君がいた物語   作:エヴリーヌ

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和「出番です! 約8か月ぶりの出番です!」

まこ「おう、メタ発言やめんさい」



10話

 五月も終わりに近づいた休日。本来なら学校の記念日のおかげで三連休となったので、家でグースカ寝ていたいところだが、教師という職業柄そうもいかず俺は学校へ来ていた。

 

 普段とは違い車で来たため移動時間そのものは短かったが、用意に手間取ったのもあってか待ち合わせ時間には間に合ったが、校門前に着くころには既に麻雀部のメンバー全員が揃っているのが見えた。

 四人の前で停まり運転席から降りると、思い思いの表情で迎えてくれる。

 

 

「おう、悪い待たせた」

「須賀先生、おっそっーい。これがデートだったら帰ってるわよー」

「待ち合わせ時間には間に合っとるんじゃから問題なかろ」

「全く……折角のタコスが冷めちまうじょ!」

「優希ちゃん車の中で食べる気なの?」

「没収です」

「なにぃー!?」

 

 

 その場で竹井達に謝りながら話していると、同じ様に後部座席から降りてきた咲が自信満々にポーチを掲げる片岡に驚き、咲と話している隙に和が片岡の手からポーチを奪う。

 ナイスだ和。流石に密閉空間の車内で食われるのはたまったもんじゃないからな。片岡には悪いが我慢して貰って、向こうについてから食べてもらおう。

 とまあそんな漫才はさておき、一応準備はできているかを確認する。

 

 

「さて、時間もないし直ぐに行こうと思うけど忘れ物はないか?」

「んー? 大丈夫そう「 あ、私トイレ」 うひぁぁぁっ!?」

 

 

 自分の荷物を見降ろし、他の皆のことを見回してから問題ないと言おうとした竹井を遮る声。それは俺が今降りてきた運転席の方から聞こえてきたもので、そいつはシートベルトをはずして助手席から体を伸ばし、運転席の開いた窓から顔を出していた。

 

 

「み、み、三尋木プロ!?」

「おっすぅー」

 

 

 驚く竹井に三尋木は片手をあげながらダルそうに返事を返す。

 竹井からすればここにいる六人以外に誰もいないと思っていたのだろうからいきなり聞こえた声に驚くのも無理ないだろう。その上に三尋木ともくれば驚きも二倍か。

 同じように染谷達もポカーンとしており、咲も家を出る前に同じような状態であったからか苦笑ぎみだ 。

 

 

「ああ、竹井達には言ってなかったが今回こいつも参加するからよろしく頼む。あと今日は学校が閉まってて入れないから、近くのコンビニまで我慢しろ」

「うぇーい」

 

 

 竹井達と三尋木の両方にそういうと、それを聞いた三尋木はささっと助手席に戻っていく。

 昨日も親父たちと遅くまで飲んでいたみたいだし、まだ朝早い時間帯なのもあって眠気が抜けきっていないのだろう。というか子どもじゃないんだからトイレぐらい家出る前に済ませておけよ。

 呆れた視線を三尋木に送りつつ、竹井達の方へ振り替えると未だ固まっていた。

 

 

「あー……須賀先生。なんとなく予想はつくんじゃが、なんで三尋木プロまでここにおるんかの?」

「ああ、多分染谷の思っている通りで、俺だけじゃ不安だから指導役で来てもらった。問題ありそうか?」

「いや、全然ないんじゃが、プロが何日も抜けてええんか?」

「まぁ、暇だって言ってたし大丈夫だろ。気にするな」

「了解じゃ。にしてもあの恰好は?」

「ん? ああ、一応有名人だから変装だ」

 

 

 暇という一言で染谷はなんとなく納得したらしい。実際三尋木はゴールデンウィークで休みを取れなかった分どこかしらで取るつもりだったらしく、今回の話をしたら自分も付いていくと言い出したのだ。

 こっちとしては以前よりも大会に力を入れなければならない理由もできたのでうれしい誤算であった。

 まあ、こいつらに事前に知らせておかなかったのはそっちの方が面白そうだという話なのは決して口には出さないがな。

 

