君がいた物語   作:エヴリーヌ

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晴絵「あ、今年は勝利者インタビューなんかも載ってるんだ」

咲『レジェンドゴっ倒す』
照『レジェンゴ倒す』

晴絵「………………見なかった事にしよう」



17話

 県大会から二週間後。私たちはあの日話した通り他校との練習試合の為に他県まで遠征に来ていた。

 あの後、どこの学校と闘ってみたいかと議論を重ね、候補を絞ってから実際に連絡をしてみると、個人戦後なら是非にといくつかの学校から返事を貰うことが出来たのだ。

 

 いくら全国出場校とはいえ、ぽっと出の阿知賀が相手にされるか実は不安な所もあったが、その結果にほっと胸を撫で下ろすことが出来た。あれだけ啖呵を切った身としては駄目でしたでは済まされないからね。

 

 そんなわけで今、私たちは今日の対戦校である長野の龍門渕高校に向かっていた。場所柄どうしても遠いため、昨夜から途中休憩を挟みながらつい先ほど長野入りを果たしたところだ。

 四年ぶりに近いとはいえ、何度も通った道ゆえにナビを見なくても自分がどこら辺を走っているのかが分かるのは思わぬ貰いものであった。うん、懐かしいな。

 

 ちなみに移動手段は私を含め六人が乗れる少し大きめの車である。これは少しでも予算をかけない様にするための苦肉の策であった。

 だけどやっぱ長時間運転は腰が痛いね……こりゃ毎週にしなくてホント良かったよ。

 

 とまあそんな事を考えながらのんびり走っていると、後ろの方でもぞもぞと誰かが動く音が聞こえた。どうやら眠っているうちの誰かが起きたようだ。

 チラッとバックミラーを確認すると、しずが目をこすりながら体を起こしていた。

 

 

「うー……眠ぃ」

「おはよ。長野入ったよ」

「お? …………おーっ! ここが長野! …………うちとあんまり変わんないね」

「そりゃ北海道や沖縄みたいな極端ならともかく日本国内ならどこ行ってもそんなもんよ。流石に東京にでも行けば違うけど」

「ハルちゃんは東京に行ったことはあるの……?」

「まあね、インハイの時と学生時代に京太郎と旅行で何回か行ったかな。一応団体戦が終わった後の個人戦も見ていくつもりだから時間も空くし、観光も楽しみにしてな」

「ほんとっ!? やったー!」

 

 

 先に起きて静かに景色を眺めていた憧と灼も話に乗ってきたので、伝え忘れていた話をすると、中でも一際憧が喜んでいた。

 見た目通り、昔と違って女の子らしくなったからか若者が集まる原宿とかそこらへんに憧れを持っていたのだろう、憧だけに。

 

 

「寒……」

「…………そろそろ目的地に近づいてきたから準備しときな。可哀想だけど宥と玄も起こしといて」

「りょうかーい」

 

 

 聞かなかったことにして後ろで未だ眠り続ける二人をしずに起こさせる。向こうにつく前にどっかの施設で汗を流しておきたいしね。

 

 

「二人とも朝ですよー」

「ふへへぇ……師匠」

「あ、そこ駄目ですぅ……」

「しず、殴って起こしていいよ」

「いやいやいや……ほら、玄さん宥さん起きて」

「んぅ……」「はぅ……」

 

 

 聞き捨てならない寝言を吐く二人をしずに叩き起こさせる。その時に二人の長い髪が揺れたのがミラー越しに見えて、少しだけ羨ましかった。

 京太郎と別れてから切って昔みたいに短くしちゃったし、また伸ばそうかな……。

 

 

「あれぇ……? 京太郎さんは?」

「いないから」

「うちの旅館の主人になった師匠は?」

「ありえないから」

 

 

 寝ぼけているのかふざけたことを抜かす色ボケ姉妹にツッコむ。全くこの姉妹は……。

 いや、でも結構そういったのが似合いそうだよね京太郎。確か就活時期に松実さんから松実館に来ないかって誘われてもいたらしいし……まあそれはおいといて。

 

 

「ほら、そろそろ近くのお風呂入ってさっぱりしてから向かうから目覚ましときな」

「「はーい……」」

 

 

 仲良く返事を返したと思ったら、再び夢の世界へ旅立とうとする姉妹。全く……でもこういった所はやっぱり母親似だね。あれで露子さんもしっかりしてるようでどこか抜けてたからね……。

