半端者が創造神となる日   作:リヴィ(Live)

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四十話 紅い館にて

 ◆❖◇◇❖◆

 

【魔理沙】

 

 私は、元々この幻想郷では有名な家に生まれた。霧雨店という、幻想郷の人間に知らない人など居ないくらいの、有名な店主の娘として生まれた。

 

 お前は私の娘なのだから、私の店を継げ。

 

 何故、この人は私に押し付けるのだろう。娘というただの親子関係なのに、なんで私に全て押し付けるのだろうか。

 

 いつもいつも私に責任を押し付けて、気に食わなかったら手をあげて。

 私はこの退屈で、何も無い日々にただただ絶望して、言われたことをこなす人形のようになっていた。

 そんな時だった。私が店の倉庫を漁っていた時、ふとそれが目に入った。

 それはどこにでもある絵本のようなものだった。主人公が恋人を助けるために、魔法(・・)を駆使して戦う、どこにでもある勇者の物語だった。

 

 でもその本に描かれた勇者に、私はなぜか心を惹かれた。

 

 自由奔放で、素直で、自分の道を真っ直ぐ進むその勇者の姿に、私は心を打たれた気がした。

 その自由さに、私は憧れに近いものを抱いた。絵本に出てくる勇者だと言えばそこまでかもしれないが、それ程までに、その勇者の姿はあの時の私からすれば、太陽にように眩しかった。

 

 だから、私はこの勇者のようになりたいと思った。

 

 流れ星みたいに、己が道を迷わずに真っ直ぐ進む、星のようになりたいと思った。

 

 そして私は、その本を持って家を出た。あの両親に対する感情というのはもうない。それは今でもそうだ。わたしは意地でもあそこには帰らず、絶対に魔法使いになってみせると誓った。

 

 

『魔法使いになる覚悟…それはあるかい?』

 

 

 あの人の言葉が、今でも私の頭に残っている。

 

 あの人の私を見定めるような鋭い目付きに、私は後退りしかけた。まるで全身に刃でも突きつけられたかのような、冷たくて鋭い気配は、今でも身体に残る。

 でも、絶対に退いてはいけない(・・・・・・・・・・・)と思った。ここで退いてしまえば、絶対に後悔する。

 

 何より、私は魔法使いになると決めた。

 

 魔法使いになるということがどれほど過酷かは、小さかった私も理解はしていた。どれほど苦しくて、どれほど辛いかは、想像しなくてもわかる。

 

 だけど、退いてはいけないと、踏ん張った。

 

 

『魔法使いになる』。そう宣言した。

 

 

 そして、あの人の元で修行を始めた。魔法使いになるための、過酷な修行が行われた。

 何度も諦めかけた。何度も挫けそうになった。何度も挫折しそうになった。

 

 でも、諦めなかった。私は、魔法使いになると決めたから。

 

 

 そして数年の時が過ぎた後………私はアイツと出会った。

 

 博麗 霊夢。幻想郷の調停者である博麗の巫女を任された少女。あらゆる面で天才の技量と頭脳を持ち、まさに天に恵まれたかと錯覚してしまうほどの天賦の才を持っていた。

 私が数週間かけて習得した魔法も、たった一日で使いこなし、努力して努力して、ようやく身につけた技も、あいつの前では通用しなかった。

 

 その才能には、嫉妬していた。私とは違って、あいつは天才だから。私には才能がないから。だから、あいつの持つ才能が妬ましくて妬ましくて仕方なかった。

 

 

 だから、『見返してやろうと思った』。

 

 

 今までの何倍も努力して、時間をかけて、あいつと肩を並べるために、私は努力した。

 あいつという天才を超えるには、努力しかない。諦めなければ、絶対にあいつと肩を並べることが出来るはず。

 

 そうやって切磋琢磨していき、私達は親友兼ライバルとなった。霊夢も私を相棒として認め、私もあいつを相棒として認めている。

 

 肩を並べることが出来た。なら次は、『追い越す』。

 

 私はそうやって付け足していって、霊夢に勝とうと何度も何度も弾幕勝負をやっているが、何回も何回も引き分けに終わってしまう。小さい頃の私は弾幕勝負にすらならなかったから、成長した方だと思う。

 でも勝てなきゃ意味が無い。どれだけ勝負の質が良かろうと、勝てなくては意味が無いのだ。だから、私は何事にも全力で取り組む。

 

 今回の異変だってそうだ。この異変は霊夢という博麗の巫女の初陣。初舞台だ。何度か異変解決をしたが、これが正式な異変解決となるだろう。

 

 肩を並べる私は、霊夢の恥にならないように、いつも通りに己が道を突き進めばいい。

 

 

「でっかい図書館だな……」

 

 

 そうやって館の中を散策しているうちに、何やら巨大空間に出てしまった。

 そこには見渡す限りの本棚に、数え切れない程の膨大な魔導書があり、私に限らず魔法使いにとっては、まさに研究の場所にもってこいの場所だった。

 

 

