君がいた物語   作:エヴリーヌ

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[壁]久「どう? 聞こえる?」
[壁]優希「うーん……お、なんかガサゴゾ始めたじぇ! こいつはまさか……」
[壁]咲「SOA!」
[壁]和「ちょ!?」


まこ「アホなことしとらんで練習の準備せえや」



11話

「へぇ~、中々いい部屋じゃん」

「まぁ、悪くはないな」

 

 

 咲たちと別れてから部屋に入って中を見渡すとそれなりに整った装飾やその広さに感心する。部費や私費で泊まることを考えてあまり高いところは選べなかったが、これなら悪くないだろう。さすがに同じ旅館といえども松実館程ではないが値段相応だ。

 そして部屋には宿として必要なものが揃っているだけではなく、片隅には事前にレンタルして運んでおいてもらった雀卓もしっかりと用意されていた。荷物を置いてから近寄って少し様子を見てみるが問題なさそうだ。

 

 

「おーまっじめー」

「顧問だからな」

 

 

 部屋に備え付けられている座椅子に座り、鞄から取り出した扇子で仰ぎながらからかってくる三尋木にそう返しつつ部屋の他の設備を見ていく。折角こんなところに来たのだから畳の上に寝っ転がって昼寝でもしたいが、さっさとやることをやらないとあいつらが来ちまうからな。

 

 それから荷物を片付けて一息つくころには予定の三十分などあっという間に過ぎてしまい、時間通り竹井達がこちらにやってきた。

 

 

「おっじゃまっしまーーーすっ!」

「部長。周りの迷惑になりますから声を落としてください」

「なんだ中はこっちと変わらんなー」

「いや、そりゃそうじゃろ」

「あ、でもこっちとは掛け軸が違うよ」

 

 

 入ってくるなり大声を上げたり部屋のなかを見回したりと騒々しい竹井達。まぁ、竹井なんかは三年にしてようやく行くことができた合宿ということでテンションが上がるのも無理はない。  

 しかし和の言う通り他の客もいるのだし、いくら部屋と部屋の間に壁があるからとはいえ少しは控えさせた方がいいだろう。

 

 

「ほら、話し合いするんだから早く来い」

「はーい」

 

 

 とはいえ、口うるさく言うのも鬱陶しいだろうし、少しすれば落ち着くだろうから説教は横に置いて、未だ部屋の中をキョロキョロ見回している竹井達を促してさっさと座らせる。さすがに七人全員分の椅子はないので座布団だが問題ないだろう。

 そして全員が移動している間に鞄から資料を取り出し、皆と手分けして持ってきた牌譜などを受け取りながら話を始める。

 

 

「さて、今回の合宿の目的は大会前の追い込みってことだけど、俺の目から見ても今までの部活もあってある程度はみんなも仕上がっていると思う」

「ほうほう、この前は随分ボロがあったけどしっかりと練習したんだ?」

「ええ、もちろんです」

 

 

 俺の言葉を聞いて意地悪げな笑みを浮かべる三尋木の質問にも堂々と返す和。

 以前三尋木が来たときに「ムラがありすぎてミスが多い、本当にミドルチャンピオンなのか? わかんねー」ってボロクソに言われていたからな。あれからいろいろ特訓したし、そこらへんもある程度克服できたと思う。

 そして他のメンバーも和と同じようにダメ出しと課題を出され、長所短所それぞれを伸ばしたり埋めるようにしてきた。

 だから子どもみたいな容姿に反して意外にも厳しい三尋木にも満足のできる仕上がりになっているだろう。

 それはさておき、実際に打つ練習は後の事なので話を続けることにする。

 

 

「とまあ、そんな感じだから今回は県大会に出る対戦校の対策が主になると思う。後は団体戦のオーダー決めかな」

「なんだ、まだ決めてなかったのかい?」

「一応俺なりに考えてはいたけど、やっぱプロのアドバイスも必要かと思ってな。だから頼むぜ三尋木プロ」

「へぇーうれしいこと言ってくれるじゃん。それじゃあアドバイスの前に顧問であるセンパイの意見を聞いてみようか」

「そうだな」

 

 

 手に持っていた扇子で口元を隠しながら目を細める三尋木や皆に向かって、予め作った各校の資料などを渡しながら俺が考えたオーダーを発表する。

 普段とは違う俺の真面目な表情につられて三尋木を除く全員が顔を引き締めているため、似合ってなくて思わず笑いそうになるが堪えて話を始める。

 

