半端者が創造神となる日   作:リヴィ(Live)

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注意

今回リリスがこの上なくキャラ崩壊、なおかつラスボス化してますので気をつけてください


四十四話 救済と贖罪

 ◆❖◇◇❖◆

 

【リリス】

 

 ────間に合ってよかった。

 

 私がお母様の部屋を後にした時、館全体が爆音とともに震えた。その瞬間感じられたのはただならぬ殺気と重い魔力。エリスと同格かそれ以上とも受け取れるそれの出現は、悪魔に取り憑かれたフランの目覚めことを示していた。

 

 

「………美鈴、咲夜さん、レミリア達の手当をお願い」

「はい!」

「分かりました」

 

 

 私と一緒に来て貰った美鈴と、メイド長である十六夜咲夜にそう指示を出し、さらに被害が出ないよう、傷ついたみんなを囲うように結界を何重にも重ね、簡易的な重結界を張っておく。これならば、多少の攻撃が来ても大半は防げるはず。

 

 

「…どう…して……」

 

 

 状況が理解できないのか、レミリアが私の顔をじっと見ている。無理もないだろう。死を覚悟し、しかし助けられ、助けて貰った人が亡き姉なんて、すぐさま理解出来る方がおかしい。

 

 

「少しの間、待っててね」

 

 

 あやす様にレミリアの頭を撫でながら、結界が張ってある場所に転移させる。これで、全員の避難は完了した。

 残るは───

 

 

「……久しぶりだねフラン。見ない間に随分変わったね」

「…うそだ」

 

 

 フランは脱力したように身体を竦め、体を震えさせる。心做しか、場を満たしてい魔力の重さも軽くなっていく様な気がした。

 

 

「うそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだ!!!」

 

 

 レミリア同様、私という存在がいることに理解できないのか、ひたすらに同じ言葉を並べるフラン。

 

 ───それはそうだろう。何せ、私の存在そのものが今の彼女の在り方を崩しているようなものなのだから。

 自分の力不足でいなくなってしまった姉。そのような犠牲を二度と生まないために、レミリア達は悪魔を呼び出した。結果はフランに取り付き幽閉する形での封印という最悪の結果になったが。

 私という犠牲があってこそ、今のレミリアとフランがある。逆をいえば私という存在が今の彼女たちの存在意義を崩しているのだ。

 

 

 

「うぁ……ぁぁぁああああああっ!!!!!」

 

 

 情緒不安定となったフランの力が暴走する。魔力がこれまでにない暴風雨となって建物や大地を削り取っていく。安定性のない台風のようなものだ。このままではいずれ魔力が無くなり、自滅する。

 だがその暴風はさらに激しさを増し瓦礫を飲み込んでいく。このまま暴走する一方かと思われたが、やがてだんだんと安定性を取り戻してゆく。

 

 暴風雨のような魔力の乱気流は完全に落ち着き、人の形をとっていく。

 

 そして完全に安定した頃には───

 

 

 

 

「…ようやくか」

 

 

 

 

 金髪だった髪の毛を白銀に輝く髪に染め上げ、黄金色の瞳を輝かせるフランの皮を被ったなにかが居た。

 間違いない。あれこそがフランの中に取り憑いた悪魔。名も無き怪物。

 

 

「感謝するぞ吸血鬼。貴様という存在が持ち主の心を乱した。その隙を突き、無事こうして肉体を得ることが出来た」

「……」

 

 

 ────本来なら、今頃抱きしめているところだろう。

 何せ数十年も放置していたのだ。レミリアやフランが私を恋しくなるのもわかるし、何せ私もレミリアとフランが恋しくてたまらなかった。会ったら抱きしめてあげようと、そう思っていた。

 

 けれど───

 

 その前に、邪魔者(・・・)を排除しなくては。

 

 

「皮肉なものだな?愛すべき妹を助けまいと来た結果、貴様の存在が妹を陥れたのだから」

「……そうね」

 

 

 ─────否定はしない。言い返しもしない。

 むしろこれは私が招いた悲劇。私の存在の有無によってあの子達の運命を乱し、陥れたことに違いはない。事実、レミリアに重責を押し付け精神を消耗させ、、フランは悪魔に蝕まれるという惨劇に至ったのも私のせいだ。

