【リリス】
フランが生まれて数年。
私の中の劣等感は未だ消えない。フランを見る度に、それは肥大化していく。
────レミリアとフランは立派な翼があるのに。
────私だけ、ない。
その差を自覚していくにつれ、劣等感が肥大化していくにつれて、自分が一人ぼっちになる気がして。
そうなって行った私は、いつの間にか無意識に二人を避けていた。
「……とりあえず、気晴らしになにか創ろ」
こうなっては仕方ないので、とりあえず何かをして気を紛らわすことにした私は、何を創ろうかと悩んでいた。
────その時、私の頭にある思考が走った。
………創る?
そうだ。
翼がないなら、創ればいいじゃない!!!
「それだっ!!!」
なんでこんな単純なことに気が付かなかったんだろうか。気付いていなかった過去の私を殴りたい。
ふと、そんなことを思っていると、開いていた本のページにある人物の絵が目に入った。
─────三対六翼の翼を持つ熾天使、セラフィム。
「おぉ……!」
それを見た私は見とれてしまい、すぐさまこの翼を頭の中でイメージする。
私は吸血鬼だ。あまり天使の羽は似合わないだろう。
なら、天使の羽のような悪魔の翼───それをイメージする。
「────
ゆっくり、慎重に、イメージを組み立てていくと同時に、背中の異物感が大きくなっていく。
案ずるな、イメージし続けろ。
他のことなど気にするな。今はただ、考えるんだ。
「─────
─────イメージはし終えた。背中の大きな異物感もある。
あとはそれを現実に反映できているかどうか。それが問題だ。
私はその状態のまま、鏡に向かって足を進め、身を移した。
────左右対称に並ぶ三対六翼。
真っ白に輝くそれは悪魔の翼の形だったが、その白さ故に天使のような翼だと錯覚してしまう。それにうっすらと模様のようなものが見える。
「やった………出来たんだ…ッ!」
あまりの嬉しさに飛び上がる私。
やったぞ!これで私も対等になれる!!
「お姉様~、入る………よ……?」
私が鏡の前でぴょんぴょん兎のように跳ねていれば、私の部屋に入ってきたレミリアが私を見るなり絶句した。
─────だからね、そういう反応が一番困るのよ。
「え……お姉様………翼……」
驚きすぎてもう後ずさりしてませんかレミリアさん。
「凄い……凄いわ!天使様みたいで綺麗で、お姉様にピッタリの翼だよ!」
「フフ、ありがとう」
目をキラキラと輝かせて、私の翼を見つめるレミリア。
どうやら、本当に上手くいったようだ。
「ちょ、ちょっとフランとお父様とお母様に報告しなきゃ!」
「え、あっちょ」
私が静止しようとしたが、レミリアはそれを気にもせず部屋を勢いよく飛び出していった。
────まぁ、多分、半端者の称号は外れるだろうなぁ。
この部屋、結構愛着あったんだけど……出れるならいいか。荷物とかは明日まとめればいいし。
「リ、リリス!?翼が生えたって本当か!?」
一目散に私の部屋に入ってきた男性を見て、私は目を見開いた。
────数十年ぶりの再開となるか。
あの時と何も変わっていない。その優しい瞳も、その中に秘める強大な魔力も。
────セラド・スカーレット。私の実の父親。
「…お久しぶりです、お父様」
「おぉ……凄いじゃないか!なんて立派な翼だ…!!」
「リリスお姉様!!」
私にすがるように抱きしめて翼を見つめるお父様。そしてその間を縫って飛びついてきたのは、愛しい妹、フランだった。
「わぁ~………綺麗……」
「ありがとう」
「あぁ……リリスに立派な翼が……」
レミリアが連れてきたお母様は、私の部屋のドアのところですすり泣いている。
────凄い、恥ずかしいです。
「すまない……お前を半端者という建前で幽閉してしまって……」
「いいのです。私は今までも充分幸せです」
「しかし…」
─────あぁ、そんな顔をしないでくれ、お父様。
かりにも吸血鬼のトップにたつお方が、娘一人でここまで変わるんだと思うと、彼もまた一人の父親なのだと初めて思った。
「愛する妹にも恵まれ、私を愛してくださるお母様とお父様がいる。それだけでも、充分幸せですよ」
────これは紛れもない本心だ。
自分をお姉様と慕う優しくて愛しい二人の妹。
幽閉はされていたけれど、愛を注いでくれていたお母様とお父様。
これ以上に、何を望めというのだ?
「だから、顔を上げてください、お父様」
「……わかった、お前がそこまで言うなら」
お父様は立ち直ったのか、私の頭を撫でてくれた。
───頭を撫でられるなんて、何年ぶりだろうか。
恥ずかしいけど……とても、気持ちいい。
「よし!今日は記念にパーティーを開くぞ!」
「やった!パーティーだって!」
─────あぁ、私は幸せ者だ。
こんな私のことを思ってくれる家族が居て。
──────だからこそ。
だからこそ、私の夢は実現させなければならない。
《
大切な家族を守るために。
─────今日、鳥籠の中の小鳥は、夢に向かって羽ばたいた。
リリスの白翼
【挿絵表示】
彼女がこの翼に付けた名前は《
グラム同様、彼女が創ったものなので出し入れが可能。本人は能力発動時に顕現するようにしている。
由来は神話に登場する三対六翼の熾天使、セラフィムから。
神綺様の二段階目の翼そのまんまです。
この段階の翼本当にすこ。