半端者が創造神となる日   作:リヴィ(Live)

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サリエル戦、後編です。




二十四話 死なばもろとも

【リリス】

 

 ─────唖然、というのはこのことを指すのだろう。

 

 サリエルが放った弾幕を神綺と共に相殺し、押し切ってサリエルへと弾幕の雨が直撃するや否や────

 

 

 

 

 

 まるでかき消されたかのようにその弾幕が消えた。

 

 

 

 

 

 そう、何も音を立てず、さらには一瞬で消えた。

 その事実を受け取れられないのか、私をはじめ、コンガラや神綺も驚愕の表情に染まっている。

 

 それもそうなのだ。あの弾幕にはサリエルは触れていない(・・・・・・)。今までの動作を見るに、破壊するにはあの弾幕雨全てに触れる必要があるはずだ。まぁ、それでもサリエルのモノに触れればいいという、自分のモノならば魔力でもなんでも触れていればなんでも破壊できるという反則的な能力であるが。

 あの時のサリエルは、最初に放った魔力よりも弱く、極限と言っていいほど魔力がなかった。まるで、何かを溜めていたように(・・・・・・・・)

 

 そして、弾幕の雨がかき消された瞬間、溜め込んでいたのであろう長膨大な魔力が膨れ上がる。

 

 私、コンガラ、神綺の三人の合計魔力、または神力と同等かそれ以上。そのあまりの量に私は戦慄してしまう。我に返ってサリエルを見てみれば───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 真っ黒となった六翼を広げ、先程まで閉じられていた瞳を開眼させ、左眼を禍々しく輝かせるサリエルがいた。

 

 

 

 

 

「…私にこれを使わせたことは褒めてあげるわ。けれど──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────それは、同時に貴方達の『死』を意味する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────サリエル。

 

 神の命令の名を持つ大天使であり、邪視の始祖とされる『死を司る天使』。万物の象徴たる月を支配し、ありとあらゆるものを神の名において罰してきた。

 

 邪視───それ即ち、『死』。

 

 人間界で言う魔眼の一種であり、サリエルはその始祖とされる。死の天使の異名はここにあり、その膨大すぎる魔力を持って、あらゆるものを一睨みで死に至らしめる。

 

 人間は言うにも及ばず、大気、意思、時間。時には概念や未来さえ。

 

 

 万物の死を与える死の天使。それこそがサリエル。

 

 

 万物の破壊と死を司る天使に、私は初めて恐怖した。神話の存在が、目の前にいるということを改めて認識させられる。

 

「…ッ」

 

 手足が震える。本能が警笛を鳴らしている。

 あれには勝てない。あれは我々を見下ろす天上の存在だと私の中の何かが叫んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────このままでは死ぬぞ。

 

 

 

 

 

 

 ─────それで?(・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 死んだからなんだ。死ぬからなんだ。

 私には仲間がいる。守るべきものが居る。目を背ければ、それらは全て崩れ去る。

 

 それは、死ぬことより怖いことだ。大切な人達が目の前で助けを乞い死んでいく中、私は何も出来ないなんて絶対に嫌だ。

 

 それならばここで木っ端微塵に砕け散り、こいつと相打ちになった方が、数千倍もマシだ────ッ!!

 

「…まだ抵抗するのね。愚かな吸血鬼と神々達───」

 

 サリエルは呆れを含んだ表情で言った。その言葉にハッと気づいて二人を見れば、二人も私と同じように何かを決意したような表情をしていた。

 

「…それ程までに死にたいのなら───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───貴方は念入りに、死なせて(殺して)あげる。

 

 

 

 

 

 

 ◆❖◇◇❖◆

 

 

【神綺】

 

「二人共、しばらく注意を引いて」

 

 それはリリスの一言だった。何か打開策があるのだろうかと思った私達は、コンガラと共にリリスから注意を引くためサリエルに攻撃を仕掛ける。

 コンガラは初撃にはなった紅の竜巻を、私は魔力によって作った無限捕食器官の銀河を作り出し、サリエルに放つ。

 しかしサリエルはそれらの攻撃を怯まず、竜巻を手で破壊し、銀河を瞳で死なせた(殺した)

 

「──《プロメテウスの炎》」

「──《矜羯羅梵呪(こんがらぼんじゅ)》」

 

 しかし攻撃はやまない。私はサリエルの足元に魔法陣を出現させ、コンガラは梵字を使った呪術を駆使し、サリエルを拘束。そして、魔法陣から超特大の爆炎の火柱がサリエルを呑み込んだ。

 

 しかし、それでもサリエルは火柱を破壊し、飛び上がる。

 