「…とんだネズミが入り込んだものね。外で物音がしたと思ったら、まさか古めかしい魔法使いが侵入していたなんてね」

 

 

 声が響く。その声に驚きながら、周りを見渡していると、上からゆっくりと浮遊し本を展開しながら降りてくる、紫の衣に身を包んだ女がいた。

 

 

「お、門番に続いて住居者発見したぜ…この霧はお前の仕業か?」

「えぇ。といっても、霧は頼まれたから出しただけよ。だから私は協力者であって首謀者ではないわ」

「そうか。でも協力者なんだな」

 

 

 彼女が纏うその魔力は、まさに正統な魔法使いそのもの。熟練の魔法使いが醸し出すその強者の雰囲気は、私の闘争心を燻り、戦いたくて仕方がなくなってくる。

 

 

「えぇ。そういうことを聞くなら、貴方は異変解決に来たのかしら?」

「正確にはその解決者の連れだな。私は霧雨 魔理沙。普通の魔法使いだぜ」

「パチュリー・ノーレッジよ。ここの大図書館の管理をしてるわ」

 

 

 パチュリー・ノーレッジ。

 恐らくあの人に次ぐ魔法使いであろう名前を、脳にしっかり刻み込む。相手は熟練の魔法使い。弾幕ごっことはいえ、気を抜けばすぐにやられてしまうだろう。

 

 

「んじゃ、始めようぜ!」

「…血の気が多いわね……早死するわよ」

「私は死なないぜ!こう見えて危機感には敏感なんだ!」

「…そういう意味じゃないのだけれど…まぁいいわ」

 

 

 互いに得物を構える。私は箒に跨り、八卦炉を右手にいつでも弾幕を打てるように。彼女は魔導書を展開し、いつでも魔法が打てるように。

 

 

「行くぜ!弾幕勝負のはじまりだぁ!!!」

 

 

 ───そして、両者の魔法が激突する。

 

 

 

 

《普通の魔法使い》霧雨 魔理沙

 vs

 《動かない大図書館》パチュリー・ノーレッジ

 

 

 

 ◆❖◇◇❖◆

 

【リリス】

 

 私は今、懐かしい雰囲気に酔いしれていた。

 所々装飾がされ、血のように赤いカーペットが敷かれた廊下を、美鈴と共に歩く。その一歩一歩が、我が家に帰ってきたことを実感させる。

 何せ数百年ぶりに帰ってきたのだ。それほどの長い時間外で過ごしていれば、我が家が恋しくなるというのも無理はない。

 

 

「やっぱり、懐かしく感じますか?」

「うん。でも、なんにも変わってない。あの頃から、なんにも」

「それは良かったです。住んでいた貴方に何か言われたらどうしようって思ってたところですよ」

「?美鈴は門番じゃないの?」

 

 

 美鈴の言い方だと、この館を美鈴が掃除しているように聞こえる。美鈴の仕事は門番ではないかともう一度確認を兼ねて聞いてみる。

 

 

「はい。メイド長の咲夜さんの手伝いで、よく館内の一部を任されるんです」

「へぇ~…他にメイドはいないの?」

「妖精がいますが……ちょっと……」

「あぁ………昔は結構いたのになぁ」

 

 

 昔は至る所にメイドがいたと思うのだが、なぜ今は妖精にな寄らねばならないほど人数が不足しているのだろうか。私がいなくなってからの間に、何かが起きたと思われるが……私がいなくなってからの館なんて、憶測に過ぎないため、やはり当事者に聞かねば分からない。

 

 そう話題を出そうとした時、美鈴から口を開いた。

 

 

「…襲撃です。かつて幻想郷に現れたあの忌々しい化け物の軍団が移住前に現れ、大半のメイドと御館様……セラド様が」

「……そう」

 

 

 忌々しい化け物。その言葉が示す生き物など、サリエルが創り出した気色悪い蜘蛛と人を混ぜ合わせたような生き物のことだろう。かつて幻想郷はサリエルが率いるその化け物の軍団に襲われた。そしてかなり昔になるが、魔界や地獄もその化物の襲撃を受け、一晩で支配されたという。

 

 だが、サリエルの目的は私のはずだ。私不在の館を襲う理由が存在しない。なぜ襲撃を行ったのか、その理由はハッキリしないが……。

 

 

「着きましたよ、ここです」

「…ありがとう。ちょっと待っててもらえる?」

「わかりました」

 

 

 と、そんなことを考えていると、私は目的の一つである部屋が目の前にあった。

 会うのも数百年ぶりだろう。わがままでいなくなってしまった私を、あの人は叱るだろうか。

 どんな顔をすればいいのかわからない。でも、会わなければ始まらない。

 

 そしてコンコン、とドアをノックをした。

 

 

『……どなた?』

 

 

 ────やはり何年経っても、この声は落ち着く。

 そんなことを思いながら、私はドアを開け───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すっかりやせ細り、ベットに横たわる愛しい母の姿を目に移した。

 

 

「…リリ……ス?」

「…ただいま、お母様」

 

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