半端者が創造神となる日   作:リヴィ(Live)

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三十話 すれ違うもの

 ◆❖◇◇❖◆

 

【空】

 

 ───目が覚めれば、そこは私がよく見なれる天井がそこにあった。

 

 なぜ私がこうして横たわっているのか。それらの理由を探るべく私は目覚めたばかりで寝ぼけている頭をフル回転させてその答えを導く。

 

 ─────強敵の吸血鬼との遭遇。

 

 ─────圧倒され、何か溢れ出した力で圧倒し。

 

 ─────その吸血鬼に、『リリス』と呼ばれ、記憶が混乱したこと。

 

 あぁ、なるほど。まぁ、意識が飛んでしまった理由は、その呼ばれたことに対して考えていたら、血とか肉体的疲労で意識が飛んでしまったのだろう。というか、私の体に巻いてある包帯を見ればそれは一目瞭然だ。

 

 ─────そこで、あの言葉がもう一度フラッシュバックする。

 

『リリス』。あの吸血鬼は、見間違えたという訳でもなく、間違いなく、ハッキリと私の目を見すえ、確信した目で言った。まるで私がその『リリス』という名前だということを訴えているように。

 

 そして、それを聞いた瞬間に浮かび上がった、知らないはずの映像。でもそれらは、どこか私に懐かしい感覚を覚えさせ、さらに映っていた少女の気持ちが手に取るようにわかった。

 

 赤の他人のはずなのに。

 

 会ったことがないはずなのに。

 

 どうして、そこまであの少女のことが手に取るようにわかる?

 

 ──────分からない。

 

 あの少女は誰なのか。そして、それを知っている私は誰なのか。

 

「起きたか」

 

 そんなことを考えてれば、私の様子を見に来たらしい藍様が扉を開けて私に声をかけた。

 

「はい、今さっきですが」

「…そうか。お前が無事で何よりだ」

 

 ────そこで、私はさっきまでの思考でたどり着いた疑問を、藍様に言ってみようと思った。

 特に意味は無い。どうせ言ったところで、返ってきた返事は気休め程度にしかならないのは知っていたから。

 

「藍様」

「どうした」

 

 

「───私は、誰ですか?」

 

 

 藍様はその質問を聞いた瞬間目を見開いたが、ハッとしたようにいつものように冷静さを取り戻す。

 

「…お前は八雲 空だ。紫様と私の式神であり、義理の娘だ」

「………そう、ですよね」

 

 ─────そう言われるだけでも、私のぐちゃぐちゃになった心が落ち着く気がした。

 

 私は、八雲 空。今まで通り、振る舞えばいい。

 

「ありがとうございます」

「あぁ、何かあったら声をかけてくれ」

 

 そう言うと、藍様はいつもの足取りでこの部屋を後にした。

 

 

 ◆❖◇◇❖◆

 

【紫】

 

 幻想郷を襲った、吸血鬼の異変。通称『吸血鬼異変』。

 その内容は、私が想像していたものとは掛け離れていた。

 私の予想ならば、最も激戦となり、それこそ私や藍、魅魔のような賢者クラスの実力者が動き出さなければならないような、大異変を予想していたのだ。

 

 しかし、蓋を開ければこの始末。

 確かに吸血鬼達は屍鬼を連れて人里を襲った。しかしその数は想定よりも遥かに下回り、さらにはその襲撃場所はそこだけだった(・・・・・・・)

 そしてその本拠地。吸血鬼の王たるスカーレット家の城は、私にはとても弱々しく映った。まるでここに来る前になにかに襲われたかのように、手負いという言葉が正しいと言わんばかりにボロボロだった。

 そしてその館内も。舘と内装がいくら紅色とはいえ、ひどく血の匂いが染み付いている。それも、新しいものばかり。

 