 

 

「私という存在がこの子達の運命を歪めたのは事実。認めるよ。全部私のせい」

「ハッ、そうだ、貴様という存在はこの世に必要ないのだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが何(・・・・)?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なに?」

 

 

 だからなんだと言うのだ。それは百も承知、私という存在が彼女らを狂わせたのは事実だ。私がこの世界とってどれほど半端者(イレギュラー)なのかは生まれた頃から知っている。

 

 ────私は、それ相応の覚悟を持ってここに来た。

 責任として、彼女らの犯した罪を、全て私が背負うという贖罪の為にここに来たのだ。いまさらそんなことを言われた程度で私は怯まないし、この決意が揺れることも無い。

 

 そして何より───

 

 

 

 

お前という存在が気に食わないわ(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

「…っ!」

 

 

 ────お前という存在が不愉快だ。

 

 私はあくまで原因を作っただけだ。それがどんな結末だろうと原因を作った私に責任があるのも事実。

 だが、それをいい事に私の妹達を切り裂いたお前という半端者(・・・)が何より許せない。

 

 

 

 

「肉体を奪わなければ生存できない悪魔の欠陥風情が」

 

「宿主を利用し他人の力でしか力を示すことしか出来ない魔界の恥晒しが」

 

「ただ見下し傷つけることしか出来ない愚者が」

 

 

 

 抑えていた感情が溢れ出す。まるでそれを受け止める器が壊れたかのように溢れ出し、私の体を支配していく。

 怒りや憎しみが血液のように全身をかけめぐり、魔力が溢れ出す。その魔力と抑えきれぬ殺意が場を塗り替える。

 

 

 そしてその怒りが頂点へと達した時────彼女は白から黒へと変色した六つの翼を広げながら言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくも─私の家族を傷つけたな」

 

 

 

生き物らしく死ねると思うなよ

 

 

 ◆❖◇◇❖◆

 

 

 空気が震える。まるで絶対零度の中にいるかなような寒気と、抑えきれぬ圧倒的な殺意と魔力が場を満たす。

 本来の人間ならばこれだけでも死ねるだろう。尋常ではないほどの殺意と魔力が場を満たしているこの戦場は、まさに紀元前、神が人とこ交流が盛んに行われていた神の時代、神代そのもの。

 神代は神秘により、高密度の魔力が漂い現代人ならば喉と肺を焼かれ、すぐさま死に至る。戦場を満たしている魔力は、この神代に匹敵するものであった。

 

 

「なんなのだ…貴様はなんなのだ!!」

 

 

 その圧倒的すぎる魔力と殺意動揺した悪魔は問いただす。

 怒りに満ち溢れているとしても、この魔力と殺意は異常なものであった。それこそ、生物が宿していいレベルのものでは無いほど。

 それほどまでに今の彼女は怒りに充ちている。という証明でもあった。だがそれと同時に、『死ぬ』という結末が悪魔を襲う。

 

 リリスがゆっくりと手を掲げる。その瞬間リリスの背後から眩い光が溢れ出し、悪魔は目を覆う。そしてその光が収まれば───

 

 

 

 

 そこには、数千万にも及ぶグラムが悪魔に矛先を向けていた。

 

 

「な……」

 

 

 そしてそれらはリリスの手が振り下ろされると同時に、悪魔に向けて高速一斉放射される。悪魔はレーヴァテインを創り出し弾かんとするも、あまりにも多い物力と速さにより凌ぎきれなくなり──

 一本、二本、三本と次々に身体を串刺しにしてゆく。

 痛みに苦しむ悪魔は、その痛みの現象(・・・・・)に気がつく。

 

 

「(まさか……我のみを!?)」

 

 

 そう、悪魔の身体はフランのもの。実際にグラムが体を貫いたのなら、腕の一つや二つは簡単に切り落とされているハズだ。

 だが、このグラムによる攻撃は腕を切り落とされるどころか(・・・・・・・・・・・・・)血の一滴すら吹き出していない(・・・・・・・・・・・・・・)

 それなのに、自分には激痛が走るという現象。つまり宿主に攻撃を与えずに悪魔のみ致命傷を与えているということ。

 

