君がいた物語   作:エヴリーヌ

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 本編が全然書けていないので、以前から少しずつ書いていたドラ○もんのパロを投稿しました。

 ちなみに本編とは全然関係ないですし、教師すら関係ありません。レジェンドは山に帰りました。

 あと練習もかねていつもとは違い三人称視点で書いてみました。




タコえもん さき太の恋愛冒険記

「はぁ~またお母さんに怒られちゃった…」

 

 

 日本の長野県に宮永咲と言う、とある少女が住んでいた。

 彼女は勉強と運動が苦手で、テストは毎度赤点、マラソンをやればビリという、まさにポンコツという言葉が似合う少女だった。

 そんな彼女は今日もテストで赤点を取り、母親に怒られ部屋で落ち込んでいた。

 

 

「でも勉強は嫌だし、昨日買った本でも読もうかな」

 

 

 しかしそんな彼女にも趣味があり、それは読書だ。

 つい先ほど母親に怒られたばかりだったが、勉強はせずに本を取り出す咲。普段なら少しは勉強しようとする姿勢だけは見せるのだが今日は違う。

 なぜなら母親に怒られただけではなく、学校では学生会議長でありガキ大将の竹井久や子分の染谷まこに「咲のくせに生意気だ!」と虐められたことや、幼馴染でありクラスのマドンナの須賀京太郎が、優等生の原村和と一緒に図書館に勉強に行ってしまったことにより落ち込んでいたからだ。

 咲も京太郎から誘われたのだが、本は好きだけど勉強が苦手なので思わず断ってしまった。

 

 

「うう~京ちゃんも私が勉強苦手なのわかってくせに~」

 

 

 もちろん京太郎も苦手だからこそ咲の事を心配して誘ったのだが、咲には意地悪にしか思えなかった。

 一緒にいた原村和も咲の友達であり親友なのだが、ポンコツな自分と比べて頭もよく、高校生になってからはさらにスタイルに磨きがかかっており、近頃劣等感を感じている相手だ。

 なので、背も高く顔立ちもそれなりに良い京太郎も含めた三人で一緒にいると尻込みしてしまい、二人が最近仲の良いのもあって自分だけのけ者にされているように感じてもいる。

 一応補足をすれば、咲も地味めだが十分可愛い部類に入る顔立ちをしており、小動物的な仕草もあって男子からは人気があるのだが、当の本人からすれば知らない人からの批評などどうでもいいのだった。

 

 

「ふーん、だ。いいもん、皆が忙しい中私はこの本読むんだからね!」

 

 

 次に控えているテストのことなど忘れて本を読みだす咲。人はこれを現実逃避ともいう。

 それからしばらくの間咲は楽しく本を読んでいたのだが、途中何やら物音に気付いた。

 

 

「ん?何の音?………机?」

 

 

 咲が音の正体を探すために部屋の中を見渡していると、机の引き出しが動いているのに気付いた。

 どうしようか考えているうちに、さらに引き出しの揺れがどんどん大きくなっていく

 

 

「ちょ、なにこれ!?どうし『ガラッ』キャア!」

 

 

 怖くなって逃げようとしたところで、いきなり机の引き出しが開いたと思ったら――

 

 

「ふぅ…やっと着いたじぇ。お、あんたが宮永咲か?」

 

 

 中から出てきたのは咲と同じぐらいの少女だった。

 少女はなぜか咲の名前を正確に当ててきたが、当の咲本人はあまりのことで声が出ない状態である。

 放心する咲を尻目に引き出しの中から少女が出てくる。

 

 

「よいしょっと…ほら、私が聞いてるんだから早く答えるべきだろ」

「え、えっと…はい、宮永咲ですけど…あなたは?」

「ふっふーん、よく聞いてくれたな!私こそタイムマシンで22世紀より来た!クギミヤ型ロボットのタコえもんだじぇ!」

「………………」

 

 

 変人だ。どこからどう見ても変人であった。

 確かに引き出しから現れるというありえない出来事を起こしたのは見ていたが、咲からすればタイムマシンで未来から来た、と言うトンデモ理論よりまだマジシャンや幽霊の方が信じられた。

 勝手に家に侵入して電波な事を言う少女をどうするべきか悩み、とりあえず警察かと携帯電話を取り出そうとした咲にタコえもんが言う。

 

 

「しかしアレだなー写真で見たとおり、本当にちんちくりんだな」

「ちんちくりん!?あなただって背中と胸の区別がつかない体型してるじゃない!」

「72をー!私は成長期だから将来はもっとバインバインになるんだじぇ!お先真っ暗のお前とはちがうんだじょ!」

「(自称)ロボットが成長するはずないでしょ!」

 

 

 ギャーギャーと、どうしようもないことで張り合う二人。

 するとどこからともなく人影が現れて二人を止めに入る。

 

 

「あー、もう…いい加減にするっすよ二人とも」

「ちょ、あなた誰!?というか二人とも勝手に人の家に入らないでよ!警察呼ぶよ!」

「止めないでほしいんだじぇモモ!」

「あー…警察は困るし、タコえもんの事は謝って私たちの事も説明するんで、とりあえず話を聞いて欲しいっす」

「………はぁ…しょうがないなあ…」

「ちっ…今日はここまでにしておいてやるか」

 

 

 いつまでもこうしていてもしょうがないと思い、罵り合うのをやめる咲とタコえもん。

 落ち着いた咲は改めて二人を見ると、タコえもんだけでなくもう一人の少女も自分と同じぐらいの年齢だと気付く。

 タコえもんは背も低く、凹凸のない体をしているのに対し、もう一人はスタイルもよく胸も同年代に比べ大きく膨らんでおり、咲のイライラ感が増した。

 ただ、気になったのが、もう一人の少女の気配が普通の人より薄く感じられたのだ。

 自分を観察する咲を気にせずに、影の薄い少女は一度深呼吸をしてから口を開く。

 

 

「それじゃあ自己紹介なんですけど、私は東横桃子という名前でして………未来からやってきたあなたの子孫っすよ、お婆ちゃん」

「………はぁ?」

 

