死を乗り越えた元霊界探偵が幻想入り   作:タミ

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2度の死を超えて、魔界、霊界、人間界で活躍した元霊界探偵、浦飯幽助。もしも幽助が魔界統一トーナメントののち、幻想郷に迷い込んだら?そんなクロスオーバー2次創作作品です。この作品には、以下の成分が含まれています。

残酷な表現
オリジナル敵
誤字、脱字
都合によって変わる設定

お前の小説は読まれるに値しない、という方はブラウザバックをお願いします。あんたの全てを壊して、オレは読む、という方は巻き方を忘れないように右手の包帯を取ってからお進みください。


第19話 忘れ得ぬ記憶・選択の時

「くそっ!!逃げられた!!」

 

霊夢は激しく地団駄を踏む。

 

「おい霊夢!奴は……?!」

 

幽助は霊夢の元に駆け寄る。

 

「気配が消えた……逃げたわね。やられた……っ!!」

 

霊夢は苛立ちが隠せないようにギリギリと歯軋りをする。

 

「………霊夢」

 

すると、紫がスキマから姿を現わす。

 

「紫……あんたに聞きたいことがあるわ。1つ、あんたは敵か味方か。2つ、八雲真澄とは何者なのか。」

 

霊夢は冷徹に紫に言う。

 

「………私は味方よ。これは信じてちょうだい。そして、真澄は、私の元式神……、元部下よ。」

 

「あいつは捨てられた、みたいなことを言っていたけれど。」

 

「それは、もう数千年も前よ。彼女は、私の部下として私によくしてくれたわ。藍以上に尽くしてくれた。私を慕っていると言う点では、藍を凌駕していたかもしれないわ。」

 

「なんだ、結局数千年生きてるババァなんじゃねーか。」

 

幽助はボソッと言う。

 

「それで、あんたは真澄を捨てたわけ?」

 

「………そう、ね。」

 

紫は高熱に侵されているような表情を浮かべる。

 

「今更だけれど、霊奈と戦っている最中、あの時感じた嫌な気を放つ二人組は、片方が真澄だったんだわ……」

 

紫は傘を持つ手を震わす。

 

「………紫、話しなさい。真澄のこと、あんたのこと。」

 

「………そうね。もう潮時なのかもしれないわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紫様!!宇佐見、八雲両軍ほぼ壊滅状態です!!」

 

数千年前。何故か高度な技術で作られたであろう市街地の一角。そこには禍々しく赤い雲から猛烈な雨が降り注ぎ、鎌鼬が肌を切り裂いている。

 

そこの一角に隠れていた紫の元に藍が現れる。

 

「どう?奴らは。」

 

「それが、神園凪、天禍峯嵐が出張っているようで………」

 

「くっ、遂に当主レベルが出てきたか………!!この嵐と鎌鼬は2人の仕業ね……」

 

紫は悔しそうに歯を噛みしめる。

 

「紫!大丈夫?」

 

すると、1人の女性が現れる。

 

「ああ、あなたね。正直言おうかしら。もう絶望的よ。当初の計画通り、私たちで結界を作り、そこに逃げ込むしかなさそうよ。」

 

「………私は、宇佐見家はそんなことしない。最後まで残って奴らと戦うよ。」

 

「ふざけないで!このままだと奴らの計画通りよ?!あの男だけは私たちが束になったって敵わないわ!!」

 

紫はその女性に怒鳴りかかり、胸ぐらを掴む。

 

「………もういいわ。好きにしなさい。」

 

紫は手を離す。

 

「ゆっ、紫さま………」

 

すると、昔の真澄だろうか。黒髪の女性がやってくる。彼女の体は血まみれでボロボロだ。

 

「真澄!!あなたまた無茶して………」

 

紫は真澄の元に駆け寄り、体を支える。

 

「凪と、峯嵐は、しばらくは食い止められましたが……、力及ばず、申し訳、ありません……」

 

「そんなことどうでもいいわ!あなたが死にでもしたら……」

 

「紫、私たちの力が戦闘にも向いてないし、10家の中で最弱なのは知ってる。でも、あのままあの男の思い通りにさせていたら、この宇宙は完全に終わりよ。」

 

