君がいた物語   作:エヴリーヌ

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なんとなく思いついたので書いてみた短編。本編?なにそれ美味しいの?

基本的に本編とは似てる所もありますが、異なる世界での話です。

エロ・ハーレム要素があるのでそういうのが受け付けない方はスルーで。


・番外編(本編とは基本関わりなし)
穿いていない物語


 おっす!オラ京太郎!阿知賀女子学園の教師だ。

 

 『んースリスリ』

 

 高校時代に阿知賀に住む赤土晴絵と仲良くなった関係で奈良の大学に進学し、その後就職は母校の清澄にしようと思ったんだけど、思いのほかここの居心地が良かったからそのままこっちで就職しちまっただ。

 

  『しず狭いからもうちょっと開けてー』

 

 教師としてはもう四年目で慣れて来たし、麻雀の副顧問としても実に順調だ。

 

      『そう言いつつ自分は良い場所取るのは卑怯だろー憧』

 

 え?俺が副顧問なら顧問は誰だって?

 

   『そう言う先生だってくっつき過ぎなのです』

 

 そりゃ我らが阿知賀のレジェンドこそ赤土晴絵以外にはいないだろ。

 

    『あったか~い』

 

 赤土は一時期実業団からの誘いもあって進路について悩んでいたみたいだったが、麻雀教室で子供達に教えるのが性に合っていたらしく結局教師の道を選び、俺と同じく阿知賀女子に就職した。

 

      『まったく……皆さん争うのはよくないですよ』

 

 その結果、大学時代からの腐れ縁はまだまだ続くことになった。

 

     『そう言いながらちゃっかりくっ付いてるし……』

 

 それで赤土や俺が教師となったので、本来廃部となっていた阿知賀麻雀部も玄を中心に復活して、中学時代には県代表もなったことがあるぐらいだ。

 

   『そうなのです! 和ちゃんは師匠にくっつき過ぎだよ!』

 

 そのため部員もどんどん増えていき、今では晩成高校に続く奈良の麻雀強豪校として名を馳せている。

 

      『いえ、それは玄さんの目の錯覚です。スリスリ』

 

 そして今年は穏乃達中学生組も高校に上がり、我が部の実力者達が全員揃ったことによって今までよりも大会への意欲に燃えているのだ!

 

   『目の錯覚とかそんなオカルトないのです!』

 

 打倒晩成!全国大会への切符を手に入れるぞ!―――――――――――と、意気込んでいたのだが、少し前に深刻な問題が発生してしまった。

 

 『皆元気だねー……ぐぅ……』

 

 まあ、その原因は俺なんだが……って――― 

 

     『寝るなし……』

 

 

「ええい! 人が真面目に考え事してるんだから、いい加減やめろって!!」

 

 

 あまりにも騒がしいので、くっついていた七人を無理やり剥がす。皆はそれに文句があるのかブーブー言ってるが知らん。

 しかし全員剥がすということは出来ず、コアラのごとく背中にへばりついていた穏乃だけは残念ながらそのままだった。夏が近づき気温もあがって蒸し暑いのにやってられないぞ。

 

 

「いいじゃん、どうせエロい事考えてたんだろー? なら今日はもう終わりにしてうち来ない?」

「むー、ダメだよ赤土先生。今日は月曜日なんだから私の番だって」

「そうよ、ハルエは日曜全部使えるんだから卑怯よ」

「うん、私たちにももっと分けて欲しいかな……」

「いえ、憧や宥さんはそれぞれ穏乃と玄さんと一緒にやることにより二日続けてできるんですからむしろそちらこそ譲るべきです」

「いやいや、そこは頭を使った私たちの勝利だからね。羨ましいなら和ちゃん達も誰かとペアを組めばいいのです!」

「誰かと一緒なんて嫌。別に京太郎先生には興味ないけど」

「いや、灼のツンデレってもう意味ないから」

 

 

 好き勝手に話しているのは赤土晴絵、高鴨穏乃、新子憧、松実宥、原村和、松実玄、鷺森灼という先ほど俺にくっついていた七人であり、阿知賀麻雀部のメインメンバーとおまけの顧問でもある。

 会話内容からもわかる通りちょっとしたカオス空間であり、それに合わせたとおり内情も見た目通り混沌としている。

 

 しかしまあ……この会話だけでこいつらが何を話しているのか分かる人は分かるだろう。

 その……なんですか……はい………………全員とそういう関係になっちゃいました。

 話だけ聞けば「七股野郎もげろ!」と言われるだろうがこれには深いわけがあるし、俺だって教師という立場から好きで手を出したわけではない。

 事の始まりは一か月ほど前に遡り、春の新学期が始まって間もないことである――

 

 

 

 

 

 当時、穏乃たちが高校に上がったことにより県大会へ向けて皆が猛練習をし、副顧問である俺もそれをサポートしていた時期である。

 

 月曜日の朝、いつもだったら眠い目をこすりながら起きて支度をするところなのだが、ところがあの日は朝起きるととてつもない違和感に襲われたのだ。

 しかし違和感はあっても別に風邪をひいたわけでも泥棒に入られたわけでもなく、前日一緒に飲んでいた赤土が隣で酔っ払って下着姿のまま寝ているのはいつものことだったし、違和感の正体は全く分からなかった。

 だが、その正体は仕事のため家を出て学校へ向かう途中で明確となった。

 

 そう――――――――すれ違う多くの女子高生達のおもちがチラ見出来たり、スカートが短かくて中には下になにも穿いていない様に見えるものもいた。

 最初目もしくは頭がおかしくなったのかと思ったがすぐに立ち直り、その生徒達に注意しに行った。

 しかし――

 

