半端者が創造神となる日   作:リヴィ(Live)

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ようやくレミリアが登場します。



三話 私のお姉様。そして理想

【レミリア】

 

 私はレミリア・スカーレット。お父様やお母様、その眷属からスカーレット家の次世代当主として期待されている。

 

 そういった期待の目を向けられる日々のある日、ふと、お母様があることを私に言った。

 

 ───貴方には十一個上のお姉さんがいる。

 

 即ち、私の姉となる存在───スカーレット家の長女がいるということである。

 初めは驚いた。何せ、今までの姿を見たこともないし、存在すら初めて知ったからだ。

 

 なぜ姿を見せないのか、お母様に問うと、お母様はとても悲しそうな顔をして言った。

 

 ───ある理由で幽閉されている。

 

 その理由を何度も聞こうとしたけれど、お母様はとても苦しそうな顔ではぐらかした。

 

 何故、お姉様は幽閉されたのだろうか。

 

 いてもたっても居られなくなった私は、お父様に問い詰めた。

 

 お姉様はなんで幽閉されているの?と。

 

 その時のお父様も、お母様と同じ苦しそうな顔をしていた。

 そして、震える声でお父様は言った。

 

 ────翼が無い半端者だったから。

 

 そんなことで幽閉したのか。

 そう問い詰めようとした時、お父様の瞳から雫がぽたぽたと腕に落ちているのがわかった。

 

 そこで私は察した。

 

 もしかして、幽閉せざるを得なかったのでは?と。

 

 そこで、直接本人に聞くためにお姉様のお部屋へ案内してほしいとお父様に頼んだところ、許可を貰った。

 

 そして今───私はお姉様のお部屋の前に居る。

 

 初めてお姉様と会う喜びと幽閉されている理由の虚しさがごっちゃになって、なんとも言えない気分になる。

 

 早く会ってはお話がしたい。

 

 その気持ちがごっちゃごちゃした気持ちを埋めつくし、私の脳が自然にドアに向かってノックをしていた。

 

『どなた?』

 

 帰ってきたのは、聞いたこともない声。

 でも、どこか優しげな雰囲気を出していた。

 

「レミリア・スカーレット…です」

 

 緊張して声が震えているのがわかる。お姉様に情けないと笑われないだろうか……。

 

『レ、レミリア!?ちょ、ちょっと待っててね!?今片付けるから!!』

 

 すると、私が来ることを予想してなかったのか、お姉様の部屋からドタバタと忙しい音が聞こえ始める。

 

 ────やっぱり、急に来たのが悪かったのかな。

 

 しばらく忙しい音が聞こえ、その音が消えた後。

 

『ごめんね、入っていいよ』

 

 と、入室の許可を許した。

 

 私の手が、ドアノブに触れる。少し、震えているのがわかる。

 

「失礼、します………」

 

 そのドアを開くとそこには───。

 

 

 

 

 白銀の長引く髪の左上にサイドデール、赤い衣を纏い紅い瞳でこちらを見る美少女がいた。

 

 

 私を見た瞬間、花のような笑顔となり───。

 

「初めまして!貴方がレミリアね?私はリリス・スカーレットだよ!」

 

 私に近づいてニッコリと笑って名前を名乗った。

 

 

 ◆❖◇◇❖◆

 

 

【リリス】

 

 私は今、魔導書に書かれた魔力の引き出しの練習をしている。コツを掴みつつあるし、それなりに魔力の引き出しは可能となった。まだ全開放は叶わないが……。

 

 私が鍛錬の間休憩していると、メイド達やお父様、お母様とは違う幼い声がドアの向こうから聞こえた。

 

「どなた?」

 

 誰だろう?食事はさっき済ませてメイド達が持って言ったはずだし、好き好んで私の部屋に来る人達もいないし───。

 

 もしかして、妹のレミリアとか?

 

 いや、流石にないか。恐らくお父様かお母様が近寄るなとか釘を刺してそうだし────。

 

 

 

 

 

 

 

 

「レミリア・スカーレット…です」

 

 

 

 

 

 

 

 ────ふぉおおおおおおうっ!???

 

 え、ちょ、マジで言ってるのかいドアの向こうのレミリアちゃん?

 本物?本物だよね!?待って!部屋の整備してないのぉおおお!!

