半端者が創造神となる日   作:リヴィ(Live)

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四十三話 矛先

 ◆❖◇◇❖◆

 

【レミリア】

 

 館に響いたのは、爆発音。

 それは、決して私と人間の戦いで生じたものでは無い。かと言って、友であるパチュリーが起こしたものでもない。もっと、圧倒的な力に砕け散ったかのような、力ずくのものだった。

 

 ────嫌な予感が湧き上がる。

 

 

「…何よ、今の音」

「…勝負はあとよ、私のそばに来なさい」

 

 

 人間は私の言葉に渋々と従い、私の隣へと姿を近づかせた。

 その破壊音は、徐々にこちらへと近づいてきている。それと同時に、まるで制御できていないかのような魔力の重圧が広がってゆく。

 

 次の瞬間、屋根が爆発の轟音と共に瓦礫となって吹き飛ぶ。それと同時に、こもっていたであろう魔力がその穴から溢れ出し、空を満たす。

 

 ────その嫌な予感は、見事に的中していたのだ。

 

 

「…アレは…」

「…死にたくなければ、できるだけ離れてなさい」

 

 

 その姿を見るのは何年ぶりだろうか。その姿を見る度にあの時の後悔と憎しみが溢れ出てくる。力がなかった頃の、弱い私の姿が見え隠れする。

 

 ───金髪に色違いのナイトキャップ。七色の羽に、赤いチョッキにミニスカート。

 

 私が──私達が愛してやまない最愛の妹。

 

 

「……フラン」

 

 

 ────フランドール・スカーレットが、そこにいた。

 

 

「……あはッ」

 

 

 フランは私を見るなり狂気的な笑みを浮かべ、その右手に赤い球体を出現させた。フランはさらに顔を歪めて、握り潰そうとしている。

 私はそれを知っている。だからこそ、それを発動させるわけにはいかない。

 

 ───発動すれば最後、私の死は免れない(・・・・・・・・)

 

 

「『ミゼラブルフェイト』ッ!!」

 

 

 私はすぐさまそれを阻止せんと、溢れ出す魔力から鎖を創り出しフランの右手を絡みとり、鎖を使いこちらへと引き寄せた。力の込められた鎖にバランスを崩したフランは為す術なく私に引き寄せられる。

 

 それを確認した私は、空いている左手にグングニルを創りフランを貫かんと放つ。

 

 

「……はッ」

「ッ!?」

 

 

 グワンと視界が揺れ、身体が浮く。だがそれと同時にフランが何をしたのかを一瞬で理解する。フランは引っ張られ身体が浮いているにもかかわらず、その体勢のまま鎖を引っ張り私の体制を崩したのだ。フランは嗤いながらその手に悪魔の尻尾のようなステッキを呼び出し、先端に魔力を集中させ高密度な魔力の剣──レーヴァテインを創り出す。

 

 

「ッ!」

 

 

 このままでは身体を引き裂かれて終わりだ。たとえ吸血鬼の再生能力があったとしても、あれを喰らえばタダでは済まない。それを理解した私はその鎖を握り砕き、翼に魔力を込めギリギリでレーヴァテインを回避する。

 

 

「『封魔陣』ッ!!」

 

 

 しかし、不意にフランは高密度の霊力の中へと飲み込まれた。何事かと思えば、先程まで私と対峙していた人間が発動したものであった。

 

 

「…なんの真似よ」

「あんた一人じゃ、あれはムリでしょ?なら二人でやった方がいいわ」

「…ふん、気を抜いてると死ぬわよ」

「それはわかってる」

 

 

 数少ない会話を交わしたあと、フランに向き直る。あの高密度の霊力に飲み込まれたのにも関わらず、フランには傷一つついていない。おそらくダダ漏れの魔力が防壁代わりとなったのだろう。本当はフランを傷つけたくはないが、そんな悠長な事は言ってられない。

 何せ相手はフランであってフランではない(・・・・・・・・・・・・・・)のだから。

 

 恐らく、人間も理解しているだろう。今のフランには私たち二人だけでは傷一つつけられないことくらいは。

 

 ────まだ悪魔降臨の儀式まで時間がかかる。

 

 まだ十分な魔力が溜まっていない。今呼び出してしまえば中途半端な悪魔が呼び出されてしまい、無駄な魔力を使うことになる。

 やるのなら完璧にしなければ、アレには勝つことは出来ない。

 

 

「霊夢!!」

「…!」

 

 