 

「スカートが短い? 学校指定の長さのままですよ」

「え、須賀先生何言ってるの? 飲みすぎじゃない?」

「下着がなんです? あ~なるほど~スカートの中が見たいんですね。須賀先生ならいいかな~」

 

 

 こんな調子で普通の対応されたり、酔ってるんじゃないかと疑われて誘惑されたりもした。

 勿論そんな話には乗らなかったし、こっちがからかわれているのだと思ったが、少し冷静になって周りを見回してみると学生以外にも通勤途中のサラリーマンなどの男性もいたが、全く反応してないことに気付いた。

 

 その時になって、もしかしてこの光景は自分だけに見えているのじゃないかと疑い始めた。

 その考えが浮ぶと、とりあえずその生徒達には適当に誤魔化し学校に向かったのだがやはり学校でも同じような光景が広がっており、他の教師たちも平然としていたのだ。

 

 頭がおかしくなりそうな状態だったが仕事をさぼるわけにもいかず、とりあえず授業にも出たが、やはり同じような光景が広がっており、大人になりかけの大変魅力的な生徒達の体がチラ見出来る状態であった為、嬉しくもあるが大変困った状況となった。

 もちろん教師であるため、なるべく見ないように目線を外そうと努力したが上手くいかず、傍から見てもすごく様子がおかしかったのだろうか生徒達からは心配されてしまった。

 

 それからなんとか授業を終えた後、やはり酒の飲みすぎかと思い保健室で気分が悪いからと面会謝絶状態にして休ませてもらったが一向に直らなかった。

 ちなみに保健室の先生のおもちもチラ見出来てしまい、大変すばらだった。

 

 それからその日は土曜日のためすぐに放課後になり憂鬱だったが、もしかしたら昔から馴染みのあるあいつらなら大丈夫なんじゃないかと思って一縷の希望を持って麻雀部に行ってみたが、結果は惨敗であった……。

 

 麻雀部に着くと保健室で休んでいたことが伝わっていたのか、皆が心配して駆け寄ってきてくれ、本来なら嬉しくもあるのだが、この状況では素直に喜ぶことが出来なかった。

 何故なら憧、和、玄、灼の四人の上半身ははまだ普通だったのだが、スカートがいつもより短く見えるか見えないかのギリギリだったし、動きやすいからとジャージに着替えていた穏乃なんかは下半身が丸見え状態だったのだ。

 おかしい……いつも着ているジャージだから変な性癖に目覚めない以上、ズボン穿かないとかあり得ないはずなのに…。

 

 案の定ほかの部員も同じような感じだったが、その中で唯一常日頃から厚着をしている宥とズボンを穿いている赤土だけは普通のままだった。

 そのため部活中はこの二人を中心に話していたので、周りからは何かあったのではないかと心配されてしまった。

 

 心配してくれた皆には悪いが、頭の整理をしたかったので少し体調が悪いということで残りを赤土に任せていつもより早く上がらせてもらったが、帰る途中でも同じような格好をしている女の子達がいた為、見たいという欲望を押さえ、なるべく下を向きながらの帰宅となった。

 

 それからなんとか家に着くと今日一日の疲れからへたり込んでしまうが、しかしこのまま休んでこのおかしな状態が治るならいいがそんな都合よくいくわけないと思い、今日のことについて考え始めた。

 そして考えをまとめた結果今日一日で分かったことだが、この破廉恥極まりない症状は女性に対してだけに起こり、しかも高校生から20代後半ぐらいまでの相手に限るということ。また、部活中に赤土相手に探りを入れた結果、他の人からは普通の服装に見えているらしいということがわかった。

 あと着ているものが完全に透けるとかでなく、ずれて見えたり、一部がないように見えるというものだった。

 

 症状についてはなんとなくわかったが解決方法など分かるはずもなくその日は終わり、それから一週間過ぎても一向に治る気配がなかった。

 こっちとしては教師といえども一人の男であるため悶々とした気分をずっと味わわされ続け、視覚的には実に天国であるが地獄のような一週間だった。

 勿論こんな状態で気付かれないわけもなく、生徒や同僚からは心配されたが「実は女子高生の下着やその中身が見えるんですよ」なんて言えるわけもなく、体調が悪いと誤魔化すことしかできなかった。

 

 しかしそんなのが長い付き合いである赤土達に通じるわけもなく、日曜日に家に引きこもっていた俺の前にいつもの七人が現れ、どっかから持ち出したロープで俺を縛り上げたのだった。

 どうやら俺が何か後ろめたいことや悩み事を隠していると思い聞き出しに来たらしい。

 

 ――いや……聞き出すにしてももう少し別の方法があるんじゃないですかね……?