 そして俺が考えたオーダーというのは先鋒に片岡、次鋒に染谷、中堅に竹井、副将に和、大将に咲というものだ。

 

 まず一番悩んだ先鋒に関しては、各校のエースを相手にするということから同じくエースを添えるか、逆にガチガチに守りが固いのを置くのが定石なので、ここでは前者を取ってうちの中でも火力が一番高い片岡を持ってきた。片岡の火力なら他校のエースにも見劣りはせず、十分稼いでくれるだろう。

 また、後になれば他校との点数差から自由に打てなくなるし、自由奔放な片岡には他の位置が難しいのも理由であった。

 そして問題としては南場に入ると集中が切れて火力が落ち、防御もおざなりになることだが、以前に比べると少しずつだが改善されているため悪くはないだろう。まぁ、そこらへんは他のメンバーからフォローも必要だろうから気をつけねばならないな。

 

 次に次鋒と中堅を任せる染谷と竹井だが、これは二人が一年トリオと違って去年も大会に出ていることなどの理由で安定感があるため選んだものだ。

 次鋒と中堅というのは試合の流れから立ち回りが難しい位置であり、特に中堅あたりだと下手をすると他校が飛んで終わりということもあり得る。だからうちの中では胆も座っており、視野が広い上級生二人をこの位置に添えたのだ。今までの他校でもこの位置にはベテランを置くことも多いしな。

 ただ、染谷はともかく竹井は土壇場になると緊張しやすくもあるので、片岡とは別にフォローが必要だろう。

 

 最後に副将と大将に選んだ和と咲だけれども、これは前回の県大会優勝者である龍門渕を意識した組み合わせだ。向こうは去年と同じく後詰めにはあの二人を持ってくるだろうから、ここはあえて似たようなタイプをぶつける形にしておいた。

 あの二人相手だと竹井と染谷でもかなりの苦戦を強いられるだろうし、向こうは竹井達の手もある程度分かっているだろう。だから敢えて情報を集めにくい二人をこの場においたのだ。

 また、この順番なのは和がネトマで同じデジタルタイプの相手に慣れていることと、咲も照相手にオカルトとの対戦経験があるのでそれを活かした形とした。

 だから咲には初めての県大会で大将という大役を押し付けることになってしまったが、ここは我慢して頑張ってもらいたい。可愛い子は谷に落とせっていうからな。うん、問題ない。

 

 資料を見ながら長々とこうなった説明を終える。それなりに長く話し喉が乾いたため、未だ手元の資料に目を通している皆を一瞥してから、部屋に置いてあったポッドにお茶を入れに行く。

 ついでなので自分の分だけでなくみんなの分も入れる。夏に近づき気温も上がってきたが、それでも今日は少しだけ肌寒いのであっついお茶でも問題ないだろう。

 

 熱いお茶といえば宥を思い出すが、あいつ今でもあの体質は変わってないのだろうか。冬ならともかく夏にあいつの部屋に入るのは中々キツかったな……クーラーなんてつけられなかったし。

 

 そんな懐かしい記憶を思い出しながらお茶を入れて皆のところに戻ると、ある程度読み終えたみたいで皆顔をあげていた。表情を見るとどうやら内容に納得している者が多いみたいだが、中にはこの世の終わりのようなものをしている者もいた。まぁ、わかりやすいので敢えて言わないが。

 

 

「悪くないんじゃね? 奇を狙うより正攻法って感じで。ぶっちゃけつまらんけど」

「ええ、私でも同じにしたと思うわ」

「ありがとうよ。三尋木は後で屋上な」

 

 

 プロの三尋木と部長の竹井から問題なしとの太鼓判を押されてほっと一息つく。

 試合に出ない第三者からの客観的な目ということでそれなりに考えたものだから自信はあったけど、それでも自分より実力がある者から認められるかわからないからよかった。

 しかし一方で不服満々といった感じに異を唱えるのもいたが。

 

 

「きょ、京ちゃんっ、私が大将なんて無理だって……」

「理由は?」

「だ、だってやっぱり大将みたいな役は部長なんじゃ?」

「ほうほう……部長の意見は?」

「全然OK!」

「えー……」

 

 

