君がいた物語   作:エヴリーヌ

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咲「咲-Saki-で野郎オンリーとか誰が出てくるか丸分かりだよね……」

久「書くべき話を間違えてる気がするわ」

タコス「出番がないじぇ」




9話

 県大会まで一カ月を切った五月の晴れた日。俺はとあるお宅にお邪魔していた。

 

 通された応接間で待っている間、失礼だと思いつつも暇なので部屋の内装を見回すと、外から見た外見と同じように中も綺麗に整っており、家具も上品なものが置かれているのがわかる。また、小まめに掃除をしているのか埃もほとんど落ちていないようだ。

 以前の家とは色々と異なっているが、こういった所は昔と変わっていないな。

 

 それから暫らく部屋の中を見回していると、扉の開く音が聞こえたので、急いで視線を戻して姿勢を正す。

 

 

「須賀先生は確かコーヒーが好きだったな」

「ええ、ありがとうございます」

 

 

 お盆の上に載せられたカップが目の前のテーブルに置かれたため一度視線を向けてから頭を下げて礼を述べる。

 

 同じように自身の分を置いてからテーブルを挟んで座るのは身長は俺と同じぐらいで、40代半ばほどの男性だ。自宅にいながらも毅然とした姿勢や態度をとっていることから彼の真面目な性格が伺える。

 また、その視線は鋭いが別に機嫌が悪いとかではなくそれも職業柄などからであり、これでも仕事の時と違って和らいでいるのは昔の付き合いもあって理解している。

 だから久しぶりに会った時には緊張もしたが、家の中に通されてから間を空けたおかげもあってある程度緊張もほぐれていた。

 

 

「さて、和のことで話があると聞いたがどんな用件かな」

 

 

 出されたコーヒーに手を伸ばして口をつけていると、男性――和の父親である原村恵さんから早速俺がわざわざ訪ねた理由である今日の話題が出た。

 そう、今日俺が原村邸を訪れたのは和の事で家庭訪問をしに来たからであった。

 

 

 

 

 

 和と再会した四月から約一カ月半。和達がうちの部に入部したと思ったら咲までも麻雀部に入り、全国大会を目指すことになったり、教師役として三尋木を呼んだりと色々とあった新学期であった。

 

 近頃では咲がネトマをやろうとしておじさんのパソコンを壊したり、今後の事を考えて咲の携帯を買いにいったりと咲の周りだけでも色々あった。

 ちなみに咲が携帯を買ったという話を聞いたことから、東京にいる照が自分も携帯を使いたいと強請るようになり買ってもらったという話も聞いた。そのため休みの日には照からの電話が以前より多くかかってくるようになったが可愛いものだろう。一方でメールは慣れていないのかあまり来ないのだが。

 しかし照に携帯の説明をすることになった弘世には頭が上がらないな。今度何か礼をしようと思う。

 

 そんなわけで色々とあったが、それでも大きな問題もなく活動を続けていた清澄麻雀部だったのだが、少し前からちょっとした問題が発生していた。まあ、簡単に言ってしまえば和の様子がおかしかったのだ。

 咲や片岡は気づいていなかったが、俺自身それなりにつきあいもあるし、教師という立場上生徒の変化には敏感なもので気づけたのだろう。

 

 最初はプライベートな事もあるし無理に聞きだすつもりはなかったのだが、教師だけでなく年の離れた友人としても何やら思いつめた表情の和を放っておけず、結局他の部員がいない時に尋ねてみたのだ。

 結果、最初は渋っていた和であったが、駄目もとで押し気味で説得してみると意外にもすぐに訳を話してくれた。恐らく和は自分でも気付かないうちに結構悩んでいて誰かに話したかったのだろう。

 

 そこで話を聞くと出てきたのは『今度の全国大会でうちの麻雀部が優勝しないと和が転校する』というトンデモ話だった。

 ぶっちゃけ最初はなんでそうなっているのか訳が分らなかったのだが、どうやら麻雀を止めさせたい親父さんを説得するためにそのような条件を付けたらしいのだ。

 

 正直その話を聞いた時俺は頭を抱えた。今までただの無名校だった清澄が全国の高校を破って優勝。はっきり言って無理だ。

 確かに咲を筆頭にうちの連中は全国レベルの力はあるんじゃないかと思う。しかしうちレベルの学校はいくつもあり、県大会には前回優勝校の龍門渕もいるためガチできついのが現状である。その上顧問の俺がそこそこできるだけの素人だから余計に難しいだろう。

