神様は残酷で気紛れだ   作:マスターBT

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Fateが詰まったから、息抜きに書いてたら続きが出来上がる不思議。

内容的には、箸休め回。ゆっくりしてるよ。


漸く、1日が終わる。濃密すぎませんかね?

あのやり取りの後、授業は問題なく進み、今は放課後。

俺は、教室で千冬から部屋の鍵を貰うべく、待機していた。何故か、織斑もいるが。

俺が寝泊まりに利用している寮長室は、出るときは自由だが、入るときには千冬と一緒で無くてはならない。初めは信用がなかったからだが、今は単に千冬が面白がっているからだ。

 

「あー、くそっ、分かんねぇ」

 

相変わらず、前の席で悶々としている織斑。ISの教本を見ては、分からないと突っ伏している。

鬱陶しいんですけども。まぁ、廊下にいる他学年の女子達や他のクラスの女子達の視線や小声に比べれば鬱陶しくないのだが。

となりの布仏はいない。なにやら、用事があるらしく、放課後になったらゆっくりと教室を出ていった。

つまり、今の俺には女神が! 癒しがない。その事実に、はぁ、と溜息を吐く。

 

「あ、織斑くん、良かったです。まだ、教室にいたんですね」

 

山田さんが織斑に話しかけている。聞こえてくる内容的に部屋の話だろう。

廊下の女子達が静かになり、端に寄っていくのが見えた。どうやら俺の待ち人が来たらしい。

 

「待たせたな、赤也」

 

ふっと微笑みながら入ってくる千冬。ほんと、イケメンですね貴女。

ほら、周りの女子生徒が顔を赤くしてるから、刺激強すぎますよ。

 

「いい加減俺に鍵くれても良いんじゃないですかね?」

 

「寮長室は機密情報があるからな。お前に渡すのは構わんが、お前に着いてきた一般生徒にまで入られては困る」

 

外的な理由はそう言う事にしてるんですねなるほど。

呆れたように、頷いておく。

 

「千冬姉!」

 

「織斑先生だ。なんだ、織斑?」

 

俺らのやり取りを見ていた織斑が今にも飛びかからんとする勢いで、千冬に食ってかかる。

後ろで山田さんがオロオロしているところから察するに、まだ話の途中のようだ。

 

「なんで、西村と千…織斑先生が一緒の部屋なんだよ。別の部屋は用意出来なかったのか!?」

 

どうやらまだ、納得できていないようだ。

千冬が愚痴をこぼしてたが、家に全然帰っていないらしい。だからこその執着なのだろうけど。

 

「お前の部屋を用意するのにどれだけ手間取ったと思う? 織斑。

教師達も疲れている。漸く部屋の準備が終わって、皆んなが一息ついている時に西村が見つかった。また部屋替えを行えば、入学式までに準備が間に合わなくなる。だから、私と相部屋というわけだ」

 

千冬がざっくりと説明する。俺の検査が遅れたのは朝の自己紹介の時に言っておいたし、とりあえず問題はないだろう。

そもそも、部屋替えが完了してたタイミングってのは間違ってない。

 

「ぐっ…でもよ…」

 

「お前達は特例なんだ。当然、こう言った不備が発生することもある」

 

「不備……ってことは、千冬姉が喜んで西村と相部屋になってる訳じゃないだな……良かった……」

 

不備という言葉を聞いて、嬉しそうにする織斑。

千冬もブラコンだが、こいつはこいつでやっぱりシスコンだな。しかも、結構重症だ。

 

「織斑先生だと言ってるだろう。はぁ、用がないならもう行くぞ」

 

眉間をつまみ、溜息を吐く千冬。弟の様子に疲れたのだろう。

 

「あぁ。じゃあな、千…織斑先生、赤也!」

 

「……お前に名前で呼ばれる筋合いないんだけど」

 

「なんだよ、同じ男同士仲良くしようぜ!」

 

こいつ……頭どうかしてんじゃないのか?

朝からずっと俺に突っかかって来て、挙句の果てに仲良くしようだと?調子が良いとかそういう次元じゃねぇぞ。

 

「織斑先生、行きましょう」

 

もう疲れた……さすがに、あの様子に返答する気力も起きない。

俺が返事をしないことに騒ぐ織斑を放置して、寮へと向かう俺と千冬。

相変わらず、女子生徒達がワラワラとついて来ようとするが。

 

「鬱陶しい。散れ」

 

千冬の睨みと一言で散り散りになった。

 

「はぁ、全く。赤也、クラスではやっていけそうか?」

 

周りの生徒達が居なくなったのを確認してから、千冬が喋り始める。

普通に話せってことか。

 

「どうだろうな。千冬の発言のせいで、一部には敵のように見られてる。あんたの弟には頭を抱えるよ」

 

「前者に関してはどうせ、バレると思ってな。私は隠し事が下手だからな。一夏に関しては……すまないとしか。

私がしっかり見れていなかったせいか、アイツは精神的に子供なんだ」

 

