半端者が創造神となる日   作:リヴィ(Live)

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二十一話 the Grimoire of Alice

【リリス】

 

 あの日から数日。

 各々がサリエルとの決戦に向けて着々と準備を進めている。そんな暇はない、と思ったのだけれど、ここは魔界の時間から切り離されているため館の外の時間は進んでいないらしい。それを聞いて安心した私は、ゆっくりと確実に準備を進めている。

 

 まずは魔力の底上げだろうか。ここには我が家紅魔館と同量かそれ以上の大図書館がある。それらの魔導書を見て自分の魔法を改良したり、効率的な魔力の底上げなどの魔導書をみて実践してみたり。

 

 今自分が出来ることを出来る限り実践しているのだが───

 

 

「……?」

 

 

 なんだか最近、誰かにつけられている気がする。

 なんというか、神綺やコンガラのような強大な存在ではなく、しかし夢子のような強者特有の雰囲気というものない。後ろを見ても誰もいないし、魔法を使って隠れているなら私がまず気づくはず。

 

「えっと、どなた?」

 

 ダメ元で私を見つめる誰かに声をかける。いい加減この視線も辛いので、そろそろはっきりさせてもらいたいのだけれど──。

 しばらく経って、やっぱりダメかと思った時、物陰から一人の少女が現れた。

 

 レミリアとフランと同じくらいだろうか。金髪に白と青を基調とした服を着た少女。

 

「…貴方、吸血鬼?」

「ん、そうだけど……貴方は誰?」

 

 私が吸血鬼だということを知ると、少女は驚いたように目を見開いた。まぁ、吸血鬼なんて確かに貴重な生物だし強大な妖怪の一種だからね。

 

「私はアリス。魔界人よ」

「アリスって言うんだね。私はリリス・スカーレット。気軽にリリスって呼んでくれると嬉しいな」

 

 アリスと名乗った少女は、その手からどこかりともなく大きな本を取り出し、一歩前へに踏み出し宣言した。

 

「貴方、私と勝負しなさい!」

「………ぇ?」

 

 アリスが言ったことに理解が追い付かない。

 

 え?勝負?なんで?なんか悪いことした?

 そんなことを考えていると、アリスが分からないのかと言う表情で言った。

 

「勝手に魔界に乗り込んで、勝手に暴れて……勝手に家に乗り込んで!」

 

 ─────あぁ、そういうことか。

 

 彼女はきっと、自分の庭……もとい魔界で好き勝手した私が許せないんだろう。それはそうか。自分の世界を荒らされて普通は黙ってられないよね。

 だけど、こちらにも事情がある。いつもなら懲らしめられるべきなんだけど、今回は勝手が違う。少し鍛錬に付き合ってもらうとしよう。

 

「わかった。そういうことなら相手になるよ」

「…ず、随分さっぱりしてるのね」

「負ける気なんてないし、少し鍛錬に付き合ってもらうかと思っただけだよ」

「っ!馬鹿にして……ッ!!」

 

 どうやら今の言葉がアリスには気に食わなかったらしい。顔を真っ赤にして怒っている。不意にその姿がレミリアとフランに重なったが、今は気にすることではない。油断はできない。

 

 何せ、アリスの持つあの魔導書は────。

 

「見てなさい!これに書いてある究極の魔法で、コテンパンにしてやるんだから!」

 

 ─────グリモアール。

 

 人間界、魔界、天界……様々な世界が存在するこの世に散らばる有象無象、八百万の如く存在する魔導書の原典とされる魔導書、それがグリモアール。かつて神代の頃の原初魔法───五大要素(エレメンタル・ファイブ)が記されている。そこらの魔導書の五大要素なんてグリモアールに記されているものの劣化品に過ぎない。

 かつて、原初の始まりを示した原初の五つ。その原点をアリスが持っているのだ。

 相手の技量が分からない分、不安要素が拡大する。更にその手に持っているグリモアールがさらに不安要素の拡大を加速する。

 

「行くわよ!!」

 

 ─────しかし、そんな不安要素に構っている暇はない。

 

 アリスは私を封殺するかのように炎の柱、そして弾を撃ち出す。威力はそこそこ……なおかつ密度もなかなか。それらを見込んで魅魔以下と言ったところか。とはいえ、グリモアールの影響かそこらの魔法使いよりは断然強い。油断したらやられる程度。

 

 その龍のごとく迫る炎の弾幕が、逃げる私を追いかけていく。さらに私を狙った弾幕が次々と放たれ、火柱が私の退路をかき消す。

 

 流石にこのままではまずい。私はグラムを二本創造し、私に迫る弾幕をかき消して退路を切り開いていく。少し反撃の余裕が出来た。

 

 

 さぁ、反撃(パーティー)の時間だ!

