回行い、その後腹筋を400回。ひと休憩挟んだ後に形が薄っすらと見えてきた自身の剣術。木刀を用いた素振りを1000回こなした後に、剣を振るっている。その成果か身体つきが徐々に筋肉質へと変わっている。

 参考書と睨めっこをしている理由は簡単だ。簪の手伝いをするために知識を得るためだ。今までの彼は真面目に学業を取り組んでいた訳ではないので完全に素人レベルの知識しかない。

 

「約束の時間まではあと、二時間か。もう少しいけるな」

 

 凝り固まった身体を解しながら、三冊目となったノートに書き込んでいく。山田先生が暇なら教わったのだが、今日は一日授業らしい。だから完全な自学で勉強をしていた。望む事なく操縦者として巻き込まれ、モチベーションもなかった一夏。

 故に、IS学園に来てからの勉強はお世辞にも良いとは言えなかった。そもそもとして、この世界早くからISの整備士になると決めた男性以外にはISに対する教科は存在していない。有名であるから自分で調べればある程度の事は分かるが、強制ではない為知識がない男性はとことんないのが当たり前だ。

 女尊男卑が当たり前となり、その象徴たるISに自ら関わっていこうとする男性は少ない。余談だが、世界中で技術者が不足している。理由は複数ある。まず一つ、操縦者である女性に対しての嫌悪感や劣等感。国家代表レベルになれば人格も問われるので問題はないが、それ以下の操縦者の中には当然、風潮に塗れた者も多い。整備士でいる男性を罵ったり、女性であってもISを操縦している自分が上という態度を取ったりなど。国によっては放置してしまうので技術者がどんどん辞めていってしまうのだ。

 他にはISが複雑すぎる点。各国が全力で解析している現在でも、ブラックボックスとなっている部分が多い。それ故に予期せぬエラーを起こす。直さなければならないが、肝心の部分がブラックボックス故にそこで問題が起きてしまえばお手上げなのだ。

 

「よしっ。次の章に取り組もう」

 

 そんな事は梅雨知らずこの男は勉強に取り組むのであった。勉強するに足るモチベーションが確保できれば吸収力のある一夏の頭にはスラスラと知識が吸収されていった。確かに自分が原因かも知れない。しかし、自ら望んだ結果でもなく、血の繋がった身内や長い時間を共にした幼馴染みという訳でもないあの時初めて出会い、会話しただけの少女の為にこの日もこの男は自分の時間を使っていく。

 それをただ眺めている二人いや、二機がいた。一機は白式。もう一機は彼女の空間に訪れたサードオニキスだった。

 

『頑張れー、一夏』

 

 あの時より少しだけ成長した姿。それでも幼さを感じる白式が一夏を応援していた。当然、声は届いていない。そんな彼女を感情のカケラも感じられない瞳でサードオニキスは見ていた。

 やがて、一夏が時間になり準備を開始した辺りでサードオニキスが口を開く。

 

『そろそろ用件を教えてくれますか?白式』

 

 白式に呼ばれて彼女の空間に来たは良いが、永遠と待たされ続け我慢の限界が来たサードオニキス。それでも律儀に待ち続けたところから彼女の真面目さを感じる。

 

『あ!ごめんごめん。貴女に聞きたかったんだ、うちの一夏を見てどう感じるか』

 

『別に答える必要性は感じていませんが…まぁ良いでしょう。答えなければ永遠と声をかけられるでしょうし。

 そうですね…白騎士や暮桜から聞いた善き人間という感じでしょうか。少々、感情に振り回され過ぎだと思いますが』

 

『そこが良いところでもあり悪いところでもあるんだけどね。でも、人間らしくて良いと思わない?』

 

『……さぁ。私はまだ人間というものがどういった生命体なのか結論を出していませんから』

 

『ふぅん。流石は私達の中で最も知識欲が高い子だね。私よりずっと色んな事を考えてそうだ。

 自分にとって好ましいと感じるか感じないか程度で良いと思うんだけどなぁ。他のコア人格達もそんな感じだし』

 

 堅っ苦しい様子を見せるサードオニキスにどことなくつまらなそうに返答する白式。恐らく、肯定が欲しかったのだろう。

 少し頬を膨らませ、語気が強くなっている。軽く拗ねているのだろう。

 

『…人はそんな簡単じゃありませんよ。もう良いですか?織斑一夏を見ているよりマスターを観察していた方が有意義なので』

 

『待ちなよ』

 

 白式の雰囲気が変わる。それに呼応するように、青空だった空間が曇り始める。

 

『……何でしょうか?』

 

『貴女はどうして自分のマスターを喰らうの?本来なら必要のない行為のはずでしょ』

 

『私は産みの親の意向に従っているだけですよ』

 

『…そういう事を聞いてるんじゃない事ぐらい分かっているでしょ?』

 