 そして次はサリエルが無数の魔法陣を展開し、破壊の力を上乗せした《破滅(ホーリー)》を放つ。それらを相殺すべくコンガラと私は同じく魔法陣を展開し、降り注ががれる弾幕を相殺する。流石に一対二の弾幕では密度に差が出たのか、サリエルの弾幕は押し切られた。

 

 しかし、それも先程と同じように死なせられる(殺される)

 

 しかし、私は変わらず弾幕を放ち、サリエルに弾幕の処理に集中するように攻撃を仕掛けた。コンガラはその隙にサリエルの背後に回る。

 

「──『慧』・『光』・『阿』・『指』・『烏』・『清』・『制』」

 

 それぞれの梵字が、主を同じくする七人の童へと変化し───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《 童 子 切 安 綱 》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 八大童子のあらゆるものを断つ八つの斬撃がサリエルを襲った。

 

「っ──」

 

 私から放たれる弾幕の処理に集中し、背後のコンガラに気づかなかったサリエルはコンガラの攻撃の対処に遅れ、背中を切り裂かれる。

 

「──?」

 

 そう、切り裂かれたのだ。さっきまでなら触れた瞬間に破壊されるはずが。

 それにだ。弾幕の処理に集中していたあの時も、サリエルは死の瞳どころか、破壊の力さえ使ってこなかったのだ。破壊の力さえ使えば私の弾幕の雨など一網打尽に出来はずなのに。さらには、心無しか魔眼を見せた時よりも、魔力がかなり減っている。

 

 ───あの魔眼はかなりの魔力を消費する代物なのではないか?

 

 破壊の力さえ使えないほど消耗しているとすれば、こちらに勝ちがある。勝利は目前だ────ッ!!

 

 

 そう思った時、上空に超膨大な魔力の塊が現れた。

 

 

 バチバチと中で何千回も魔力拡散(マイクロバースト)を起こし、超圧縮されたその魔力の球体。たとえサリエルであろうとあれは受け止められまい。さらには奴は消耗している。これならば────

 

 

 

「偽りの月よ────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《 月 落 と し 》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 虚像の月が、大天使に落とされた。

 

 

 

 

 ◆❖◇◇❖◆

 

【リリス】

 

 魔界全土を揺るがし、滅亡を呼ぶような超轟音とともに超強力大規模な魔力拡散を起こす。あの中心地は超高密度の魔力の渦。たとえ大天使であろうと中に入れば一瞬で塵になるであろう。

 サリエルを倒すために造り上げた、超巨大の虚像魔力の月を創り、相手に向かって落とすという、私の用いる最大の切り札《月落とし》。

 

「兎に角、これで───」

 

 

 

 

 

 

「終わりとでも思った?」

 

 

 

 

 

「───っ!?」

 

 

 

 安心もつかの間、何者かに首を掴まれて、魔力拡散による底の見えない大穴に、サリエルと共に落ちる。

 馬鹿な、あれを受けて無事でいられたとでも言うのか──ッ!?

 

「分身か──ッ!!」

「ご名答、けれど、この体も長くない。だから──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────若々しい貴方の肉体を貰うとするわ」

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?ぁあああああああッ!!!?」

 

 

 サリエルの意識が入り込んでくる。破壊の意思が入り込んでくる。

 私が、私で、無くなる感覚が───

 

 

 

「さぁ!受け入れなさい!!」

「ぁああ……ッ!!」

 

 

 

『さぁ、破壊しろ!』

『さぁ、殺せ!』

 

『お前の本能のままに!!』

 

 

「黙れッ!!」

 

 

 私は残り少ない意識を振り絞り、首を掴むサリエルの腕を掴む。

 

 これで───オマエハ逃げられナイ!

 

「っ!何を──」

 

「一体化が、オ望みナンデショ?なら──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ワタシと共に眠レ、死の天使……ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 刹那、二人が落ちていく大穴が、眩い光に包まれた───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆❖◇◇❖◆

 

 

【???】

 

 あぁ、人手が足りない。

 それが、賢者たる私の悩みだった。私の世界は理想には程遠い。巫女も仕事しているものの、あれでは気休め程度にしかならない。

 

 式たる九尾も動いているものの、私を含め三人ではとても人手が足りない。

 

 そう私が思いながら境界を開くと、そこはえぐり取られたかのようなボロボロの大穴の底だった。微かに、遥か彼方の天井へ光が見える。

 

 そして、目を下ろせば、落ちてきたであろう少女が。

 

 まだ十五にも満たない見た目の白髪の少女。ボロボロだったが、妖怪であるということはすぐにわかった。

 

 ならば、丁度いい────

 

 

「貴方を、新しい式として迎えましょう───」

 

 

 

 

 

 

 幻想郷へようこそ、名も知らぬ幼い妖怪さん────。

 




はい、ここでリリス視点の物語は一旦終わります。

これからは幻想郷編へと突入しますよ──!!
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