 

 タコえもんよりもマシな人だと思ったら、同じような電波を繰り返すことに呆れた声を出してしまう咲。

 本気で警察を呼ぼうか悩んでいる咲の横で話を続ける桃子。

 

 

「もちろん信じられないかもしれないでしょうが事実っす。その証拠に…ホラ」

「?………これって私の?」

「そうっす、昔お婆ちゃんが幼馴染さんに貰ったっていう手作りのブローチっす。ずっと大事にしまってあったのを未来にある本家からちょっと持ってきたんです」

 

 

 桃子が取り出したのは昔京太郎から誕生日プレゼントとして貰った手作りのブローチとそっくりのものだった。

 一瞬大事にしまってあるブローチを盗まれたのかと思い、机の下の段から急いで鍵のついている箱を取りだし、中を確かめる咲。

 するとそこには昨日見たのと同じ状態のままのブローチが収まっていた。

 

 

「はぁーよかったーーー…」

「これで信じてくれたっすか?」

「うーん…でも………ちょっとそれ見せて」

「はい、でも壊さないように注意してほしいっす」

 

 

 咲はそう言う桃子からブローチを受け取ると自分のと見比べてみた。

 確かに自分が持っているのと細部もそのままそっくりだったが、しかし咲が持っているのと違い、大事にしていたのはわかるがそれでもくたびれている部分もあり年季を感じられた。

 手作りの品をここまで似せたものが存在するとは考えにくいし、先ほどの話も信憑性が増したが、それでも胡散臭いことには変わらない。

 しかし完全に否定するのも出来ないので、話だけは聞いてみるのもありではないかと思えてきたので、咲は改めて話を聞いてみようと考えた。

 

 

「わかった。一応あなたたちの話を信じてあげるから、過去に来た理由を話してくれる?………あと部屋の中だから靴を脱いで」

「「あ」」

 

 

 

 

 

 

 

 履きっぱなしだった靴を脱いでベランダに置くと、床を掃除する三人。

 ある程度綺麗になると、話を続けるために桃子と咲は姿勢を正す。

 

 

「それであなたたちの話が本当だとしたら、わざわざ過去に来た理由は?」

「それなんですけど…多分ショックを受ける思いますが、事実なんでしっかりと受け止めて欲しいっす」

「…その話を聞かないことにはどうするかわからないけど…とりあえずわかったよ」

 

 

 深刻そうに話す桃子に頷く咲。一方タコえもんは我関せずで、タコを齧っていた。

 

 

「それじゃあまず…私が子孫だとしてお婆ちゃんは将来誰と結婚すると思うっすか?」

「え?唐突になんで?」

「この後の話と関係あるんでとりあえず答えて欲しいっす」

「あ…えーと………もしかして…京ちゃん?」

 

 

 一番自分に身近で尚且つ恋心を抱いている男性の名前を照れつつも挙げる咲。

 実際麻雀以外に取り柄の自分のことなんて相手にしてくれる男性なんてこの先も現れないだろうし、一番可能性があると考えた。

 しかし無情にも桃子が告げる名前は別人であった。

 

 

「違うっす、池田っす」

「誰!?」

「しかも女性っす」

「女!?」

 

 

 驚愕の事実に目を見開いて大声を上げる咲。

 京太郎以外と結婚していることにも驚いたが、それ以上に同性と結婚しているという事実に驚いている。

 言葉を失っている咲に説明を始める桃子。

 

 

「詳しく説明すると、数年後に須賀京太郎と原村和が付き合い始めて、その後結婚するんです。そして幼馴染と親友が同時に居なくなったお婆ちゃんは、鬱憤を晴らすがごとく麻雀のプロとして暴れるんですが…ある時一緒に飲んでいた池田と酔った勢いでヤッちまうんっす。んで、一人身で寂しさの積もっていたお婆ちゃんはそのまま転がり落ちるように池田と結婚しました。これ当時の写真っす」

「喪女乙だじぇ」

 

 

 そういって桃子が取り出したのは、仲良さげだがどこか虚ろの笑みを浮かべる女性二人の写真だった。片方の髪の毛が猫耳っぽい女性は知らないが、もう一人は咲が鏡で毎日嫌と言うほど見ている姿だ。

 

 

 

まるで成長していない………。

 

 

 

 説明を聞く咲だったが、京太郎と和が結婚すると言う話と大して成長していない自分の写真を見て、頭がパンクしそうだった。

 その様子を見てもなお、桃子の説明は続く。

 

 

「しかし日本では隠れて付き合うならともかく同性婚は認められてないっすよね。流石に周りは反対しましたし、麻雀界のトップに立つ宮永咲の事ですから、マスコミも騒ぎ立てますし、ハッキリ言って普通に暮らしていくのなんか無理でした。だから二人は同性婚が認められている国に移住し、そこで子供を作りますが………ここで一つ質問っす。同性で子供を作るにはどうしたらいいでしょうか?」

 

 

 説明を続ける中で桃子が聞いてきたので、咲は本やテレビで知った知識を探り、つっかえつつも答える。

 

 

「え?ええと…あれじゃないかな?少し前に話題になったiPS細胞ってやつ?」

「その通りっす。しかしこの時代でようやく話題になったぐらいですから、宗教や倫理観の問題もあり数年経った当時でも子供なんて一切作ることなんてできないっす。だからプロ時代に稼いだお金で秘密裏に作ったみたいなんですけど、これには大きな問題がありました」

「問題………?」

 

 

 考えても思いつかないので咲が尋ねると、先ほどよりも深刻な顔をして桃子が答える。

 

 

「先ほども言いましたが当時研究段階、しかも裏のルートを使ったから完全な子供を作ることなんて到底できなかったっす。多分お婆ちゃんも気付いてると思うけど、私って気配が薄いですよね?」

「うん、ちょっと透けて見えたりするかな」

「そう…私は家族のような身内やお婆ちゃんのようにオカルトが強い人には見えるんだけど、普通の人からは気付かれない体質っす。このようにお婆ちゃんの子孫達は、幸いにも体の器官とかは異常はなく育ったんですが、私のように強いオカルトを皆もって生まれるようになったんっす」

