半端者が創造神となる日   作:リヴィ(Live)

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十話 その名、恐怖の体現

【リリス】

 

 あの決闘から数日。

 

 私はお母様とお父様の前で、事情を話そうとしていた。あの力の正体くらいならば、二人も見抜けていはずだから。

 

「どうしたんだ?」

「……二人は、《死の天使》をご存知ですか?」

「「!?」」

 

 私は彼女(彼?)が言っていた名前────その渾名である《死の天使》を口にした瞬間、二人の顔色は急変した。

 

「まさか、あの力の正体は」

「えぇ、恐らくヴァルキリアスに憑依した際に放ったものかと」

「まさか…《死の天使》が」

 

 ────二人は知っているようだが、サリエルとは何者なのだ?

 私がそうやって首を傾げていると、お父様は恐れを含んだ顔で話し始めた。

 

「…《ラグナロク》からの神々の衰退時に、月を任され支配していたという堕天使だ。月の支配は本来神がすべきこと。それを奴は任されたのだ」

 

 ────月の支配者。

 吸血鬼の象徴の一つである月を支配した堕天使。決闘で見たのは憑依とはいえ、あの力を易々と使いこなすサリエルを想像すると、少しゾッとしてしまう。

 

「…リリスはサリエルと何か話したのか?」

「……はい」

 

 ────そのサリエルに、私は気に入りられた。

 

 あの友好的でもない声。おそらく良くない方で気に入られている。

 

「奴は私を気に入っています。魔界への招待をされました」

「…断ったか?」

「……いえ、選択権はありませんでした」

 

 ────断れば、私の大切なものが失われる。

 

 そう、本能が理解してしまったのだ。そして、あいつなら本当にやりかねないと、思ってしまったのだ。

 

「……………」

「そこで、私からお父様達にお願いがあります」

 

 私はお父様たちに深々と頭を下げた。

 

「……私が魔界へ行っている間、レミリア達をよろしくお願いします」

「しかし、お前をサリエルの元へ行かせるわけには…」

「アイツは行かなければ私ごとここを滅ぼすでしょう。それは決してあってはならない」

 

 ──────要は、頭の考えだ。

 

 被害は最小限の方がいい。私含めた全員が死ぬより、私一人が死んだ方が被害が少ないのも確か。

 

 ………確かに、恐い。

 

 正直、勝てるかすらわからない。勝負になるかすらも怪しい。けれど、大切な家族を守るためなら、私はどんな相手でも命を懸ける。

 

「──お願いお父様、お母様。レミリアとフランを守ってあげて」

「リリス…貴女…」

「……わかった」

 

 ──────ありがとう、お父様。

 

「ありがとう。私は貴方達の元に生まれて本当によかった」

「……」

「幽閉や、辛いことはあったけど……私を愛してくれる妹や貴方達と過ごして、幸せというものがなんなのか教えてくれた」

「……」

「だからこそなの。だからこそ、私を幸せにしてくれた貴方達を守りたい。それが私ができる唯一の恩返し」

 

 ──────あぁ、そんな顔をしないでくれ。

 

「私は、確かに死ぬかもしれない。でも、ただでやられるつもりは毛頭ないよ。ここで帰ってくるつもりでいるから」

 

 ──────あぁ、ただでやられるつもりは毛頭ない。

 

 天使の象徴たる翼を全部へし折るくらいの抵抗はしてやる。でも死ぬつもりは無いし、私はあいつを倒す気でいるから。

 

「…お前は、わがままを言わなかった…誕生日に何が欲しいと言っても、今の幸せで十分だと言った」

「………」

「私達はお前に何も───」

「なら、このお願いはその誕生日分全てのお願い。だから」

「…わかった」

 

 ──────ありがとう。

 

 こんなにも私を愛してくれる最高の家族が居て。

 

 だからこそ。

 

 私を愛してくれたこの人達を守る。

 

 その為なら、私は夢だって捨てる。

 

 

 

 ────いざ、命散る逝くその時まで。

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