半端者が創造神となる日   作:リヴィ(Live)

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───目覚めの時は近い。


三十四話 『彼女』

 ◆❖◇◇❖◆

 

【空】

 

 ゾクリと背中に冷たい何かが通り抜ける。

 心臓がバクバクと音を鳴らして必死に血をめぐらせ、そのせいか冷や汗のようなものが垂れる。

 

 化物達とは比べ物にならないほどの『死』の気配。

 

 まるで『死』そのものが私の前に立っているような、そんな恐ろしい感覚が私を襲う。

 

「…久しぶり、といっても貴様は覚えてはいないか。小娘」

「…?」

「まぁ、本当の貴様は、その中に眠っているようだが」

 

 ………私の事を、知っている?

 

 どうやら、数年前にこの天使とは会ったことがあるようだ。こんな恐ろしい存在に数年前に会っていたとは……。

 今は私に過去の記憶は無い。私の知らない所で会っていた……?しかし、これ程の存在を、忘れる筈がない。

 

 なのに、どうしてこの天使は私の事を───?

 

 

「まぁいい。篭っているのならば無理矢理引き出せばいいことだ」

 

 

 そう天使が言った瞬間、私の体に衝撃が走った。

 壁に体を思いっきり打ち付けたのか、背中が痛い。その衝撃により肺の空気が一斉に吐き出され、また取り込もうと息を始める。

 

 しかし、天使は隙を与えることなく、私の首を掴み、持ち上げる。

 

「ぐ…ぁ……」

「弱いな。かつて私を道連れにしたとは思えない」

 

 私の首を掴む天使の手に力が入る。喉を締められ息が出来ない。意識が遠のいてくる。

 

 ────しかし、その死の天使の背後に、紅い影が現れる。

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』」

 

 天使が私に構っている間に、レミリアは天使の背後を取った。そして、真紅に輝く紅蓮の大槍が天使を貫く───

 

「温いな」

 

 ────ことは無く。

 

 その大槍を片手で弾き返し、その片手で体勢を崩したレミリアを私と同じように首を掴んで吊り上げる。

 

 天使はこちらを見るとニヤリと嗤い、私の首から手を離した──

 

 

 

 

 

 

 ──瞬間、私の手足に激痛が走った。

 

 何故と思ってその手足を見る。私の手足には杭のようなものが打ち込まれており、身動きが取れない状況だった。

 

「丁度いい。大切な者も忘れているのなら、それら死を持って思い出させてやる」

 

 私を離したことで空いた手で、床に落ちたレミリアのグングニルを拾い、掴みあげられるレミリアにその槍を向ける。

 

 

 

 

「やめろ……」

 

『やめろ』

 

「やめろ……!」

 

『やめろ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「やめろッ!!」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆❖◇◇❖◆

 

 

 その場が一瞬にして魔力に包まれる。その重さと鋭さも相まって、館がミシミシと音を上げる。

 

「…ほぅ、どうやら半分は使えるようだな」

「…あれは…!?」

 

 サリエルとレミリアが目線を向ける先には、蒼かった瞳を右眼のみ紅く変色させてオッドアイとなり、片翼のみの真っ白な模様の描かれた三つの翼を広げる空が居た。それと同時に、館に広がる魔力も、彼女が要因ということも、二人は分かっていた。

 

「そうだ。その力だ。私が欲しいのはその力だ!」

 

 サリエルはこれを待ちわびたかのように嗤う。

 二人は異なる意味で、『懐かしみ』の感情を抱いていた。

 

 サリエルは、まるでやっとお前に会えたかのような感情。

 レミリアは、亡き姉と彼女が重なり、姉と過ごした日々を思い出すかのような感情。

 

「ぁああッ!!!」

 

 空は瞬きの間……一瞬にしてサリエルとの距離を詰め、サリエルを吹き飛ばす。空は逃がさないと言わんばかりに吹き飛んだサリエルを追い掛けて追撃を加えていく。

 

「!あれは……!」

 

 その光景をただ見つめるレミリアは、空の手に創られたあの剣(・・・)が目に映る。

 黒を基とした白い装飾が施された、あの人だけが扱う唯一無二の一振の魔剣。

 

 ───《輝ける黒き宝石(魔剣グラム)》。

 

 何故、空がその剣を扱えるのか。レミリアは、ただそれだけに頭を働かせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれば出来るじゃないか。だが、昔の方がもっとキレがあったぞ?」

「ウゥ……ッ!」

「…何だ、もうバテたのか?」

 

 サリエルはその力に見惚れつつも、その力を扱う空の体が力についてこない様を見て、サリエルは少し呆れた表情をした。しばらく彼女の攻撃を受け続けていたサリエルだが、その身体は全くと言っていいほど無傷に等しかった。

 

 サリエルはパチンと指を鳴らす。その瞬間、空の首元に魔法陣が浮かび上がり、それは身体中に展開されて、締め付けられるように魔法陣が空の体を縛った。

 

「その程度の器か。やはり、その力はお前には合わない」

 

 サリエルはゆっくりと縛られて動けない空に近づきながら語る。

 