 

 途中、現実逃避で『相変わらず頑固な所は変わってないんだなー』と昔を懐かしくも思ったけど大ピンチには変わりなかった。

 そんなわけで詳しい話を聞きに原村邸に家庭訪問をすることとなったのだ。

 

 そこで事前に連絡を取ると、原村さんは快くスケジュールを開けてくれて土曜日に会うこととなった。以前和に言われた通り一度顔を出すべきだと思っていたので渡りに船でもあった。

 

 ちなみに土曜日ということで和達は現在麻雀部で部活中であり、顧問の俺は別の仕事があるということで出ないと伝えておいたため、俺がここにいる事を知らない。

 多少プライベートも入っているが、実際これも大事な仕事には変わりないので問題ないだろう。

 

 とまあこんな感じで、今俺は原村邸にいるのであった。

 ちなみに最初原村さんは教師と保護者という立場から敬語を使っていたのだが、こちらとしては昔の付き合いもあり、凄くむず痒かったので頼み込んで昔のように普通に接してもらっている。

 ただ、一応のけじめとして先生という呼称はついたままであったが。

 

 そして本題に入ろうと手に持っていたカップを置き、表情を引き締めてから原村さんに向き合う。

 

 

「そのですね……和から聞いたんですけど、転校を考えているとか」

「ふむ、やはりその話か……」

 

 

 今日訪ねた理由を話す上で少し悩んだが、遠まわしに聞いてもしょうがないので率直に告げると、俺の話に納得しつつも顔を顰める原村さん。

 傍から見ると家庭の事情に口を出されて機嫌が悪くなっているように見えるだろう。ところが実際は――

 

 

「やる気にさせるためとはいえ限度がありますよ……和、かなり悩んでいたみたいでした」

「ふん、別に嘘は言っていないがな。それにしてもなぜ本気でないとわかった?」

「そりゃ原村さんともそこそこの付き合いですからね。それに言葉がわざとらしすぎます」

 

 

 和から聞いた話を俺なりに考えて伝えてみると、やはり予想通り和の転校の話は本気ではなかったみたいだ。

 

 確かに原村さんは麻雀を好いてはいなく、出来るなら和の将来のためにも勉強に専念してほしいと考えているのは本当だろう。しかしそれでも和がインターミドルで優勝したことやそれを通じて友達を作り楽しんでいる事には、昔聞いた事もあって理解をしめしているのはわかっているのだ。

 

 そしてそもそも和もまだまだ子どもだから親が話を進めればそれに従わざるを得ない。だから本当に進学校に行かせるつもりなら清澄に入れる前に手を打っているだろうし、転校も仕事の都合といえば和だって諦めがつくはずだ。

 

 つまり原村さんが和とその話をしたときには、転校について考えておきなさいという話ではなく、ある意味今後の和の決意表明を聞いておきたかっただけなのだろう。その時に反発するぐらい熱中しているなら良しとするが、その程度で決意を曲げるようなら転校により乗り出していたのだろう。

 だけど実際は和の行動は原村さんの予想に反していたのだが。

 

 

「やりすぎましたね」

「ああ……」

 

 

 俺の言葉に目を閉じて深くため息をつきながら原村さんが頷く。

 原村さん自体転校については考えてはいたが、ここまで大事にはする気はなかったのだろう。『遊びはほどほどに』程度にその場は濁して釘を打つだけだったはずが、まさかの反抗期である。まあ、反抗期とは言うにはかわいいものだが。

 

 

「まさかあの子があそこまで言うようになるとはな……」

「そうですね、昔からあまり口には出さないタイプでしたから」

 

 

 原村さんは困った風ではあったがどことなく嬉しそうだ。厳しい人だが別に愛情がないというわけでなく、それも子どものためと思って動いている人だから愛娘の成長が見られた嬉しいのだろう。

 

 元々和は気を許した相手にはそれなりに感情を見せてわがままを言ったりをするのだが、忙しい両親に対しては負担にならないようにといい子であろうとする傾向があったからな。

 そんなわけでそのように経緯はわかったが問題は解決していない。

 

 

「それでどうするつもりですか?」

「どうするとは?」

「和との約束ですよ。自分から見ても、去年の和の優勝と違って高校生の大会はレベルが高くなりますから全国での優勝は難しいと思います。ですから売り言葉に買い言葉ということもあり、和も思わず言ってしまったようですので考え直してもらえませんか?」

