何気に初めてなので、わかりずらい点もあるかと思いますが、大目に見てくださればと。
◆❖◇◇❖◆
「死んだか」
そう言いながら空を貫くグラムを抜き、放り投げ捨てるサリエル。
サリエルにとって、空自体は別に計画において重要ではない。空の中に眠る彼女とサリエル自身の本体である。
あの時、彼女を取り込もうとしたサリエルは、それを利用され本体を封印された。おかげで残りカスの意識を集めて自我を再形成するのに手間がかかったものの、こうして生きている。
だが、封印されたなら好都合だ。内側からじっくり、頂くことにしたのだ。
いずれ彼女とサリエルは一つになる運命にある。破壊と創造は表裏一体。彼女の力は今後どうしても必要だ。
今、空は死んだ。ならば、内側から
「ククク………」
ピクリ、と空……いや、空だった肉体が動き出す。
念願の時が来る。そうして手を差し伸べたサリエルは…………
その手を、腕ごと切断された。
「ッ!?」
突然の事に理解が追いつかないサリエル。切り落とされた左腕から吹き出す赤い血を浴びながら、身の安全の確保のために距離を取った。
そして、空には─────
天使のような真っ白な三対六翼を広げる、姿が映った。
「まさか………馬鹿なッ!?」
予想外の出来事に理解が追いつかないどころか身体すら動かないサリエルを気に、彼女は地面を蹴りサリエルとの距離を一瞬にして詰め、新たに創り出された魔剣グラムを持ってもう片方の腕を切り裂く。
切り裂く寸前に退避したため、切り落とすまでにはならなかった。
「…貴様………お前は…」
ただ一つだけ、結論を導き出したサリエルは彼女に向かって問う。
彼女は、何者なのか。
八雲 空か?
サリエルか?
答は────
「…考えれば、分かるんじゃない?」
と、無機質な声で返された。
そこで、サリエルは己の過ちに気がつく。
何が吸血鬼だ!?
よく良く考えれば、創造の力を与えられる時点で普通の吸血鬼では無い。それを創造の力を持つ普通の小娘として見下していた己を酷く悔やむ。
「…おのれ……吸血鬼風情がぁッ!!」
サリエルは怒りのままに、独特の紋章が描かれた球体を無数召喚し、そこからこれでもかと言うほどの超大量の弾幕が、音を超える速度で放たれる。
迫る弾幕を彼女は────
「くだらない」
魔剣の一振で、
「ッッ!?」
その光景にサリエルは絶句する。いくら本体より弱いとはいえ、いまのサリエルは幻想郷を問題なく単体で滅ぼせるほどの実力者であることには変わりはない。『万物を破壊する程度の能力』はあらゆるものに適応されるからだ。
その破壊の力を乗せた弾幕を、たった一振の動作で全て壊したという事実にサリエルは絶望する。
「まさか…本体を取り込み破壊の力を引き出したというのか!?」
間違いなく、弾幕を壊した衝撃波から発せられたあの力は『万物を破壊する程度の能力』と同質。それを扱えるのはサリエルのみである。
つまり、それを扱える彼女は本体のサリエルを取り込んだということになる。
『万物を創造する程度の能力』と『万物を破壊する程度の能力』。
それの一体化とはつまり───
『万物の破壊と創造を司る程度の能力』。
その一体化はサリエルが成す筈だった。しかし、サリエルはそれをするどころか逆に追い込まれ、絶望している。
計画の破綻。
絶望を与えるはずが与えられる側に回る。
そして、目的である一体化を彼女に宿らせてしまう。
サリエルにとって、この状況は絶望という言葉では表せきれないほどのものだった。
「おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれぇぇえええッ!!!!」
もはや自暴自棄になったサリエルは千切れそうな腕を支えつつ、ステッキに魔力を込め巨大な魔力剣を創り出し、ゆっくりと近づくリリスに向けて振るう。
それを、またくだらないと嗤うかのように魔剣一振りの動作で破壊する。
本能的な恐怖が、サリエルを襲う。今まで感じたことの無い圧倒的な存在が目の前にいることを理解し、これまでにない恐怖が体を硬直させる。
「吸血鬼風情が私を見下す気か!?人、ましてや妖より遥か上位の存在である天使を見下すか!?」
ゆっくりと顔を伏せておぼつかない足取りで近づいてくる彼女に罵倒を投げるサリエルはまさに負け犬そのもの。それを醜いと思ったのかは定かではないが、彼女はその様を見て──
「黙れないの?」
グラムでサリエルの肩を突き刺し、そのままズルズルと壁に擦り挙げる。
「ヒッ……た、頼む………助けてくれ…」
「……」
「お願いだ……お願いだから………命だけは………!」
瞳に涙を浮かべるサリエル。かつて魔界と地獄を蹂躙した魔王のような威厳は、その姿には見られなかった。
その様を、彼女は─────
嗤う。
「ぁ………」
無慈悲に、その断末魔すら切り払う無慈悲な刃がサリエルの首を切り裂いた。そして吹き出す血潮を浴びながら、彼女は静かに魔剣を仕舞う。
そして、ちらりと後ろを見やる。その先からは、走ってくるあの子の魔力が感じられる。焦っているのだろうか、その魔力はすこし波打っていた。
「……」
────今は、会う時ではない。
そう考えた彼女は、戦いによって穿たれた天井に登り、そこから見渡す自分の我が家を見渡す。もう少し感傷に浸っていたかったが、あの子と会う訳にも行かないため、彼女は消えるように紅魔館から立ち去った。
右の瞳から垂れる、赤い血を落としながら。
「…………」
その姿を見つめる賢者は、どこか険しい顔をしていた。