一言、言わせていただきますと───。
娘さん!!お母さんをくださいっ!!
【リリス】
────やりすぎた。
それが私が戦闘を終わった際に思ったことだった。別に二人を完膚無きまでに倒そうとしたのはいい。そこはやりすぎたとは思っていないし、やられたらやり返すのが私のモットーであるから。
────言い換えれば熱を入れすぎた、だろうか。
たかが二人にここまで魔力を消費するとは、正直思ってもいなかった。まだ前哨戦だと言うのに、ここまで魔力を消費するなんて……。
まずい、このままサリエルと戦えば間違いなくやられる。
「…ここまで、とはね」
「私を本気にした貴方も大概だよ……」
倒れふすマガンと魅魔。魅魔が吐いた言葉に私も言い返す。正直、ここまでやれるとは思いもしなかった。
「あんたは勝者、あたしらは敗者。そら、先に進め」
魅魔が指す方向に、新たなゲートのような空間が現れる。
────ここより薄暗い、まるで廃墟のような場所。
それが、ゲートの先にある世界の第一印象だった。
「っと、その前に…そらっ」
「うわっと、と」
魅魔が思い出したようにポケットを漁り、何か小瓶のようなものを取り出してこちらに投げてきた。慌ててそれを受け取ると、その小瓶に入っているピンク色の液体……これには、なにか魔力に似たものが含まれているのがわかった。
「あんたも魔力を消費してるはずだ。それは魔力を増幅させる薬。飲んどいて損は無いよ」
「……ありがとう」
なんだが、魅魔はハッキリしているような気がした。
こいつはこいつだからこうしよう、あいつはあいつだから大丈夫。そう切り替えているような気がして、なんだかすごいなぁと子供のような感想を抱いた。まぁ、吸血鬼からすれば私は見た目子供同然だが。
「…というか、魅魔は魔法使いになった方がいいんじゃない?」
「ん~……確かに魔法は自己防衛程度に嗜んでいたんだが、本格的にそっちの道に行くのもいいねぇ」
──────自己防衛程度であれか。
この魅魔という悪霊、底知れぬ魔法の才能の一端を見た気がして、少し肩が震える。……ほんとに自己防衛程度であれとか本当に洒落にならないんだけど。
「ま、頭の片隅に入れとくとするよ。それじゃ、また縁があったら会おう」
「うん、またね」
私は魅魔に手を振って、そのゲートへと進んで行った。
◆❖◇◇❖◆
─────とある
どこまでも続く夢幻の回廊。その最奥に、二人の影が見える。
片方は、赤い衣と白銀の髪、髪をサイドテールにしている女性。
片方は、赤いメイド服に身を包む金髪の女性。
魔界の住人ならば誰もが知る、二人の存在。二人の存在はこの魔界において絶大であり、更には赤い衣の女性がいなくては魔界は存在しない。
何せ────
魔界の全てを創造した魔界神と、彼女自らが創った最強の魔界人なのだから。
「…シンギョク、マガン。そして地獄の悪霊もやられました。残るはエリスのみです」
「報告ありがとう、夢子ちゃん」
淡々と報告を述べる、夢子と呼ばれたメイドは、彼女の隣に立ち、世界を見守る。
「…ほんと、私にそっくりなのね」
「はい。身長と中身を除けば、神綺様と本当に瓜二つかと」
二人が見つめる万華鏡の先にいる人物─────。
死の天使に会いに行くため、シンギョク、魅魔、マガンと門番達を次々と倒していく、その万華鏡に映る吸血鬼。
「リリス・スカーレット。彼女なら、魔界を取り戻せるかもしれない」
──────現在、魔界は大きく揺らいでいる。
数年前まで平和だった魔界が、何故こんなにも警備を固め、地獄の門と統括し、殺伐としているのか。
きっかけは、ある人物だった。
匿ってほしい。そう言われた神綺は、深い事情があるのだろうと彼女の言う申し出を快く引き入れた。
しかし、それが間違いだった。そこから彼女は魔界でその力を使い一斉に勢力を伸ばした。今や、魔界の創造神たる権限も彼女に奪われつつある。
最初のうちは部下達で対処していたものの、肥大化する勢力は押さえつけることが出来ず、挙句の果てには夢子と神綺が出張った始末。
しかし、結果は惨敗。こちらは為す術もなく、ただただやられるだけだった。しかし何としてでもこの魔界全体を見通す千里眼が管理されている《世界の果て》は守護することは出来た。
謹慎状態になった二人は出ることも叶わない故、こうして見守ることしか出来なかったが、こうして、目の前の幼い吸血鬼が、彼女を倒してくれる可能性を示している。
「どうなされますか、神綺様」
「─おそらくエリスの所にはキクリもいるでしょう。この二人を撃破したら動くわ」
「承知しました」
彼女は微笑む。
魔界を救おうとしてくれるかもしれない幼い子供同然の吸血鬼が、母同然の気まぐれで与えた試練を乗り越えてくれることを信じて。
◆❖◇◇❖◆
【リリス】
─────さて、この廃墟同然の場所を歩いてきたわけだけど。
なんだろうか、この違和感は。
先程飲んだ魅魔がくれた魔力増強剤に毒が含まれていたという訳では無い。なんというか………見られているような、そんな気がする。
警戒して周りを見てみれば廃墟のみ。人影など全く見当たらない。
「──どなたかしら?」
私が周りを警戒して進んでいると、上空から少女の声が私に向かって向けられた。その声に反応して上を見れば、そこにはほっぺたに星のタトゥーを入れた悪魔の少女と、私をじっと見つめる鏡のような女性がいた。
「私はリリス・スカーレット。サリエルに会いに来たの」
「ふふ、幼い吸血鬼さんが?あの悪魔のような天使に?」
─────どことなくだが、この少女、フランと似たような気配がするな。
この小悪魔的な、悪戯の意味を含んだ微笑み。フランが悪巧みする時とそっくりだ。
私がそう思っていると、少女は私を見透かしたようにじっと見つめ、思ったことを言った。
「…面白い能力ねぇ。寄りにもよってサリエルと対極なんて…つくづく運がないわね」
「──やっぱりね」
「あら、気がついてたの?」
「いや、薄々。憶測に過ぎなかったけど、貴方の言葉を聞いて確信に変わったよ」
─────やはり、サリエルは私と対極の存在。
まだ能力名はハッキリとはわからないが、私の想像している『万物を破壊する程度の能力』と変わらないだろう。というか、それだろう。
「っと、自己紹介が遅れたわね。私はエリス。こっちは地獄のコンガラの部下、キクリよ」
「───」
エリスと名乗った少女は、相変わらず小悪魔的な笑みを浮かべこちらを見つめる。キクリは何も喋らず、ただこちらをじっと見つめている。
「何故ここにいるかは、吸血鬼さんも分かるでしょ?」
「あ~……そうですか」
そう私が頷くと、二人は戦闘態勢に移行した。
エリスとキクリは高く舞い上がり………激しく素早い弾幕を繰り出した。
──────vs《
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