──────いざ、倒れ逝くその時まで。
【リリス】
─────おぉおぉ、観客が賑わってらっしゃること。
支度などを全て整え、舞台となる戦場へ足を踏み入れた私は、多すぎる吸血鬼の量にすこし恐怖を覚えたが、今は目の前の男に集中せねば。
「よぉ嬢ちゃん。随分可愛らしい見た目してんな」
「舐めてくれるね。こう見えて私、スカーレット家の一番推しなのよ?」
「ハッ、翼がねぇのによくほざくなぁ」
──────言ったな?
私は少しにやけながら、ゆっくりと背中の白翼を展開させた。
私の三対六翼の翼を見た男を始め、観客からも感嘆の声が漏れる。
「…こりゃ驚いた。見た目も相まって、天使かと思ったよ」
「それはどうも。でも本業は悪魔なので」
「ごもっとも……それじゃ、自己紹介と行こうか」
男はゆっくりと剣を構えながら、名を名乗った。
「ヴァルキリアス・ブリュンスレッド。我が剣、その身に刻むが良い」
「リリス・スカーレット。我が神たる力、その身で味わうがよい」
互いに名乗りを上げ、私はすこし浮遊した。
そして、私はかつて創った《
そして、複数本グラムを創造し、私の傍に浮遊させる形で待機させる。
駆けて来たのはヴァルキリアス。その剣を私の心臓に突き刺そうとするが、そんな見え見えな攻撃など簡単に躱すことなんて朝飯前。
「ッ!」
その隙を狙い、右手に握るグラムを振りかざすが、その男の剣により防がれる。しかし防ぐヴァルキリアスに迫るのは待機させていたグラム。それらが追撃を行いヴァルキリアスを追い詰めていく。
─────あの数を剣一本で……なかなかのやり手か。
「なら───」
私は一歩、足を踏み入れる。
刹那、踏み入れた足元からヴァルキリアスに向かって鋼の棘が一斉に突き出す。能力の応用である。
流石に無数のグラムにこれは予想外だったのか、ヴァルキリアスはすこし掠り傷をおい、距離を離した。
「へぇ……なかなかの能力だな」
「ん?今のでわかったの?」
「何となくな。大方創る能力だろ?魔力が込められてないのにあの練度、大したもんだ」
─────戦術眼もなかなか。
どうやら、箱入り娘ならぬ箱入り野郎、という訳では無いようだ。まぁ箱入り娘は私なのだろうけど。
「是非とも欲しいよ、貴方みたいな人」
「そりゃどうも」
半分本気の半分冗談をかますと、ヴァルキリアスはその剣を振るい、斬撃を飛ばしてくる。私はそれを能力によって作った鋼の盾で防ぐ。
──────魔力が篭っていない。能力か?
「…断定するにはまだ早いか」
そう考えていれば、いつの間にか背後に回ったヴァルキリアスが切りかかってくる。
それをグラムで捌いていくが………剣術では向こうの方が上か。
そこで、私は待機させているグラムを、私が振るうグラムに合わせて追撃するようにして、ヴァルキリアスを追い詰めていく。
──────それでもこの剣術。
このままでは埒が明かない。とはいえ、最大の切り札を切るにはまだ早い。さて、どうしたものか。
手始めに、今度は身体強化魔法をさらに上げて、さらに速度を上げて攻撃を仕掛ける。
「ぐっ………」
そして、先程から私に掠ろうとするゼロ距離で放たれる斬撃。やはりその斬撃には魔力は乗っていなかった。
──────さながら『飛ばす程度の能力』と言ったところか。
「──ッ!」
私は一度距離を離して浮遊し、私は能力で数え切れないほどのグラムを創造する。
「照射────」
そして、私が手を振りかざすと同時に、グラムが雨のように降り注がれる。
一撃一撃が致命傷になりかねないその死の剣の雨が降り注ぐ中、ヴァルキリアスは必死にその剣一つで的確に弾いていく。
更には降り注ぐグラムを取り、二刀流で剣を弾くなど、その剣術は見惚れるものばかりだった。
────やるな。
けれど、これで終わりだ。
私は手を掲げ、最大の切り札を切る。能力と魔力を上乗せした私が用いる最強の攻撃────の、最小版。
「堕ちろ────ッ!」
───────《星落とし》。
その一一人ほどの大きさの球体がヴァルキリアスのそばに落ち、舞台をその球体の大きさには似合わない大きな
「………」
その大爆発が止み、私は酷く抉れたクレーターの爆心地へと舞い降りる。
そこには、ボロボロになって倒れるヴァルキリアスがいた。
「やった、みたいね」
私がそうほっとしていたその時─────。
ヴァルキリアスから吸血鬼とは思えない、膨大な
「なに────っ!?」
私が勢いよく振り向けば、そこには力なく立ち上がるヴァルキリアスがいた。その目に光は宿っていない。
──────違う、これはヴァルキリアスでは無い…!!
