「アトミック侍!無事か!」
童帝の合図で勢いよく部屋に入ったゾンビマンは、真っ先にアトミック侍が寝ているベッドに駆け寄る。
「あぁ…ゾンビマン、大丈夫だ。」
ベッドの上で胡座をかくアトミック侍は、表情を曇らせながらも頷く。
侵入者は既に退去していた。
「何があった…?相手は怪人か?」
女王アマゾネコは怪人である。
極めて人間に近い姿だが、二股に分かれた尻尾や猫耳、何より人外の五感を備えている。しかしー…
「…解らん。怪人の割には随分人間臭いやつだったが…
話聞く限りじゃあ故郷の村を吹き飛ばされたらしい。…犯人が俺じゃねぇと解るやいなや、天井のダクトから出ていきやがった。」
すると突然、廊下から機械音が鳴り響く。
ゾンビマンは新たな敵かと身構えるが、そこには鬼の形相をした童帝がフル装備の状態で息を切らしていた。
「はぁ…はぁ…あれ…?もうゾンビマンさんが倒しちゃったんですか…?」
すでに臨戦体制を解いているゾンビマンとアトミック侍を見て、童帝の顔が緩む。
「いや逃げられた。この本部を自由に出入りできるとなると、今から追っても手遅れだろうな。」
その予想通り、A市全域をリアルタイムで監視しているセキュリティは、既に「異常なし」を示していた。
一階のガードも破壊されずにすり抜けている事から、センサー類にも難なく対応するほど知能が高いことが窺い知れる。
ボロス以降、S級ヒーローすら対応しきれない怪人が立て続けに現れる状況に、3人は危機感をつのらせていた。
◆◆◆
超音速の脚が止まる。
人の目には到底捉えられない彼女を、誰かが見ている。
不自然なほど周囲に人の気配がない。
まるで人類が滅び去ってしまったかのように、静けさに包まれていた。
「おまえ、何を追っている?」
静寂を破った声の主に目を向ける。
人間ならば眼球が備わる位置から歪に伸びた双角と金属質な尾、不気味な外見と不釣り合いなビジネススーツにロングコートを羽織った怪人は、首まで裂けた口で語りかけた。
「貴様には関係のないことだ。少なくとも……こうも躊躇なく人を殺せる者と語らう道理はない。」
アマゾネコは瞬時に悟った。この町の住人は全てこの怪人によって殺されたのだと。
「……ずっとお前を観察していた。お前と、我が主を。
主は新しい配下を探している。お前がそれに相応しいか否かと考えていたんだ。
なんの手土産もなしに今更
…だが辞めだ。解っているぞ女王アマゾネコ。
お前はボロス様に仇なす敵だ!!」
頭部の角が大きく、そして鋭利に研ぎ澄まされる。
これまでの知的な雰囲気をかき消すかのように、獣の如き咆哮で戦闘の火蓋が切られた。
災害レベル「鬼」
ーーーー闇討ちヘッドカッター
「あぁ良いだろう、お互い怪人。言葉を交わすのはガラじゃない」
先に仕掛けたのはヘッドカッター。アマゾネコ目掛けて回転しながら飛びかかるが、すんでの所で躱された。
彼の武器は名前の通り頭部から生えた角。触れるだけで深い傷を与える危険な代物だが、アマゾネコの移動速度は音速を超える。ヤマ勘頼りに当てられるほど甘い相手ではない。
しかしそれはアマゾネコも同様。先ほどから回避のたびに打撃しているが、強靭な皮膚に阻まれダメージを通せずにいた。
「甲皮の強度だけで言えば、私は最上位戦闘員の御三方にも引けを取らん。
そして、ボロス様より"羅刹"の異名を賜るこの双角に…斬れぬ物など無いのだ!!!」
次の瞬間、アマゾネコの脇腹に深い裂傷が刻まれた。
ヘッドカッターは眼ではなく皮膚で周囲の状況を感知している。自身より速い敵にも、時間さえあれば適応できる。
「ッ…!悪いが…私はこんな所で死ぬわけにはいかんのでな…!」
アマゾネコは地面を大きく蹴り込むと、それまでより更に加速。一気にヘッドカッターの懐に入り、鋭利な爪を突き立てる。
重傷を与えたことで勝利を確信していたヘッドカッターは一切反応できず、彼女の攻撃は甲皮の隙間を貫通した。
ヘッドカッターは呻き声をあげながら膝をつくが、追撃はない。
アマゾネコもまた、激痛で動けずにいる。
相手と息を合わせるように呼吸を整える両者。僅かでも"読み"を違えれば、次の瞬間には
(…"神速"はそう何度も使えない。ましてこの怪我では精々…あと一回が限度だ。
…問題ない、次で決める)
アマゾネコが立ち上がると、それに呼応してヘッドカッターも再び咆哮を上げる。
彼ももう限界が近いのだろう。強烈な殺気を飛ばしながらも、膝が笑っている。
正真正銘、最期の勝負。
両者見合って、いざー………
「ニャンニャンニャン」
2人を襲ったのは、超音速でも鋭利な角でもない。
街を埋め尽くす、大質量のチョコレートと
「ふはははッ!
星を滅ぼす、光の矢だった。
災害レベル「竜」
ーーーー元社長コレート