「咲ちゃんも池田もペッタンコなのに、子孫は皆デカイからな。やっぱり突然変異だじぇ」

 

 

 深刻そうな話をしているところに、余計な事を言って口を挟んできたタコえもんを睨む咲。

 咲としては自分が貧相な体をしているのはこの十数年で理解しているし、姉と母親を見て諦めているのだ。余計なお世話である。

 タコえもんを睨みつける咲を無視して話を続ける桃子。

 

 

「それに未来でも同性婚やiPS細胞での子供を作るのを認めている国は少ないっすからね。私のお爺ちゃん…つまりお婆ちゃんの息子っすね。その代で日本には戻ったんっすけど、未だに自分たちがそうやって生まれたってのは表には出せないっす」

「う…ごめんなさい」

「ああ、別にお婆ちゃんが謝ることないっす。悪いのは将来のお婆ちゃんで、今のお婆ちゃんじゃないっすから」

 

 

 あまりフォローになってないと思う咲だったが、当の桃子自身が本気でそう思っているみたいなので口には出さなかった。

 そして、そこまでの話でなんとなく予想がついた咲は桃子に確認を込めて尋ねる。

 

 

「それで…そのオカルトとかを消したいから未来を変える為に過去に来たの?」

「違うっす」

「へ?」

「ああ、いや…そういうこともあるんですけど、一番の問題は男の子にモテないことっす」

「………………………は?」

 

 

 わりと深刻な表情で尋ねた咲だったが、桃子があっけらかんと否定したので目が点になり、え?じゃあなんのために?と頭が疑問でいっぱいに咲に桃子が力図強く答える。

 は?男?モテない?咲のポンコツ頭は只でさえついていけてなったのに、さらに爆発しそうだった。

 フリーズする咲を余所に、桃子は拳を握りながら力強く話を続ける。

 

 

「あれなんすよね…お婆ちゃんの娘、つまり私のお爺ちゃんの妹さんの頃から女の人は一切結婚とかをすることが出来なくなったんっす」

「???」

「別に男の人はうちのお父さんみたいに問題なく結婚してるんだけど、なぜか女の人に限って一切男の人と恋人関係にすらなれないっすよね…。お爺ちゃんの姉のトシお婆ちゃんはずっと独身ですし、お父さんの妹の霞叔母さんは37歳なのに未だに処女でファーストキスもまだらしいっす。私なんてこの体質もあって男の子とまともに話したことなんてないっすよ!」

 

 

 先ほどまで深刻な問題だったのにいきなりモテるモテないの話になり完全についていけていない咲。

 しかし当人にとってはこれが一番深刻な問題らしく、力強くも重い声で話が続けられる。

 

 

「確かに別に恋人とかだけが人生の楽しみではないですし、男の人にモテないなら女に走ればいいじゃないか、と言う意見もあるかもしれないけど、別にそういう性癖は皆持ってないっす。それにお婆ちゃんたちが日本を出た後、お婆ちゃん達は麻雀以外ポンコツだから相当苦労したらしくて、一族の間では同性婚は一切認めないって言うのが決まりなんです」

「あ、はい」

「そしてこういった事情もあり、この体質をこの先の子孫に残さないのもありじゃないかという意見も出たんだけど…やっぱり本音としては女としては恋人とか作ってみたいっすよ!だったら過去変えようって話になってこうやって過去に来たっす!」

「えーと…まとめるとつまり………私が女に走らないように来たと?」

「その通りっす!」

「……………………………」

 

 

 本気で頭痛がするような話であった。未来の話も胡散臭いが、今の話も実に眉唾物である。

 咲からすれば自分の性癖はノーマルであり、未来とは言え女性に走るとは思えない。

 しかし桃子の表情は真剣そのものであり、嘘をついているように思えないのもまた事実であった。

 

 

「そこで私達がお婆ちゃんを例の幼馴染さんとくっつけるっす。どうせお婆ちゃんのことだから他に相手もいなそうだし」

「ひでぶ!」

 

 

 痛い所を指摘されて思わず倒れ込む咲。

 しかしちっぽけだが、まだ残っている女の意地で立ち上がる。

 

 

「そ、それでその方法って?やっぱり食べさせた相手を惚れさせる蒟蒻や相手の心が分かるような鏡みたいな未来の不思議の道具を使うの?」

「は?何言ってるんですか、そんな便利な道具あるわけないっすよ。漫画の読みすぎっすよお婆ちゃん」

 

 

 そんな未来の道具あるなら欲しいと告げる咲を冷静に切り捨てる桃子。

 その答えに思わず焦る咲だったが、未だに横でタコ焼きを頬張るタコえもんを指差す。

 

 

「え?でもタコえもんみたいなすごいロボットやタイムマシンを作れるならそれぐらい…」

「あ、それ嘘っす」

「………はぁ!?」

「タコえもんはちょっと頭がアレなただの人間ですし、タイムマシンなんて使ってないっす」

「失礼だじぇモモ!」

「あははーゴメンっす。あ、ちなみに私たちが来たのも本当は70年近く先の21世紀っす」

 

 

 思わず声を上げるタコえもんとじゃれ合う桃子だが、咲はこのノリについていけない。それでも一縷の希望をかけて尋ねる。

 

 

「え?じゃあどうやって過去に?」

「そこは私の力だな」

 

 

 そう言ってない胸を張るタコえもん。口元に先ほどまで食べていたタコ焼きの滓が残っている。

 意味が解らず、話についていけてない咲に桃子が説明を始める。

 

 

「タコえもんはタコスを食べるとその分不思議な力が使えるんです」

「えー…たとえば?」

「部屋の中で失くしたものが見つかったり、急いでいる時に赤信号に引っ掛かったりしなくなったりするっす」

「うわー…微妙」

「麻雀でしか役に立たない咲ちゃんよりマシだし」

 

 

