【リリス】
──────暑いよ。
季節は夏となり、暖かいというか暑くなってきた。だから一応袖をなくした服……いわば夏服というものを着ているのだが、暑い。
それも、馬車の中だから余計暑いよ。
そう、今日はお父様の言っていた決闘の日なのである。何やらコロシアム?に向かうとか。それにしてもね、家族五人が一つの馬車に乗ってると暑い。機密だから閉めっぱなしだから余計。
「暑い……」
「暑いよぉ…リリスお姉様助けてぇ」
「それはこっちもだよ……あかん、ほんまめっちゃ暑い」
死ぬ。決闘する前に死ぬんだけどこれ。
私を始めレミリア、フラン、お母様やお父様も汗ダクダクなんだよ。魔法使って涼しくしたいけど決闘前だから使うのは控えたいから。
「つ、着いたぞ」
死にかけのような声でお父様が言う。やっと外に出れるよォ。
「「「死ぬかと思った……」」」
思わず私たち姉妹は同じことを口にした。いやほんとに暑かったんだって。
「……ここが」
─────思ったより大きい。
神殿のような造りだが、どうやら強力な魔法がかけてあるようで、恐らくそう簡単には壊れなさそうだ。
案内役に連れられて控え室へと入る。
「………さて」
そこで軽く準備運動。
スカーレット家の名に恥じぬ戦いにしなくては。
「問題なし。あとは実戦で倒せるかどうか」
未知なる相手………。
こういった戦いは初めてなので、正直勝てるわからないけれど、頑張らなくちゃ。
◆❖◇◇❖◆
【レミリア】
お姉様と離れて、案内役の吸血鬼に専用席へと案内される。
そこへ座り、私は周りを見渡した。
未だざわついているが、視界すべてに入る人型は、全て吸血鬼だった。
「それにしてもすごい数ね……」
「そうだね……」
思わず息を呑んでしまう。
『身内以外の人は、基本的に敵と思いなさい』
お姉様がよく言っていた言葉を思い出す。それに従ってこの数敵とすると………思わず、寒気がする。
お父様やお母様、お姉様はまだしも、私達二人…私とフランは手も足も出ずに終わるだろう。
「……レミリアお姉様」
「なに?フラン」
「…リリスお姉様、大丈夫かな…?」
フランはものすごく心配そうな顔で私に聞いてきた。
────確かにものすごく心配で仕方がない。
いくらスカーレット家よりは戦力は劣るとはいえ、真っ向勝負を挑んできたのだ。正直、どんな力を持つのかさっぱりわからない。
「…ねぇ、フラン」
「なに?」
「お姉様が、負けると思う?」
けれどこれだけは言える。お姉様は決して負けない。
能力、魔力、頭脳───どれをとってもお父様達と同格レベル。
私達とは比べ物にならないほど、リリス・スカーレットは完成されているのだから。
「それに、私達を同時に相手にして手加減してもらっても圧勝されたのよ?負けるはずがないわ」
「!……そうだよね!」
大丈夫。
お姉様はきっと─────。
私は観客の拍手が始まったと同時に、舞台へと現れたお姉様を見守った。