 

 本来なら宥や和はこういった手荒なことはしないのだが、どうやらこの一週間でかなり心配させてみたいで、なにがなんでも聞き出すといった雰囲気だった。

 流石にこいつらにまでこんなことまでさせるぐらいならたとえ自分が軽蔑されてもいいかと思い今日までのことを全部話すことを決めた。

 

 そしたら最初のうちは皆その内容に顔を赤くしたり、こんな時にふざけるなと怒り始めたが、俺の切羽詰まった表情から本当に困っているのだとわかりしっかりと聞いてくれた。

 そして最後まで話すと、とりあえず薄着をしている全員が俺の部屋にあった服を身に着けた始めたが、出ていこうとする者は一人もいなかった。

 

 それから持つべきものは歳の差はあっても長年の友人といった感じで色々と案を出してくれたが、結局その場では解決せず、和が「そもそもそんなオカルトありえません」と言い、とりあえず病院に行くという結論が出た。

 だがしかし、その結果、大きな病院で目や脳の検査をしてもらったが特に異常はなく、精神的なカウンセリングも受けたがそちらでも芳しい成果は得られなかった。

 

 そこで科学が駄目ならオカルトということで皆の伝手を使い、休みをもらって岩手のオカルトに精通しているという教師や鹿児島にいるおもちが爆発しそうな巫女さん達に助けを求めた結果、恐らくということだが原因と解決方法がわかったのだ。

 

 その結果は――――皆には呆れられたが、原因としてはただの欲求不満とオカルトのせいだということだった。

 

 まず女子校の教師となり、年頃の異性に囲まれ続けるという空間に居ながら彼女を作っていなかったためその発散先もなく、自分では気づかずにストレスが溜まっているからではないかと。

 もちろんそれだけでこんな状態にわけもなく、どうやら麻雀部でオカルト的なものに長年触れていたことと、今年になって練習に力を入れたためその影響が出たんじゃないかということだった。

 

 とはいえ実にくだらない原因であったが俺からすれば深刻であり、すぐにでも治したかったのだが、得られた解決方法としては実に簡単で彼女を作ればいいということだった。

 実にわかりやすい解決方法であったが、彼女いない歴=年齢の身としては尻込みしてしまう結果となった。

 

 ちなみにこの症状は透視と言うわけはなく、俺が見たいものを脳が勝手に想像して認識してるんじゃないかということだ。

 つまり実際に見てるのではなくただの俺の願望が生み出してる幻だ。

 

 たとえばとある巨乳のSさんという人がいたとする。

 

 勿論今の俺がその人を見れば大きくてすばらな光景が見れるのだが、もしその人が実は虚乳でパッドを外したとしても俺がその事実を知らなければこの症状下では大きく見えたままと言うことだ。

 勿論水着などを着てその事実を脳が理解すれば、途端にそっちの真実のおもちを参考に想像するようになり俺の脳内おもちも萎んでいくというわけだ。

 

 透視で本物を見ているというわけじゃなく安心したが、やはり目に毒なので一刻も早く治すためにやはり彼女を作らねばならないという結論にいたったが、やはりいまままで彼女を作ったことがなかったのですごく困った。

 しかし尻込みしている場合ではなく、同じく有給を取って一緒に来てくれた赤土に女友達を紹介してくれないかと言ったら―――

 

 

「ふーん、なるほどね…………いいよ、今度紹介してあげる」

 

 

 ――と言った後、説明の為に集まっていた他の皆と一緒に帰ってしまった。

 こちらとしては一刻も早く治すためにすぐにでも紹介してほしかったんだが、流石に年頃の女の子たちの前でがっつぎ過ぎかと思い反省し、帰宅してからも何かする気にもなれずさっさと寝たのだった。

 

 しかし次の日の夜、家にいるといきなり赤土達がやってきたと思ったら、いつまでも沈んでてもしょうがないし宴会をしようとの提案があった。

 昨日のことで軽蔑されたと思っていたのにこうやって励ましに来てくれる皆の姿に年甲斐もなく目が潤みそうになり、それを誤魔化す為にも差し入れの酒を飲み、遅くまでどんちゃん騒ぎをしたのだった。

 

 そして運命の日である次の日。二日酔いよりもなぜか腰の痛みに目が覚めると、そこにあったのは俺を含め全員が裸で寝ている状況であった――

 

 

 

 

 

「……………………………………なんだ夢か。早く起きよう」

「ところがどっこい、これが現実です」

 

 

 

 

 

 今見たあり得ない光景を夢と断定し、なぜか再び横になって目を覚まそうとする俺に対し声がかけられる。

 その声に振り返ると、そこには先ほどまで寝ていたはずなのに、いつの間に起き上がりこちらを笑顔で見ている和がいた…………裸のままで。

 

 

「ちょっ!? 見えてるから隠せって!」

「昨日さんざん見て触って舐めて揉んで弄って抓って嬲ったのに、今更何を言ってるんですか」

 

 

 慌てて目を逸らす俺に残酷な一言を告げる和。

 無意識的に頭から外していたことだが、裸なのはやっぱりそういうことだよな……。生徒に手を出す教師とかヤバすぎだろ……。

 

 いや、百歩譲って和とだけそういった関係を持ったのならば、どんなに罵られようと責任は果たすつもりだ。

 しかし、他の六人も同じような状況ってことは……………つまり……そういうことだよな?責任とか懲戒免職ってレベルじゃすまされないぞこれ……。

 

 

「顔が百面相状態で面白いことになっていますよ。まあ、大体なにを考えているのかはわかりますけど、とりあえず他の皆を起こしますのでシャワーでも浴びて来た方がいいと思います」

「…………ああ、そうするわ」

 

 

 確かに一度頭を冷やしてゆっくりと考えたい気持ちだったので、和の提案に乗ることにした。

 途中ぐしゃぐしゃになったシーツや何とも言えない臭いが部屋に充満していることに気付き、より一層気分を憂鬱にさせられた。

 

 それからシャワーを浴びている途中に色々考えたが堂々巡りでいい考えも浮かばず、このまま引きこもって浴槽と結婚したくなったが、いつまでも引き籠るわけにもいかないので外に出る。

 体を拭き着替えて外に出ると、残りの皆も既に起きていて俺を待っていた。

 

 