 余計なお世話だ。プロで稼げる最高の能力じゃないかと思う咲。

 そして確かに少し嬉しいが、タコえもんの能力は微妙に役に立たない力であった。しかもタコスというところが余計に微妙である。

 日本でタコスを売っている店なんてそう多くないし、肝心な所で役に立たなそうである。

 

 

「まあ、もちろん一個じゃ力が足りなかったっすから、一個一万円するタコスを100個食べてもらったっす」

「余は満足なり。でもタコスは飽きて来たからしばらくはいいんだじぇ」

「おい」

 

 

 それでも100万かければ過去に行けるのは何気に凄いと思ったので、出費は痛いがそれなりに使えると思ったが、しばらく食べないと言うタコえもんに呆れる咲。

 そして能力が使えないならどうするんだと頭を抱える。

 

 

「まあまあ、その分私たちが手伝うから大丈夫っすよ」

「…でも、あなた達恋愛経験は?」

「タコスが恋人だじょ!」

「男の子とまともに話したことないっす!」

「…………………」

 

 

 眩暈がしてきた咲であった。

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ~ここってこんな広い田んぼだったんすか~こっちではここは普通のデパートっすよ」

「やっぱり未来って結構色々変わってるんだ」

「といっても、ぶっちゃけマンガみたいな未来的な建物なんてないんだけどな。多少便利になったけど、空飛ぶ車も、空中を走るスケボーもないんだじぇ、マーティ」

「よくそんな古い映画知ってるね…」

「100年経とうと名作は名作っすよ」

「ヘビィだね、ドク」

 

 

 あれからこの先どうやって京太郎を落とすか話してあっていた三人だったが、とりあえず本人を見ないことには始まらないと言うことで外に出て探している。

 そして今後のことも兼ねて咲が二人を案内しており、写真などの資料では知っていても、実際に見る過去の街に驚く桃子達。咲としては未来的なものに憧れるので、詳しい話を聞くが、タコえもんに夢も希望もバッサリと切られる。

 先ほど未来の携帯電話などの道具を見せられたが、確かに桃子とタコえもんのどちらも今の時代と変わらない服を着ているし、残念ながら予想外の発展などはしていないんだろうなと思う咲だった。

 ふと、咲は二つほど聞き忘れていたことがあったのを思い出し、桃子達に尋ねる。

 

 

「そういえば未来の私ってどうしてるの?」

「若い時の苦労が祟ったのかとっくに死んでるっす」

「あっそ………あと私の結婚相手を変えたら、タイムパラドックス的なので未来のあなた達も今とは別人になるんじゃない?」

「そこはご都合主義で何とかなるっす」

 

 

 やはり夢も希望もなかったと思ったら、変な所で現実的じゃなかった。

 

 

「ちなみ未来の島根にもパソコンはないじぇ」

「それは知ってる」

 

 

 

 

 

 そのまましばらく話しながら歩き続けていたが、途中でタコえもんが忘れてたとばかりに咲に尋ねる。

 

 

「それでその京太郎ってのは何処にいるんだ?」

「えーと…多分図書館でまだ勉強してると思うけど…そういえば、二人とも京ちゃんのことはどれぐらい知ってるの?」

「一応写真で見たことはありますけど、直接会った事はないんで人づてで色々聞いたぐらいっす」

 

 

 そういうと桃子が漫画やアニメの如く、胸元から写真を取り出した。それを見た咲の目が険しくなるが、巨乳への嫉妬を押さえてそれを見る。

 すると、そこには今よりも少し大人に見える京太郎と咲が写っており、二人とも楽しそうに笑っていた。ただし昔から京太郎は写真映りが悪い為、実際の本人よりも少し人相が悪く見えた。

 

 

「なんでも高校二年の修学旅行に行った時の写真らしいっす」

「そっか…京ちゃんもっとかっこよくなるんだね」

「咲ちゃんは変わってないけどな」

「ちなみにこの数か月後、原村和と付き合い始めたらしいっす」

「あべし!」

 

 

 タコえもんの鋭い一言と桃子の追い打ちによる倒れる咲。容赦ない二人組である。

 

 

「ほらほら、起き上がるっすよお婆ちゃん。そんな未来にしたくないなら早く幼馴染さんを探して頑張るっす」

「うん…そうだね桃子ちゃん」

 

 

 桃子に励まされて決意をあらわにして立ち上がる咲。

 そうだ!自分は絶対に和ちゃんに勝つ!と意気込む咲に、聞き覚えのある声が聞こえた。

 振り向くと、そこには先ほど話していた京太郎と和がいた。

 

 

「それでさ、さっきやった数学の問題だけどやっぱ咲にはキツくないか?」

「そうですね…でしたらもう少しわかりやすい方法に変えて見ましょうか」

「だな、…って咲じゃないか、なんでここに?」

「え!?えっと…それより京ちゃん達こそなんでここに?図書館に行ったんじゃないの?」

 

 

 和と話しながら歩いていた京太郎が咲に気付き声をかけてくるが、いきなりのことでテンパる咲。

 とりあえず話を逸らし、その間に理由を考えようとする。

 そして咲に質問を返された形になる京太郎だったがそれを気にせず、どこか照れくさそうに答える。

 

 

「いや、なんか今日、咲の様子が変だっただろ?だから早めに切り上げて咲の家まで行こうとしてたんだ」

「ふふ、須賀君ったら咲さんが心配で落ち着きなかったですもんね」

「そ、そんなことねーし!」

 

 

 和に暴露されて恥ずかしがる京太郎の様子に、自分を心配してくれていたことに喜んでいいんだか、和と仲良さげで嫉妬するべきか悩む咲だった。

 そして和とのやり取りにどこか拗ねつつも、京太郎がもう一度咲の方を向く。

 

 

「ちぇ、それで咲はどうしてここに?」

「そ、それは…「咲ちゃんは私たちに街を案内してくれてたんだじぇ」」

 

 

 少しの時間では誤魔化す内容が思いつかず困っていた咲の前に、いきなりタコえもん体を割り込ませてきた。

 突如現れたタコえもんに驚く京太郎と和だったが、咲の知り合いっぽいと思い、とりあえず話を聞いてみることにする。

 

 