 ま、もう少し寝かせておきますか。

 

 

 

 

 

 その後、近くの温泉で汗を流してから龍門渕へと向かうと――

 

 

「はぁー……凄い」

「おっきいねぇ……」

 

 

 近づくにつれ段々と建物全体が見渡せるようになり、その大きさにみんな圧倒されていた。

 今回の練習試合は龍門渕の校舎でやるのではなく、向こうの部長さんの家でやると事前に聞いていたため、もしかしたら広い家なのかなーと思っていたら、想像をはるかに超えていた。

 大きい家だと京太郎の家なんかが思い浮かぶけど別物であった。家じゃなく邸だった。

 

 唖然としながらも車を走らせ近づくと、門の前で男性やメイドさんが立っているに気付く。恐らくさっき電話した時に待っていると言っていた案内役の人だろう。

 とりあえず車をどこに停めたらいいかもわからないので、そのまま車を近くに停めてから挨拶も兼ねて運手席から降りると、一番前に立っていた男性が恭しく頭を下げてきた。

 

 

「遠い所をよくぞお越しくださいました。私、当館の執事を務めております萩原を申します」

「…………あ、さ、先ほど連絡を入れさせていただいた阿知賀麻雀部顧問の赤土ですっ。本日は無理なお願いを聞いていただきありがとうございました」

「いえ、こちらこそ奈良県代表の皆様と練習試合をさせていただけるのは大変光栄なことです。それでは早速お嬢様たちの元へご案内いたしますので、お車やお荷物の方はお任せください」

「あ、ありがとうございます」

 

 

 それから萩原さんは他のメイドさん達に指示を出し、私達も言われた通り荷物をメイドさん達に預けてから萩原さんの後に続いて屋敷の中へと入る。まるでどっかのホテルの宿泊客の様な扱いだった。

 

 そして中に入ると、外から見たのと同じく内装も大変立派であり、そこらじゃお目にかかれないものだった。先ほどホテルに例えたが、ハッキリ言ってそれ以上であった。

 そんな豪勢な内装もあり、廊下を歩きながら皆珍しそうに中を見回している。ただ、私は気になることがあって前を歩く萩原さんの背中を目で追っていた。

 

 途中、後ろを歩いていた憧がそんな私の様子に気付いたのか、近くに寄って小声で耳打ちをしてきた。

 

 

「どうしたの? なんか萩原さんのことずっと見てるけど…………まさか須賀さんがいるのに惚れた?」

「違うってば、ただどっかで見覚えがあるなーって……」

「それってよく聞く口説き文句よね……そうじゃないなら昔、大会で県外に出た時や場所的に須賀さんと一緒に来たときにどっかで会ったとか? 須賀さんの家までそんなに遠くないんでしょ?」

 

 

 憧と話しながら改めて前を歩く萩原さんの背中を見てみるが、やはり覚えはなかった。

 ただ、気になったのがどことなく京太郎と似たような雰囲気があるんだよね……歳が近いからかな?

 

 

「うーん……もしかしたら望ならなんかわかるかも。私が忘れた昔の事も覚えてそうだし」 

「どうかしらね……あ、そういえば思い出したんだけど、最近お姉ちゃんが夜にこそこそ何かやってることがあるんだけど、なんか心当たりない?」

「望が?」

 

 

 憧に言われて近頃の事を思い返すが特に覚えがない。先日一緒に飲んだばかりだけど、いつも通り京太郎の事でからかわれただけだし……。彼氏でも出来たとか?いや、まさかぁ~。

 

 とまあそんなことを話しているうちに目的の部屋についたのか萩原さんが大きな扉の間で立ち止まる。玄関から分単位でかかるとか何処の世界だろうか?