 

 

 出来る限りの懇願の気持ちを込めて考え直してもらえるように原村さんの説得をする。

 

 物静かなタイプの和は友達を作るのにも苦労する方だ。中途半端な時期に東京に行って馴染めるとは限らず、片岡達と離されるのを考えるとせめて高校卒業までは同じところにいた方がいいだろう。

 流石に大学生になる頃になれば和も割り切れるようになるし、自分で道を選ぶ事もできるはずだ。だからせめて高校までは待ってほしいという願いを込めてそう伝えるが、正面に座っている原村さんは思案顔だ。

 

 相手はこういった討論に慣れた弁護士であり、説得の材料が足りないかと思い何か言葉にしようとするが、先んじてあちらが口を開くのが見えた。その表情は先ほどまでと違い視線は鋭く、それこそ詰問されているかのように感じる。

 

 

「……君は和達を全国で優勝させる自信はないのかね?」

「え……? …………勿論あの子たちの為に全力を尽くしますが、お恥ずかしながら絶対に優勝させるとは断定できません」

「ふん、模範的回答だな」

 

 

 先ほどまでと全く繋がりのない話に困惑して言葉に詰まり、出来る限りの言葉を紡ぐ。それに対し原村さんは不満げもあるが、納得したような表情を見せている。

 

 なにを考えているのかは俺には全く予想もつかなかったが、反応を見るかぎり正解ではないが間違いでもなさそうだ。

 しかし雰囲気的にこのままでは和の転校の話をなかった事にするのは出来なそうである。

 

 

「一度約束したことだ。撤回をするつもりはない」

「で、ですけ 「ただし」 」

 

 

 縋りつこうとするこちらの言葉を遮り、原村さんは、ふっ、と少しだけ口元を緩めた。

 

 

「もしかしたら今後、こちらで何か長期の仕事が入る事もあるだろうな」

 

 

 原村さんはそういうとこちらから視線を外して窓越しに外を眺める。

 俺は最初、原村さんが何を言っているのか分からなかったが、頭の中で言われた言葉を整理するうちに飲みこめてきた。

 

『優勝とまではいかないがそれなりの成果を見せろ。そうしたら仕事を理由に引っ越さないでいてやる』

 

 つまりそういうことだろう。

 成果というのがどこまでかは曖昧ではあるが、それでも話のつながりとして優勝よりも楽な位置なのは間違いない。とはいえ、原村さんが言うならば生半可なものでは納得してもらえないだろう。せめて準決勝に行くぐらいは欲しいな。

 その為には俺も今後一層手を抜いていられなくなった。

 

 

「ありがとうございますッ! 必ず優勝できるようにサポートします」

「頑張りたまえ」

 

 

 先ほどとは違った決意を込めて麻雀部の顧問として動く事を伝えると原村さんも険しかった表情をようやく緩めてくれた。恐らくだが、俺が口で言う以上に優勝に対して諦めムードだったのを感じていたのだろう。

 

 そこまで深い付き合いがあるとは言えないが、それでも知り合いがそのような状態になっていたら活を入れたくなるだろうし、なによりも愛娘の顧問なのだからしっかりして欲しくもなるか。とはいえ一時はどうなる事かと思ったがなんとかなりそうだ。

 見知った相手とはいえ、話す内容からそれなりに不安であったため一気に力が抜けて座っていたソファーへと少しだが体を沈める。

 

 これで今日の仕事は終わりだ。時間的には短いものだったがホント疲れた。

 さて、これからどうするかと思い、下に向けていた顔を上げると、原村さんがなにか言いたげな表情をしているのが目に入った。

 

 

「どうしましたか?」

「いや……その和の事なのだが……」

「和がどうしました?」

「その……だな……時間があれば、学校ではどんな調子か教えてもらえるか?」

「……ああ、学校のですか。いいですよ、そうですね」

 

 

 最初何を言われるのかと内心ビビっていたが、聞かれたのはある意味予想できたことであった。

 

 先ほどまでの真面目な表情を崩し、落ち着かない様子でわずかに身を乗り出しながら話を促してくる様子に昔の事を思い出しながら苦笑しつつも学校での様子を話し始める。

 そもそも元々俺が阿知賀で原村さんとこういう風に昔付き合いがあったのは、当時和の様子を教えてほしいと頼まれたからなのだ。

 

