次回からは靈異伝を除いた旧作に入っていきます!
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「………」
とある幻想郷の一角にて、二人は見つめ合う。二人から発せられる雰囲気は、とても温厚なものではなかったが、殺意というものは感じられなかった。品定め、というところだろう。
妖怪の賢者は、問う。
「…今の貴方は、どちらかしら?」
賢者の瞳には、どこか焦りを感じさせる。それを見た彼女は──
「…どちらでも」
どこか自信が無いように、無機質な声で賢者の問を返す。
「…そう」
パチン、と口元を隠していた扇子を閉じ、賢者の素顔が顕となる。彼女はその行為を見慣れたかのように、顔色一つ変えずに見つめる。
「…幻想郷へようこそ。そして、おかえりなさい」
「…どうも」
彼女は微笑みながら賢者に背を向け、立ち去る。賢者にはその姿がかつての式と重なったものの、それとは全く異なる『孤独』の背に見えた。
どちらでも、とは言ったものの、主な人格は彼女なのだろう。かつての式のような雰囲気は無く、どこか他人を突き放すような、冷たい雰囲気を纏っている。
それは、賢者にはとても脆く、刃を向けるものなのだと思った。
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【リリス】
今の私はどちらか。それは安易に答えることは出来ない。
今の私は過去の私ではない。今の私は過去の私が
過去の私があってこその私があり、どちらかという選択肢よりは、誰だという選択肢の方が合う気もする。
だから、私は空でも無い、リリスでも無い。それらを礎として作り上げられたリリス・スカーレットだ。
今の私は昔のように……愛しい妹達と過ごしていた純粋な私では無い。
かつて私は、心の光と闇に壁を創り、切り替えていた。けれど、それがサリエルに乗っ取られかける原因となってしまった。
周りの変化により心の変化もする。感情というのは一度に発散しなければ溜まる一方だ。
つまり、あの時の私は光を受け入れて、闇ばかり溜め込んでいた。単にその闇で他人を傷つけるのが嫌だったからか……それはもう覚えてはいないが。
だがそれは制御できない時に限っての話。その闇を制御さえすれば、その闇を力として振るい、大切な者達を守ることが出来る。
この力さえあれば、みんなを守れる。
みんなが笑顔で、傷つくことの無い理想の世界が創れる。
「大丈夫……私は、私だ」
私の悲願。みんなが……家族が、笑って過ごせる理想の世界の創造の実現は、もうすぐそこだ。
………だからこそ。
私の大切な人達を傷つける奴らは─────
リリスの変化、気づいた方もおられるかな?