お気に入りがすごく増えて驚いています。
一時間目と二時間目が終わって、三時間目に移る間の休み時間。
俺は、右腕を相変わらず布仏に弄られていた。
千冬の同居人発言以降、ずっと俺に突っかかって来ていた織斑は、金髪の女子に絡まれており、こちらに来ない。
「ふぉぉ〜」
純真無垢な布仏に存分に癒されるとしよう。この短時間で俺の胃はマッハだよ……
右腕を弄りつつ、色んな角度で見ては驚いたり、歓声を上げたりする布仏の一挙一動を見守る。
「なんか、すごくふわっとした空気が広がってない?」
「う、うん。自己紹介の時や織斑君と揉めてた時とは、西村君の雰囲気が全然違う」
「本音の力?」
「あり得そうだから困るわ……」
周囲の女子達が俺たちの様子を見て、なにやら話しているがまぁ、関係ないだろう。
布仏経由で、紹介された谷本や相川、夜竹などが俺を避けることなく関わってくれるのがとても嬉しい。やはり、布仏は女神だったか。
「なんで、私を拝んでるの〜?」
「ただの礼だよ。気にすんな」
「変なあかやん」
ほにゃっと笑いながら、言う布仏。
変と言われて、悪い気がしない事ってあるんだな。
「ちょっとよろしくて?」
「なんだ?」
織斑に絡んでいた金髪がこっちにやってくる。
あぁ、見たことあると思ったら、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットか。千冬が乱雑に書類を置いてたから、そこで見たな。
織斑がこっちに来たいがオルコットがいるから、来れない。良いぞ、オルコット、時間いっぱいまで話そうじゃないか。
「まぁ、なんですのそのお返事!わたくしに話しかけられるだけでも、光栄なのですから、それ相応の返事があるんじゃなくて?
まったく、先ほどの方もそうですが、教養のない男どもですことね」
一瞬で、話そうという気力が霧散した。
布仏が右腕を弄っているから、抑え込んだが、そうじゃなければこいつに殴りかかっているところだ。
「……そいつはどうも。だが、生憎、俺は人間でね。
女尊男卑の思考に染まってる猿と話す気なんてこれっぽっちもないんだわ。あぁ、すまない。言葉を理解できないのだな」
手が出なかった分言葉に物凄く毒が乗ってしまった。その証拠に横にいる布仏が頬を脹らめて、ジト目を送ってくる。
くっ、女神からの視線は堪えるぞ…
「…猿ですって!?この、イギリス代表候補生のわたくしを猿と言いました!?」
うるせぇ!ヒステリックに喚くな。
なんで、女性のヒステリックはこうも耳に響くかね。
「喚くな。イギリス代表候補生だか、セシリア・オルコットだか知らんけど、女尊男卑なんてクソみたいな思想に染まってるとそのうち、痛い目を見るぞ」
「あら、わたくしのことは知っているみたいですのね。なら、わたくしがどの様な力を持っているかもご存知のはず。
それを知った上での言葉ですの?」
しまった。不用意に名前を読み上げたせいで、冷静になりやがった。
しかも、こいつ妙に口撃に慣れていやがる。こいつの力……あぁ、専用機か。
千冬の管理の雑さに感謝だな。これは。
「専用機だろ。知っているさ、だからどうした?
IS学園では専用機持ちと言えど、私用での展開を禁止されている。今この場で、展開して俺を殺すとでも言うのか?」
まぁ、ここで展開したら俺も容赦なく、サードオニキスを展開するが。
「一人目とは違い、多少の教養はある様ですわね。礼儀は無いようですけれど」
「ふん。お前のような奴に、払う礼儀は持ち合わせていないんでね」
無言で睨み合う時間が発生する。
女尊男卑思考も相まって、俺とソリがまるで合わない。おそらく、それは向こうも感じているだろう。
「……まぁ、貴方が泣きながらお願いするのであれば、ISについて色々と教えて差し上げますわよ?」
こいつ、あの状況から仕切り直して来やがった。
アホなのか?俺がそれにYESと答えるわけが無いだろうに。
「断る。悪いが、間に合っている」
「そうですか。流石、織斑先生の腰巾着なだけはありますわね。
どのように取り入ったのかは知りませんが、秘密の訓練でもなさっているのですか?所詮、男は女に媚び諂って生きる下等生物ですものね」
あぁ、なるほど。俺がどう返答するかは分かりきった上での挑発か。
しかも、教室にいる千冬信者を自分の味方につける意味合いも込めていやがる。手口が厭らしいぜ。代表候補生。
と、ここでチャイムが鳴る。固まっていた女子達や織斑も我に帰り、席に戻り、授業の準備を始める。
「…とっとと、戻ったらどうだ?」
「あら、心配されなくても戻りますわよ。右腕の無い欠陥品に言われなくてもね」
欠陥品。
その一言で、こいつの首をへし折りたくなる衝動に駆られ、布仏がいるのを忘れ右腕を動かそうとする。
しかし、結果としてあいつは席に戻り、俺の右腕は動かなかった。
「駄目だよ。あかやん、それはやっちゃ駄目」
俺の右腕を両手で抱え込む様に押さえている布仏がいたからだ。
フゥと一息ついて、自分を落ち着かせる。
「布仏……お前、着痩せするタイプだったんだな」
「ほぇ?………あかやんのエッチぃ〜〜」
右腕から伝う豊満な感覚を思わずそのまま、伝える。
布仏もそれに乗っかり茶化してくる。
「悪い悪い………ありがと、布仏」
「どういたしましてなのだ〜」
