ヒロイン赤土晴絵と運命の出会いをした京太郎。
しかし「あいつおもち微妙だよなー、小さくも大きくもないし個性ねーわ」とやさぐれていたのであった。
あれから飲み物を渡し自己紹介が終わった後、近くにあったベンチに移動し座ることとなった。
用事あるみたいだしそのまま行っちゃうかなーって思っていたけれど残ってくれた赤土さん(ちゃん?)に感謝。
ただ……引き留めたのはいいけど、この先どうするかまったく考えてなったな……。
クラスの女子とは普通に話せるが、流石に初対面しかも年下?だろ。年下って言っても咲達とは流石に年が離れすぎてるし、一部は参考にならん。どうするよ俺?
などと無駄に思考を巡らせて考えていると、情けないことに赤土さんの方から話しかけてきてくれた。
「えっと……須賀さんはここらへんの人じゃないみたいですけど、やっぱり観光ですか?」
「あー、そんな所だな。夏休み使って色々回ってたんだけど、奈良に入ったらこんな感じで立ち往生してた感じかな」
「そうなんですか。いいですねー、そういったのも大学生ならではって感じですよね」
一応最初会った時の会話で旅行者っぽいのはわかっていたのだろうが、改めて訪ねてくる赤土さんに説明している中で違和感を感じた。
ん?大学生?あ、そういえば名前だけ名乗って、年齢とかはまったく話してなかったな。
「あーいや、もしかして勘違いさせてたらゴメン。俺まだ高校生なんだ」
「……ゑ?」
赤土さんがちょっと面白い声を上げた。
「え? でもバイクって確か十八歳からですよね?」
「ん? ああ、いや、バイクにも色々種類があって、大型は車と一緒で18歳からなんだけど中型や小型は原付と一緒で十六歳から免許が取れるんだよ。ちなみにこいつは中型」
確かに車が18歳からなのもあって紛らわしいよな。知らない人から見たら単車なんて、原付とバイクぐらいの分け方しかわからないだろう。
しかしこう考えるとあんまり関係ないが煙草や酒、選挙は二十歳と他にも色々紛らわしいの多いよな。そんなに多くはないが、一般高校生の適当な感性としては一律にしてしまえば良いと思う。
「……あ、あははー、そっ、そっかぁ! 勘違いしてたなーあはは!」
間違えたはずかしさからか、頭を掻きながら照れをごまかしている赤土さん……可愛いなオイ。
「そ、それじゃあ須賀さんは高校生なら実は同い年かな? それとも二年生とかで年下だったりして!」
ん?二年で年下ってことは……。
「あれ? もしかして赤土さんも三年生?」
「ん? 三年生だけど、“も”ってことはやっぱり須賀さんも?」
「ああ、受験真っ只中の高校三年生だ」
「なんだーやっぱ同い年か! なら敬語使わなくても大丈夫だねっ! ……あれ? ってことは私も年齢を勘違いされてたってこと?」
なんだー気遣って損したーと言わんばかりに大袈裟に言う赤土さんにばれていないと思っていたら、触れられたくないことに気付かれてしまった。
あやふやなままに出来ると思ったら意外に鋭いなこの子。
「それは……おmほら! 赤土さんが最初に敬語使ったから無意識に年下かと思っちゃってさ!」
口走りそうになった言葉を止めるために咄嗟に出たが、実に苦しい言い訳だな。初対面なら同い年でも敬語は普通だし、これで騙されるとかありえ――
「あー確かに紛らわしかったかもね! そこらへんは須賀さんが身長も高くて大人っぽく見えたってことでっ! うん!」
――たな。多分さっきのバイクの件が残ってるんだろうなー。そしてちょっとテンパりつつも話を続ける赤土さん。
「えっと、それじゃあ須賀さんはもう推薦とか出てるから高校生最後の夏休みを楽しんでるって感じかな?」
「あーうん、息抜きというか青春18きっぷというか、こうしてるけど普通に受験する予定かなーと」
痛い所を突かれて目をそらしながら口ごもる。
本当だったら家で机に向かってなきゃいけないんだけど、受験は大事って言っても息抜きも必要だよな。うん、気にしちゃいけない。
まさに「こいつダメだなー」って感じで呆れられているよなーと思い視線を戻したら、予想外なことに赤土さんは腕を組んで頷いていた。
「うんうん、確かに息抜きって大事だね。私も三年だから受験だけど勉強が大変でさー、今日も息抜きに友達と出かける予定なんだよね!」
