──悲しき人形、神話幻想。そして、星幽剣士。
…東方旧作神曲多すぎか!
【神綺】
「到着しました、神綺様」
「ご苦労様、夢子ちゃん」
この魔界にはヴィナの廃墟と呼ばれる場所がある。魔界全土に置いて最も瘴気が濃い場所であり、外の世界…人間界の妖怪はまだしも、人間はここに入った瞬間即刻死ぬだろう。元々はここも建物が建っていたのだが、瘴気の異常発生により人が立ち入らなくなり、崩壊して廃墟となってしまった場所である。
─────その
「力を測るためとはいえ…まぁ、よく暴れてくれたわねぇ…」
「…まさかこれ程とは」
「幸い、戦闘の影響で瘴気は漏れてないみたいね」
私はこの有様を見て、呆れた声を出してしまった。いくら力を測るためとはいえ、ここまで派手に暴れるとは思ってもみなかったのだ。まぁ、二人とも…というか、彼女と倒した敵は全員私の真意を知らないが。
「…ともかく、条件は満たした。とりあえず彼女らを私の館へ」
「かしこまりました」
メイドである夢子に、そこに倒れている二人の保護を頼んでおく。
母の気まぐれ程度にやった試練を見事達成した彼女に嬉しさを覚えながら、地形さえボロボロのヴィナの廃墟をどうしてくれようかと悩む神綺であった。
◆❖◇◇❖◆
【リリス】
────知らない天井だ。
目を開いた第一感想はそれだった。紅魔館とは違うすこし黒みを含んだ赤色の天井。なぜ私が倒れているのか……こんな所にいるのか、目覚めたばかりの頭をフル活用して記憶を掘り起こす。
「確か、エリスとキクリと……」
そうだ、あの後エリスの彗星攻撃と私の星攻撃が大爆発を起こして、気絶してしまったんだっけ?
それにしても強かったなと思う。単純な力と魔法、さらには魔力量まで私と同格かそれ以上なんて……あんな相手を見たのはお父様以来だ。
「ん?起きたでござるか」
私がそうやって記憶を掘り起こしていると、男性のような女性の声が聞こえる。すぐ近くだったのでそっちに向くと、そこには刀を持もつ赤い衣の和服に身を包んだ、細く赤い角を持つ中性的な人がいた。
「あ…えっと…」
「あぁ、申し訳ない、拙者はコンガラ。しがない地獄の仏でござるよ」
「……え、仏?」
待って、待ってくださいよ。
今この人コンガラって言ったよね?しかも地獄の仏だよね?
つまり、この人が地獄の主の矜羯羅童子ってことになるよね?
表情筋を抑えながら内心パニックになっている私に気がついたのか、コンガラは微笑みながら言った。
「安心するでござる。そなたに危害を加えるつもりは無いでござるよ、拙者はただ協力者として呼ばれただけの事」
────きょ、協力者?
私のパニックだった心は、ある疑問によって一瞬にして冷えきった。
そもそも、なぜ地獄の主である仏が、地獄そっちのけで魔界にいるのか。そして、協力者とはなにか。様々な疑問が私の中に溢れてくる。
「取り敢えず、合わせたいお方がいるでござる。呼んでくるでござるよ」
そう言ってコンガラは私が横たわる部屋を立ち去って言った。
───訳が分からない。
なぜ魔界に地獄の主がいるのか。協力者とはなにか。そしてここはどこか。合わせたい人とは……?
様々な疑問が私の中に溢れ、頭を起こしていく。
そこで、ガチャ、と扉を開ける音が聞こえた。
「こんにちは、可愛い吸血鬼さん」
その声に振り向いてみれば、そこには私に瓜二つの顔つきとその従者であろう赤いメイド服を着た金髪の女性、そして先程までいたコンガラがいた。
────私のそっくりさん。
もしかして、この人が────
「初めまして、リリス・スカーレット。私は神綺。この魔界の創造神よ」
「神綺様の従者、夢子と申します」
「改めて、地獄の主の仏、コンガラでござる」
────やっぱり。
そっくりさんとは言われていたが、実際見ると本当に似ている。唯一違うとすれば服と、瞳の色だろうか。なぜかそれだけなのに無駄に親近感を覚えていたが、疑問がそれを打ち消す。
───なぜ、教えてもいないのに私の名前を知っている?