 不意に後ろから声が響いた。振り返れば紅白の人間の仲間なのであろう白黒の魔法使いとパチュリーがこちらに向かって飛んできている。

 

 ───この状況下で来てくれるのはありがたいが、まだ足りないだろう。

 

 ただでさえフランの能力は危険だというのに、そこに強大な悪魔がフランを乗っ取って好き勝手加減もなく能力を発動させている今、下手に近づけば木っ端微塵に砕けるのが関の山。あの能力をどうやって掻い潜り、更には近づいて致命傷を与えることが出来るのは私しかいない。

 

 

「そこの白黒には事情は話してあるわ。分かってるわね?魔理沙」

「おう!」

「…わかったわ。パチェ、人間とサポートをお願い」

 

 

 パチュリーは頷き、すぐさま魔法陣を展開させ私に強化魔法を付与する。先ほどとは比べ物にならないほどの力が溢れ出して来るのがわかる。けれど、これでもあれを倒せるかといえば首を振れる。この強化は気休め程度だろう。ないよりはマシ、と言った程度ではあるが、これの有無で戦況が変わる一手になるのも事実。

 

 

「霊夢!こいつの援護だ!」

「えぇ、わかったわ」

 

 

 そこの人間──霊夢と魔理沙もそれぞれ得物を構え、いつでもいいと目線を飛ばす。

 

 私は、そっと息を吐き出して────思いっ切り、空を蹴った。

 

 

「フフッ」

 

 

 フランは先程のように右手に赤い球体を出現させる。喰らえば即死のその能力攻撃に私はひるまず真っ直ぐに駆ける。

 そしてそれを阻止するかのように、炎と氷の大魔術が降り注ぎ、フランはその球体を描き消した。さらにそこに星のような輝く弾幕が雨のように降り注ぎ、フランに直撃していく。それでもフランはビクともしない。

 

 土煙がフランの姿を隠す。しかしパチュリー達の攻撃を諸共せずに、フランは私に向かって高速の弾幕を放つ。

 だが、それが私に当たることは無かった。弾幕は複雑な術式が描かれた札によって全て防がれ、跳ね返されてフランに返っていく。

 

 ここまでほんの数秒。だが、これからが本番だ。

 パチュリー達の魔法による支援攻撃、霊夢の弾幕結界。これらにより私を完全に見失ったであろうフランの懐に入り───

 

 

「『スピア・ザ・グングニル』……───ッ!!」

 

 

 私の全魔力を込めた槍を放ち、フランに直撃───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

することは無かった(・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あハッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな──」

 

 

 私の全身全霊をかけて放った紅蓮の槍は、直撃する直前でフランの片手により掴まれ、砕かれる。そして先ほどとは比べ物にならないほど高密度で巨大なレーヴァテインが一瞬にして創り出され──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 薙ぎ払われると同時に私諸共、皆を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か………くっ……」

 

 

 

 咄嗟に発動した防御術式も触れた瞬間に破壊され、各々の体に致命的な傷を負わせた。零距離でアレを食らった私がこうして意識があるのが奇跡とも言えるほど。

 全身がやけるように痛い。息もまともに出来ず、出てくるのは唾液混じりの血と、刻まれた傷から垂れる血。

 

 ───動かなければ。

 

 もう何も出来ないのは嫌だ。かつての決意が私の体を動かす。関節が悲鳴をあげ、今にも意識が飛びそうな程の痛みを噛み締める。

 諦める訳にはいかない。このまま妹を───お姉様が命をかけて守ってくれた命を捨てる訳には行かない────ッ!!

 

 

「……つまンないなァ」

 

 

 そしてやっと立ち上がったその時、フランは見下すように私を見下ろし、レーヴァテインを振り上げた。

 

 

「あ──」

「さよなら、お姉様」

 

 

 そしてレーヴァテインが私を飲み込もうと肌に触れる瞬間───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 弾かれるような魔力の金切り声と、フワッと抱えられる浮遊感が私を襲った。

 

 

「え………?」

 

 

 

 恐る恐る瞳を開ける。ボヤけていた視界が徐々に鮮明になっていく。

 

 目に映ったのは────アルビノのような白い肌と髪。そしてルビーのような宝石の真紅の瞳。赤い衣。

 

 

「…う、そ」

 

 

 涙が溢れる。それを抑えようとする気力すら起きない。それほどまでに、私を抱える人物の姿は衝撃的なものだった。

 だってその姿は───その剣は───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……遅くなってごめんね」

 

 

 

 

 ─────レミリア、と。

 

 私の大好きなお姉様が、そこにいた。

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