「あ、それだったら時間大丈夫? 助けてもらってから結構時間経ってるけど」
「大丈夫大丈夫! 待ち合わせまでまだ三十分あるから余裕だし」
「それならいいんだけど……『チャーチャラチャラチャラ、チャッチャチャチャー』……ん?」
会話の途中でどこかから軽快なリズムの機械音が響く。
携帯の着信音のようだがここには俺と赤土さんしかいなく、俺の携帯ではないので必然的に赤土さんの携帯からということになるが……。
「あっ! っと、ごめんなさい電話みたい」
そう言うと慌てて携帯を取り出しながらここから離れる赤土さん。
しかしラヴェルのボレロか……いい趣味してるな。
『望どうしたー?』
『え? なんで来ないんだって』
『だって待ち合わせまでまだ……」
『え……? 過ぎてる? 二時じゃなくて一時?』
『マジ……? ちょ!? ゴメン! 今すぐ行くからっ!』
慌てながら赤土さんが戻ってくる。
まぁ、何があったか大体わかっているんだけどね、赤土さん結構声大きかったし。
「須賀さんゴメン! 時間を間違えてたみたいで、今すぐ行かなきゃいけなくなった!」
「いいよいいよ。こっちこそ付き合わせてごめんね」
両手を合わせながら頭を下げて謝ってくる赤土さんだけど、元々こっちが引き留めなきゃもっと早く着けたし、むしろ謝るのはこちらの方だしな。
そして急いで自転車のところまで走り、さあ行くぞとペダルを漕ぎ出そうとした赤土さんだったが、何か忘れていたとばかりにこちらに向かって振り向く。
「あ、そうだ! 行く前に他に何か聞いておきたいことある?」
急いでいるんだし、もう俺なんて放っておいてもいいのに気をつかってくれる。まったく……面倒見がいいな。
「あー……そうだな、それじゃあここら辺でおすすめの宿ってあるかな? 名前さえ教えてくれれば後は自分で見つけられるから」
「そうだな……松実館なんてどうかな? ここらへんじゃ結構評判良い旅館だよ」
ふむふむ、松見館……と。今度は案内もないのだし忘れないようにしっかりと記憶しておく。
「そっか、ありがとう。後で行ってみるよ」
「どういたしまして! それじゃ受験勉強頑張って、じゃ!」
「おう、色々助かったよ! そっちも頑張れよ!」
お互いに手を振りながら別れの挨拶をする。
手を振り終えると、赤土さんは全速力で自転車を漕ぎだし進んでいった。あ、赤信号に引っ掛かって焦ってる。けれどすぐに思い立ったのか進路変更したな、流石地元民。
「ふぅ……さて、俺も行きますか」
赤土さんを見送ってから数分後、放置していた愛車にガソリンを入れるために動き出す。
ほんの短い間だが結構楽しかったし、もっと話したかったけどしゃーない。これも旅の醍醐味、一期一会ってか。
その後バイクが動くようになり、本道をある程度走らせるとあっという間に人通りが多い所に着いた。
ビババイク。こんな便利なものを発明するとか、まったく……たいしたやつだよ。
さて、気持ちを切り替えてと、この後どうするかな。携帯の充電器を買いに行くのもいいが、なるべく出費押さえたいから宿で充電したいんだよな。
けれど宿を探すにしても結局携帯で探すか人に聞くしかないし……とりあえずコンビニでも探すかと考え、バイクを止め周囲を見渡してみると――
「おいおい、危なっかしいな……」
視線の先にいたのは袋だった。いや、正確には袋と足――じゃなく袋を抱えた子供みたいだ。
ただ、問題はその袋が大きすぎて上半身が隠れている為、前が見えていない状況みたいだということだ。その証拠に足取りは覚束なく、歩くのも亀のようなスピードだ。
それでも少しずつ前には進んでいるんだが、荷物もそれなりに重いのか微妙にふらついている。
親のお遣いかな?それにしては無理があるんじゃないか?とか考えていると。
「あっ!? う、うわわわわわわ!!!???」
足がもつれたのかころびそうになり――
「って、あぶねえ!」
急いで駆け寄り、倒れる前に体を抱き締める。
普通だったら間に合わないだろうが、その子がいつの間にかこちらに近づいていた為なんとかキャッチ出来た。
腕の中にいるその子の様子を見ると、怖かったのか両目をしっかりと閉じて硬直している。
「ふぅ……おい、大丈夫か?」
「……え?」