「おはよー、須賀せんせー」

「……おはよう」

「おはようです、師匠」

「お、おはようございます……」

「おーはー」

「あはは、おはよー」

「改めておはようございます。京太郎さん」

「……ああ、おはよう」

 

 

 俺が出てきたことに気付き皆あいさつをしてくるが、どことなくぎこちない。

 憧や宥、赤土は顔を赤くしてわかりやすいし、穏乃と玄、灼はいつも通りにしようとしているがやっぱりおかしく、平然としているの和ぐらいである

 というか、さりげなく和からの呼び方が須賀先生から京太郎さんになってるのが怖い…。

 

 

「あー……風呂空いたし、皆も入ってくれば?」

「いえ、どうやら京太郎さんが事情を詳しく聞きたいみたいなのでそちらを優先します。体は先ほど京太郎さんが入っている間に濡れたタオルで拭かせてもらったので大丈夫ですよ」

「そうですか…………それで……その、昨日何があったんですか?」

 

 

 すらすらを話を進める和にしり込みして思わず敬語になりながらも昨日のことを尋ねた。

 もちろん何があったのか予想はつくが、微かな希望もあるんじゃないかと――

 

 

「京太郎さんが私を含め全員を抱きました」

 

 

 ――希望など存在せず、そこにあったのは絶望だけだった。

 

 

「………………えーと……本当か?」

「そ、そうよ……だ、だから責任取りなさい」

 

 

 確認の為にもう一度訪ねる俺に、照れながらも重い一言を告げる憧。

 やばい、嫌な汗が出てきたぞ……。というか、いくら飲んでたからって全員に手を出すなんて……。

 

 

「ねえ、そろそろ可哀想だから教えてあげようよー」

 

 

 この世の終わり様な顔をしていた俺が流石に哀れになったのか、他の皆に聞こえるように言う穏乃。

 え?……教えるってなにが?………………そうか!

 

 

「実はドッキリだったのか!」

「教えてあげるってのは別のことで、手を出したのは事実」

「       」

 

 

 喜び立ち上がった俺。

 ズバッ切り裂く灼。

 無言で崩れ落ちる俺。

 現実は非情であった

 

 

「ええと、教えるっての言うのは昨日の夕食の中に鹿児島の巫女さん達から貰った薬を混ぜてたってことです」

 

 

 

 

 

 ……………………………………………ハァ!?薬!?

 

 

 驚き飛び上がって皆を代表して話した玄の方を凝視する。

 その視線が恥ずかしかったのか、イヤンイヤンといった感じで体をくねらせる玄。いや、そんなことしてる場合じゃねーだろ。

 

 

「あー、ほら一昨日京太郎が女の子紹介してって言ったじゃん」

「あ、ああ、確かに言ったけどそれが?」

 

 

 問いただそうにもどうしたらいいのか悩みつつ見つめたままの俺と体をくねらせるばかりの玄に焦れたのか、赤土が話を続ける。

 とりあえず答えたが、その時の発言とこの状況に何の関係が?

 

 

「で、今度紹介するって言ったじゃん」

「ああ」

「はい、可愛い女の子七人」

「……………………………はぁ!?」

 

 

 最初赤土の言葉が意味わからなかったが頭の中でよく考え込み、ようやく理解すると同時に思わず大声を出してしまった。

 え、なに?確かに女の子を紹介してくれって言ったが、それは同年代ってことで女子高生……しかも顔見知りのこいつ等ってどういうことだよ。それにこういう場合普通紹介するのは一人だけだしなんで七人。しかもお付き合いという前提と飛ばしてなんで体の関係持ってるんだよ。教師なんだから生徒達に答えだけじゃなく式も書けって教えてるだろ。それに赤土はもう女の子って歳じゃないし。

 

 頭の中でグルグルと思考してるうちに、思わず最後の台詞を口に出してみたいで赤土に殴られた。いてえ……。

 

 

「こほん。まあそれは置いといて。京太郎が女の子紹介しろって言いだしたからヤバいと思って皆と話し合ったわけよ」

「ヤバいって……なにが?」

「そりゃ決まってるでしょ。皆の好きな男が他に彼女作るかもしれないことよ」

 

 

 好きな男…………………………………………………………俺!?

 皆ってもちろんこの七人……だよな……?

 

 

「ああ、その表情だとやっぱ気付いてなかったんだ。まあ皆初々しいながらもアプローチはしてたんだけど高校生だしね。京太郎から見れば妹みたいなもんだからしょうがないよねー」

「えー、でも赤土先生は女子高生じゃないのに気づかれなかったじゃん」

「わ、私は、これでも奥手なの! そ、それに一応京太郎の部屋で飲んで泊まった時はいつも服脱いで誘ってたし」

 

 

 毎度寝相悪いなあって思ってたらわざとだったのかよ……。

 先ほどから話される驚愕の事実に固まっているとさらに話が続けられる。

 

 

「一応私たちの間で色々協定みたいなの結んでたんけど、流石に今回のままじゃヤバいと思ってね。そこで、知らない人に盗られるぐらいならもういっそのこと全員と付き合ってもらおうって決めたんだ」

「え…………お、おれの意志は?」

「す、須賀先生は私たちじゃダメですか?」

「う……それは……」

 

 

 せめてもの抵抗しようとする俺だが、宥に涙交じりの視線を向けられたじろぐ。

 いや……皆色々と異なるがそれでも普通に器量の良い女の子だし、これが教師などの立場じゃなかったら大歓迎なんだけど……。

 焦る俺に退路を塞ぐように和が話を引き継いで続ける。

 

 