「元々私とお前は一つだ。お前は私に還るべきだ」

 

 サリエルは空の手が握る魔剣を奪い────

 

 

「故に───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お前は私に還れ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空の胸元を突き刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆❖◇◇❖◆

 

【空】

 

 ───暗い。

 

 何も見えない。何も感じない。まるで海に投げ出されたかのような、冷たい水の様な感覚が私の体を襲う。

 

 こんなに暗いけれど、ゆっくりと落ちていくのがわかる。現に、体の感覚はもう無いに等しいし、だんだん冷めたくなっていくのが分かる。

 

 ……あぁ、もう私は死ぬんだ。

 

 今までの出来事が私の目に映る。

 

 紫様に拾われて、『八雲 空』という名前を付けられたこと。

 藍様に修行の稽古をつけてもらって、強くしてもらったこと。

 二人共、私を実の娘のように可愛がってくれたこと。

 

 ………この状況を覆すには、大きな力が居る。

 

 ここだけじゃなく、化物は幻想郷全体に広がっているのは見なくてもわかる。このままでは幻想郷は滅びるだろう。

 

 それを阻止するには、紫様も、藍様も、霊奈も─────あの二人(・・・・)を、全員守れるような、絶対的な力が必要だ。

 

 けれど、今の私(・・・)には、その力が無い。

 

 このまま、私は死んでいいのだろうか?何も守れないまま、何も出来ないまま……死んでも、いいのだろうか?

 

 

「…あれ?」

 

 

 ふと、体の感覚が戻ってくる。視界もはっきりして、さっきまでの冷たさは無くなっていた。

 

 はっきりした視界で辺りを見渡せば───

 

 

 

 

 

 

 

 空が映る水面が見渡す限りに広がる景色が広がっていた。

 

 

 

「ここは……?」

 

 急に現れたその世界に私は困惑する。さっきまでは紅魔館に居たはずなのに、こんな綺麗な場所に居るなんて。

 

 そんなことを思っていると、目の前の水面がボコボコと浮かび上がり、黒い影となって人の形を作る。

 

『力が欲しいのだろう?』

 

「…」

 

 なんとなくだが、この影が創り出す形は、私が先程まで戦っていた死の天使と酷似していた。

 

 死の天使の言いなりにはなりたくないが、彼女が言っていることは事実。

 

『ならば私を受け入れろ。そうすれば、全てを破壊してやる。お前に仇なす者を全てな』

 

「…」

 

 死の天使はゆっくりと私に手を差し伸べる。

 

 力が欲しい。守るための力が。

 

 ……なら、私が取るべき行動は。

 

『さぁ……』

 

「…」

 

 私は死の天使の手を取ろうとし、死の天使の顔がニヤリと嗤った瞬間───

 

 

 

 

 

 

 

 

 死の天使の胸元には、黒い剣が突き刺さっていた。

 

 

『…ほう?すっかりお前のことを忘れていたよ』

「…なら、そのままここから出ていってくれるかな?」

 

 

 私はその光景に目を見開く。

 

 死の天使に傷を与えたというのもあるが、その傷を与えた少女が、私が見た知らないはずの映像に出てくる主人公だったからだ。

 

 何故、その少女がここに居るのか。私の頭はその言葉で埋め尽くされた。

 

「貴方の力を使えば、確かに万物を破壊しうる。でもそれの結末は『孤独』だけ」

 

 少女の言う言葉が、私の頭に自然と入り込む。

 

「人は孤独では生きていけない。繋がりを断ち切れば人は死ぬ」

『……!』

「だから、貴方は消えて」

 

 死の天使は自分の体がその黒い剣に溶け込んでいることを目視で確認する。死の天使は驚いたような表情をしていた。

 

『…私を取り込む気か?』

「さっき、貴方の体は『元々私とお前は一つだ。お前は私に還るべきだ』と言った」

 

 ──なら、『貴方が私に還るべきだ』という選択肢も出てくるよね?

 

 だって、元々は一つなんでしょ?と少女は続ける。それを聞いた死の天使は小さく嗤う。

 

 まるで、私の負けだと言うかのように。

 

『一先ず私の負けだ。だが、お前は後に後悔することになる』

「……」

『私は『負の感情』そのものだ。意思も、力も全て』

「…何が言いたいの?」

『…いずれ分かる。私を取り込んだことに後悔する日が』

 

 死の天使の体は、ゆっくりと剣に溶け込み、姿を消した。少女はしばらくその剣を見つめていたが、考えても無駄と判断したのか、少女は剣を少し乱暴に仕舞った。

 

「さて、ようやく話せるね。ソラ」

「貴方は…」

 

 一体目の前の少女が何者なのか。そして、何故私の名前を知っているのか。その疑問を問いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はリリス。リリス・スカーレット。記憶を失う前の貴方だよ」

 




…たぶん、この展開は分かっていた方も多かったのでは?
私隠すのが下手っぴですので……(汗

一応、この話にも伏線は貼ってあります。わかる人はわかるんじゃないかな……?
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