声をかけると、その子は目を見開き、驚いたような目でこちらを見つめてくる。
まあ、転びそうになったと思ったのに、気づいたら知らない人に抱っこされていたら流石に驚くよな。
「とりあえず離すけど立てるか? あ、危ないから一回荷物は降ろしたほうがいいぞ」
「えっと……はい」
いつまでも掴んでいたら悪いと思い手を放し、荷物も降ろすように言う。
とりあえずその子は素直に言うことを聞いてくれ、しっかり自分の足で立った後荷物を置くと、隠れていた全身が見えるようになった。
そこでまず目についたのは、髪を後ろに束ねたポニーテールと勝気な瞳で、どちらも特徴的だ。服装は動きやすいのが好きのか上半身ジャージで下は短パンを履いている(※ノーパンノーズボンなんてSOA)
ぱっと見ると実に健康な女の子といった感じで、歳は咲と同じぐらいかな。顔は整った感じで、あと数年も経てば周りの男子から意識されるだろう。
「えーと、ありがとうございました」
こちらが考え込んでいるうちに落ち着き、今の状況が呑み込めたのか礼を述べてきた。
頭を下げると同時に後ろに結んだ髪がさらさらと揺れる。むぅ……少し触ってみたい。
「いや、気にしなくていいし、怪我がなくて何よりだよ。ただ、頑張るのは良いけどあんまり無茶をするのはよくないぞ」
内心の考えを隠し、子どもということで怖がらせないように普段よりも丁寧な口調で注意をすると……。
「あはは、おみせのおじさんにもいわれたんだけど、いけるかなーと」
図星だったのか照れ笑いしながら答えてくる。
うん、数時間前の俺もそうだったな。これがブーメランか。
「次からは気をつけてな。それでやっぱり親御さんは一緒にいないのかな?」
「うん! おかあさんにおねがいされてかいものだよー」
「そうか、小さいのに親のお手伝いをするなんて偉いぞ」
「えへへー」
笑顔で元気よく答えてくれるので思わずこちらも頬が緩んでしまい、思わず頭を撫でる。
女の子は髪の毛に触られるのを嫌がるとよく言うが、この子は歳のせいかむしろ喜んだ感じだ。
あー、なんかいいなーこういうの。癒されるわー。癖になりそう。
「あ、そうだ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど良いかな?」
「んー、なーにー?」
「ここらへんで松実館って名前の建物知らないかな?」
ちょうど良いと思い、撫で続けたまま赤土さんに教えられた旅館についてダメ元で聞いてみると――
「うん、しってるよー。うちからもうちょっとだけいったところにあるよー」
意外にも知っていた。有名旅館で家に近いとはいえ、ある程度の場所もわかるんだな。
いや、むしろこれぐらいが普通でポンコツ姉妹が例外なのか。
「えっと……それってどっちの方角かな?」
「あっちー」
俺の質問に女の子は右の方を指差し答えてくれたのでそちらへと視線を向ける。確かに遠目でもいくつか建物が密集しているのが見えた。
「そっか、ありがとうな」
「どういたしましてー。よかったらあんないしようかー?」
「いや、ここからでもなんとなく見えるし大丈夫だよ」
「そっかー、わたしここからみえないし、おおきいのうらやましいなー」
礼と同時に撫でる手を離すと名残惜しそうにする。うん、出来るなら俺ももう少し撫でていたかったよ。
撫で終わったのを合図としたのか、降ろしてあった荷物を持ち上げようとするが、重いためかよろけてしまったので軽く支える。
「おっとっと。えへへーありがとうね」
「どういたしまして」
再び礼を言われた。しかし…このまま行かせるのも心配だな。
「あー、ちょっと危ないし家まで送って行こうか?」
しばし考え込んだ結果、家まで送ることを提案してみる。
近年ロリコンがどうたら騒がれるようになったが、流石にこのまま放っておくのも目覚めが悪いし、一応尋ねてみると――
「おくるって……? え……!? もしかしてそれにのっていいの!?」
最初はキョトンとして女の子だったが、話が呑み込めると目を輝かせて見ているのは我が愛車だ。
あー……確かにこの年頃の子ならこういったのに興味を示す子も多いか。少し心配だが、子供の二人乗りもよく照達を乗せているし大丈夫かな。
