半端者が創造神となる日   作:リヴィ(Live)

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二十七話 忘れ去られたモノ

 ───────ねぇ───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────私を・て──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────・さ・・で───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───────お願い───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────私を………──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───私 を 呼 ん で(見て) 、 ソ ラ───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆❖◇◇❖◆

 

 

 

【空】

 

 

「ッ!!」

 

 その恐怖が目覚ましとなり、私は夢から覚める。そして寝ぼけることなく周囲を見渡すと、目が冴えていたのか八雲家だといつ事もわかった。

 

 ここ最近夢見る私を呼ぶ誰かの夢。それだけならいい。けれど、その声に応えた瞬間、私が私でなくなる気がして怖くて仕方がない。私が【八雲 空】ではない誰かになってしまう気がして。

 

「どうした?顔色が悪いぞ空」

「あぁ、藍様」

 

 私がそう思いながらテーブルへ向かっていると、私の顔色を見た藍様が私を心配していた。

 この人は、八雲 藍様。紫様の式神であり、妖獣の王たる九尾の狐の玉藻の前その人であり、国を傾けたという妖怪の中の妖怪。

 いくら能力の相性があったとはいえ、単純な妖怪としての力は紫様を凌駕する。鍛えてもらった時はその力に驚くばかりだった。

 

「最近良くない夢を見まして…あまり寝起きが宜しくないのです」

「…あまり無理をするな、空」

 

 私にとって藍様は、私を娘のように可愛がってくれる母親像そのものだ。実際、藍様には甘えたい時は甘えるし、藍様も藍様で可愛がってくれる。私は子供だからね、特権だよ。

 そんなことを思いつつ、私は食卓に並ぶご飯を食べて、仕事の支度をして八雲家を後にした。

 

 

 ~少女移動中~

 

 

 たまには散歩を、ということで私は距離が離れている博麗神社をてくてくと歩いていた。空飛んでばかりじゃ身体能力まで影響するかもしれないからね。

 そんなことを思いつつ、てくてく歩いていると、そこの茂みからガサガサっ!という音が鳴って、一人の子供が転けて姿を見せた。

 

「………」

「………」

 

 何やら絶望した顔でこちらを見ているのだけれど……。出会い頭にそれは失礼じゃないかな?

 

「よ、妖怪……?」

「いえ、私は人間ですがなにか」

「あっ……えっと」

 

「おいゴルァ!!」

 

 人間の子供がオロオロしていると、また茂みから怒鳴り声が聞こえた。そしてその茂みをガツガツと歩いてくる大男……その姿からして、妖怪だというのは一目瞭然だった。

 

 そこで私は結論に達する。この子はあの妖怪に襲われていたのだ。出会い頭に私がいればそりゃ警戒するよね。

 

「うるさいですね……もうちょい音量下げれないんですか貴方」

「うるせぇんだよクソアマ!こちとら飢えてんだよ!大人しく食われろやゴルァ!!」

「ひっ……」

 

 あぁあぁ、怯えちゃってるよこの子……大人として恥ずかしくないですかね?どうやら私も標的になっているようですし…素直にドンずらした方がいいかなこれ。

 今の私は武装してないし……刀も持ってない。要は素手なのだ。大妖怪を素手で嬲り倒すような巫女ではないし、戦力の差は歴然。

 

 さて、どうしたものか────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『力なら、ココニあル』

 

 

 

 

 

 

 

 

『私を使エバこんな奴一瞬ダよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だカら、私ヲ────』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────知るか。

 

 私は私の力で倒す。貴方には頼らない。惑わされない。

 私は(八雲 空)だ。貴方じゃない。

 

 こいつは───

 

 

「私の力だけで、倒す」

 

 

 私は身体強化の魔法をかけ、一瞬で妖怪との距離を詰めつつ印を結ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『前』

 

『在』

 

『裂』

 

『陳』

 

『皆』

 

『者』

 

『闘』

 

『兵』

 

『臨』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《 霊 撃 》

 

 

 

 

 

 

 退魔の九字を結び、私の中に眠る霊力を九字と共に放つ。代々博麗の持つ術の一つであるそれは、対妖怪と言っても過言ではない威力を持つ。それをもろに食らった妖怪は吹き飛び、そのまま帰ってくることは無かった。

 

「派手に吹き飛びましたね〜これは」

「あ………」

 

 その様子を唖然として見ていた子供は、気が付いたかのように腑抜けた声を出した。

 どうするんだろうかこの子……。

 

「で、どうするんです?妖怪は退治しましたけど」

「え……と」

「…保護者でも呼びますかね?」

「いや!」

 

 私がそう言うと、その子供は食い気味に否定してきた。なんだ?親にやっちゃいけないことを言われるのが嫌なのか?