 そして染谷が指摘した通り、今の三尋木は麻雀プロだとバレない様に普段と違い、洋服を着て伊達眼鏡をかけ、長い髪を後ろで一つに束ねている状態だ。普段がアレなだけにこの程度の簡単な変装でも周りからはバレなく、出かけるときはこのような格好をする場合が多い。

 

 ちなみに前回麻雀部に顔を出した時も駅まではこの格好で来て、その後お袋に連絡を取っていたらしく、それからうちで着替えて学校までまた送ってもらったらしかった。

 なんでそんなめんどくさいことをしたのか理由を聞くと、第一印象が肝心だと言っていた。

 

 

「まぁ、詳しい話は後にしてさっさと行くか」

「お、おおー!」

 

 

 細かい話をしていると出発も遅くなるので手を叩き、注目を集めてからそう告げると驚きで固まっていた片岡達もようやく動き出した。

 そして後ろの扉を開き、全員から荷物を受け取りながら詰め込む。短い期間だが、流石女子。男とは違い荷物も多めだ。

 

 その後、全ての荷物を積み終え、全員が車に乗り込んだのを確認してから俺も運転席に戻り、車を走らせる。

 

 ――さて、それじゃあ二泊三日の強化合宿に行きますか。

 

 

 

 

 

 車を走らせること三十分。時期や場所がら渋滞に嵌まるという事もなく、途中三尋木の為にコンビニに寄ったので時間を食ったが、俺達を乗せた車は順調に走っていた。

 

 ちなみに今日俺が運転する車は近くでレンタルしたものであり、全員が少しでも楽に乗れるようにとうちでいつも使っているものよりも大きなタイプを選んで借りてきた。座席は三列あり、一列目に運転手の俺と助手席の三尋木。二列目に上級生の竹井と染谷。三列目に咲、和、片岡の一年トリオだ。

 

 隣が三尋木なのは、見た目はともかく大人の三尋木が混じるとあいつらも落ち着かないであろうという判断からだ。そしてそれを見越したのか前の列に近い二列目には上級生の竹井達が座っている。

 また、その後ろでは咲達が女子高生らしく先ほどのコンビニで買ったお菓子で騒いでおり、竹井と染谷も向こうに着いてからの予定を話していた。

 

 一方、運転手が退屈しないように話題を振る役目があるはずの助手席に座る三尋木は、昨日の酒が抜けていないのと寝不足で未だにローテンションであった。酒には弱くはないが、寝不足とのコンボは中々に効くようだ。とはいえそれもそろそろだろう。

 横目で見ると、袋の中をガサゴゾと探り、先ほどトイレに行ったついでで買った商品を取り出している。そして手に持っているのは、酒を飲んだ次の日に良く効くというドリンクだ。

 

 

「………………………………よし! 目醒めたぁっ!」

「おはようさん」

 

 

 両手を上に挙げながらそう宣言する三尋木の一応返事を返しておく。というか大声出すなよ。後ろの全員が何事だって感じで見てるだろ……。

 ミラー越しに映る皆の顔を覗いてため息をつく。全く……いくつになっても変わらないなこいつ。この前ハギヨシにあった時に色々言われたが、やっぱそういう対象には見れねーな。

 

 

「わっかんねー。ため息なんてついてどうしたのさセンパイ?」

「いや、なんでもねーよ。というか酒飲みすぎ。一応客って立場だけどこいつらに教えるのに期待してるんだから、頼むぜホント」

「大丈夫大丈夫、任せとけってぇ。それに飲んでたのも、先週私を除けものにしてセンパイ達だけで集まってた上に、昨日だって私を放っておいてさっさと寝ちまったからじゃんか」

「誰かしらの予定が合わないのは良くあることだろ。それに今日運転するんだから酒が残らないように早めに切り上げなくちゃいけないんだから遅くまでは飲めねーよ」

「そこは気合でなんとかなるっしょー」

「無茶言うな……ん?」

 

 

 親指を立てながらウインクをする三尋木。容姿的にも似合うのが腹立つ。

 すると前を見て運転しながら三尋木と会話をしていたら、肩のあたりに軽く振動が伝わってくるのを感じた。

 