「ああ、言っておきますと教師と生徒の立場はすでに問題ありませんよ」

「え?」

「少し前に本人たちの意志と保護者の同意が得られれば、たとえ未成年や生徒と教師であっても付き合えるように法律が変わりました」

「ちょ」

「それに近年の少子高齢化対策で、一定以上の要件を満たせば一夫多妻制が認められるようにもなりました」

「おま」

「すでに私たちの両親には了承を貰ってますし、京太郎さんのお義父様とお義母様にも話は通していますので」

「………」

 

 

 動揺して片言しかしゃべれない俺に畳み掛けるように続ける和。さすが弁護士の娘だな……。というかいつの間にそんな法律が通ったんだよ……。

 

 あとで耳にした噂だが、とある弁護士がその法律に深く関わっており、彼はある雑誌のインタビューで「娘が生まれてから15年経つが、あのような恐ろしい眼をしたのを見たのは初めてだった。そして私が生まれてからあのような恐怖は一度も味わったことがなかった。できればこの先二度とあのような恐ろしい出来事にはあいたくない」と語っていたらしい。

 いったい誰なんだろうか……。

 

 

「ええと、これってマジで言ってるのか?」

「ええ、本気も本気です。父も快く頷いてくれました」

 

 

 再度確認する俺に告げられる確固たる返事。

 こんな場でもなければ惚れてしまいそうな強い声と表情だ。

 

 

「他のみんなもそうなのか? 親御さんも本当に良いって言ってるのか?」

 

 

 反対してくれる奴が一人でもいないかと思い確認するが……。

 

 

「うん、お母さんも須賀先生なら安心して任せられるって」

「他の男に任せるぐらいなら須賀さんが良いってさ。お姉ちゃんも賛成してくれた」

「私は男の二人と女の子二人が欲しいなぁ……」

「お祖母ちゃんが、早く曾孫抱きたいって……」

「むしろうちは早く嫁に行けってうるさいしねー」

 

 

 まあ、こんなことになってるぐらいだからわかりきっていたことだけどな……。

 というか宥は気が早すぎるぞ…………でも、昨日ので既に出来てる可能性もあるんだよな……。

 

 絶望感を感じ、思わず両膝と両手を地面につく。そんな俺の肩に手を乗せる感触があったので振り向くと、そこには笑みを浮かべた玄がいた。

 そうだお前がいたな。これから全国大会に向けた練習もさらに忙しくなるし、そんなことしてる暇もないよな……。

 

 

「旅館はお父さんとお姉ちゃんと私、それに私たちの子供達がいるので師匠は安心して教師を続けても大丈夫なのです! あ、で、でももしうちに住んで一緒に旅館のお仕事してくれたら夫婦らしくてすごく嬉しいかも……」

 

 

 ドヤ顔で話していたかと思ったら、途中で照れながら未来について語り始める玄。

 ブルトゥス、おまえもか!裏切ったな!高1の頃『俺、男友達と遊んでる方が気楽でいいんだし!』って言いながらちゃっかり夏休みに彼女作ってやがった同級生の池田と同じで俺の気持ちを裏切ったな!

 

 そんな感じで絶望している俺を尻目に盛り上がる女性陣。子どもは何人が良いだの、もしみんな一緒に住むならどこにしようかと話し合っている。

 実に平和な光景だ……怒涛の展開で脳みそがシャットダウンしそうな俺を除けば。

 

 そんな中、固まっている俺に近づいてきた和が俺の耳元に口を寄せ、なにかを呟く。

 

 

「これからよろしくおねがいしますね。あ・な・た♪」

 

 

 それがトドメの一言となったのか思わず俺は意識を手放した。

 その途中で見たのは、この先の未来を馳せて満面の笑みを浮かべた和だった。

 

 ああ――その笑みでふと思い出したが、和が中学一年の頃に引っ越すことになり、それを撤回させるために皆で和の両親に頼みに行き、最終的には和が父親を説得させて奈良に留まることになったんだよな。

 あの時の和はすごかったな……それにここに留まれると分かった時の笑顔は今見たのとそっくりだったっけな……。

 

 

 

 

 

 それから今日までの日々はこれまでの人生の中でもっとも濃厚な日々だったと言える。

 

 とりあえずこれからどうするかということで、まず何よりも先に全員の両親に確認の為に挨拶も兼ねて会いに行ったのだが、皆の言って通り歓迎されて娘を頼むとまで言われてしまった。

 そして学校でも隠し通せるわけもなくすぐにバレたが、教師も生徒も特に普通のカップルを祝福感じだった。

 どうやら俺の知らないうちに俺が住んでいた日本はなくなってしまったようだ……。

 

 そして周りの事も大事だが、自分たちの事も決める為にうちの嫁達(仮)と一緒に話し合った結果、結婚とか同棲はしばらく後にするとして、今回の原因となった俺の症状を失くすことが先決となったため、ひとまず俺の週七日間を七人で分けることなった。というか決められた。

 そしてさらに何時間にも及ぶ議論の結果、月曜日が穏乃、火曜日が憧、水曜日が玄、木曜日が宥、金曜日が灼、土曜日が和、日曜日が晴絵と言うことになった。

 

 これには異を唱える者も多かったが、年長者ということで晴絵が無理を通した。

 また、土曜日に関しては今回のことで中心となった和に譲るということで特に異論がなかったのは、皆の協調性を感じられる出来事であった。

 しかし他のメンバーが引いたことには色々と考えがあったのだと知るのはそれから少ししてからであった。

 