 

「レ、レミリア!?ちょ、ちょっと待っててね!?今片付けるから!!」

 

 鍛錬しっぱなしで部屋をまともに片付けていなかった私は、整理中に深呼吸しながら心を落ち着かせる。

 

 ───まだあわてるような時間じゃない(汗。

 

 散らかっていた本を全て片付け、お出迎えの準備をする。

 

「ごめんね、入っていいよ」

 

 ───あぁ、心臓止まるかと思った。

 

 本当にだらしない所を見せてしまった(聞かせてしまった?)。

 レミリアが───

 

 

『お姉様ってだらしないのね(笑)』

 

 

 

 

 とか言ったら私泣くよ?本当に心真っ二つに折れるよ?ハートブレイクするよ?

 

 表情には出さずに心の中で大パニックを起こしている私をよそに、レミリアはドアを開けて、姿を現した。

 

 

「失礼、します……」

 

 

 現れたのは、子供だった。

 青みがかかった髪の毛にナイトキャップを被って、ピンク色の衣に身を包み、パタパタと翼を羽ばたかせる可愛らしい女の子。

 

 ────彼女が、レミリア・スカーレット。

 

 

 率直に言おう────

 

 

 

 

 

 

 

 貴方は天使様ですか?そうですか(萌死。

 

 

 

 

 

 

 

 何この超弩級にクッソかわいい妹。なんなの?ねぇ、マジなんなの?私を殺す気?(著しい語彙力低下

 

 一瞬、私を迎えに来た天使なのかと本気で錯覚した後、私はすぐ正気に戻るが、いてもたってもいられなくなった私はすぐさま駆け寄り、自己紹介をした。

 

「初めまして!貴方がレミリアね?私はリリス・スカーレットだよ!」

 

 近くで見るともぅマヂ無理………。

 この子が妹とか最高過ぎない?もう私死んでもいいわ。

 

 ─────いや、死んじゃだめだろ。

 

 私には『誰も傷つかない理想世界』を創る夢があるんだ。ここで死ぬわけにはいかない。

 

「は、はい……」

「そんなに緊張しなくていーよ、ほら、リラックスリラックス」

 

 私がリラックスするように促すと、少し緊張がほぐれたのか、頬張っていた顔が緩くなった。あぁんもうかわいい。

 

「落ち着いた?」

「う、うん」

「そう、なら良かった!入って!」

 

 あぁ、早く話がしたい。レミリアと至高のひとときを楽しみたい!

 

 レミリアを椅子に座らせ、私が向かい合う形で座る。月夜に照らされて顔が赤くなっている。まだ緊張してるのかな?

 

「え、えっと……私のお姉様、でいいの?」

「うん、正真正銘、血の繋がった姉妹だよ」

 

 まぁ、普段出てこないからレミリアは私の存在自体が初めてなのかな?何の話をしようかと話題を探していると、レミリアからある言葉が出てきた。

 

「お姉様、私、聞きたいことがあるの」

「?なに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして、お姉様は幽閉されているの?」

 

 

 

 

 

 ──────はて。

 

 私はいつ、どこで幽閉されていることを言っただろうか。

 この会話に至るまでの短い会話でも、そんなことは一言も言ってない。

 

 

「──誰に聞いたの?」

「お母様とお父様から」

「……」

 

 

 おいぃ………機密情報の意味ぃ……。

 

 私が幽閉されているということを知っているのは、両親と一部の眷属のみ。他の眷属は私のことは死んだと認識させている。

 いくら身内だからって、そう簡単にばらすものなのか?

 

 まぁ、知られたからには仕方ないか。

 

「…そうだね。少し長くなるけど、いい?」

 

 レミリアは強く頷き、私の瞳をじっと見つめる。

 

 

 

 

「わかった。それじゃあ、話すよ」

 

 

 

 

 ◆❖◇◇❖◆

 

【レミリア】

 

 ─────どうして、お姉様は幽閉されているの?

 

 そう言った瞬間、お姉様の笑顔が崩れ、目を見開いて驚愕の表情を浮かべた。

 

「───誰に聞いたの?」

「お父様とお母様」

「……」

 

 お姉様は少し頭を伏せ、なにか呟いたあと、私を見て言った。

 

「…そうだね。少し長くなるけど、いい?」

 

 私は強く頷き、お姉様の瞳をじっと見つめた。

 

 

 

 

「わかった。それじゃあ、話すよ」

 

 

 

 お姉様はゆっくりと、話し始めた。

 

 

「スカーレット家長女として生まれた私は、欠陥品だった。見ての通り、吸血鬼の象徴たる翼がなかったから」

 

 

 ────ふと、お父様が言っていたことを思い出してお姉様の背中を見る。

 

 確かにない。吸血鬼のシンボルの翼がない。

 

 

「それと私の能力。私の能力は『万物を創造する程度の能力』。私がイメージしたものを一切の魔力を使用せずに現界させる能力。だからこそ一つの世界さえも創りかねない《神代の権能》を持って生まれた私を恐れた」