ちゃんと礼を言っておく。もし、布仏が押さえてくれてなければ、俺は確実に殺人者になっていた。
「それではこの時間は、実戦で使用する各種装備の特性を説明する」
三時間目は千冬が担当の様だ。
ISの基本的なことは山田さんで、武器は千冬。なんとも、らしいと言える配役だな。サードオニキスの装備はだいぶ特徴的だから、今から説明される武器を俺が使うことはないだろうけど、敵が使ってくるかもしれないし、真面目に聞くか。
「あぁ、その前に再来週に行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないとな」
集中しようと思った矢先がこれである。
「クラス代表はまぁ、色々な雑用係であり、クラスの実力を測る基準にもなるものだ。
一年間変更することはない。自他推薦は問わん。誰かいるか?」
千冬の言葉にクラスがざわめく。
女子達が近くの生徒とやりとりをして、やがて一人が手を挙げる。
「はい!織斑君を推薦します」
「私もそれでいいと思います!」
織斑がすごい勢いで推薦されていく。大変だな、織斑。頑張れ、応援してるぞ(棒)。
「候補者は織斑一夏……他にはいないのか?」
千冬が入力すると、電子黒板に勢いよく、織斑一夏と現れる。
ハイテクだなぁ。いくら、かかってんだろう。
「お、俺!?ちょっと待ってくれ、俺はやりたくないぞ!」
「自他推薦は問わないと言った。他薦されたものに拒否権はないぞ」
ウワァ、暴君だな。千冬らしいと言えばらしいけど。
バン!っという音ともにオルコットが立ち上がる。
「納得いきませんわーーその様な選出は認められませんわ。物珍しいというだけで、男が代表になるなんて、そもそも、男が代表なんて恥さらしですわ!」
女尊男卑に染まった奴らしい言葉だ。ただ、一点だけ同意しよう。
物珍しいというだけで、代表になるのは確かに反対だ。努力をした者や意欲のある者から、活躍の場を奪う事になる。
まぁ、自薦しろよって話なんだがな。
俺が、考えに耽っている間にも、オルコットの演説は続いていく。
「イギリスだって大したお国自慢ないだろう。世界一不味い料理で何年覇者だよ」
演説の途中で日本が馬鹿にされ、気に食わなかった織斑が火に油を注ぐ。
そして、口論は悪化していった。
「お前もなんか言えよ、西村!」
なんで、俺に飛び火するんですかね。これが分からない。
「はい?」
「はい?じゃねぇよ。男が日本が馬鹿にされたんだぞ。黙ってて良いわけないだろう」
正義感に溢れる大変素晴らしい言葉を頂戴する。ふざけんな。
女尊男卑って思想がどの国から始まったと思っている……どの国が女尊男卑による被害を一番被ってると思ってるんだ!
「悪いが愛国心なんてカケラも持ち合わせてないからな」
「はぁ!お前、それでも日本の男かよ!」
いつの時代の話をしてるんだこいつは。
愛国心に溢れる日本人なんて、もうほとんどいないだろう。
「ふん。所詮は欠陥品、自分の国すら誇れない様ですわね。
もっと、欠陥品らしく、女性に媚び諂って生きることを覚えたらどうでしょうか?プライドも何も持ち合わせていないのでしたら」
……もう我慢できねぇ。
席から立ち上がり、オルコットに飛びかかろうとする。
「あかやん!」
「赤也!」
布仏が俺の足をつかみ、千冬が俺の右腕を押さえる。
完全に動きの初動を封じられる。
「布仏、離せ」
「やだ。離したら、あかやんを犯罪者にさせちゃうもん」
顔を赤くしながら、全力で俺の足を押さえる布仏。
「千冬」
「落ち着け、赤也。道を踏み外すな。戻れなくなるぞ」
ギチギチと音を立てながら、俺の右腕を抑え込んでいる千冬。
必死に俺を押さえる二人に、殺意が怒りが霧散していく。なんというか、酷く自分が馬鹿らしく思えてしまった。
「…すまん。もう、大丈夫だ」
真っ先に右腕が解放され、だらりと落ちる。
それを見て、布仏も安心し、俺の足を離してくれる。殺気がかなり漏れていた様で、周りのクラスメートが震えている。
「みんな、すまん。ちょっと自制が効かなかった」
みんなの中にオルコットと織斑は含んでいないが、謝罪する。
今度、菓子でも作ってクラスメートに奢ろう。そう決めた。
「織斑先生、あかやんを推薦します」
布仏が横で俺を他薦する。
驚き、布仏に視線を合わせると。
「鬱憤は溜めすぎないほうがいいよ。あかやん」
っと、小声で言う。
なるほど、やりすぎない様に暴れろって事か。感謝するぜ、布仏。
「認めよう。それぞれ、遺恨があるだろう。
クラス代表は、来週の月曜日に放課後。第三アリーナで戦って決める。各々、準備をしておけ!」
千冬には布仏の言葉が聞こえていた様で、手を叩きながら、クラス全員に聞こえるように、宣言する。
ふぅと一息つき、視線をあげると、織斑、オルコットと視線がぶつかる。
「わたくしの勝ちは決定事項ですわね」
「絶対に負けないからな」
「お前らへのストレスをぶつけるにはいい機会だ」
三者三様の言葉が飛び交う。
再び、サードオニキスを纏う日は近い。
キレると自制の効かないオリ主。ただし、冷めやすい模様。
前作でヒロインにしていたセシリアを悪く書くのが、すごく大変だった。でも、何故か楽しさを見いだしつつあった。
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