 ちなみに晴絵からは「恋人同士なのにいつまでも苗字じゃ寂しいでしょ……というか、こっちも京太郎って呼んでるんだから、そっちもいい加減名前で呼びなさい!」と言われたため、名前で呼ぶことになった。

 おまけにこの後、今まで他の皆が名前呼びされてたのに、なんで一番古い付き合いの自分だけ苗字呼びのままだったんだって、今までのうっ憤を晴らす如くしつこく絡まれました。

 いやだって、穏乃たちは子供だったし、同年代相手に名前呼びはきついだろ……。

 

 そんなわけでとりあえず面倒な晴絵のことは置いといて、基本的に俺の相手をするのは学校が終わった放課後に俺の家ということになるが、それぞれが自分のホームを持っている為、そういった場所になることも多かった。

 

 

 月曜日の穏乃は学校が休みの時には山につき合わされることが多い。

 

「京太郎さんは私がジャージの時は穿いてないように見えるんだよね? それじゃあ……これとかどうかな」

 

 その場で穿いていた長ズボンを脱いだ穏乃とそれに付き合う俺。

 

 

 火曜日の憧は実家を利用して、巫女服を着ての神社の裏が多い。

 

「鹿児島の巫女さん達には勝てないけど、これでも意外にあるんだからね」

 

 子どものころよりも育ったものを手で寄せアピールする憧とそれに付き合う俺。

 

 

 水曜日の玄は実家の松実旅館の温泉が多い

 

「ふふ、実は私のおもちもそれなりのものなんですよ」

 

 宥や和には劣るがそれでも立派なおもちをスポンジにする玄とそれに付き合う俺。

 

 

 木曜日の宥はあまり外に出たがらないため宥の自室が多い。

 

「炬燵の中だったらもっとあったか~くなれますよ」

 

 こたつに入って手招きする宥とそれに付き合って二重に汗をかく俺。

 

 

 金曜日の灼は実家のボーリング場が多い。

 

「京ちゃんと一緒なの誰かに見られたくないし・・・」

 

 と、ツンデレ台詞を言い、受付をやりながらだったり閉店後にもやろうとする灼とそれに付き合う俺。

 

 

 土曜日の和は和の自室でやることが多い

 

「ほら、私たちの旦那様ならこれぐらい勝てないと」

 

 ネトマをしながらやるという高度なプレイをする和とそれに付き合う俺

 

 

 日曜日の晴絵は夕方までデートと言うことが多い。

 

「昔からこうしたかったんだけどね、なんか言いだせなくて……」

 

 念願だったというデートに誘う晴絵とそれに付き合う俺。

 もちろん夜には俺の家に行くが、一番年上の晴絵が一番乙女らしいとかどうよ。

 

 

 ちなみにみんなの俺に対しての普段や学校での呼び方が色々変わったが、特に学校側は問題ないようだ。

 器デカすぎだろ、阿知賀女子。

 

 

 

 

 

 そしてこうなる前はあんなにも拒否していた俺だが、こうして過ごしていくうちに結構こういう生活もいいんじゃないかと思えてきた。

 みんな器量は良くて、俺のことなんかを好きでいてくれるし、なによりも俺自身こいつらもっと一緒に居たいと思っているからな。

 しかしこんなことを考えていたのは、最初の一週間だけで次の週からは段々とメゲるようになっていた。

 

 何故かって?腰が痛いんだよ、だって週に七日毎日だぜ……。

 毎日夜に数回だけでもキツいのに、日によっては朝に俺の家まで来ることもあるから朝にもやって、昼に時間があれば誘われることもある。

 それに月曜から木曜までの四人は前から企んでいたのかそれぞれペアで来ることもあり、その場合二人相手を二日続けてやるので疲労も倍である。

 

 残りの三人も同じようにされたら死ねるが、灼は他の人に見られるのは恥ずかしいらしく、和は嫉妬深く最中に他の女性のことを考えるのすらNGで、晴絵は二人きりの時は自分のことだけ見ていてほしいとのことで安心ではある。乙女かよ。

 

 しかし、そんなにきついなら断ればいいじゃないかと言われるだろうが、こっちは毎日なのに対して、皆は週に一日しかないので断りにくいのである。

 流されるまま決まってしまった関係だが、それでも責任を取ると決めてしまったのだから、寂しい思いはさせたくない。

 まあ……それに皆魅力的な体してるしな、据え膳食わねば男の恥ってやつだ。

 

 そんな感じでこんな生活を一か月近く続けるうちに俺の透視的な症状も収まったが、週七日分割は既に日常に組み込まれていたのか終わる気配はない。

 もちろん分割と言ってもその当番の日の相手としか会えないというわけではなく、冒頭のように学校では大抵誰かがくっ付いている。

 それは部活中も例外ではなく、確実に誰かが余るように計算されておりその誰かが俺に甘えると言った感じだ。

 

 こんなことしていたら他の部員にも示しがつかないはずだが、なぜか普通に受け入れられている。生徒達の順応性高すぎぃ……。

 

 

「そろそろ終わったー? 終わったなら膝枕してあげるからこっちおいでー」

 

 

 こうなった原因の回想をしながら牌譜を整理していた俺に向かって晴絵が呼びかけてくる。

 膝枕は大変魅力的だが、こっちとしては一応部活中だし真面目にやりたいんだけど……。

 

 

「ダメ、今は私がしてもらってる途中。これはハルちゃんでも譲れない」

「うん、それに次は私が京太郎さんを膝枕するから赤土先生は駄目だよ……」

 

 