 

 

 

 ────《神代の権能》、別名、アンティーク・ラグナロク。

 

 人が生まれて間もない頃──《神代》に始まったという、神話戦争《ラグナロク》により神々は争い、多くの神はその戦いにより死んだ。

 その死んだ古代の神々の権能───強大すぎる神の力は転生せず、意志を持ってさまよっているという。

 これらを地上の民は《神代の権能》と呼ぶらしい。

 希に地上の人間がその力を宿して生まれることがあると言う。恐らくお姉様はそれに重なったのだろう。

 

 

 

「そして吸血鬼の翼は、自分の強さと身分を表す。それがない私は半端者の烙印を押され、半ば強制的にここに幽閉させられた」

 

「でもお父様とお母様は──」

 

「そう、お母様は幽閉を反対した。けれど、お父様は半端者である私の存在が一族に揺らぎを与え、士気の低下に繋がると考えた。だから幽閉という手段を取らざるを得なかった」

 

 お姉様のことを語っていたお母様とお父様の顔が浮かぶ。

 

 ────苦しそうに語る、二人の顔が浮かんだ。

 

「結果、私は生まれてまもない頃からここに幽閉されることになったけど、この日々は私にとっていい経験になった」

 

「え……?」

 

 幽閉が、いい経験になった?

 

 訳が分からず頭を傾げていると、それを見たお姉様が説明してくれた。

 

「これで私は目標を立てれたし、誰にも邪魔されず目標に向かって力をつけることが出来た。」

 

「目標………?」

 

 お姉様は私の目を真剣に見つめ、口を動かす。

 

「今の時代は正に弱肉強食。弱い者は殺され、奪われ、強い者だけが生き残る。私はその弱肉強食に従って力なき弱者として幽閉されたんだって理解した」

 

 確かに、今の時代はお姉様の言う通り、『弱肉強食』。

 強い者が生き残り、弱い者は屠られる。

 

「──私は思ったんだ。なんで弱い者ばかりが奪われるんだって」

 

 お姉様の目はより真剣になる。

 

「だから私は考えた。その弱き者達が安らぐ、誰も傷つかない最高の世界────《アヴァロン》を創り上げるってね」

 

 ────お姉様の能力は、『万物を創造する程度の能力』。

 お姉様はイメージしたものを魔力を使わずこの世に現界させる能力といった。

 

 《神代の権能(アンティーク・ラグナロク)》──創造神たる強大な能力を持つお姉様なら、一つの世界を創り上げるのは可能なのだ。

 

「その為には絶対的な力が必要。弱い者達を守る為に、私は強者にならなければならない」

 

 ─────お姉様が語る夢。

 私にはとても出来ない、誰も傷つかない理想世界を創り上げる。

 

 

 

 

「私の目標は《アヴァロン》の創造。それに伴う絶対的な力の習得だよ」

 

 

 お姉様の瞳は本気だ。本気で一つの世界を創ろうと思っている。

 

「──凄い目標だね、お姉様」

「大人に言ったら『ガキは夢見てろ』とか言いそうだからね…こうして計画を話したのはレミリアが初めてだよ」

 

 そう笑うお姉様は、本当に楽しそうだった。

 まるで、恋をした少女のように、夢を語っていた。

 

 ───なら。

 

 妹である私が出来ることは───。

 

「私も」

 

「え?」

 

 

 

 

「私も、その夢を手伝わせて」

 

 

 

 

 

 お姉様は拍子抜けたような表情をする。まるで予想外とでも言いたげな顔だった。

 

「…笑わないの?」

「素晴らしい目標だと思うよ、私じゃ到底出来ない。だからこそ」

 

 

 ────だからこそ、お姉様の力になりたい。

 

「……ありがとう、レミリア」

 

 お姉様は笑顔で、私の頭を撫でる。

 

 ───ちょっと擽ったいけど、嬉しい。

 

 

 

「レミリアは、私の自慢の妹だよ」

 

 

 

 そう、お姉様はニッコリと花のような笑顔で言った。




補足

《ラグナロク》
人類が生まれて間もない《神代》と呼ばれる時代に起こったとされる神話戦争。その時の文献はほとんどなく、起こったことしか未だハッキリしていない。

《神代の権能》
別名、アンティーク・ラグナロク。
《ラグナロク》により死んだ古代の神々の強大すぎる力が死後、転生せず意志を持ちさまよっているとされる神々の力。
希にその力を宿した者が現れると言う。

《アヴァロン》
リリスが目指す『誰も傷つかない理想世界』。
名前の由来は『アーサー王伝説』に登場する妖精郷、アヴァロンから。
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