 俺の真後ろに座っているのは竹井だから、体を動かしてぶつかったのだろうか?と思いきや続けて振動が伝わり、信号でちょうど停まったのもあって何かと思い振り向くと、何か言いたげな顔をしている竹井と目があった。

 

 

「どうした?」

「いえ、さっき先に寝たとか三尋木プロが……」

「あ? …………ああ、そういうことか。今日の事もあって早く出るからこいつには昨日うちに泊まってもらったんだよ。言っておくが親父たちもいたし、一緒に飲んでただけだからな」

「何も言ってないんだけどね」

「言わなくてもわかるわ」

 

 

 そろそろ信号が替わると思い、話を切り上げて視線を戻すと、横の信号が点滅している所だった。他に車はあまり見えないとはいえ気をつけないとな。

 それに昔からこいつがしょっちゅううちに泊まっている事を知られたりしたら凄くめんどくさそうだし、適当に流しておこう。

 

 

「しかしのう……三尋木プロもそんなことしてゴシップは大丈夫なんじゃろか?」

「んー別にセンパイの家に泊まるのは昔からだし今更だしねー」

 

 

 おい!

 

 

「む、昔からぁ!? も、もしかして何度も須賀先生のうちに泊まっとるんか?」

「ん? そうだよ。もしかして初耳だったり?」

「え、ええ……ちゅうことはことはこの前ん時も……」

「いやー、あん時は次の日も頭痛くて帰るのがダルかったから二日続けて泊まるか悩んだっけ。やっぱこっちに引っ越してこよっかなー、のえっちや桜にも会いやすくなるしー」

 

 

 隠そうとしていた事を三尋木がベラベラと話すせいで、染谷も予想以上の話にどう反応したらいいんだという感じの雰囲気を出し始めている。俺も話を遮りたかったが運転中という事もあり、そちらにあまり意識を向けられないでいた。

 

 というか三尋木、引っ越したいって言ってもチームの看板選手がそう簡単に移籍できるわけがないだろう……。

 ちなみに三尋木が名前をあげた二人は俺達の友人の事で、三尋木とは同い年ということもあって昔から良くつるんでいる相手だ。

 

 そんな他愛のないことを考えながらさりげなくチラッと見たミラー越しに映るのは、だらしない大人達だと言わんばかりの表情をしている生徒たちであった。

 だよなー、立場が逆だったら俺もそう思うわ。別に顧問がプライベートで何をしていようと構わないけど、せめて隠して欲しいよな。全員女子でお年頃だからこういった話には余計に色々言いたい事もあるだろうし。

 

 

「はぁ……言っておくが、こいつが昔から泊まっていたのも、うちにそれなりに広い客室があるからだぞ。だから三尋木以外にも泊まるやつは多かったし、向こうに越してからは戻ってくる時の宿代わりにもしていたからな」

 

 

 せめてものフォローとして説明をするが、聞いている方からすれば苦しい言い訳に聞こえるだろう。

 

 確かに中学時代は溜まり場として三尋木以外の他の女子も泊まりに来ていたが、その場合は複数人が当たり前で、三尋木みたいにピンで泊まる事はなかった。

 当時は全然気にしていなかったが、親がいるとはいえ女子一人が男子の家に泊まるって確かに問題あったよな。まぁ、ホント今更だし、当人達が気にしてないから別にいいんだけどな。

 とはいえ、部外者に話すとこうなるから言葉は選ばなければならない。昔、晴絵に話した時も暫く拗ねられて大変だったし。

 

 

「ほんと仲良いんですね……」

「実は付き合ってたりするのかー?」

 

 

 後ろの座席から呆れた和の声と面白がっている片岡の声が聞こえる。

 真面目な和からすればだらしなく映るよなそりゃ。あと片岡はめんどくなりそうなこと言わんでくれ、案の定変な空気になってるし。

 

 

「センパイとねー……実際に付き合ってみる? 知らんけど」

「おう、三十過ぎても独身だったら貰ってくれ。ハギヨシ仕込みの家事能力もあるからお買い得だぜ」

「ふむふむ、専業主夫希望かー。私は味にはうるさいぜぃ」

「それは昔から知ってるってーの」

 

