半端者が創造神となる日   作:リヴィ(Live)

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二十八話 吸血鬼異変

【紫】

 

 微々たるものだが、幻想郷が少しづつ理想へと近づく状況に私は安堵すると同時に、これから起こることには危惧していた。

 ようやく落ち着いてきた幻想郷に、新たな妖怪が入り込んでくるとの情報を掴んだのだ。別に侵略するのは構わない、こちらには劣るとも勝らない戦力は充分揃っているし、最悪は私が出向けば良い話だ。

 

 しかし、問題はその相手だ。相手はかつてこの幻想郷がある日本と呼ばれる島国の外───中世の大陸を支配していた強大な吸血鬼、スカーレット家だ。

 スカーレット家はただの吸血鬼ではない。その実力、格、種族としての力……そこらにいる有象無象の吸血鬼達とは訳が違う。

 

 ただそれだけならば良い、だがこちらには彼女がいる。

 

 なんとしても、スカーレット家と彼女を会わせてはならない。既に彼女の中の『彼女』が目覚め始めている。下手に刺激をして呼び起こしてしまえば、『彼女』自身が創った封印が砕かれ『天使に飲まれた彼女』が出てくる可能性があるからだ。

 最悪、空を殺さなければならない(・・・・・・・・・・・・)状況になる可能性まであるのだ。下手に会わせるわけにはいかない。

 

 ズゥン……という音と共に強大な妖力が幻想郷を覆う。

 

 ─────来たか。

 

 私は我が愛しい式神のことを考えつつ、戦力を集めるべくスキマを開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────後に『吸血鬼異変』と呼ばれるこの異変が、彼女を大きく動かすことになるのは私も予想外だった。

 

 

 

【空】

 

 何やら重いような物が落ちたような音と共にこれまでにない強大な妖力が幻想郷全体を被ってるんですがそれは。

 ピリピリと肌に触れる妖力の質は、主である紫様や藍様と同格。つまりトップクラスの妖怪てあるというのは間違いない。大方基地ごと転移魔法かなにかで移動してきたのだろう。

 

「空、お前は人里の防衛に回れ」

「承知しました、藍様もお気おつけて」

「あぁ」

 

 軽くやり取りをして、指定された人里の守護をするべく私は人里へ向かう。紫様達のことが気になるが、心配することは無いと自分でその思考を切る。何せ幻想郷創造者と最強の式神がいるのだ、負けるはずがない。

 

 そんなことを考えていると、既に人里が眼下に映り始める。よく見ると既に人々は避難し、気配は消えうせて満月の影響か慧音は二つの角が生えた状態となり、その隣にいる妹紅は既に準備万端と言ったところだった。

 

「来たか」

「そちらも準備万端のようでなによりです」

「えぇ、これまでにない強敵ってのはこの妖力を感じれば明らかだしね」

 

 いつもの侵略ならば私と藍様で対処するが、この放たれた妖力は紫様と藍様と同格クラスのものだ。私では当然手に負えないだろう。更にいえば今日は満月、妖怪達が最も力が溢れる時期と重なってしまった。それも相まって、妖力の質は重く、高密度なものだった。

 とはいえ、満月と言えどこの質は異常だ。衝撃波でもない普通に放たれた妖力が建物をミシミシと軋ませる(・・・・・・・・・・・・)なんてありえない。

 

 ────妖怪とはいえ、満月の影響を受けるのには個人差がある。しかし、その影響には必ずしも影響があるかないかで戦力が大幅に変わる一族が存在する。

 

 そう、吸血鬼だ。吸血鬼はかつて大陸で『夜の支配者』の異名を持つ、妖怪の中でもトップクラスの種族。そして満月の影響を最も受けやすい種族であり、満月となれば元々高い不死性が極めて不死に近くなり、吸血鬼によっては弱点である銀や流水のダメージさえ上書きするほどの再生力を持つ者もいるという。

 

 この漂う妖力が今回の相手は吸血鬼、というのを示しているようなものだった。

 

「……来たわね」

「吸血鬼……想像通りですね」

 

 ぞろぞろとこちらに向かってくるその軍団。軍団から漏れる妖力が、その種族を指し示す。吸血鬼だけではない、恐らく既に死んだ者達を無理矢理蘇生させた屍鬼が大半を占めている。

 血肉と悪臭をまき散らしながら確実にこちらへと歩み寄ってくる吸血鬼と屍鬼の軍団を見て、後片付けが大変だなぁと呑気なことを考えながら、私は腰に携帯していた刀を逆手に持ち、スラリという音を立てて刀を抜いた。

 

 

「─行きますよ」

 

 

 身体強化の魔法をかけ、私は地面を蹴りその軍団に突っ込んでいく。眼前に迫った一体の屍鬼を切り裂いたことで戦いの合図はなった。

 

 一、二、三────

 

 テンポよくあらゆる行動を次の行動につなげ、無駄なく、確実に屍鬼を切り裂いていく。そして背後に迫る気配を刀を縦に振るった反動をそのままに体重を乗せて回転し、下から真っ二つに切り裂く。そこで足を地面に置くことで反動を殺し、再び前進するために踏み込んだ足を再び蹴り、突撃していく。

 途中で吸血鬼が混ざりこんでくるものの、私は博麗の力を駆使し再生をさせる前に心臓と頭を吹き飛ばし、また同じ動作に戻る。

 そしてしばらくそれを繰り返した後、ガキィン!という金切り声が聞こえ、顔を上げると私の刀を受け止める一人の吸血鬼がいた。

 

「おぉおぉ……暴れてんなぁ」

「…誰です?」

「さぁね、自分が自分でわかんねぇよ」

 

 短いやり取りを行い、互いの武器を弾いて距離を取る。私の不規則な動きを見抜き、なおかつその攻撃を辞めさせるなんて……相当の手練か。

 

「そうですか…じゃ、わからないまま私達のために倒れてください」

「そいつァお断りだなっと」

 

 私が言ったことを否定しつつ、その吸血鬼は私の攻撃を交わして剣を振るう。一つ一つの太刀筋に迷いはなく、私を殺さんと吸血鬼は剣を振るう。明確な太刀筋が私を襲うが刀でそれを防いでも、流れるように次、次と攻撃が降り注ぐ。

 

 

「しま──」

 

「それじゃ、さいならさんっと」

 

 

 優勢であった私の位置はだんだんと追い込まれていき──

 

 

 私の胴体を吸血鬼の剣が切り裂いた。

 

 

「かハッ……」

「しぶといなぁお前、はよ死ねや」

 

 そして吸血鬼の脚力を持って、傷口を思いっきり蹴り飛ばして建物にぶつかり、大きな音を立てて崩れ落ちる。

 

 痛い、痛い。

 

 死が迫るのがわかる。

 

 痛い、痛い。

 

 死が、目前に迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『弱いネ、ソラ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ド ク ン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 心臓が、跳ねる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『このままジャ負けチャうヨ?キミの大切ナ人も、殺されちゃう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 分かってる、でも────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………力が欲しい?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰か、私に───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 守るための、力を───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私を使って、ソラ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆は─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「私が、守る」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その紅き瞳とともに、彼女の翼が現れる─────

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