 前言撤回。すっかり忘れていたが、さっきから灼をずっと膝枕してたんだった。

 こっちには俺に膝枕をされている灼と次の順番待ちをしながら腕に抱きついている宥。おい、人に見られるのは恥ずかしという設定はどこいったんだ……。

 

 

「それはそれ。これはこれ」

 

 

 人の思考を読まないでください。

 

 

「いいなー私もしてほしいなー」

「今は対局だからダメだって」

「そうだよ、全国大会で勝って目立てば穏乃ちゃん達はプロになれる可能性も上がるもんね」

「はい、いずれ生まれてくる子供たちの為にもお金はあるに越したことありません」

 

 

 向こうでは穏乃、憧、玄、和が県大会の為の練習をしており、それを後ろから晴絵が指導しているのだが、会話からするにあんまり集中できていないようだ。

 こんなんで勝てるのか?と思われるかもしれないが、実際は必要なときにはすさまじい集中力や実力を見せて、この一か月でかなり実力を伸ばしているのだ。

 

 理由としては和が言ってたように、今までよりも勝ちたい理由が出来たためじゃないかと思う。

 晴絵なんかは「京太郎に抱かれたからじゃない?他の人に盗られるって心配もなくなったし」とか言っていたが、後者はともかく前者はありえないだろ。

 俺に抱かれると強くなるって?ばんなそかな。

 

 

「子どもかー、高校卒業したら作ろうね京太郎さん」

「あ、玄さんズルい! 私も!」

「男の子と女の子三人ずつ欲しいなぁ」

「いや、穏乃はプロ行くんだろ? なら仕事あるんだし、子供もそう簡単に作れないぞ」

 

 

 松実館で働く予定の玄や宥に、すでに教師として働いている晴絵はともかく、他の面子は進学やら就職もあるからそう簡単に出来るもんじゃない。

 さりげなく宥の希望人数が増えていることはスルーしておく。

 

 

「そうですよ穏乃。だから数年頑張って京太郎さんが働かなくてもいいぐらいたくさん稼げばもっと一緒に居られますよ」

「そうね、今のままだと一緒にいられる時間少ないし良い案ね」

 

 

 ええー完全にヒモじゃないですかやだー。

 

 

「一家の大黒柱はドンっと座ってるものだし問題ない」

「いや、座ってるのとヒモじゃかなり違うわけですが……だから人の心読まないでくれ」

「京ちゃんは何を考えてるのかわかりやすいし」

 

 

 ちくせう……。

 

 その後宥に膝枕と耳掃除をされ、じゃんけんで勝ってこっちに来た憧には膝の上に座られた。おまえの男子が苦手って設定はどこ行ったんだ?

 

 

「そんなの京太郎さんの気を引くために決まってるじゃない。実際他の男子はちょっと苦手だけど京太郎さんは平気だし」

 

 

 さいですか……こんな関係になって皆の猫と言うか色々被ってたのがわかってしまったな……。

 穏乃とか変わらないのもいるけど、最近めっぽうエロくなってきて非情にありがた困る。玄や宥なんておもちがさらに大きくなった感じがするし。

 

 

「よーしそろそろ下校自宅だし、部活も終わりしようか」

『は~い』

 

 

 そんな感じでいちゃついてる間に日も暮れてきたため、晴絵の一声で片づけを始める。

 朝は穏乃が起こしに来て、昼は練習中の穏乃の弁当を食べて、放課後は皆といちゃついてと、今日もいつもと変わらなくもあるが非日常的な一日だった。

 しかし今日はまだ終わらないのである……。

 

 

「よ~し、それじゃあ帰ろうか。お疲れ様!」

『お疲れ様でした!』

 

 

 挨拶を終えるとこちらに向かってくる穏乃と憧。

 そう、今日は月曜日でここからが分割時間なのだ……………………………今日も二人一緒か……。

 

 

「えへへ~、それじゃあ帰ろう京太郎さん」

「今日は私が左でしずが右ね」

「りょうか~い」

 

 

 憧の提案で左右にくっつく二人。

 ある程度帰り道は一緒なんだから皆で帰ってもいいはずなのだが……。

 

 

「二人きりでイチャイチャしながら登下校がしたい!」

 

 

 という赤土の発言でこうなった。乙女か!

 まあ他のメンバーも同意見だったためこうなり、毎度部室を出ていく皆の羨ましそうな視線にさらされる。結構愛されてるなー俺。

 それから皆を見送ってから戸締りをし、帰路に着く俺と穏乃と憧。

 

 

「それじゃあ帰るか、夕飯はどうするんだ?」

「いつも通り私たちが作るからスーパーに寄ろうか、何が食べたい?」

「ハンバーグ!」

「しずには聞いてなかったんだけど……まあいっか」

 

 

 最近少しでも肉付きをよくしたい為か、よく食べる穏乃の一声でハンバーグに決定した。

 穏乃の小柄な体も結構いいと思うんだが、本人は悔しいらしく裏でも努力を重ねている。

 

 ちなみにもう一人の小柄なお人は「貧乳はステータスで他の皆にない武器」と言い気にしていない。

 まあ、確かに大きいおもち好きの俺だが、あれはあれでいいものだと近頃考えるようになった。一種の洗脳だろうか?