 問題ないとばかりにウインクをする竹井に咲が戸惑いの声を上げる。確かに咲の言いたいこともわかるが、贔屓目なしで考えた結果だし納得してもらいたい。

 

 ちなみに他に隠してある理由もあり、先日照から電話で白糸台の先鋒を務めるという話を聞いたので、もし全国にいったときに敢えて二人が戦わない位置に置いたのだ。

 これには未だに二人の間では険悪なムードが漂っているので、大会で直に戦わせるのはやめとこうという危機感からのものだ。そもそもケンカの原因が胸の大きさの事というしょうもない理由なので、あとから別で和解させる場を作ればいいだろう。俺が言うのもなんだが、昔から実にめんどくさい姉妹だ。

 その後も渋る咲だったが、周りの説得もありなんとか大将を受け持ってくれることとなった。プレッシャーもあるだろうが、人見知りを治すいい機会なので頑張ってほしい、

 

 そのから結局個人的に不安だったオーダー決めもすんなり終わったので、次に龍門渕や風越などの有力選手がいる学校を中心に対策を練ることとなった。

 これは主に一年トリオに向けたものであり、整理した牌譜を見ることもあれば、竹井や染谷が実際に対戦した相手の話を聞かせるという形となった。

 その中でも際立ったのは、やはりある二年生の事だった。

 

 

「しっかしホントに天江衣って人かなりやばいじぇ……牌譜も意味わからんし。部長たちから見て打ってみたらどんな感じだったんだ?」

「そうね……今まで色んな相手と打ってきたけどやっぱり別格だったわ。まさに魔物っていうべき強さだったわ」

「じぇじぇ……じゃあ咲ちゃんとはどっちがやばい?」

「うーん……いい勝負ね、きっと」

「ええぇっっ!? なんでぇ!?」

「どうどう」

 

 

 先ほどまで魔物呼ばわりしていた相手と同格扱いされて驚きの声を上げる咲。個人的には間違ってはないと思うのだが、当人としては不服なのだろう。頬を膨らませる咲を和が宥めているが、扱いが動物に近いのは触れないでおこう。

 

 

「ちなみに三尋木プロはどのへんじゃ?」

「お、そりゃ聞いてみたいなぁ」

「ちょっ! ええぇっっ!?」

 

 

 まさかの染谷からのキラーパスに、竹井が先ほどの咲と同じように声をあげる。助けを求めるように周りを見回すが、咲たちは巻き込まれたくないのか、先ほどまでと違いいつの間にか手元の牌譜に視線を落としていた。

 まったく、仕方ないな……。

 

 

「三尋木はどっちかというと大魔王って感じじゃないか? いや、それより上の邪神あたりかもな」

「誰が女神だって? 照れるなぁ」

「すごい聞き間違いだな」

 

 

 咄嗟のボケにうまく乗ってきてくれる三尋木。視界の端では竹井が胸をなでおろしているのが見えた。まったく、染谷もここぞとばかりに遊ぶのはやめてくれ。後でめんどくさくなるのは俺なんだから。

 そう思っていると、先ほどの会話からふと疑問に感じたことがあり三尋木に聞いてみることにした。

 

 

「なあ三尋木。お前から見て天江衣はどれぐらいの強さに見える?」

「んー……まあそこそこじゃね?」

「マジか。お前がプロで実力があるのはわかるが、それでも天江はそこまでの雀士じゃないってか?」

「そりゃプロの中でも上位陣でかつ女神だからさ」

 

 

 やばい相手だといわれると予想していたのだが、それほどじゃないと言う三尋木に少し拍子抜けした。天江は去年の成績もすごいし、以前のプロアマ交流戦で優勝しているぐらいだから、いくらトッププロでも天江の実力は凄いと感じてもおかしくはないのだが。

 そう考える俺の思考が読めたのか、苦笑しながら「仕方がないなー」と言わんばかりの表情で説明を始める。

 

 

「んー、直接会ったことはないから正確なことはわからんけど、確かに天江衣のオカルトは強いし、実際に交流戦に出たプロ相手に勝っているから相当なもんだと思うよ。だけどまだまだ技術的には未熟だし、優勝したって言っても私を含めて大体のプロは忙しいから当時の交流戦にほとんど出てなかったからね。それにある程度アマに花持たせるのが交流戦の意義でもあるから、あの時は結構手を抜いている人も多かったんじゃないかな? だから私から見れば、天江衣の実力はまだまだ学生の域を出ていないし、言われているほど強いとは思わないよ。知らんけど」