 私はそんなことを思うと、その子は言った。

 

「わたしは、魔法使いになるために家出したんだ!」

「……はい?」

 

 ─────魔法使い。

 

 それはこの世界に存在する神秘を具現化して扱う者の名称。己の中に眠る魔力を鍵に、それらを具現化して駆使する。しかし、その魔力を鍵として扱うには困難を極めると言う。

 

「…やめておいた方が」

「いや!わたしは魔法使いになるんだ!!」

 

 あ、これ絶対曲げないやつだこれ。

 こういう根性は認めるけど、こういう時に遺憾無く発揮されるのは本当に宜しくないなぁと思いながら、私はどうしたものかと考えていた。

 

 

「…ん~、とりあえず博麗神社行きません?そこでちょっと話しましょうか」

「え、うん」

 

 

 

 ~少女移動中~

 

 

「霊奈、いますか?」

「あら、空じゃない……って、誰その子」

「妖怪に襲われたところを」

「なるほど、取り敢えず上がりなさい」

「感謝します」

 

 

 霊奈に案内され博麗神社の横に並ぶ家へと案内される。やはりいつ見ても境内は綺麗だ。霊奈が綺麗好きというのもあるが、あの人達(・・・・)がうるさいから、というのもあるのだろう。かく言う私もうるさいが。

 

「あ、空ねぇだ!」

「こんにちは、霊夢」

 

 私を見るなり直ぐに抱きついくる子供。この子は霊夢、数年前の妖怪退治の時に発見した孤児であり、その素質から霊奈は育てることを決めたらしい。頻繁に訪れる私を『空ねぇ』と呼ぶとても可愛らしい子供である。

 

「で、その子はなんなのよ」

「魔法使いになりたいそうです」

「………はぁ、アイツに任せる気?」

「はい、魔法の腕でしたら間違いなく幻想郷最高クラスですし」

 

 そう言うと霊奈はあの人を呼ぶために神社の方へと向かっていった。あの人なら魔法の心得をしっかり覚えているだろうし、何より信頼してるからね。

 

 

 

 

「やれやれ、人が眠ってるところを叩き起されるとはねぇ…」

「貴方人じゃなくて祟り神でしょう、魅魔(・・)

「生前は人間さ。今は悪霊兼祟り神だがね」

 

 

 

 

 

 霊奈が連れてきたのは、ふよふよと浮かぶ緑の衣を着た幽霊。

 

 彼女は魅魔。この神社の悪霊兼祟り神であり、かつて『博麗の家系のみ扱える陰陽玉の力を手に入れ全人類に復讐する』という目的を持っていたが、どうでも良くなってこの神社に憑いてる魔法使い。

 魔法使いとしての腕は正に『大魔法使い』クラス。その腕は紫様さえ認める幻想郷が誇る最高戦力の一人であり、最強の大魔法使いだ。実際遊び半分で魔界に乗り込み創造神と渡り合ったとかいう訳の分からないことまでしてしまう精神、それが魅魔という魔法使いだ。

 

「で、弟子入り願望がいると聞いたんだが」

「は、はい!」

「へぇ、あんたかい。まぁ素質はあるようだね」

 

 魅魔が物を見定めるような目付きでその子供を見つめる。子供は魅魔の目線に耐えきれないのか目線を逸らしていた。

 

「あんた、名前は?」

「あ、えっと、霧雨魔理沙です」

「魔理沙、あんたに聞きたいんだが───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───魔法使いになる覚悟…それはあるかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魅魔の纏う雰囲気が魔法使いのソレへと変わる。覇気とも取れるそれに、魔理沙は怯えそうになるも、必死に耐える。

 

「あんたは私と違い人間だ。それも生身のね。魔法使いとなるということは人間の道から外れることと同意義。魔法使いになればあんたは人間の道を外れることになるのさ」

「……」

「……もう一度聞く。あんたには魔法使いになる覚悟はあるかい?」

 

 その覇気が一層濃くなる。品を見定める魅魔の瞳は、今ばかりは獲物を見抜く戦いの瞳に見えてしまう。魔理沙でもこの圧には耐えきれないだろうと思っていた刹那───

 

 

 

「うん。わたしは魔法使いになる」

 

 

 

 ハッキリと、魅魔の眼を見つめて言い切った。常人ならば一目散で逃げるような覇気を魔理沙は逃げることなく耐え、その上宣言したのだ。

 

「──わかった、魔理沙。お前を弟子にしてやる」

「え、ほんと!?」

「あぁ、でも明日からだ。今日はゆっくり休みな」

「ありがとう……えっと」

「魅魔だ。これからは師弟関係、私のことは魅魔様と呼びな」

「うん、魅魔様!」

 

 一時はどうなることかと思ったが、結果として良いことになった。まぁ、魅魔の事だ、すぐに魔理沙をダメにするようなことはしないはずだし、ちゃんと養育はするだろう。

 

「…それじゃ、私はこれで」

「ん?もう帰るのかい?」

「はい、二人が心配しますから」

「やれやれ、あんたも大変だねぇ」

「そんなことは無いですよ?私のことを思ってくれる大切な家族ですから」

「………」

 

 それじゃ、と私は博麗神社を後にする。気づけば昼だったので神社でご飯食べればよかったなぁと思いつつ、私は八雲家へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……本当に、忘れちまったってのかい……?■■■」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魅魔が放った言葉は、私の耳には届かなかった。




一応、書き終わりましたが…ここからは活動報告で書いたように少し時間を開けます。詳しくは活動報告の方を。

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