 

 その後、スーパーにつき食材を買い始めると、毎度のごとく顔なじみの店員さんや近所の人たちから嫁さんだなんだのからかわれる。

 それに対し穏乃は元気よく返事をして憧は照れつつも肯定しており、それを皆で微笑ましく見ていて既に日常の風景となっいた。

 いや、本当に阿知賀の人たちの器は世界一かい。

 

 それから帰宅すると憧と穏乃がさっそく料理に取り掛かり始め、その間に俺は残った仕事を片付ける。ちなみにこの光景は毎日人や場所は変われども見られる光景である。

 玄や宥は旅館の娘らしく上手だし、和や灼も家で家事をしている為上手く、晴絵も意外に上手だった。

 

 

「だって……いつか京太郎に手料理を食べさせたいって思ってたし……」

 

 

 だから乙女かっての。

 そうこうしている間に料理もでき、三人で食べ始める。

 

 

「うん、ちょっと形が崩れてる所もあるけどおいしいぞ穏乃」

「えへへ~」

 

 

 穏乃が作ったハンバーグを食べて素直な感想を言うと喜ぶ。こうなるまで料理なんてしなかった穏乃も皆に教えられて段々とうまくなってきたな。

 そして夕食後、三人とも風呂に入ったあとまたのんびりとする。

 

 

「よし、それじゃあ始めようか。準備するから待ってて」

 

 

 そういうと穏乃を連れて別の部屋に行く憧。準備っていったい何をする気なんだ……。

 不安と期待の中でそわそわしつつ五分ほど待つと二人が戻ってきたが、その恰好は――

 

 

「じゃーん、どう? 似合ってる?」

「あははーなんか恥ずかしいねぇ……」

 

 

 二人が着ていたのはどこのコスプレ喫茶だよって、言いたくなるような水着メイド服だった。

 近頃コスプレ慣れしたのか堂々とした憧とこういった服を滅多に着ないため恥ずかしがってモジモジしている穏乃。

 大事な部分は隠れているとは言えその姿は扇情的であり、グッとくるものがあった。

 

 

「おいおい、そんな服どこで手に入れたんだよ?」

「この前ネットで見つけて可愛かったから思わず買っちゃった♪ それで感想は?」

「ああ、すごくいいと思う」

「にひひ」

 

 

 褒めてやると嬉しかったのか憧が普段とは少し違った顔で笑い出す。しかし……似合うけどこれって確実に如何わしい目的用だよな……。

 マジマジと憧を見つめていると裾のあたりが引っ張られたので振り向くと、そこには膨れた顔の穏乃がいた。

 

 

「むー、憧ばかりズルい! 私はどう?」

「ああ、もちろん穏乃も似合ってるよ。胸元のハートがお洒落でいいぞ」

「ウェヒヒ、やったー!」

 

 

 褒めてやると途端に機嫌を直す。実際に憧とは少し違った感じの水着でよく似合っている。

 

 

「って、もしかして今日はこの格好でか?」

「そういうこと、京太郎さんこういうのも好きだもんねー」

「うん、前に部屋にあった雑誌に載ってたもんねー」

 

 

 顔を見合わせて仲良く声をそろえる二人を見ていると暖かくも複雑な気持ちになる。 

 だっていつの間にか俺のプライベートが侵害されているし……今更過ぎるが。

 

 

「それじゃあ今日も頑張るよー」

「あ、こらしずずるい!」

 

 

 そういうと俺に飛び掛かって来る二人に押し倒されると、ぶつくさ文句を言っていた俺もやる気になったので今日も頑張ることとなった。

 その日二人が泊まって行ったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 こんな感じで俺の生活は二か月前とは一変してしまい、俺自身も未だにこれでいいのかと思うこともあるが、それでもこの生活も悪くないと思い始めていた。

 

 この先、何年も経たないうちに子供も出来るだろうし、そのためには俺自身が今よりももっと成長して、皆を支えられるような男にならなくちゃいけないと思う。

 皆は助け合えばいいんだから俺だけが無理をする必要ないって言うだろうが、それでも男の意地がある。

 

 それに……まあ……なんだ、惚れた女たちなら自分で守ってやらないとな。

 そんな決意を胸にし、須賀京太郎は阿知賀でこれからも逞しく生きていくのだ。

 ……………………………ただ、腰の痛みだけは簡単に慣れそうにもないのは問題であった……筋トレでもするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝目が覚めると、寝ている二人をそのままにして朝食を作り始める。やはり今日も腰が痛いが、男の意地で我慢する。

 

 

「おはよー……京太郎さん。着替え見当たらないんだけどどこにしまったっけ?」

「おう、おはよー憧。着替えなら玄が洗って向こうの箪笥に……ってなんだもう既に着替えてるじゃん」

 

 

 寝起きだからボーっとした顔で挨拶をしてくる憧に返事をし、振り向くが憧の言葉に反して既に着替え終わっていた。

 なんだ寝ぼけてるのか?

 

 

「え? 何言ってるの? 私まだ裸のままだよ」

「そっちこそ何言ってんだ。制服ならもう着てるぞ」

 

 

 そういう憧だがどう見ても既に阿知賀の制服を着ているように見える。

 しかし俺が言っていることがわからないのか、話しているうちに覚めてきた眼で自分の全身を見直す憧。

 

 

「いや、やっぱり裸のままだし服なんてきてないってば」

「え?」

「え?」

「「え?」」

 

 

どうやらこの先も俺と七人の嫁達の未来は前途多難そうだった。

 

 ――――――To be continued?




Q.こいつらナニやってるの?

A.社交ダンスじゃね?


本編放置してこんなの書いてて正直すまんかった。
題名は本編に合わせて「穿いていた物語」にしようか悩んだけど、こっちの方がしっくりきたので穿いていないに。

この後、全国の猛者を手下にした宮永姉妹の奪還編とか、京太郎のオカルトに目をつけて婿にしようとする永水巫女編とか考えたけど続かない。


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