「そうなのか…えっと…」

「おっと、自己紹介はまだだったな。私は片岡優希って名前で、咲ちゃんとは親戚なんだじょ」

「そうだったのか…俺は須賀京太郎、咲の幼馴染だ。よろしくな」

「私は原村和です。咲さんとは友人をさせてもらっています。よろしくお願いします」

「よろしくだじぇ!」

 

 

 うまい具合に二人を誤魔化すタコえもん。最初に咲に突っかかってきた時とは違い、和やかな雰囲気である。

 気を逸らした二人とタコえもんを置いて、後ろで咲と桃子が密談を始める。

 

 

「まさかイキナリ遭遇するとは思ってなかったっす。でも優希が誤魔化してくれたからセーフ」

「だね。というか片岡優希って?」

「本名っす。タコえもんはただのあだ名で、本人が気に入ってるから使ってるだけなんです」

「あっそう…」

 

 

 思ったよりもくだらない理由だったので萎える咲。

 そして萎える咲をおいて桃子が話を続ける。

 

 

「しかし幼馴染さん、写真で見るよりもカッコいいっすね」

「あはは、京ちゃん写真映り悪いから…」

「なるほど………結構タイプっす」

「おい」

 

 

 ボソっと聞き捨てならない事を言う桃子にドスの利いた声で牽制をする咲。

 手伝うと言ってから一時間も経たないうちの裏切りである。

 

 

「あはは、冗談っすよ。どうせあの人も見えない「おーい」…ん?」

 

 

 追求しようとする咲と誤魔化そうとする桃子に対し、京太郎から声がかかったので二人が振り向くと、先ほどから話していた三人がこちらに寄ってきた。

 

 

「どうしたの京ちゃん?」

「どうしたって…優希だけじゃなく、そっちの子も紹介してくれよ」

「そっちの子「もしかして…!?私が見えるんっすか!?」」

「え?お、おう見えるけど…もしかして幽霊だったとか?」

「いえ、そうじゃないんですけど…私、昔から影が薄くて人から認識されることがほとんどないんです」

 

 

 自分が見えていることに驚き大声を上げる桃子に、京太郎がビビりながらも詳しく尋ねる。

 それに対し、家族やごく一部のオカルト遣い以外に自分が見えているという事実に感動しながらも桃子が説明すると、京太郎が不思議そうな顔をしながら桃子の全身を眺める。     

 ちなみに和も同じように見えているのだが、桃子は気にしていない。

 

 

「へぇーそうは全然見えないけどなー…こんなに(おもちがデカくて)可愛い子だったら見逃すわけないし」

「ピッ!?」

 

 

 思わず素直に感想を呟いた京太郎の一言で、トマトも裸足で逃げだすほど顔を真っ赤にする桃子。

 桃子からすれば家族以外の男性に話しかけられることも初めてだったし、褒められたことなんて同じくなかったので、一瞬で出来上がってしまったのである。

 勿論この様子に黙っていない者達がいた。

 

 

「なんでいきなりセクハラしているんですか」

「モモちゃんに何するんだし!」

「京ちゃんゴッ倒すよ…」

「ちょ、悪気はなかったんだ!すまんって!?」

 

 

 顔を真っ赤にして蹲ってしまった桃子を見た女性人からフルボッコにされる京太郎。

 その後、ある程度弄って満足したのか、咲が恥ずかしさで蹲っている桃子のもとに行く。

 

 

「大丈夫だった?もう…京ちゃんたらいきなりあんなこと言いだして…」

「…………………あの、お婆ちゃん…」

「ん?なあに?」

「さっきの撤回していいっすか…?本気になりそうっす」

「おい!」

 

 

 心配して来た咲に、爆弾発言をかます桃子。

 裏切りである。先ほどの発言から10分も経たないうちに、某国民的アニメのマスコットキャラの豚ですら度肝を抜かす裏切りであった。

 

 

「まったく…とりあえず京ちゃんにアプローチにするから手伝ってね」

「むぅ…敵に塩を送るのは…」

「何か言った?」

「なんでもないっす。で、手伝うってどうすれば?」

「それは…えーと…と、とにかく行こう」

 

 

 魔王の如きオーラを出して威嚇する咲に表向きは従う桃子。

 しかし良いアイデアも浮かばないので、たりあえず京太郎を落とすために向かう咲達。

 

 

「あのね京ちゃ「ちょっと待ったー!」今度はなに!?」

 

 

 上手くいったらデートにでも行けるんじゃないかと思い、話しかける咲だったが、邪魔をするように入った誰かの声に、思わず声を荒げる。

 そして声がした方向を咲達が見ると、そこには二人の女の子がいた。

 一人は咲達と同じぐらいの年の金髪で活発そうな美少女。

 そしてもう一人は咲達より少し年上に見え、銀髪でどこか眠たそうに見える美少女だった。

 二人は五人に近づくと、金髪の少女が桃子たちにビシッと指を向ける。

 

 

「悪いけど、あんたたちの好きにはさせないからね!」

「くっ…出たっすね100年婆!まさかこんな所まで来るとは…!?」

「婆じゃないし!ただの100年生だし!」

「1年生なのに100年生を名乗ってるってことはやっぱ婆っすよ!」

「そういう意味じゃないもん!」

「ダル…」

 

 

 ギャーギャー言い合いを始める桃子と金髪の少女。

 もう一人の少女は関わり合うのが面倒なのか、ダルいと呟きながら近くの電柱によりかかる。ただしその視線はジッと京太郎に向けられており、当の京太郎はその視線が気になるのか落ち着かない様子だ。

 とりあえず状況がわからないので、手が空いているタコえもんに京太郎と和に聞こえないように尋ねに行く咲。

 

 

「ねえ、この二人誰なの?もしかして…二人と同じ未来人?」

「あー…そうだけどなー…」

「???」

 

 

いつものタコえもんと違い、どこか歯切りが悪い様子に疑問顔の咲。

すると決心がついたのかタコえもんが口を開く。

 

 

「その二人は京太郎とのどちゃんの子孫だじぇ」

「……………………………………………………………………………………………………」

 

 