「ああ、いいよ。ついでに道案内も頼んでいいかな?」
「やったーッ! まかせてー!」
嬉しさのあまり飛び跳ねる女の子。喜ぶのは良いんだが、跳ねるたびに服が捲れ、臍が見えている。
別にロリコンじゃないですし何も思わないですヨ。……ほんとだよ。
その後、荷物を受け取り積み込み、旅の前に降ろし忘れていた子供用のヘルメットとタンデムベルトを取り出す。結構邪魔で荷物になってたんだが、まさかこんな所で役に立つとは思わなかったな。
それから女の子と一緒にバイクに乗り、ヘルメットを被せ、ベルトで落ちないように固定する。
「ベルトで俺から離れないようにはなってるけど、落ちたら危ないからしっかり掴まってるんだぞ」
「はーい!」
元気の良い返事を聞いてからエンジンをかけて走らせる。どうか周りの人から誘拐犯だとか間違われませんように。
「うおー! すごーい!」
女の子は初めてバイクに乗った為か、後ろでかなりはしゃいだ声を上げている。
しかし、こうやって子供を乗せること機会は多いのに、同じくらいの年の女の子を乗せる機会ってほとんどないよな……。あわよくばこの旅行で女の子とお近づきになりたかったけどまったくないし、大学に行ったらなんか変わるのかねー……。
そんなことを考えつつも女の子を乗せて数分後。
安全のためにかなり速度を落としたがやはり文明の利器。あっという間に女の子の家に着いた。
「とうっちゃくーーーっ!」
目的地に着き、ヘルメットとベルトを外すと軽やかに降りる。こちらも預かっていた荷物をおろすため、一度エンジンを切り停める。
家は……なんかのお店かな?看板はついているが休業日の為か中の様子は窺えない。
「おくってくれて、ありがとうございましたー!」
「そっちも道案内してくれてありがとうな」
荷物を渡し、お互いに礼を言い合う。
距離的にはそんなでもなかったが、微妙に入り組んでいる道もあったから助かったのは事実であった。
「にもつおいたら、むこうまであんないしようかー?」
「いや、さっきより近くなってわかりやすくなったし大丈夫だよ」
向こうからの案内の提案も流石に大丈夫と思い遠慮しておいた。
断られた為か女の子はしょんぼりした顔をしてるが、連れまわすわけにもいかないし、まだ距離はあるが先ほどより道もわかりやすくなっているしな。
流石にここで迷子になるなんて見知った二人を除けば滅多にいないさ。
「じゃあ、俺はそろそろ行くな」
いつまでもこのまま話しているわけにもいかなので、再びバイクに跨りエンジンをかけなおす。
女の子はこれで終わることにつまらなげな顔をしていたが、こちらが行くことを伝えるとなんでもなかったかのように笑顔を見せた。
「そっか………わかったっ! それじゃあおにいさんありがとうね! バイバーーーイ!」
「おう、そっちも次は無茶しないようになっ!」
お互いに手を振り別れる。ミラーを見ると角を曲がる直前まで手を振っているのが見えた。
――しかし松実館で泊まれなかったらどうするかな……野宿は嫌だし他に見つかるか……?
そんな不安を抱えつつ、女の子に見送られながら旅館への道を走り始めた。
おまけ
急いだおかげで電話から10分かからずに新子家へ到着した晴絵であったが……。
「いやーごめんごめん! 後でなんか奢るから許して」
「いや、まあいいけどね……それよりなんかいつもより機嫌よくない? なんかあったの?」
「え? いやいや!? なんでもないない! いつも通りだから!」
「(やっぱりなんか怪しい……)……男でもできた?」
「うぇい!? そんなんじゃないから全然ッ! ただ道案内しただけだからっ! そんな関係じゃないからっ!」
「冗談で言っただけなんだけど、本当だったのね……」
「だから違うって!? 須賀さんとはそんなんじゃなくて!」
「道案内しただけの相手なのに名前も知ってるのね…。いやー、今まで一切男の影がなかった阿知賀のレジェンドにもようやく春が来たかー」
「だから違うってーーーー!!??」
「(うるさいからよそでやりなさいよ……)」
遅れてきた仕返しに弄る新子望と弄られる赤土晴絵、それを見ながら呆れる新子憧であった。
謎のジャージ娘…一体なに鴨穏乃なんだ…。
いや、待てよ…KかじSこやという可能性が存在してもいいんじゃないか?