 

 三尋木の軽口にのり、お互いに適当にボケを交えながら話す。

 正直いきなりこんな事を言われていたら以前の俺なら焦っていただろうが、先日のハギヨシとの会話で一応三尋木の事を考えていたから普通に返せた。

 

 まあ、今回は冗談で言ったけどいつまでも一人身ってわけにもいかないし、家の事もあるから将来的には結婚する必要もあるだろう。だから現状そういった対象とは見れないが、ハギヨシの言った通り、そういった選択肢もありだろうな。

 とはいえ、俺は兎も角こいつはいつまでも一人身ってこともないだろうし、あり得ない話だ。この前は出会いが無い的なことを嘆いていたが、こいつなら直ぐに見つけられるだろうま。

 

 運転をしながらそんなあり得なさそうな未来を考えていると、ミラー越しにテンパっている咲が見えた。

 

 

「きょ、京ちゃん結婚するの!?」

「うわー、車内でプロポーズとかマジひくじぇ」

「……」

「いやいや、冗談だから!? というか話が飛びすぎだ」

 

 

 一年トリオが騒ぎだしたので慌てて釈明をする。竹井達は最初から冗談だとわかっているからか静かに聞いていただけだが、若いこいつらには通じていなかったようだ。

 

 

「こんなこと言ってますけど、どう思います三尋木プロ」

「女の敵なんじゃね? 知らんけど」

 

 

 訂正。上級生もしっかりと話をこんがらせようとしてくれていました。

 

 

「三尋木ぃ……」

「冗談だって。センパイが未だアレなのはわかってるって」

「……」

 

 

 ちょうど再び信号で止まったので、話をややこしくするなという気持ちを込めて視線を向けると、逆に気を使われるような目で見られた。まあ……晴絵の事だよな。

 それに対し、なにか言うのも変だったので視線を戻し、信号が変わるのを待ってから黙って再び車を走らせる。それから暫し沈黙が続いたが、竹井達が話題を変えたおかげで直ぐに車内ははしゃいだ声で溢れるようになった。

 

 まったく――生徒に気を遣わせてどうするんだろうなー俺。

 

 

 

 その後数十分程走らせていると、今日から泊まる宿にようやく到着した。

 

 

「あー重いなぁー、わかんねーけどどこかのイケメンな先輩が持ってくれないかなー」

「さっ、行くぞ」

「無視かーい」

 

 

 アホなことをぬかす三尋木を放っておいて荷物を持ち、咲たちを引き連れて宿へと向かう。

 自分の荷物だけじゃなく、部員全員で分けてあるとはいえ牌譜などの部活用の荷物もあるから余計なものを持つ余裕はないのだ。

 

 それから中で受付をし、鍵をもらって部屋へと向かう。

 今回借りたのは生徒用と教師用の二部屋だ。練習時に俺が女子の部屋に行くわけにもいかないので、教師用の部屋も合わせてどちらもそれなりに広めだ。

 

 

「こっちがお前達の部屋だ。鍵は竹井がしっかり管理しておけよ」

「大丈夫だって」

「それじゃあ荷物の整理もあるし、少し休憩時間取るから三十分経ったらこっちの部屋に来い。昼飯前に色々と決めよう」

「わかったわ」

 

 

 長時間ではないが全員車に乗って疲れていると思い、話し合いなどは後回しにして持っていた隣の部屋の鍵を皆の代表として竹井に渡す。そしてこんな所で泥棒などないだろうが、万が一を考えて念を押しておく。

 竹井は心配しすぎだと言わんばかりの表情をしているが、一応顧問や部長としての責任もあるからしっかりしてもらいたい。なんか問題が起きれば俺の責任になるし、なによりこいつらも大会に出られなくなるかもしれないからな。

 

 

「同じ姿勢で座り続けるのは疲れたし、さっさと入って座ろうか」

「座ってて疲れたのにまた座るのかよ」

「なら寝ようかなー」

「昼前だっつーの」

 

 

 お決まりのごとくボケる三尋木の突っ込みつつ扉を開け中に――

 

