もしも彼が生きてたら   作:憧れのまつたんぼ

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霹靂

 

 

 

しとしとと降り注ぐ雨を、窓ガラス越しに観察する少女が一人。

暫くすると、きゅっと眉間にシワを寄せて振り返る。

 

 

「おかーさーん!また雨だよー!」

 

 

 

不満そうに頬を膨らます少女に、背を向けたまま家事をこなす母は

 

 

「そうねぇ、なら昨日買った傘持って行きなさいね」

 

 

と、宥めるように答える。

 

母はそそくさと食器を片付けながら、横目でテレビを眺めていた。

 

大手菓子メーカーの社長が失踪して2年ー…

無機質な声色でニュースを伝える真顔のキャスターと、今や懐かしい「にゃんにゃんチョコ」の写真が、どこか不釣り合いな組合わせだ。

 

興味なさげな母は、そろそろ出掛ける支度をせねばとテレビを消す。

 

 

 

 

ニュースでは語られない、いかにも怪しい噂がある

 

なんでもその噂によると

 

行方知れずの社長は、怪人になってしまったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは…!ボロス様!?」

 

 

 

混乱を隠せないヘッドカッターだが、兎も角すぐに離脱した。

ボロスの闘いに巻き込まれれば肉片すら残らない。この宇宙に住む者であれば常識である。

 

しかし、この地球は宇宙の中でも辺境の地。

ボロスが何者かなど知る由もなく、まして彼女は復讐者。

…ーー止まれるはずもなかった。

 

 

 

 

「なんだとッ!!…では奴が我が故郷の仇か!!」

 

 

 

 

脇腹の出血を気にも留めず駆け出すアマゾネコ。

標的はまだ彼女を認識していない。超音速の彼女にとって千載一遇のチャンスだ。

 

 

(あの双角の男を従える程だ、恐らく正面から挑んでも勝ち目はない。私の"武器"を最大限に活かして、()る!!)

 

 

 

 

ボロスまであと300mほどまで近づく。まだ少し距離があるが、認識されては何の意味もない。アマゾネコはここで勝負に賭ける。

足場の超硬質チョコレートに大きなクレーターを作りながら蹴り上げると一息に接近し、そしてーーー……

 

 

 

 

 

 

 

「ん?何だお前は。」

 

 

「はッッッ!!??」

 

 

 

 

当然の如くこちらに顔を向けたボロスは、弾丸より速く放たれた彼女の手刀を払い除けると、

彼女の眉間めがけて中指を弾いた。

 

 

いわゆる、デコピンである。

 

強烈な衝撃を受け、たちまち意識を失ったアマゾネコは、

チョコレートで出来た谷底へ落ちていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今のは一体…?まぁいい」

 

 

 

ボロスはすぐに正面を向き直す。

 

彼の眼前には、パンツ一丁の中年男性が可愛らしいネコの被り物をしたユニークな怪人が居た。

腹には大きく「にゃん」と書かれており、飲み会の余興で大失敗したサラリーマンがそのまま出てきてしまったような外見である。

 

 

 

 

 

 

推定災害レベル"竜"  元社長コレート。

 

 

 

菓子好きが高じ、大学在学中に企業。そのまま国内シェアNo.1の大手メーカーへと昇り詰めたが、ライバル企業の台頭や度重なる失策により倒産に追い込まれた無念の社長は、そのショックから怪人化してしまった。

 

彼は、殺人的な硬さを誇る「にゃんにゃんチョコ」を彷彿とさせる超硬度チョコレートを無尽蔵に放出する。

 

 

 

 

 

「にゃんにゃにゃん。にゃにゃん」

 

 

 

 

「……何を言っているのか解らんが、これも何かの縁だ。

お前は是非頂いておこう。」

 

 

 

ボロスの仲間集めはまだ始まったばかりだ。

全宇宙の覇者として返り咲く為には、優秀な部下は必要不可欠である。

前回はアトミック侍の妨害によって失敗に終わったが、今回は是非とも成功させたい。

 

 

 

 

コレートが両腕を広げると、足元から溶けたチョコレートが噴出。

それは瞬時に角張った攻撃的な形を成し、密度を高める。

もともとは真夏でも溶けにくいようにと改良された特性が、今や彼の"暴力"を増強していく。

 

 

 

「芸のないことだ。力任せに暴れるだけで、このボロスが斃せると思うか」

 

 

対してボロスは次々に迫り来る濃茶色の壁を、光線で薙ぎ払う。

しかし、その余裕とは裏腹に決定打は撃ちあぐねていた。

 

 

コレートには"錆びた剣"と違い高い知性がある。

ボロスの言う「お前を頂く」との発言は、現時点で自分を殺害するつもりがない事を示している。

怪人としての実力を考慮すれば、ボロスのエネルギー光線を防ぎきれないコレートに勝ち目は薄い。

 

だが相手に殺意がないのなら、逃げ方はいくらでもある。

 

 

 

 

 

(先ほどから不自然に広範囲攻撃が多いが……此奴逃げようとしているな…。

どうしたものか、殴って気絶させようにも…この能力は邪魔すぎる。)

 

 

 

コレートの狙い通り着実にボロスとの距離は開いていく。

索敵能力の大部分を失ったボロスは、これ以上離れられると追跡出来なくなる。しかしこのまま逃す手はない。

 

程なくして、彼は一つの大きな決断をした。

 

 

 

「…やむを得まい。

 

さて、この身体で保つかどうか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の街に、轟音と共に光が迸る。

 

 

光柱の中心にはヤツがいる。

 

 

"全宇宙の覇者"たる怪物。

 

 

霹靂の申し子が、顕れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……メテオリック・バースト。」

 

 

 

 

 

 

 

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