 

 

「お待たせしましたこちらです。どうぞお入りください」

 

 

 そう言って萩原さんが開けた扉の先にあったのは滅茶苦茶広いラウンジだった。金持ちスゲー……。

 

 驚き半分茫然半分で中に入ると、奥に誰かが立っているのが見えた。恐らくはここのお嬢様である龍門渕さんと部員仲間だろう。

 そのまま奥へと進むと全員の容姿がはっきりとわかって、確かに去年全国で暴れた龍門渕のメンバーであると認識出来た。

 

 

「ようこそお待ちしておりましたわ!」

「こいつらが奈良代表?」

「こいつらとか失礼だよ純くん」

「よろしく……」

「………………」

 

 

 なるほど……確かに化け物だ。他のメンバーも個性的で目立っていたが、一番奥に座っていた一際小さい少女――天江衣を見た途端、私はすぐに理解出来た。

 

 以前アマとの交流試合に出ていたプロから聞いていたが、改めて自分で相対するとその言葉を強く実感する。今の私ならともかく昔の私じゃ勝つか負けるか正直わからないだろう。よくこんなのに咲ちゃんは勝てたものだ……。

 

 予想以上の相手の登場に思わず観察するような視線を向けてしまったが、このままでいるのは失礼なので、とりあえずは挨拶をと思い、玄に視線で挨拶するように促す。

 向こうは顧問がいないみたいなので、とりあえずこっちも同じように部長がまず話すべきだろう。

 

 

「初めまして阿知賀麻雀部部長の松実玄です。本日はお招きいただきありがとうございます」

「同じく部長の龍門渕透華ですわ、以後お見知りおきを」

 

 

 私たちより一歩前に出た玄が旅館の娘兼次期女将らしくそつなくこなす。普段が普段だけに中々新鮮である。しかし龍門渕さんもキャラが濃いな。お嬢様ってみんなこんな感じなのかな?

 それから顧問の私を含めた残りの全員が順番に自己紹介を含めた挨拶をする。そしたら龍門渕の全員がしず達ではなく、その中でも何故か一際私を興味深そうに見ていた。

 

 なんだろう……対戦相手としてうちを調べた時に過去の私に行き着いて興味を持ったのだろうか?

 理由を聞きたくなったが一旦後回しにして、今晩こちらを泊めてもらえることなどの礼を改めて述べ、明日まで予定を改めて話したらすぐに練習試合となった。どうやら向こうもこっちと同じでうずうずしていたみたいだった。

 

 そしてそれからしばらく試合を進め、途中善戦する所もあったが、基本的にうちが負けて力の差を見せつけられることとなった。しかし過去の私と違ってへこたれることもなく再度果敢に立ち向かって皆は私に心の強さを見せてくれた。

 その光景に嬉しくもあったが、もし私も昔あれだけの強さがあれば……と少しだけ過去の自分に後悔もする気持ちも私に中にあったのだった……。

 

 

 

 

 

 その後、午前からずっと続けていたし、明日もお昼までいられるから無理をする必要もないという事で、日も暮れたころになって今日はお開きとなり、向こうの好意で夕食となった。その上出してもらった食事は見栄えも味も大変すばらしい物であり、皆が舌鼓を打つほどであった。

 玄や宥なんかは実家で役に立てる知識はものはないかと、ある意味試合の時よりも真剣な目をしていた。

 

 そのおかげもあるのか食事中も皆は和やかに談笑し、実にいい雰囲気だった。美味しい料理は心を豊かにするってね。

 ほんとここまでよくしてもらって頭が上がらない。何かお礼をしなくちゃいけないだろう。

 

 

「だけど天江さんもそうですけど皆さんほんと強いですね」

「ふんっ、至極当然!」

「当たり前ですわ!」

「ま、それでも準優勝だけどな」

「一言余計ですわよ純!」

 

 

 流れるような漫才に皆から笑いがこぼれる。最初家柄や経歴からいって少しとっつきにくい子達かと思っていたが、こうして話してみればうちの子達となんら変わらない、ちょっと変わっているだけの普通の女の子達であった。

 

 

「ハハハ、まぁそんなわけでこんなボクたちですら準優勝どまりだったんだから全国では頑張った方が良いよ」

「そうだよねぇ……」

「中々キツイ……」

 

 

 励ましつつも釘を刺すような言葉で宥達がまだ見ぬ強敵を相手に楽しみにしつつも落ち込んでいた。

 

 確かに今日の試合ではうちはほとんど龍門渕の人たち良いように翻弄されていたから、このまま全国で勝ち抜けるのか不安なのは当然だろう。とはいえ私から見ればそこまで卑下することではなかった。

 確かに負けてはいたが、圧倒的というものではなくまだまだ改善する余地があるのがハッキリとしたし、そこまで力量に差があるわけではないというのがわかった。

 