 あ、いつの間にか名前やあだ名で呼びあうぐらい仲良くなったんだーあははー。と現実逃避を始める咲。完全に思考がついて行ってない。

 やっぱり壊れたかー、と予想通りの反応を示す咲を放置し、未だに喧嘩をする二人を見つつも、電柱によりかかる少女へと近づき話しかけるタコえもん。

 

 

「まさか二人も来てるとは思わなかったな」

「まあ、流石に自分のご先祖のことだしね…ダルいけど」

 

 

 態度と口の両方でダルイと言うことを表している少女だが、やはりその目は獲物を狙う猛禽類のごとく京太郎を見ている。

 相変わらずだなーと思いつつも、とりあえず喧嘩をしている二人を収める為に動くタコえもん。

 

 

「大体モモみたいな根暗じゃ、その体質を変えたって男にモテるわけないから無駄な努力だもん!」

「淡だって『大星?高飛車で性格悪いから付き合うとか無理だろ』って男子に言われてるの知ってるっすよ!」

「ちょ、誰よそれ!?そいつらの名前言いなさ「あー…二人ともそこらへんでやめとくし」」

「とめないで欲しいっす優希!」

「そうよ!」

「でも、いい加減にしないと京太郎たちが置いてけぼりくらってるじぇ」

「「あ」」

 

 

 さらにヒートアップする二人を止めに入るタコえもんだったが、収まりそうになかったので最終兵器京太郎を使うと効果は抜群だった。

 実際京太郎は銀髪の少女の視線に晒されて、居心地悪そうにしながらも喧嘩をする二人をハラハラと見ていたし、和も同じようにどうするべきか困っていた。

 そんな二人の様子に場を収めた二人は、先ほど喧嘩をしていたとは思えないほど息の合った動きで京太郎達の方へ向かう。

 

 

「まったく…ほらシロもいくじぇ」

「ダルい…」

「咲ちゃんもいい加減帰って来い」

「………は!?私と京ちゃんの結婚式は!?」

「ジャスト一分。夢は見れたか?」

 

 

 タコえもんはそんな二人を見て「なんだかんだでいいコンビだじぇ」と呟いた後、シロと呼ばれた少女を引きずり京太郎のもとへと向かい、未だ現実逃避している咲も起こす。

 それから全員が落ち着いたことで、改めて残りの二人の自己紹介を始める。

 

 

「えっと………これはただの通りすがりっす」

「違うでしょ!ちゃんと自己紹介しなさいよ!」

「ちっ………ええと、同級生で…認めたくないけど………一応幼馴染の大星淡とそのいとこの小瀬川白望さんっす」

 

 

 説明するのが心底嫌といった表情で桃子が嘘をつくが、もちろん通用するわけもなく淡にド突かれる。そんな淡に剣呑な視線を向けるも、仕方ないと思いしっかりとした自己紹介をする。

 そして自分達からも挨拶をしようと前に出る二人。

 

 

「初めまして大星淡です!淡って呼んでね」

「小瀬川白望…シロでいい」

「あ、初めまして須賀京太郎です。よろしく」

「原村和です」

「ええと…宮永咲です」

「キョータローね、よろしく!」

 

 

 改めて自己紹介をする二人に同じように返す京太郎達。しかし淡達の視線は京太郎一人に向けられており、京太郎は戸惑っている。

 こうして改めて正面から二人を見た咲は、確かにどちらも京太郎の面影があるように感じた。淡は京太郎と同じで自然の金髪をしているし、白望は顔立ちが京太郎に似ている。

 やっぱりこの二人は京太郎の子孫なのかと納得しつつも、咲は詳しい事情を聞こうと桃子に近寄る。

 

 

「ねえ?あの二人が来たのって…」

「お婆ちゃんの考えてる通り、私たちの邪魔をするためだと思うっす…くっ…まさかあの二人まで来るとは想定外っす」

「過去に飛べるのはタコえもんだけじゃなかったの?」

「多分ドラミの力で来たんだろうじぇ」

 

 

 二人の会話にタコえもんも加わるが、また新しい名前が出てきたことにうんざりする咲だった。

 しかし放置しても仕方ないと思い尋ねる。

 

 

「ドラミって?」

「タコえもんと似たような、ちょっと変わった能力を持ったオカルト遣いっす」

「ちなみに必要なのは麻雀のドラな。あいつの部屋は赤牌で占められてるんだじぇ。あれは変態の部屋だったな…」

「姿が見えないのはどうせ『お、あのお姉さん良いおもち!』とか言って街中を歩き回ってるんでしょうしね」

 

 

 ドラミとやらを酷評する二人だったが、咲からすればタコスもドラもどっちもおかしいことに変わりはなかったし皆変人であった。

 そして彼女たちが過去に来た理由や方法はわかったが、それよりも気になることがあったので咲は再度二人に尋ねる。

 

 

「ねえ、なんであの小瀬川って人は京ちゃんをガン見してるの?」

「あー…それは…」

「きっと久しぶりに会えて嬉しいんじゃないか?」

 

 

 言いよどむ桃子の代わりにタコえもんが答える。しかしその答えにまたもや咲に疑問が出てくる。

 

 

「久しぶりって…京ちゃんと昔会ってたの?」

「正確にはお爺ちゃんになった京太郎さんっすね。私が物心つく前には咲お婆ちゃんは既に死んでたんですけど、シロさんが中学に入るまではまだ京太郎さんは生きてて、一緒に暮らしながらすごい可愛がってもらってたらしいっす。ちなみに、前に一度昔の写真を見せてもらったんですけど、健康的な生活のせいか既に70歳を過ぎてたのに30代で通る見た目してたっすよ…あれは既にオカルトの範疇っす。あとシロさんの初恋だったみたいなことも聞いてたっす」

「未だに毎日線香あげてるらしいじぇ。淡はあまり会う機会はなかったみたいだけど可愛がってもらってたみたいだし」

「シロさんに京太郎さんの話を振ると、一時間は止まらないんっすよね…普段が普段だからギャップとかもヤバいっすよ」

 

 