「まずい……ッ!」
このままではまずいと思った私は、取り敢えず浮遊して距離を取る。
ヴァルキリアスは力なく腕を上げ─────。
振りおりしたと同時に、その振り下ろした先がなんにも無くなっていた。
「何よ今の───まるで」
──────かき消したみたいに。
いや、これはかき消したと言うより、その何かによって破壊された、の方がいいか。
振りかざした瞬間、暴風のようにその何かを纏った魔力がバズーカのように放たれてああなったのだ。
─────とにかく、あの何かは、人や人外すらも持ちえない力。
恐らく───《
その影響か、ヴァルキリアスは制御出来ていない。
制御出来ていないうちに、さっさと片付けなければこちらが負けるな。
─────なら、私がすべき事は一つ。
「──アレを使われる前に潰す!」
すぐさま複数のグラムを創造し、最大の身体強化魔法をかけて切りかかる。
あまりの速さに着いてこれないのか、ヴァルキリアスはただただ切り刻まれるのみ。
「──理性がある方が歯ごたえがあったよ」
私はなすがままのヴァルキリアスを蹴り飛ばし、ヴァルキリアスに向けて指をさす。
その指先に魔力が充填されていき────
「消えろ」
超高密度の魔力砲撃が放たれた。
その砲撃に飲み込まれたヴァルキリアスは、砲撃が消えたあとにはコロシアムの壁にめり込んでいた。
今度こそ、これで終わりだ。
そう思って帰ろうと思った時────。
『さすが《
私の頭の中に聞いたことがない女の声が響く。
「誰だ───っ!?」
『我が名は《死の天使》サリエル。お前と同じく《神代の権能》の所持者であり、尚且つ貴様と同じく創造主の片割れだ』
片割れ?何を言っているのかさっぱり分からない。
ただこれだけはわかる。
──────あの力の根源はこいつだ。
『そう警戒するな。私はお前に会いたいのだ』
「……ちなみに、理由は?」
『興味を持ったから。あとはそうさな……同じ力を持った者同士』
「私は興味無い」
きっぱりとそう断った。正直、こいつと絡むと嫌な予感しかしない。
私の反応を見たサリエルは、不敵の笑を浮かべた。
『……そうか、それは残念だ…………犠牲を出さずに済ませようと思ったのだが』
「───何だと?」
『……貴様の宝────無闇な殺生は好まないのだが』
「……お前まさか……」
───────なるほど。
サリエルの要求に答えれば何もしないし、断れば────レミリア達が、死ぬ事になる。
───────私に選択権はない。
「…わかった」
『請け負った。ならお前の頭の中に魔界への入口の座標を教えてやる』
──────私の中に知らない座標が入り込んでいく。
つまりここに転移魔法を置けばいいのか。随分と手際がいいな、まるで前々から計画していたようだ。
『楽しみにしているぞ』
「────そう」
そこで私の中に響く声は途絶え、倒れふすヴァルキリアスを置いて控え室へと戻った。
───────この戦いを気に、リリスは《
ヴァルキリアスの『ブリュンスレッド』は、型月に登場する『ブリュンスタッド』のから。
リリス最大の切り札は───察しがいいお方ならわかるかと。
ヴァルキリアスがグラムの雨のなか、グラムを取って二刀流で防いだ一面はFate/Zeroにおけるアーチャーが放った宝具の雨をバーサーカーが降り注ぐ宝具を手に取り一本で全て防ぎったシーンを参考にしました。(分かりにくかったらすみません)