 

 

 会ったこともない相手に対して実に手厳しい評価であったが、確かに三尋木の言うことももっともであった。

 学業などに時間を割かなければならない学生と違って、プロは麻雀と向き合う時間が半端ないからな。以前よりも高レベルな相手が周りに多いために、挫折もあるが実力が伸びやすいと聞くし、こいつも七年近くその世界にいるのだから、そりゃ年若い学生の雀士は未熟にも見えるだろう。

 

 実際に以前うちで飲んでいる時に話のタネで三尋木の学生時代の記録を見させられたが、昔よりましになったとはいえ、未だ未熟な俺から見ても随分と実力が違っているのは感じたぐらいだからな。プロと学生の力の差はやっぱ大きいか。

 それから一応納得する俺や周りに対しさらに詳しく説明を続けるために三尋木が置いてある茶を一度飲んでから話を続ける。

 

 

「ただ、いくら手を抜いてもプロだし、それに勝てるってことはそこに近い実力はあるってことだよ。それに私が知ってるのも去年の天江衣だからねぇ……去年の時点で他よりマシとはいえ力に振り回されてたけど、あれだけ打ててたんだから今年はもっと手ごわいと思うよ。ハギー先輩も近くにいるし」

「ああ、あいつもマメだしな。しっかし説明してくれるのはいいけどお前はこいつらをビビらせたいのか安心させたいのかどっちなんだよ」

「んー、両方? まぁ、プロと違って経験もまだまだ浅いからつけ入る隙は全然あるし、同じ学生だあらそこまでビビる相手でもないよーってことさ」

「そういうもんか?」

「そういうもんじゃね? わっかんねーけど」

 

 

 横目で竹井達の方を見ると、釘を刺すような俺たちの話を聞いて何とも言えない表情をしていた。

 まぁ、確かに三尋木の言う通りか、下手に臆しても楽観視してもいいことはない。対策を練るのはいいが、考えすぎるのも問題だ。なんかいい方法を後で考えよう。

 そして話題の中に出てきた、ここにいない親友の頑張っている姿を頭に浮かべながらエールを送る。きっと今日も目立ちたがりやなお嬢様に振り回されているだろうな。

 

 その後、話も一段落したということで三尋木が体を伸ばしながら立ち上がる。その様は本人の性格もあってかまるで猫のようだ。

 

 

「さーて、じゃあお昼までに少し時間あるし打ってみようか。相手はそうだなー……よし角ドリルにボインにタコスンが入りなー」

「角ドリル……」

「ボイン……」

「タコスン!」

「毎回あだ名変わるのね……」

「いや、ぶっちゃけ適当に言ってるだけで、きっと前のも覚えてないぞ」

「ホントに今さらじゃが、プロって変人が多いのう……」

 

 

 戸惑う咲たちを引き連れて三尋木が雀卓へ向かい、それをアホな話をしながら見送る俺たち。

 しかし染谷もキッツいなー、まあ三尋木からそういったプロの話を聞く限り、多少の私見は入っているのだろうが間違ってなさそうだけどな。

 それから時間もないので半荘を1回だけということで打ち始め、東場が終わるころになると咲たちは三尋木にしっかりと特訓の成果を見せつけていた。

 

 

「んー、やっぱセンスがいいねぇー。これなら県大会優勝も夢じゃないと思うよ」

 

 

 珍しい三尋木の褒め言葉に咲たちも頬を緩めている。散々色々言われた相手からの賞賛の言葉というのは心に響くものだからな。

 しかし、長い付き合いの俺は知っている。今のあいつの表情がしょうもないことを考えている時の顔であると。

 

 

「さーてと――――それじゃあ少し本気出すか」

 

 

 三尋木はそういうと手に持っていた扇子を一度閉じる。

 そして――再び開いた時には空気が変わっていた。

 

 

「え……なにこれ?」

「???」

「はえ?」

 

 

 同じ卓を囲っていながらも突然のことに何が何だかわからないという表情をしている三人。

 しかし傍で見ていた俺たち三人には直にコレに触れた経験があったため、例え直接卓についていなくてもコレがなんなのか理解できた。

 

 