 いい話だったのだが、途中の台詞で咲の中では既に敵判定されていた。勿論自分にはない豊富な胸肉も憎悪を駆り立てるスパイスの一つだ。

 しかし肉親相手に劣情は催すわけはないと、安心していたのだったのだが――

 

 

「あ、ちなみに未来では近親婚は問題ないっす」

「なんで!?」

「えーと…確か遺伝治療でそういった問題は解消されたから大丈夫みたいな感じだったっす」

「同性婚と違って一応自力で生むこと自体は出来るから、直接の親子じゃなきゃいいってことらしいじぇ。私としてはそれでもやりすぎじゃないかって思うけどな」

「…………………………………」

 

 

 白望の真意はどうなのかはわからないが、先程の空飛ぶ車などの未来の話とは別の意味で、未来に希望が持てなくなる咲だった。同性婚以前に倫理観は既に崩壊してるだろうと…。

 それに万が一京太郎と白望がくっ付いたとしても、どうせこっちでも御都合主義とやらで何とかなるんだろう、とやさぐれてもいる。

 こうして三人が額を突き合わせて相談をしている一方、向こうの四人の話は盛り上がっていた。

 

 

「へぇ~淡とシロさ「シロでいい」…シロの二人も麻雀やってるんだ」

「へっへ~ん、これでもかなり強いんだからね」

「なるほど、一度手合せしてみたいですね」

「お婆…原村さんには負けない」

 

 

 和やかに麻雀の話で盛り上がる四人だったが、その中でただ一人白望はなぜか和に敵意を燃やしていた。

 しかしいきなりそれが消えたと思ったら動き出す白望。

 

 

「ん?どうしたんだ…?っておわ!?」

「ダルい…」

 

 

 不思議そうな顔をしていた京太郎の後ろ回ると、落ちないようにバランスを取り京太郎の背中に乗り込む白望。

 ダルい…と言いつつも、その手足はガッチリと京太郎の体にしがみ付いている。

 

 

「ちょ、いきなりなに!?」

「ダルい…おんぶして」

「もうしてるし!」

「気にしない………はぁ…やっぱりここが一番落ち着く…」

 

 

 慌てる京太郎を余所に、此処こそが自分のあるべき場所だと言わんばかりにくっつく白望。

 その顔は先ほどまでダルいと言い続けていた時とは違い、心底安心しきった表情だった。

 

 

「むー…シロ姉ずるい!私も!」

「だが断る」

「須賀君…いったい何をしているんですか…?」

「え?お、俺が悪いのか?」

 

 

 白望を羨ましそうに見ていた淡が場所を変わるように強請るが、絶対に離れないと言わんばかりに一層力を込める白望。

 一方では額に筋を浮かべながら京太郎を問い詰める和とガチビビリしている京太郎。

 理由はわからないがこのままでは自分の命が危ないと思い、京太郎が背中にへばりつく白望に顔を向けて説得を始める。

 

 

「ちょ、降りてくれないかシロ!」

「………ダメ?」

「だめ………じゃ…ないです…はい…」

 

 

 捨てられた子猫のような瞳で見つめられてしまったので、思わず許可を出してしまう京太郎。

 しかし後ろで和が怒りのボルテージを上げているので、振り向くことが出来ず硬直し動けない。

 

 

「ん…ならいい」

「でも俺の命が…「そうだね、無くなるかもね」…………」

 

 

 

 

 

 京太郎が恐る恐る振り返ると、そこには咲き誇るような笑みを浮かべた魔王がいた。

 

 

 

 

 

「………アノ?サキサン?」

「なに?京ちゃん?」

「ナンデソンナニオコッテルンデスカ?」

「怒ってないよ。怒ってるように見えるなら、それはきっと京ちゃんに何か後ろめたいことがあるからだよ」

 

 

 嘘だ!と叫びたくなる京太郎だったが、恐怖により声が出せない。なぜなら咲だけでなく、大小あれど、和と桃子と淡の三人も怒っていたからである。

 ちなみに白望は爆睡しており、タコえもんは後ろに下がって、腹を抱えながら爆笑をしている。後でアイツは締めようと思う京太郎だった。後があるならの話だったが…。

 

 

「京ちゃん…何か言い残すことは…?」

「俺悪くないだろ!?」

「そうなんだ…じゃあみんなに聞こうか…?イノセント?」

「「「「NONO」」」」

「ギルティ?」

「「「「YESYES」」」」

「だってさ、京ちゃん」

「冤罪だ!?」

 

 

 尋ねる咲に口をそろえて答える三人とタコえもん。確実に締めると誓う京太郎だった。

 もう無理か…せめてシロはケガをしないようにしよう。と、覚悟を決める京太郎に咲が判決を言い渡す。

 

 

「それじゃあ「ちくしょおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」え?なに!?」

 

 

 とりあえず明日一日買い物(デート)に付き合って、と告げようとした咲の耳に獣のような雄叫びが聞こえた。

 その場にいた全員が驚いてそちらを向くと、そこにはすごい勢いでこちらに向かって走ってくる女性がいた。

 そこでなにやら気づいたタコえもんが声を上げる。

 

 

「アレ…ドラミだじぇ!」

「え?アレが?」

 

 

 間違いないと声を上げるタコえもんに、もう一度見返すと咲が納得する。なるほど…確かに未来人(変人)だと。

 そのドラミは漫画でよくあるような、片手を顔に押し付け下を見るポーズで前も見ずに咲達の方へ走ってくる。

 

 ちなみに爆走の理由としては、先ほど「そこのお姉さ~ん、おもち揉んでいいですか?」と素晴らしいおもちのお姉さんに尋ねたのだが、あっさりと断られたのがショックだっただけだ。

 そして爆走を続けるドラミに桃子が気付いた。

 

 

「ちょっと…これってぶつかるっすよ!」

「ドラミ!前!前!」

「………はい?…って!?」

 

 

 大声を上げる淡に気付いたドラミだったが既に時遅し――

 

 

「うわあああああああ!?」「うひゃああああああ!?」

 

 

