一話 半端者
──────かつて世界が神秘に包まれていた頃。
数多の妖怪が跋扈し、殺し合い、恐怖による徹底支配が行われていた時代。
その時代の妖怪の頂点────『夜の支配者』たる吸血鬼。
夜行性と言える吸血鬼は、夜になれば圧倒的な不死性を有し、力のままに蹂躙し、瞬く間に支配地を広げていった。
その筆頭であった吸血鬼の王族、スカーレット家に跡継ぎが生まれた。
両親の眷属はそれを泣いて喜んだと言うが、それも束の間。
─────その子供には、吸血鬼の象徴たる翼がなかった。
吸血鬼の特徴である翼は、身分と己の力を示し、大きければ大きいほど強大という、いわば一種の権力そのものだった。
だが、その子供には他の吸血鬼とは人智を超えた能力があった。
『万物を創造する程度の能力』。
その身一つでありとあらゆるものを創造する、正に神話に登場する『創造神』の権能そのものをその身に宿した子は、その危険性から『半端者』のレッテルを貼られ、幽閉に近い形で過ごしているという────。
その子供の名は、リリス・スカーレット。
─────いずれ『理想世界』創り上げる強大な魔神となる吸血鬼である。
◆❖◇◇❖◆
【リリス】
私の名は、リリス・スカーレット。
この時代───妖怪が世の中を統べる時代に頂点にたった吸血鬼、その王族であるスカーレット家の『出来損ない』の長女、それが私。
吸血鬼の象徴たる翼がない私は、お父様の眷属からは半端者と見られ、メイド達からもあまり良くは思わない視線を向けられる。
─────私は、こんな時代に飽き飽きしていた。
強い者が生き残り、弱い者は殺され、無残に死に逝く、弱肉強食の時代。
私だって、スカーレット家に生まれたからいいものの、ほかの家系に生まれれば即殺されているだろう。
一度、お父様達が戦う所を見たところがある私は、あの時の光景を思い出す。
─────家族を守ろうとする者を殺し、抵抗しない者達も無残に引き裂かれ、肉塊となっていく。
何故、弱者ばかりが死ぬ?
それは、強い者がいるからだ。
強い者の中には、必死になって家族を守る、所謂善人もいる。しかし、今の世の中に蔓延る強い者は悪魔のような者ばかり。
───────私は思う。
なら、『誰も傷つかない理想世界』を創ればいい。
私の力なら、それが出来る。
強くなって弱い人たちを救いたい。
その為には、この時代を生き抜くために必要な『力』が必要だ。
皆を守れる、強大な力が。
その為にはまず、私が強くなくてはならない。
何年、何百年かかってもいい。
私はどれだけ時間を費やそうが、誰も傷つかない理想世界を創る。
─────『誰も傷つかない理想世界』。
唯それを夢見て、少女は走り始めた─────。
どうだったでしょうか。
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