 鋭い視線を向ける白式。その目を見て溜息を吐いたあと手に持つ本を開く。

 その本から投影されるが如く、彼女が観察してきた人間というものの行為が次々と映し出される。ISを軍事利用しようと躍起になる人間、酷い人体実験やクローン実験を行う人間、自身を顧みず誰かを救おうとする人間、友人達とお喋りに興じる人間。それはそれは様々な人間の在り方が映し出された。それらを見ながらサードオニキスは口を開く。

 

『私は産みの親を通し、人間の悪意をラーニングしました。私は白騎士や暮桜を通して人間の善意をラーニングしました。

 しかし、この二つだけでは足りないのです。悪意と善意は表裏一体、誰かにとっての善意が悪意となる事もあればその逆もある。故に私はマスターを通してより人間を身近で見たい。その願望が恐らく侵食という結果を産んでいるのでしょう。それに彼は私が知っている悪意や善意が混ざった複雑なナニカを持っています。それの解明を持って私は人間に結論を出します。これが私の目的ですよ。満足しましたか?』

 

『…そう。貴女が人の味方になってくれる事を信じてるよ』

 

 白式の言葉には返答せずサードオニキスは白式の空間を後にする。

 残された白式は青空に戻っていく空を見ながら呟く。それは同族へと祈りか、憤りか。

 

『…もし本当に私達が感情を完全に理解できる時が来るなら……それはもう機械じゃないよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あ、本当に来てくれたんだ一夏」

 

 相変わらずクマが酷い簪が約束の時間に来た一夏を見ての一言。人間不信に陥っている彼女は自分から手を伸ばした相手でさえ、時間が経てば信用できなくなっていた。それでも、声には喜びが乗っている。

 

「酷いな簪。ほら、差し入れも作ってきたある程度進んだら食べようぜ」

 

「…変なの入れてないよね?」

 

「どこまで疑うんだ!?っとそうだ、ちょっと聞きたい事あるんだが良いか?」

 

「…そこまで時間がかからないなら良いけど。何?」

 

「ちょっと待っててくれ」

 

 背負ってきた鞄をガサガサ弄る一夏。自室で纏めていたノートを取り出しペラペラと中身を見ながら、これじゃないと言いながら次々とノートを取り出す。四冊目でこれだ!と言って開きながら簪に近寄る。

 

「ここがどうしても分からなくてさ。ちょっと教えてくれるか?」

 

「…どれどれ!?」

 

 ノートを見て簪は驚く。ISの整備に関して勉強しているのは知っていたが、どうせ今まで真面目に勉強してこなかった奴の薄い内容だろうと思っていた。しかし、ノートには分かりやすく色ペンを使いながらびっしりと書かれた文字。ノートも決して薄くないそれが簪から見えて少なくとも四冊。これを纏めるだけでもかなりの労力だ。だというのに今し方、彼が質問してきた部分は初心者のそれではなく、ISがブラックボックスが故に表現を濁すしか方法がなかった部分だ。

 

「…ここはまだ解明しきれてない部分。私の推測でよければ教えるけど」

 

「本当か!?それでも良いから教えてくれ。気になって仕方ないからさ。いやぁ、やっぱ実際にいじってる人と知識だけ詰め込んだ人じゃ違うんだな」

 

 謙遜しているが誰が予想できたか。たった数日でここまで仕上げてくる事が。

 簪は内心で一夏の才能に驚きながらも推測を説明していく。それに対し疑問点を一夏がぶつけていき納得するまでにかかった時間は僅か一時間。

 

「うし。じゃあやるか」

 

 しかも微塵も疲れた様子を見せない。整備室にある工具を次々と運んでくる。

 雑に持ってきているところが素人らしいかと思う簪。今日やる予定の作業を一夏に説明しながら工具を選別していく。

 

「…じゃあ、今日は脚部の出力を見ていくから。一夏は……変動するデータ取りと私が言った工具を持ってきて」

 

「了解」

 

 簪が一人だった時はマルチタスクで行っていた工程を一部とはいえ、一夏に任せる。人が増えるという有り難さを簪はすぐに理解する。元々、並列思考が得意だった彼女だが複雑すぎるISのデータを一切のミスなく処理していくのは無理だった。しかし、一夏がいる事で思考の余裕が生まれエラーが起きた際にその場で対応できていた。

 

「簪。右脚の出力が少しおかしい。コアから供給されてるエネルギーを見直してみたらどうだ?」

 

 またこの様に異変に気がついた一夏から提案が入るので自分が見落としていた部分にも気が付ける。

 

「(…凄い。一夏が増えただけでこんなにもスムーズに行くんだ)」

 

 整備室であーでもないこうでもないと相談しながら確実に弐式を組み立てていく二人。それを入り口からひっそりと見守っていた水色髪の女性に彼らは気がつく事はなかった。 

 




浮気しまくりで投稿ペースがやばぁい(冷や汗)

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