 これだけならば良かった。だか、予想外はそれからだった。

 そしてその当主。スカーレット家現当主であるセラド・スカーレットは、そこにはいなかった。そこに居たのは、その妻と名乗るサリー・スカーレットとその娘と名乗る二人の吸血鬼。しかし彼女らはとても戦意なんてものは感じず、吸血鬼としての威厳なんてものはそこにはなかった。

 

 そこで私は気がつく。今までの誤算を正すため、超人的頭脳と長年の知恵を生かし答えを導く。

 そう、彼女らは侵略しに来たのではない。逃げてきた(・・・・・)のだ。吸血鬼を圧倒する何かに逃げながら。

 確かに、最初は侵略するつもりだったのかもしれない。しかし、その直前でその得体の知れない何かに襲われて戦力が枯渇し、残ったのは僅かな吸血鬼とその眷属のみだとすれば、話は通じる。

 大方、あの人里を襲った軍勢は単独行動の集まりだろう。まぁ、主が不在の上その血族が戦意喪失してしまっていれば、手柄を取りたくなる気持ちは分からなくもないが。

 

 だが、私はさらにそこで新たな脅威が生まれたと推測する。

 スカーレット家は大陸を統べる吸血鬼の王。そのスペックはほかの吸血鬼とは比べ物にならず、満月による影響も並の吸血鬼の数倍。そこに圧倒的な不死性が加われば、まさに向かうところ敵なしと言える。

 そんなスカーレット家を圧倒し、館の大半の戦力を削ぎ落とすという行為を成すことが出来る人物。私にも一人、心当たりがあった。

 

 しかし、そうだとすれば、『彼女』の中に眠る『アレ』の正体が分からない。その人物は数年前に『彼女』が道ずれにしたはず。その証が、あの子に眠る『彼女と同化したアレ』なのだろう。

 

 そう、そうなるとその人物は二人存在する事になるのだ。そんなことはありえない。いくら常識に囚われてはならない非常識の塊である幻想郷でも、さすがに起こりうる可能性はゼロに近い。

 

「(……彼女に聞いてみた方が早いかもしれないわね)」

 

 そう、その人物を倒そうと『彼女』と共に戦った一人は、私の友人。何せ『彼女』と彼女は瓜二つなのだから、印象的すぎるのだ。

 実際に現場にいなかった私より、体験者の話を聞いた方が早いのは確実だ。

 その思考を参考に今後のスケジュールを立てていると、私の背後に藍が現れた。しかしその顔はどこか暗いものだった。

 

「あら、どうしたの藍」

「……空の、『彼女』が目覚め始めました」

「!」

 

 ────何だと?

 

 私は空の『彼女』が目覚めないように、できるだけスカーレット家から避けていたのだが、何故?まさかあの軍勢の中に『彼女』を知るものが居たのか?

 私は現場にいた訳では無いので詳しくは分からない。目覚めた始めた『彼女』が、『アレ』に同化されたものなのか、それとも、『彼女』自身なのか………それは定かではないものの、こうとなればあまり時間の猶予もない。

 

 早く対策をねらねば、もっと多くの人が犠牲になる。それだけは避けなければならない。私が愛した幻想郷を、終わらせたりはしない。

 

「(考えるよりは行動を起こした方がいいわね)」

 

 そう考えた私は、早速彼女と会うために支度を始めた。

 

 ◆❖◇◇❖◆

 

 ────────とある異界にて。

 

「順調だ。あの吸血鬼の血族諸共滅ぼしてやろうと思ったが、それが良い警告になったようだな」

 

 その目の前に移る映像を眺めるその天使は、天使とは思えない悪に充ちた嗤いを響かせる。

 

 この時を待ち侘びたと言わんばかりに。

 

「───あの吸血鬼も目覚め始めた。よい、何もかも順調だ。このまま手はず通りに行けば───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───私は真にこの世界の破壊者となれる」

 

 

 

 

 

 死を体現する天使は、高らかに嗤う。

 

 





私隠すのが下手だから分かる人もいるんじゃないかな……?
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