 原村さんはこのような性格のため、親子関係自体は問題ないのだが、外での和の様子というのが本人から聞き出しにくいらしく、当時麻雀教室で保護者的役割をしていた俺に色々と様子を尋ねていたのだ。

 

 ということで本日の用件は終わったのだが、原村さんの希望に答えて和が高校でどのように過ごしているのかと話すこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 原村邸を後にしてから数時間後、俺は帰宅はせずにとある一軒のバーに来ていた。酒を飲むようになってからよく訪れており、以前三尋木と行った居酒屋と同じように懇意にしている店だ。

 店に入りマスターに挨拶をしてから中を見回すと、視線の先に待ち合わせをした人物を発見して席に近づく。

 

 

「悪い、待たせた」

「いえいえ、こちらも来たばかりですよ」

 

 

 謝りながらそいつ――ハギヨシの隣の席に着く。こっちとハギヨシの休みがようやく重なって、今日ようやく飲めることになったのだ。

 

 マスターが何を飲むか聞いてきたのでいつも飲んでいるのを頼む。ハギヨシの手元にもチラッと視線を向けるが、先ほど言っていた通り来たばかりだからか酒は減ってはいなかったので追加はしないでおく。

 それから届いたグラスをお互いに合わせて、久しぶりの再会を祝う。

 

 

「お疲れ。こうして会うのは久しぶりだな」

「お疲れ様です。そうですね、直接顔を合わせるのは二カ月ぶりぐらいですか」

 

 

 学生のころとは違い、お互い社会人で自由な時間というのは取りづらく、こうして顔を合わせる頻度は少ない。

 しかし携帯などを使って小まめに連絡を取り合っているためそこまで久しぶりという感じはあまりしないだが、それでもやはりこうやって顔を合わせて話す機会というのは必要だろう。

 

 

「そんでそっちはどうよ?」

「変わりなしといったところですね、お嬢様達も二年に上がっただけで環境もたいして変わってないですし」

「彼女は?」

「出会いがないもので」

 

 

 まずは適当な話題ということで当たり障りない話を振ったのだが、帰ってきた返事は素っ気ないものだった。

 ハギヨシもいい年だしそろそろ出来ていてもおかしくないと思ったのだが、昔から仕事一筋なところもあったからなーと納得する。決して女に興味がないというわけではないだろうが、優先順位的にまだ先だろうな。

 

 

 

「そういう須賀君こそどうなのですか? あれから随分経ちますし、いいころ合いだと思いますが」

 

 

 軽い気持ちで振った話題であったが、ハギヨシからのまさかのキラーパスで藪蛇だったと後悔する。

 面倒なことになったと思い、気遣いつつもどこか楽しそうにしているハギヨシの視線か逃げるように酒を飲むが、逃がさないとばかりにハギヨシが話を続ける。

 

 

「昔の知り合いとも再会したんですから、何か浮いた話の一つや二つあってもいいと思いますよ」

「はぁ……あのなぁ、俺は教師で和はまだ高校生だぞ。それに十歳も年が離れてるんだからないない」

 

 

 誰とは言わないが、流れからして和の事であろう。ハギヨシの言葉に対し手を横に振りながら否定をする。

 万が一を考えたとしても向こうからすれば好意的にみても良い兄貴分程度だろう。そして何よりも親父さんが怖い。ここに来る前の事で昔のようにそれなりによい関係が出来たのにそれが確実に無に帰すだろう。いや、むしろ確実にマイナスだ。

 

 

「そういうことで和とはなんともないし、ハギヨシと同じで暫くは一人身さ」

「ふむ……でしたら三尋木さんはどうですか?」

「??? なんでいきなり三尋木?」

「お互い気心も知れていますし、仕事にも理解がありますから全然ありでしょう。むしろ昔からお似合いだと思っていたぐらいですよ」

 

 

 先ほど以上の突拍子もない話に、何言ってんだこいつと思いマジマジと顔を見ると、ハギヨシはいつも以上にニコニコな笑顔でいた。その表情に最初からかわれているのかと思ったが、その笑顔の中にかすかに読み取れる程度の真剣さを感じる。

 

 笑って流すのも手であるが、こういった場において笑いで何かを隠すというハギヨシにしては珍しいことをしているので、俺としては自分に向けられる恋愛話は乗り気しないしけど、少しだけ真面目に考えてみることにする。

 

 ――三尋木ねぇ……ぶっちゃけ考えた事もなかったな。

 