宇佐見家と思わしき女性は紫に言う。

 

「…………くっ、………恨むわよ、私たちの力の無さを……っ!!」

 

紫は手から血が流れ出るほど強く拳を握りしめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一、二年経った後であろうか。まだ戦火は消えていない。

 

「紫様、本当に……」

 

「………そうね。せめて、真澄だけでも……」

 

藍と紫は周囲に聞こえないようにボソボソと話す。

 

「紫様、鏖華家の前に第三部隊が壊滅しました……」

 

すると、真澄が紫に報告にやってくる。

 

「………真澄、突然だけど、あなた、もう要らないわ。」

 

「………え?」

 

真澄は喫驚の表情を浮かべる。

 

「あなた、当主格1人ともまともにやりあえないわよね。藍や私なら1人なら太刀打ちできるのに。」

 

「そっ、それは私の実力が至らないからです!これから一生懸命精進して、紫様のお役に立つ、立派な戦士になります!」

 

「関係ないわ。このまま居られても迷惑なのよね。………出て行きなさい。」

 

「ゆ、紫様……!まっ、待ってください!私も藍のように強くなりますから!!」

 

「私の手を、煩わせないでくれるかしら。真澄。出て行けと言っているの。」

 

「……紫、さま………」

 

真澄の顔はどんどん絶望色に染まっていく。

 

「………さぁ。」

 

「〜〜〜〜…………っ!!」

 

真澄は踵を返して走り去ってしまった………

 

 

 

「紫様………」

 

「これで、いいのよ。これが、正しい選択なの。」

 

紫は俯いてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね。それがあいつの原動力だと。」

 

「………私への怒りはもっともよ。それ相応のことをしたのだから。私は1人であの子の居場所を突き止めて、なんとかするわ。だから、霊夢。幽助。あなたたちは燼魔をお願い。」

 

紫はそう言って踵を返す。

 

「ちょ、ちょっと紫!!待ちなさい!!」

 

霊夢の声には応えず、紫はスキマに消えた。

 

「………ちっ、あのババア、1人でなんとかなるやつじゃねーだろうが。」

 

「まぁ、仕方ないわ。天界にはもう用はないし、守矢神社に行きましょう。」

 

霊夢は伸びをして歩きだす。

 

「幽助君………」

 

「………栞、あいつのこと、どう思う?」

 

「………彼女なりになにか思うこともあるだろうけど、無関係な人達まで巻き込むのだけは絶対に間違ってる。………私はそう思うな。」

 

「そうかい。んじゃ、俺たちも行くか。マーシー連れてこいよ。」

 

「あ、ああ、わかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうですか、そんなことが………」

 

場所は変わり、守矢神社。事情を聞いた早苗たちは神社での寝泊まりと協力を快諾してくれた。

 

「とりあえず、皆さん手当をしますから、こちらに。」

 

早苗は霊夢たちを案内しようとするが、

 

「おい霊夢。ちょっと付き合え。」

 

「………?何よ。」

 

「渡さなきゃなんねーもんがあんだよ。」

 

幽助は霊夢を連れて林に入っていった。

 

「………何する気だ幽助君は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで、こんなとこまで連れてきて何の用よ。」

 

霊夢は幽助に問う。

 

「てめー、力が欲しいだろ。」

 

「………いきなり何よ。まぁ、欲しいっちゃあ欲しいわね。あいつを叩きのめす為にも。」

 

「正直言ってやろうか。てめーじゃ真澄にゃ勝てねえ。見たろ、あいつの能力。あの身体能力が全く衰えねえんだ。普通にやってて互角のてめーじゃ無理だ。もちろん俺にもな。」

 

「はっきり言うじゃない。そんなに言うならもらおうじゃないの。その力。それなら勝てるんでしょ、あいつに。」

 

「その為だったら、どんなことにも、耐えられんだな。」

 

「ええ。」

 

「んじゃあ、俺を殺せ、と言ったら殺すんだな?」

 

「えっ、それって、どういう………」

 