 そのままシロを背負っていて逃げ遅れた京太郎と正面衝突を起こした。

 しかし常日頃から紳士を気取っている京太郎としては、背負っているシロとぶつかってきた謎の美少女両方に怪我を負わせるわけにはいかないと、火事場の馬鹿力を見せる。

 まず、正面のドラミが背中から倒れないように腕を伸ばし捕まえ支え、そのまま背中から倒れ込みそうになるも踏ん張り、前方に力をいれる。しかしここまではよかったのだが、思いのほか前に力を入れ過ぎたためかそのままドラミごと前に倒れそうになったので、ドラミが地面とぶつからないように背中に腕をまわし抱きしめ、二人が当たらないように体の側面から落ちて行った。

 

 その結果なんとか無事着地することができ、京太郎は少し体が痛かったのだが、二人にケガはないようで安心している。

 この一瞬の出来事に京太郎以外の全員の体がついて行けなかったが、倒れた京太郎を見て急いで駆け付ける。

 

 

「京ちゃん大丈夫!?」

「ああ…ちょっと打ったけどなんとかな」

「はぁ…心配しました…」

「まったく…ドラミは人騒がせだじぇ…」

「ってそうだ、大丈夫ですか?」

 

 たいした怪我もないようなので喜ぶ咲達だったが、腕の中で身動きをしないドラミの様子が心配になって声をかけ、顔を覗く京太郎。

 すると腕の中ではドラミが顔を真っ赤にしていた。

 京太郎がよく見ると、目の前の女性の大変すばらなおもちを自分の左手が鷲掴みにしているのに気付いた。

 

 

「ご、ごごごごごめんなさい!」

「あ…」

 

 

 急いでドラミから離れると、土下座をする京太郎。この間にも背中の白望を落としていなしのは流石である。

 離れた京太郎を見ると、我に返るドラミ。

 

 

「あ…こ、こちらこそいきなりぶつかってごめんなさいです!お兄さんが抱きしめてくれたおかげで助かりました!」

「あ、いえでも…その…触っちゃいましたし」

「えっとそれは…」

 

 

 京太郎と同じように膝をついて礼を言うドラミに自分の方が悪いと頭を下げ続ける京太郎。しかしドラミとしてはぶつかった自分の方が悪いのだと言う。

 このままでは平行線になりそうだったが、途中でドラミが話を変える。

 

 

「それよりも…その…私、ああやって誰かにおもちを揉まれたのも、抱きしめられたのも初めてなのです…」

「本当にごめんなさい!」

「いえ…いいんです。だからその…あなたの名前は?

「はい、須賀京太郎です!」

「京太郎君だね………私、松実玄と申します!不束者ですがよろしくお願いします!」

「………はい?」

 

 

 いきなり三つ指をつくドラミに呆気にとられる京太郎。当のドラミならぬ松実玄は、顔を赤くしながらもはにかんだ表情をしている。

 傍から見ると青春ドラマの様な二人であったが、しかしそうは問屋が卸さない。

 今まで二人のやり取りに呆気にとられていたが、この状況に口を挟む者たちがドラミの前に立つ。

 

 

「ふ~ん、クロは私の敵に回るんだ…」

「へ?」

「あはは、やっぱりドラミはドラミっすねー」

「モモちゃん顔が怖いのです!」

「さて、どうしますか」

「どうするってなんですか!?あとおもち揉ませてください!」「お断わります」

「ちょっと『お話し』しようか」

「怖いのです!?助けて京太郎君!?いやーーーー!!!???」

 

「えーと…どうしよう?」

「ダルい…」

 

 

 

 

 

 こうして五人の自称未来人と京太郎を落とすために奮闘する咲。そしてそれに巻き込まれる京太郎や和達の喧しくも可笑しい日常が始まったのだった―――

 

 

 

 

 

 

 

―――しかし、そんな咲達の前に多くの敵が立ちふさがる。

 

 

 

「この時代のイケメンは全ての私のものだよ!」

 

 石器時代を支配しようとするスコゾンビ。

 

 

「ワハハーこの星は私のものだー」

 

 おもちゃの街に現れた轢き逃げ百犯。熊虎ワハ吾郎。

 

 

「三蔵法師を捕まえて永遠の若さを手に入れるよー☆」

 

 唐の時代に現れた言動が痛い(一部が)牛(みたいな)魔王。

 

 

「背を小さくしてもらうんだよー」

 

 7つ揃えるとなんでも願いが叶うと言う不思議な球を集めるトヨネ総帥。

 

 

「ふふふ…京太郎はもらっていくからね!」

 

 下山してきた元ヒロイン。

 

 

そして―――

 

 

 

 

 

 

 

「咲、教えてあげる―――――姉より優れた妹なんて存在しないってことを」

 

 

 

 

 

――――To be continued?

 




 むしゃくしゃして書いた。反省はしていない。そしてこれも続かない。

 だけどおかしい…当初書くのは最初の三人だけで残りのメンバーはダイジェストだけの出番の予定だったから、これの半分以下で済むはずだったのにまさかの17000オーバー。今までの話で一番長くなった…。
 なんもかも白望が可愛いのが悪い。
 久とまこの出番がないのはスマン。顔が濡れて力が出なくなった。


 ちなみにわかると思いますが配役としては以下のようになります。
 こうして改めてみるとほとんど原型がないな…。

のび太:咲
ドラえもん:タコス
セワシ:桃子
静香ちゃん:京太郎
出木杉:和
ジャイアン:久
スネ夫:まこ
ジャイ子:池田
その他:いっぱい

 ちなみにこんなの書いた理由としては、なんとなく気晴らしで昔のドラえもんの映画見たら書きたくなったからです。まさかいい年してドラえもん見て泣くとは思わなかったわ…。

 
 それでは頑張ってなるべく早めに本編も投下したいと思いますので、次回もよろしくお願いします。



 関係ないですが、改めてこの前公開された身長見てると阿知賀の小さいこと…これ使って「平均147.4cmの憂鬱」みたいな短編考えたから書きたくなってきた。
 …スンマセン。寄り道しないで本編ちゃっちゃと書きます。

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