 リリスが、自分を完全に殺すつもりでいる。

 それを示すには、充分すぎるほどのものだった。

 

 

「おのれぇ……吸血鬼風情がぁぁぁああああああッ!!」

 

 

 上位悪魔である自分がたかが吸血鬼の子供に遅れをとっている。そしてそれを覆すことが出来ないという自分の無力さと状況に怒りを覚える悪魔。リリスはそれを見下すように見つめる。

 我を忘れた悪魔はレーヴァテインを創り出し、怒れるままにリリスに向かってレーヴァテインを振りかざす。

 

 

「がハッ!?」

 

 

 しかしそれは空を切り、逆に自分の背後が切り裂かれたという痛みが悪魔を襲う。振り向きさまにレーヴァテインを振るうも、それもまた空を切る。

 そしてもう一度背後に振り向いき、悪魔の目に映ったのは、レーヴァテイン以上の高密度の魔力を纏わせたグラムを振り下ろさんとするリリス。

 

 

「おぉぉぉぉおおおおおおおおッ!!!!」

 

 

 怒りのままに悪魔はレーヴァテインを振り下ろす。それと同時に魔力を纏ったグラムも振り下ろされ、高密度の魔力同士が激突しあい反発し、大きな魔力拡散が起きる。

 しかし、だんだんとレーヴァテインが押され、悪魔の顔にレーヴァテインとグラムが迫る。

 

 

「馬鹿な…ッ!何故だァァァ!!!」

 

 

 その事実を受け入れられない悪魔が叫ぶ。リリスは顔色一つ変えず、慈悲するどころか更に魔力を強め、悪魔を消しさらんとグラムに力を込めた。

 結果、拮抗していたレーヴァテインは砕け、魔力拡散により悪魔はリリスとの距離を大幅に離した。

 

 

「(!今ならば───!!)」

 

 

 悪魔は能力を駆使し周囲の紅魔館の部位を破壊し、その瓦礫操りをリリスへと放った。更に自らの魔力から作った高密度の弾幕を張り、避けられまいと確信した悪魔はニヤリと嗤った。

 

 

 

 

 

 ───だが、その程度ではリリスは止まらなかった。

 

 

「何ッ!?」

 

 

 リリスはグラムの一振でその弾幕と瓦礫を全て破壊し、その余波が悪魔に降りかかる。空気の振動が魔力の衝撃波とともに悪魔へと響く。

 

 

「ッ……!?」

 

 

 グワンッと悪魔は身体の体制を崩した。そして、世界が逆転したように横に叩き落とされる。そう、まるで重力が反転したように(・・・・・・・・・・)

 

 

 

「まさか…重力を操ったとでも言うのか!?」

 

 

 

 重力を操るなど、最高神でもない限り不可能だ。重力は地球にとって必要不可欠であり形を保つ術。それを歪ますということは世界の破滅にほかならない。

 世界が横に反転し、やっと体勢を建て直した悪魔はリリスの規格外さに驚きつつもレーヴァテインを構える。そしてその場でレーヴァテインを振るい、斬撃としてリリスに飛ばした。

 だが、その斬撃も先程のようにグラム一振で消え去り、またも衝撃波が悪魔に響く。

 

 

「!あれは……!」

 

 

 土煙で覆われていたリリスを見るなり、悪魔は戦慄した。

 そう、リリスの右眼が真紅ではなく、虹色(・・)に光り輝いていたのだ。

 ただ虹色に輝くだけならば良かっただろう。だが、虹色に輝く瞳など世界のどこにも存在しない。ならば、あの虹の瞳の正体は見るも明らか。

 

 ────かつて、この星を想像したと言われる創造神が、虹の瞳によって世界の理を決めたと言う。

 その名は『神眼』。最高神たる創造神のみが持つとされるあらゆる邪視の原典。世界を歪め、己が基準を絶対とさせる神の瞳。

 もしリリスの持つあの虹色の瞳がそうならば、この重力反転も納得のいくもの。それほどまでにリリスは規格外なのだということを改めて悪魔は理解する。

 

 

「っ!」

 

 

 リリスはその手に炎を纏わせ、球体として悪魔に放った。それは悪魔に当たることは無かったが──

 

 