 三尋木とは中学二年の時からの付き合いだから既に十年以上の間柄だ。

 初めてあった時は当たり前かつ可笑しな話だが今よりも小さかったのもあって、第一印象は『どっかしらから迷い込んだ小学生』だった。

 そして色々あってつるむ様になって、それこそ一つ下ではあったが女子では一番で、同性であるハギヨシ達と同じぐらい気心の知れた友人……いや、親友と言える相手だ。

 

 勿論昔の事なので覚えていない事もあるだろうが、今まで友人と接してきたから特別な意味で『女』として見た事は一度もなかっただろう。また、咲達と一緒で、ある意味妹みたいな感じだ。だから今更恋人とかそういった相手として見るというのは中々難しい。

 あいつが凄く良い奴なのは身に染みてわかっているが、それとこれとは話は別だ。

 

 頭の中で今までの事を踏まえてそう考えていると『おう、どうした?早く話せ』と言わんばかりの表情でこちらを見ているハギヨシに気づく。

 まあ、別に隠す事でもないかと思い話すと、ハギヨシはそうだろうな、とばかりに頷いていた。

 

 

「なんだよ?」

「いえ、なんでもないですよ。ただ、そういった可能性もあるのだと、頭の片隅でいいので置いといてください」

「あ、ああ……」

 

 

 結局ハギヨシが何を言いたいのかは具体的には分からなかったが、言われた通り頭の片隅に置いておくことにしよう。

 昔からからかわれる事は多いが、その反面こういった真面目な問題でハギヨシのアドバイスというのは役に立つ事は多かったからな。心に留めておこう。

 

 それから適当にお互いの近況をつまみに酒を進める。先日会った三尋木の事や他の友人の結婚についての話題などもあり、中には連絡を取り合っているうちに話した事もあったが、それでも実際に面と向かって話すとより内容も掘り下げられ話が盛り上がるものだ。

 その中でも特に盛り上がったのはやはり麻雀部の事だった。

 

 

「そっちの調子はどうだ? 大会まで一カ月を切ったが」

「万全といっていいでしょうね。昨年逃した事もあって全国優勝を目標により練習に力を注いでいます。後はそちらの事もありますし」

「ん? ああ、うちが団体戦にも出ること伝えたのか」

「ええ、竹井様達の実力もわかっていますし、どうやらお嬢様としてはそちらに入学した原村様が気になるようです」

「へぇー龍門渕さんがねー」

 

 

 恐らくだが自分より目立って羨ましいとかそういう事だと思う。昔からそういう子だったし、苦笑いをしているハギヨシの表情からも大体はあっているのだろう。

 

 和は昨年のインターミドルチャンプだからそういった取材が来る事もあったし、長野の県大会では昨年の優勝校の龍門渕とは別の意味で注目の選手だろう。龍門渕さんも十分目立っていると思うのだが、それでも羨ましいのだろうな。

 

 

「これは強敵になりそうだな。だけど言っておくが勝つのはうちだぜ」

「勿論こちらも負けるつもりはありませんよ」

 

 

 立場は多少違うが、自分の教え子たちの勝利を望み、顔を見合わせ笑いながらグラスを傾ける。

 その後俺たちはしばらく店で飲み続け、途中で他の友人達も合流するとそのまま朝までかつての学生気分で盛り上がり、次の日にはいつも通り二日酔いに悩まされることなった。

 

 ちなみに後日、誘ったけど仕事で来られなかった三尋木からグチグチと文句を言われたのもいつも通りであった。

 




 原村父はツンデレである。

 そんなわけで野郎だけの誰得な現代編九話でした。
 とはいえ麻雀部の顧問ならばのどっちの転校については避けては通れない道ですので、この話は最初から是非やりたいと思っていました。
 原作では原村父が実際どう考えているのかはわかりませんが、こういう考えもありかなーと思いました。友達を馬鹿にしたら反発されるのなんて普通に考えたらわかりますしね。

 そしてなにやらお節介なハギヨシ。
 といっても別に京太郎と咏ちゃんを無理にくっつけたいというわけではなく、二人の関係を踏まえ、未だにレジェンドの事を引き摺っている京太郎に別の道を考えたらどうかという親友に対するお節介や思いやりなどからです。


 それでは今回はここまで。次回もよろしくおねがいします。

 キャラ紹介現代編に【ハギヨシ】を追加しました。

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