 それにどうしても去年の優勝校ゆえに他校からも注目されて、研究されたりマークされて思うように打てなかったりするのはよくある話なので、次の年は勝てないというのは暫しあるのだ。だから全国に駒を進めた清澄と龍門渕は実力に実質大した差もないだろう。

 

 とはいえそこを加味してもやはり気になる者はいる。しずが似合わないシリアスな顔をしていた。

 

 

「そんなに和……清澄は強いんですか?」

「そういえば皆さん、原村さんとはお知り合いと言ってましたわね……まっ! 私たちに勝ったぐらいですから当然ですわ!」

「サキ達は勿論だが、みな剛強無双の者たちばかりだ。それに他にも清澄には京 「こ、この肉もらったぜーっ!」「ぼ、ボクもおかわりしようかなぁー!」 きょ……き、今日の衣たちに打ち勝った実力があるのだっ!」

「あ……は、はい」

 

 

 何故か当たり前のことを力強く言われたせいで思わずしずが鼻白む。なんだろう……そこまで言うほど清澄は手強いのだろうか?

 しかしあっちの二人もまだお皿に残っているのにおかわりとかよく食べるなぁ。まぁ、強さの秘訣はよく食べる事かもね。健全なる精神は健全なる身体に宿るともいうし。

 思わぬ龍門渕の強さの秘密に感心していると、何故か他のメンバーからいきなり視線を向けられた国広さんがなにやら慌てながらこちらに振り向く。

 

 

「そ、そんなことより赤土先生って少し前まで実業団にいたんですよね? そ、その時の話なんて聞きたいなーなんてっ」

「え、そう? 別に話せることなんてないけどなぁー」

「い、いやいや、麻雀をやっててもプロとかみたいな仕事にする人はそこまでいないんで結構気になるんですよー」

 

 

 その言葉に思わず頬が緩む。いやぁーまさかこんな所で私の事知ってる人に会えるなんてねー。

 普段憧たちは遠慮してるのか、あんまり深くは聞いてこないから思わず口が軽くなり、あまり脱線しない程度に実業団時代の事を話していく。

 

 うちの子たちは将来的にプロなどに進みそうな子はほとんどいないけど、龍門渕の子たちは高校二年生だからそろそろ進路を意識する頃だし、皆、興味深そうに聞いていた。

 

 

「へぇー……あ! それじゃあきっと男の人からもお誘いとかあったんじゃないですか? エースなんですから」

「え? うーん……あったと言えばあったけど……」

 

 

 突如出た国広さんの言葉に周りからの視線が一斉に強まった。え?なんで?……あ、なるほどそういった世界に入った場合の異性との関係が気になるのか、皆お年頃だしね。

 

 確かに昔から麻雀やっている人は異性との巡り合わせが悪いってジンクスがあって、実際に半数以上のプロが独身のままだ。

 私の知っている人達も未だ彼氏すらいたことがない人がほとんどだし、だから今後の事を考えるならば気にしてもおかしくはないだろう。

 

 しかしそう考えると学生時代に京太郎と付き合っていた私は雀士の中では中々異端なのだろう――――アレ?でも今は別れてるからやっぱ私も同類?つまり今後復縁できる可能性なしってこと?いや、でもでも……

 

 

「うぅぅぅぅん……」

「もしかしてハルエあんた……」

「え……? あ……いや、ないない! 時々食事に誘われることはあったけど、興味ないから全部断ってたしっ」

「そうなの? それにしても顔が百面相してて変だったけど……」

「べ、別のこと考えていたから!」

 

 

 嫌な想像が顔に出ていた為か、何やら訝しげな眼で見てくる憧に首と手を振って完全否定する。なにやら誤解されるのは嫌だし。

 

 

「ああ、なるほど……」

 

 

 そしたらなにやら呆れた顔をしながら納得された。いや、わかってくれたのは嬉しいけど、ちょっと複雑な気分だった。

 

 

「えっと……それじゃあ赤土先生は今男性とは?」

「あはは、残念ながらね」

 

 

 これが男性からならばセクハラだろうが、恋愛に興味津々な若い子という事で私の口も軽かった。

 ただ残念という気持ちは半分だ。京太郎じゃなきゃ駄目という気持ちが半分で、京太郎以外の相手なら一生一人身でもいいやということだ。無理して相手を作りたいとか思ないしね

 

 

「ま、私はこんなんだけど、男の人と付き合う機会もきっとあるから頑張って」

「あ、あはは……そうですね」

 

 