 

「ちょちょちょっ!? 待ってくださいっ!?」

「うお! どうした和」

 

 

 皆と別れて自分達の部屋に入ろうとした俺達に所にいきなり和が割り込んできた。普段の冷静な和と違った様子に慌てる。いや、昔と違って今は結構大きな声を出す事多くなったっけか?今さらだったな。

 

 

「なんで三尋木プロがそっちの部屋なんですか!?」

「ん? ああ、後から連絡したら泊まれるけど部屋が取れなくて、しょうがないから俺と同室にしたんだよ。元々練習用に使うつもりで広い部屋だったから問題ないだろ」

「男女が同室というのが問題なんです!」

「京ちゃん流石にそれはまずいよ。こっちの部屋に入ってもらったら?」

 

 

 厳しい視線を向ける和に続いて咲も一緒になって抗議をしてきた。

 といってもな……確かに合宿をするのはこいつらの実力を上げるのが目的だから、三尋木と同室にして言葉を交わす機会が増えれば何かしら役に立つ事もあるだろう。

 しかし今回練習時間は多くあって話す機会も十分あるし、逆に部外者の三尋木が四六時中一緒だったらこいつらもやりづらいだろうし、落ち着く事も出来ないはずだ。

 

 それに俺としては合宿というものは実力を上げる以上に部活内のメンバーの結束力を深めるのが一番重要だと考えている。

 皆、既に仲はいい方だが、何かしらのイベントを体験させるなりしてより部員同士の結束を高める方がいいと思うから、部外者の三尋木が同室にいるのはあまりよくないだろう。

 ほら、修学旅行とかの夜って猥談なりして部屋の友人となにかしらの仲間意識が芽生えるじゃん。つまりそういうことだ。

 

 そんなわけでいくつか内容を誤魔化しながらも、あえて部屋を分けた方がいい理由説明すると、ようやく咲たちも納得してくれた。

 

 

「わかったよ。でも変なことしちゃダメだからね!」

「何を言ってんだかこいつは。さっきも言った通り三尋木とは何でもないし、生徒のお前らが隣にいるのに俺がそんな事をするような奴だと思っているのか?」

「うへぇ、ごへんごへん!?」

 

 

 あまりにも聞き捨てならなかったので手に持っていた荷物を下ろし、開いた両手で咲の頬を引っ張ってやる。そして咲の頬を引っ張りつつも抗議の視線を他の四人に向けると、全員がさっと視線を逸らした。

 

 まったく……言いたい事はわかるが、そうまで節操なしだとか思われるのは心外だ。

 これでも晴絵と付き合っていた頃は女性と二人きりになるようなことはなるべく避けていたし、別れてからも晴絵以外とそんな関係になったことはないんだぞ。

 

 

「ほ、ほら、須賀先生! 皆疲れてるし早く部屋に入りましょ!」

「そうだな、いつまでもこのままだったら邪魔だしな。よし、解散!」

 

 

 竹井の言う事も最もだったので、咲の頬から手を離して号令をかける。皆はまだ聞きたそうにしていたが、飛び火を恐れたのかそそくさと部屋の中へ入っていった。

 はぁ……やれやれ。

 

 

「騒がしかったねぇ」

「お前のせいでもあるけどな」

「わかんねー、何のことかさっぱりわかんねー」

 

 

 着いたばかりであり、練習もまだだというのに実に疲れた。まったく、この先どうなる事やら……。三尋木という追加要素があったとはいえ、教師という仕事は本当に難しいわ……。

 いや、ややこしくなった原因の半分以上は俺の責任か……後でなにかしたフォローをしておいた方がいいだろう。折角の合宿だし、あいつらには存分に活用してもらいたいからな。

 

 ――こうして、教師生活の中で初めての合宿らしく初日の朝から前途多難なのであった。

 




 目指せ、週刊君がいた物語! なお、定期的に月刊になる模様…。

 そんなわけで合宿編の現代編十話でした。咏ちゃんが付いてくるまで予定通り、車の中での会話が長引いたのは想定外でした。


 それでは今回はここまで。次回もよろしくお願いします。


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