 

「《滅光(ホーリー)》」

 

 私はグラムを盾に回し、魔力を回して無数の魔法陣を展開して光の雨を降らす。その光の雨が炎の弾幕を打ち消し、そのまま勢いを保ちアリスへと向かうが、アリスは結界で防ぐなどの手段で身を守っていく。鍛錬のおかげか、最小限の魔力で発動することが出来るようになった。

 

 これで埒が明かないと判断したのか、アリスは炎から氷へと切り替えた。

 

 細かい氷の針が放たれ、躱す隙間さえ埋めて襲いかかってくる。それらをグラムで防ぐものの、次は巨大な氷の塊が二つ三つと回転しながら近づいてくる。

 思ったよりやるなと思った私は、その手に魔力を込め───

 

「───模倣(レーヴァテイン)

 

 フランのレーヴァテインを作り出し、薙ぎ払う。氷の針に塊と、灼熱の炎の剣がぶつかり、蒸発して視界が一瞬にして悪化した。

 そこで、私はアリスの気配を探って新技を一つ披露した。

 

「───《二つの紅い影(セカンドアカインド)》」

 

 私は魔力と能力を併用し、自分の分身を作り出す。

 この原理は私の最大の切り札や凶星乱舞と同じで、能力に魔力を上乗せしてオリジナルに近いものを生み出すもの。この分身はオリジナルと感覚を共有することで指示を出せる。

 

 私はその分身を利用して、悪化した蒸気の視界の中へ入り込んだ。

 

「っ…どこに…っ!?」

 

 視界が悪化する中、アリスは必死に私を探そうとしているのか周りをキョロキョロとしている。よし、作戦通り。

 

 そこで、私はアリスの背後に忍び寄り、グラムを振りかざした。

 

「フフ……無駄よ!」

 

 しかし、ニヤリと笑ったアリスの手に書かれた魔法陣が展開され、私はその氷の刃に貫かれて─────

 

「なっ……」

 

 ────その()は消えた。

 

「残念」

 

 そして驚いたアリスの後ろに、本体の私が現れ、グラムを振りかざした。

 そう、アリスが串刺しにしたのは分身の私。作戦は分身で陽動し、本体の私が攻撃を与えるというシンプルなもの。アリスがああいうことを見越して用意していたというのは、蒸気が発生して視界が悪化したときに魔力の流れを見てわかった。

 だからこそ、一度その罠を受けて、手薄になったところを倒す。

 

「どう?降参する?」

「う~……まだ三つの究極の魔法があるのにぃ~……」

 

 既のところでグラムを止めて降参するかどうか聞くと、アリスは敵わないと悟ったのか、渋々と言った顔で両手をあげた。

 

「強すぎる~……」

「まだまだだよ。もっと強くなきゃ……アレは倒せない」

「……アレって、サリエルのこと?」

 

 なぜアリスがサリエルのことを知っているのか聞こうと思ったが、それは聞く前に理解した。アリスは魔界人だ。魔界の状況くらい、こんな子供でも理解出来ているのだろう。こんな子供が理解せざるを得ない状況下にあるということも心苦しいが。

 

「神綺様とか侍さんと一緒に倒しに行くの?」

「そうだよ。そのために魔界に来たんだ」

「…なんか、ごめんなさい」

 

 自分の勝手で味方を傷つけてしまったと思ったのか、アリスは頭を下げた。

 

「いや、私も有意義な時間になった。鍛錬の成果もわかったし」

「…そう」

 

 私がそう言うと、アリスはニコッと笑った。またレミリアとフランに重なったが、それよりも魔界住みの人達はなぜこうさっぱりしてるのか、それが疑問になってしまった。

 

「ねぇ」

「ん?」

「…神綺様たち、大丈夫だよね?」

 

 さっきまで強気だった表情が一変し、不安でいっぱいな顔になって聞いてきたアリス。それもそうか、神綺はこの魔界の全てを創り上げた創造神。言い換えればアリスも神綺の創造物……娘のような関係になる。アリスの思うその気持ちは親を思う気持ちそれだろう。

 

 ────正直わからない。

 

 相手は元月の支配者であり、一夜にして地獄と魔界を蹂躙の限りを尽くした死の天使。今までの相手とは格が違うし、生きた年代も異なる。ありとあらゆる力が格上なのだ。

 

 けれど──。

 

「大丈夫。私がみんなを守るから」

 

 ────誰も傷つかせないのは変わらない。

 

 相手がどれだけ強かろうが関係ない。守れるものは守る。必ず。

 私はそういう決意でこの戦いに身を投じているんだ。神綺やコンガラ、私の家族(レミリアとフラン)は絶対に守り抜いてみせる。

 

 私がそう言うと、アリスは安心したのかそのまま駆け足でどこかへ行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 ────Until she is no longer with her, after one day.

 




最後の英語はGoogle先生に翻訳してもらったものです。

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