「これって……天江さんの!?」

「そう、正確にはあれの真似したパチモンだね。同じものはできないけど似たようなものは再現できるさ」

「こりゃなんちゅう……」

 

 

 あまりの出来事に言葉を失う竹井と染谷。俺たちは以前打ったこともあるためわかったが、確かにこれは天江衣のオカルトだ。ただ、雰囲気的には本人が言っている通りパチモンらしくどこか違っており、どこかチグハグであった。

 しかしそれでも他者に対するこの圧力は本物であり、実際に打ち始めた咲たちは先ほどまでと違いかなりの苦戦を強いられていた。

 

 

「しっかしまぁ、おまえってばとことんスゲえよなぁ……」

「はっはっは、これでもこいつで食ってるトッププロだからねぇ。経験の浅い学生の真似事なんて朝飯前なんじゃね? 知らんけど」

 

 

 この状況を見て無意識に思わず感心した声をあげると、それを聞いた三尋木が得意げな表情を浮かべながら胸を張る。先ほど言っていた通り本人からすれば学生の真似事なんか朝飯前なのだろう。きっと注文すれば咲や竹井の真似だって容易にしてくるだろうな。

 ちなみに軽やかに会話をしているにも関わらず、なおも辺りには重苦しい空気が続いている。きっとこの状況に並みの雀士ならば心折れているのだろうが、それでも咲たちは必死に食らいついていた。

 

 ちなみに和はペンギンのぬいぐるみであるエトペンを膝の上に置きながら打っているため、傍から見ると大変シュールな光景だが気にしてはいけない。

 以前竹井からの思わぬ提案でアレを始めたのだが実に不安だ。ルール上大会で私物の持ち込みは可なので、問題はないのだが不安すぎる。

 

 それから最後まで食らいついていた咲たちだったが、残りが短かったとはいえ結局一度もあがれずに終局となった。しかし……場を支配するだけではなく海底撈月まで真似るとか実際に本人と打っているようなものだろうなこれ。

 

 

「ノンノン、手加減しててもこの私が打ってるんだからパチモンでも本物より強いさっ!」

「心を読むなって」

「わかんねー、何のことかさっぱりわかんねー」

 

 

 先ほどまで全方位で向けていた威圧感を消して和やかに話しかけてくる三尋木に思わず苦笑する。

 周りからは色々と麻雀の事で持ち上げられているが所詮三尋木は三尋木だな。ホント昔からかわらねえよ。

 

 

「さて、どうだった?」

「うん……すごい大変だったけど頑張る!」

「そうか、その調子で行けよ」

 

 

 実際にこの能力を持つ天江と当たる咲の様子が心配になって顔を覗くと、予想と反して悲壮な顔はしておらず、先ほどまで抑えこまれていたのが嘘のように溌剌とした表情をしていた。

 昔から咲は内弁慶で引っ込み思案なところがあったが、それでも負けず嫌いでもあるので杞憂であったようだ。当初の麻雀部に入った理由はただの姉妹喧嘩であったが、入部してから色んな相手と打つのが楽しみになっているみたいでいい傾向である。

 そして今後を見据え張り切るのは咲だけではなく、他の二人も次こそは勝ってみせるという表情をしていた。しかしな……。

 

 

「勇みこんでいるとこ悪いが昼食だ。誰かさんが長引かせたせいで時間も押してるから早くするぞ」

「えー、私のせいか?」

「そりゃ毎回海底撈月で上がられてたら時間も食うだろ」

「わっかんねー」

「はいはい」

 

 

 恍ける三尋木をいなし、昼食をとるために皆に指示を出して動き出す。まぁ、なんだかんだで合宿らしいことはできたかな。

 今朝の事や初めて合宿ということでうまくやっていけるか不安でもあったが、これならなんとかやっていけそうだった。

 




 なんかもっともらしいこと言っているけど話半分な麻雀話の十一話でした。
 京太郎が顧問なため一応麻雀について話しているんですけど、ぶっちゃけ今回の話は自己満設定から来ているので深く考えてはいけません。本編自体京太郎が麻雀をしないので話の中心ではないですし。

 ちなみに一応強さの設定としては大体で下のように考えています。本編でこの設定が活躍することはあまりないでしょうが。


上位プロ>中位プロ>咲などの魔物レベルの学生≧下位プロ>大会に出る一般レベルの学生


 それでは今回はここまで。次回もよろしくお願いします。

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