その疑問を問おうと思った時、神綺は私を制するよう、しかし優しいに言った。
「色々聞きたいことがあるでしょうけど、話を聞いてくれないかしら?それで分かることもあるだろうから」
───正直、なんのつもりだと思ってしまう。
魔界の創造神、その直属の従者、さらには地獄の主までが、侵入者である一介の吸血鬼に過ぎない私に構う理由。それが怪しすぎて、なんのつもりだとつい思ってしまう。しかし、彼らの話を聞いて分かることもあるだろう。
私はしばらく考えて、彼女らの話を聞くことを選択した。
「ありがとう。それじゃ、話させてもらうわ」
◆❖◇◇❖◆
【神綺】
「お願いします、匿ってください───ッ!!」
始まりは一人の天使だった。三対六翼の翼を持って、なにかに怯えるようにこちらに助けを乞う天使。私は深い事情があるのだろうと匿うことにした。
その人は優しい人だった。まさに天使とも言える振る舞いを見せる彼女は、まさに魔界に咲いた一輪の花のような存在だった。
そんな平和な日々が続いたある日─────。
魔界は異物とも言える化け物に覆い尽くされた。
人の形を留めることを知らず、ギィギィと泣きながら、なおかつ理解不能の言葉を吐くその化け物は、人々の四肢を切り裂き、殺戮を楽しんでいた。更にはそいつは一体一体の学習能力が人間の学習能力を上回り、瞬く間にカタゴトではあるが喋れるようになっていた。
さすがの異常事態に私も対応を急いだ。四方八方雨のように降り注がれる化け物は、やがてこちらの戦力を上回り、瞬く間に首都を奪っていった。
そこに、一人の天使が舞い降りた。
その天使は笑っている。燃え上がる首都を見て。
その天使はワラッテイル。悲鳴を上げる人を見て。
ソノ天使ハワラッテイル。弱者ヲイタブリ魔界ヲ蹂躙スル化ケ物ヲ見テ。
その化け物をばらまいた張本人……それが、私が助けた魔界の一輪の花だった存在。
─────《死の天使》サリエル。
私達は彼女に踊らさていたのだ。きっと、お人好しなバカどもと私達を罵りながら魔界を蹂躙しているに違いない。
私が魔界の神となって初めてだった。
こんなに自分の無力さを呪ったことは無い。
こんなに相手を憎いと思ったことは無い。
私が創った愛するモノを全て憎たらしい相手に奪われた。
私はそんな気持ちを抱えながら、夢子ちゃんと一緒にかろうじて別荘に逃げることが出来た。情報を打開する策を考えていた時、彼が現れた。
そう、地獄の主のコンガラである。彼も心底憎いという顔をしていたのを覚えている。
地獄も、あの化け物の襲撃を受けたのだ。地獄は元々魔界より強いものが多いため被害は最小限に抑えているものの、長くは持たないとのこと。
そこで私とコンガラが提案したのは、協力。
今回ばかりは魔界神の尊厳などどうでもいい。あの天使から奪い返さなければならない。私の愛するモノを奪い返さなければならない。
魔界の神たる者が私情で動くのはもってのほかだが、そうも言ってられない。
私はその日から、サリエルに関する資料など全て調べ尽くした。
サリエルが《ラグナロク》以降による神の衰退の代わりに、月の支配権を与えられ、支配をしていたこと。
そして、その支配権を返上して堕天したということ。
そして────《
だから、あなたを待っていた。
破壊の力と対を成す創造の力を持つ人を。
それが、リリス・スカーレット。
私達の光となる存在の名前だ。
◆❖◇◇❖◆
【リリス】
────そんなことがあったのか。
あの死の天使が、皮をかぶって魔界に降り、蹂躙の限りを尽くしている。ありえないと思っても、あの力を見た後だと本当にやりかねないと内心で肯定してしまう。
何より、そんなに苦しそうな表情で言われれば尚更。
同情するならなんとやらなのだが、今回ばかりは気の毒に思ってしまった。だが同情するよりも、わかったことがある。
一つは、なぜここに連れてきたのか。
恐らく、私という存在が唯一サリエルの打開策になると考えたんだろう。神綺様が言っていた能力も、私が考えた能力とほとんど同じ。
二つは、なぜコンガラ様がいるか。
先程の会話からすると、コンガラの統括する地獄もサリエルから生み出された化け物の襲撃に襲われたのだろう。互いの敵は同じ、ならば協力する他ない。
互いに私を求めていたということだ。地獄の主のと魔界の神がこちらがに回ってくれるのは心強いことこの上ない。
「…事情はわかりました。利害も一致していますし、協力関係を組みましょう」
「ありがとう」
神綺様は安心したような笑を浮かべる。私もああやって微笑むのだろうかと思ってしまった。
かくして、死の天使を倒す手段は整った。
《魔界の創造神》と《星幽剣士》。そして《
二人は、己の世界のために。
一人は、家族のために。
それぞれの信念を胸に、死の天使に戦いを挑んだ。
うーん…最後がなんかなぁ。
コンガラの口調ですが、なんか仏なのに侍っぽいなぁということで。
魔界と地獄に現れた魔物は……fgoのトラウマであるラフムをイメージして頂ければ。