「俺を殺さねーと、その力は手に入らねぇ。」

 

「………!!」

 

幽助の言葉に霊夢は戦慄する。

 

「そんな……、」

 

「この先で待ってるぜ。殺す覚悟が出来たんなら来い。」

(………悪いなばーさん。同じような試し方しちまって。)

 

そう言って幽助は歩きだした。

 

 

 

 

「……………」

 

霊夢は俯いたまま動けなかった。

 

(幽助を、殺す?私が?………やっとまた1人増えた仲間なのよ……。それを手放せって………。どうすれば……)

 

………周囲には、冷たい雨が降り注ぎ始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨。降り注ぐ中、霊夢は立ち尽くしたまま動かない。

 

が、何かを決意したのか、霊夢は幽助が向かった方へ歩いていった。

 

 

 

 

「来たな。決まったんだな、覚悟が。さぁ、早く来やがれ。時間は待っちゃあくれねえぞ。」

 

幽助は踵を返してさらに奥へ進んでいこうとする。

 

「………無理よ。」

 

霊夢の言葉に、幽助は足を止める。

 

「頭回して考えてみた。めっ、ちゃくちゃ考えた。でも、友達売って力貰うなんて、したくない。そりゃ強くなりたいし、ならなきゃいけないけれど。ま、なんとかなるでしょ。あいつの顔にお札くらいはぶつけてやるわ。」

 

霊夢はそう言って踵を返した。

 

「………よーし、合格だぜ。」

 

「は?」

 

霊夢は思わず抜けた声が出てしまう。

 

「昔俺の師匠のばーさんが同じような試し方をしてよ。そのばーさん曰く、「自分が強くなる為に師匠を殺そうって結論出すやつに奥義は伝承できねぇ」ってな。」

 

幽助は笑みを浮かべる。

 

「なによ。悩んだ私が損したんじゃない。」

 

霊夢は頰を赤らめて頭をかく。

 

「そーいや、「かといってすぐに「出来ない」とかいう毒気のない奴も嫌い」とか言ってたな!」

 

幽助は思い出したように笑う。

 

「ちっ、あったまきたわ。そら、さっさと寄越しなさいよ!!」

 

霊夢は幽助に催促する。

 

「まぁ待てよ。ほら、付いて来い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、始めっか……」

 

幽助はそう言って手を合わせる。

 

「………ぐぐっ……!!」

 

そうして力を両手に込めて、小さな球を作り出す。

 

「今からお前に渡すもんは、霊光波動拳伝承者だけにしか持てねー代物だ。」

 

(あっつ………!!!なんてエネルギー量……!!幽助が太陽みたい……!!)

 

「俺が思うに、てめーにゃまだこいつが受け取れねえ。霊光波動拳の霊の字もかじってねーし、俺とお前じゃあ霊気の質が違うからな。例えてめーが天才だっとしてもな。」

 

「こいつぁ霊光玉っつって、霊気を極限まで凝縮したエネルギーの球だ。こいつで霊光波動拳の継承はやられるんだと。心と体を使ってな。」

 

霊夢は生唾を飲む。

 

霊光玉は、妖しく、同時に神々しく、霊夢と幽助を照らすのであった……




いかがでしたか?第19話は以上です。

蓮「…遅い。」

「……はい。」

「遅すぎ。」

「………はい………」

「なにしてんのよあんたは。隙間隙間にやらないわけ?」

「申し訳ねぇです………」

「本当に一回地獄を味わった方がいいんじゃないの……?」

「ううっ、ご勘弁を……」(泣)

「………はぁ。ここで私がいくら言っても変わんない、か。逃げんじゃないわよ。」

「………はい………」

〜〜〜次回予告〜〜〜
「おっす!!久しぶりの魔理沙さんだぜ!!月からやっとこさ帰ってきたと思ったら、霊夢の気がものすげえ小さくなってるぞ?!どうなってんだよ?!」
「耐えろ霊夢。耐え抜け!!」
「こ………なくそ………っ!!こんな……、球っころごときに………っ!!」
「次回、幽助からの最大の試練
伊達にあの世は見てねーぜ!!」

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