暗い表情になる千冬。やっぱり、ブラコンだな。こういうところは。

とはいえ、俺がアイツと仲良くなることは無理だろう。

 

「仲良くは無理そうか?」

 

酷く心配そうに聞いてくる千冬。弟を想う姉の顔だ。

 

「すまない。さすがに、千冬の頼みでも無理だ。

俺とアイツは、根本的に合わない。価値観が違いすぎる」

 

雰囲気というか空気で分かる。

俺はアイツみたいに、自分は絶対的に正しいと思っている奴は嫌いだ。俺にあんなに当たって来たのに、先ほどの仲良くしよう発言が特にそれだ。

自分の思っていることは正しい。だから、今までの事は無視しよう。ふざけんな。

 

「……そうか」

 

残念そうに俯く千冬。

だから、ズルイって。そういう気の強い人が見せる弱さってのはさ。

 

「努力はする。今は、それで勘弁してくれ」

 

「……ふふっ、あぁ。分かったよ赤也」

 

嬉しそうに笑う千冬。多分、俺の考えも透けてるんだろうなぁ。

まぁ、努力だけはしてみよう。第一印象が悪すぎるだけかもしれない。

そんな話をしていたら、寮長室に到着した。

今では綺麗になり二人の住み分けも出来ている部屋に入る。入り口付近を俺が使っているので、鞄を置き、制服を脱ぎ、部屋着を着る。反対側では同じように千冬が着替えているが、別に覗く趣味はないから、無視する。

そのまま、コーヒーを淹れる準備をする。最近、千冬が自室で書類仕事を片付ける様になったため、コーヒーを飲む頻度が増えた。

準備を整え、いつでも千冬のオーダーに答えることが出来るようになった辺りで、千冬が口を開く。

 

「そう言えば、布仏とかなり打ち解けているようだな」

 

「ん? あぁ、今時、珍しいぐらい女尊男卑に染まっていない良い奴で安心してる」

 

「コーヒーを貰えるか? なら、良かったよ、お前はコミュニケーション能力がある方ではないからな。

女子だらけのここで上手くやれるか心配だった」

 

コーヒーを淹れ、千冬の目の前におく。ありがとうという言葉を聞きつつ、返答する。

 

「そうですかい。あぁ、一つ質問なんだが、オルコットのISのデータとか見れるのか?」

 

「希望するなら閲覧可能だ。国家代表や代表候補生の動きは、授業でも使えるものだからな。

クラス代表になりたい訳ではないのだろう?」

 

米を研いで夕飯の準備を始めた俺に、千冬が聞いてくる。

そりゃ、クラス代表になりたい訳がない。俺は、面倒ごとが嫌いだし。

 

「もちろん。布仏にも言われたが、鬱憤を溜めないようにするためだ」

 

「一夏は一先ず置いておくとして、オルコットは代表候補生だ。

お前と稼働時間や訓練の密度が違うぞ? 私が面倒を見てやろうか?」

 

冷蔵庫を開け、こっそりと買って置いた千冬の嫌いな物がある事を確認。

 

「いや良い。千冬に訓練してもらえるなら、確かに強くなれるかもしれないが、ただでさえ面倒な噂に真実味が出るし、そんなもんで勝てても嬉しくない。自分だけでどうにかするさ」

 

野菜を切り分け、肉を自然解凍する。

肉が溶けるまでの間に、回し忘れてた換気扇と、調味料の準備を整える。

おっと、普段ならそろそろ千冬がビールを要求してくる頃か。豆腐を取り出し、冷奴を作る。

 

「そうか。なら、頑張れよ、少年」

 

「恥ずかしい結果にはならないようにするさ」

 

「期待するとしよう。っと、そろそろビールをくれ」

 

「言うと思っていたぞ」

 

冷奴とビールを届ける。

机の端に書類があるのと、空になったマグカップを見て、仕事が終わった事に気づく。

 

「今日は随分と少ないな。いつもは、イライラしながら酒を飲むのに」

 

「まるで私が仕事出来ないみたいな言い方はやめろ。

アリーナの使用許可が重なっていた場合、そのクラスに優先的に別の場所が使えるように手配する書類だけだからな」

 

プシュっとビールを開ける音が響く。

 

「これで残りの私の仕事は、お前の美味い飯を食うことだけだ」

 

「期待しておけよ。自信作だ」

 

千冬の嫌いなピーマンを大量に使った青椒肉絲だがな。

今日1日の精神的ストレスのお返しだ。

 

「ふっ、楽しみにしている」

 

この後、ピーマンたっぷりの青椒肉絲に絶望し、ピーマンを露骨に残そうとする千冬と俺の口喧嘩が始まったのは言うまでもない。

 

 

 




あの、口論の後に渋々、ピーマンを食べる事になる千冬さんの姿があったことは報告しておきますね。

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