「なっ───!?」

 

 

 紅魔館に直撃した瞬間、巨大な炎の柱となって悪魔を焼き尽くす。悪魔はそれを辛うじて避けるが、次々とその炎の球が打ち出され、着弾する度に巨大な炎の柱となっていき、悪魔の足場は段々と炎の柱に奪われていく。

 

 

「図に乗るなァァァッ!!!!!」

 

 

 悪魔は見に秘めていた魔力を全開放し、リリスと同じようにレーヴァテインを複数創り出し、その炎の球をレーヴァテイン達で弾きつつ離れた距離を詰めてゆく。

 だが、それ以上近づかせまいとリリスはグラムを無数に創り出し炎の球と共に打ち出していく。容赦ない猛攻が悪魔を襲うが、悪魔はさらにレーヴァテインを創り出し、炎の球とグラムを弾いていく。

 

 そしてリリスと悪魔の距離が零となろうとした時───

 

 

「ゲホッ……ッ!」

「ッ!貰ったァァッ!!」

 

 

 リリスは口を抑え、血を吐いた(・・・・・)

 

 それを好機と見た悪魔は全てのレーヴァテインを振り下ろす。悪魔は勝利を確信し、全力でレーヴァテインを振り下ろす。

 だが、悪魔のレーヴァテインが振り下ろされることは無かった。悪魔にもう一度浮遊感が襲い、横に叩きつけられる。リリスは咄嗟に重力を元に戻したのだ。

 

 

「何度も何度も……ッ!!」

「……」

 

 

 再び体勢を立て直した悪魔はリリスを睨みつける。リリスの口からは血が垂れ、心做しか息が荒い。それほどまでに、能力の使用に負荷がかかっているということは、誰が見ても明らかだった。

 

 

「だが……これで────」

 

 

 もう一度レーヴァテインをリリスに向け振りかざそうとした刹那、上空からとてつもない程の魔力の重圧が感じられた。

 悪魔はすぐさま上を見やる。それを見るなり、悪魔は無意識にレーヴァテインを落とし、後退りをしていた。

 何故ならば────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血のように紅い月が、自分に向かって落ちてきているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そんな……馬鹿な……あぁ………!」

 

 

 自らに真っ直ぐ墜ちてくる紅い月に絶句し、絶望する悪魔。ありえない絶望を叩きつけられた悪魔の身体に、リリスの手が入り込んだ。

 

 

「…捕まえた……」

「(こいつ……我を直接……!?)」

 

 

 そう、今リリスが掴んでいるのはフランではない。フランの中にすぐう悪魔そのものを掴みあげているのだ。

 そして一刻と迫る紅い月を見た悪魔は、さらに青ざめて絶望する。

 

 

「…よせ……やめろ………!」

 

 

 リリスがやろうとしていることに気がついた悪魔は必死に叫ぶ。まだ死にたくないと、必死にリリスに命乞いをする。

 その姿は、かつてリリスが葬った死の天使の死に際に酷似していた。その姿を重ねたリリスは静かに語る。

 

 

「…私の妹の心踏みにじっておいて…死にたくない…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけるのもいい加減にしろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒッ………ッ!」

 

 

 リリスが放つ殺意と憎悪、そして魔力に悪魔は本格的に恐怖を感じ、小さな悲鳴をあげる。そして徐々に、フランの心から悪魔のみを剥がしていく。自らの死が迫る感覚に恐怖する悪魔。

 

 

「やめてくれ……!頼む、やめてくれ……!!」

 

 

 そしてリリスはフランの心から悪魔のみを引きずり出し、黒い魔力がフランの胸から飛び出す。そして黒い魂となった悪魔を上空へと浮遊させ───

 

 

 

 

「やめろぉおぉおぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉおおおおおおおおおぉぉぉぉおおおおおおおおおぉぉぉぉおおおおおおおおおぉぉぉぉおおおおおおおおッッッ!!!!」

 

 

 

 落下する紅い月と接触し、眩い光が幻想郷を覆った。




はい、イラスト等の眼の伏線は『神眼』。魔界での決戦時にサリエルが使用していたものです。
わかる人はわかっていたのでは……?

にしてもラスボス化えげつないなぁ…()
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