 私の言葉に龍門渕の皆は目を合わせながら頷いていた。

 うん。これでまた一人こちらへの道に落とし……いや、導けたかな。良い事をした後は気持ちがいいなぁ。

 

 

「なんか少し可哀想になって来たわね」

「自業自得……?」

 

 

 ……………………泣くぞ。

 

 とまあそんなこともありながら食事も終わり、私たちは部屋へと案内される。まだ就寝時間には早いが、皆疲れている事もあっての一時休憩だ。

 そして案内された部屋に実際に足を踏み入れてみると、これまた豪勢であった。一人一部屋とかホント贅沢だ。

 

 

「それでは私はこれで。何かあれば枕元の内線でお知らせください」

 

 

 私たちに室内の説明を終えたら萩原さんは一礼をしてから踵を返して戻ろうとする。

 改めてみてもその一つ一つの動作は洗練されており、とても真似できるものではないが、何かが引っ掛かった。だから――

 

 

「あ、あの萩原さん!」

「はい、なんでしょうか?」

 

 

 どうしても尋ねたくなり思わず声をかけると、まるでそれがわかっていたかのように萩原さんは澱みなくクルッと体を回転させてこちらを振り返る。

 いきなりの私の行動にみんなが驚いているが、今はそちらよりも聞きたいことがあった。

 

 

「……私の勘違いかもしれないんですけど…………もしかして以前どこかで会った事ありませんか?」

 

 

 思い切って聞いてみると――

 

 

「ふむ……いえ、私は(・・)赤土先生と一度もお会いしたことはありませんよ」

「あ、そうですか……」

「はい、何やら力になれず申し訳ございません。それでは失礼いたします」

 

 

 萩原さんは少し考えた仕草を見せてからきっぱりと否定して、再び一礼してから今度こそ元の通路を戻って行った。

 

 

「やっぱ気のせいだったんじゃない?」

「そうかなぁ……まあ、とりあえず疲れたし休もうか」

 

 

 しこりを残しつつもそこまで気にすることではないかと自身を納得させ、その日は休むこととした。

 そして次の日。お昼までお世話になってから私たちは龍門渕さん達に見送られて長野を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……行ったか。あれでよかったのかハギヨシ?」

 

「ええ、わざわざお付き合いいただきすみませんでした衣様、透華お嬢様。皆様もすみませんでした」

 

「構いませんわ、須賀先生にはお世話になってますもの」

 

「しかし兄貴も隅に置けねーな、あんな彼女がいたなんて」

 

「ちょっとスレたててくる……」

 

「はいはいお座りともきー。でもよかったんですか? 須賀先生に伝えなくて」

 

「そうだな、京太郎はいまでも気にしているのだろう? ならば教えてやっても良かったのではないか?」

 

「……見た所向こうも未だ脈ありの可能性」

 

「え、マジで? 全然わかんなかったぞ」

 

「純は女心がわからないから……」

 

「オレも女だ!」

 

「はいはい、それで本当に大丈夫なんですか?」

 

「ええ、お二人ともすぐに全国大会で会えますから。ならばこのような場所よりもやはり再会の場面にふさわしい所というものがありますので」

 

「ええ、その通りですわハギヨシ! 私たちがあの二人を再び出会わせて見せますわ!」

 

「透華の奴さり気なく馬鹿にされてることに気付いてないぞ……」

 

「まぁ、透華だしね」

 

「いえ、お嬢様。人の恋路に手を出すと馬に蹴られてしまいますからここはそっと見守っておきましょう」

 

「あら、そうですの? なら仕方ありませんわね」

 

「しかも丸め込まれてるし……」

 

「まぁ、透華だしね」

 

「いつも通り……」

 

「ふっ……しかしこれでまた一つ全国大会が楽しみになったな。サキ、京太郎……阿知賀は中々に手強いぞ」

 

「いや、衣は出ないからあんま関係ねーぞ」

 

「他の皆も個人戦落ちちゃったしね」

 

「「一言余計だぞ(ですわ)!!」」

 




 そんなわけで前回に引き続きレジェンドサイドで今回は龍門渕とのお話でした。何やら嗅ぎまわっていた龍門渕が今後関わって来るかは……どうでしょう?

 それでは今回はここまで。次回は京太郎サイドに移りますのでよろしくお願いします。

 あと短編が増えてきたので、過去編と現代編に分けました。

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