もしも彼が生きてたら   作:憧れのまつたんぼ

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彼は一体誰でしょう。名前出すタイミングが難しい


出立

永く、夢を見ていたようだ

 

どんな夢だったか定かではない

 

虚空を漂うように神経は鈍り、無意識の海へ沈む

 

次第に感覚は目を覚まし

 

そして気付けば、俺は夢から醒めていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

「フン…身体は動く、頭も冴え渡っている。さて俺はどれだけの時間眠っていたのか…」

 

 

灰色のローブに身を包んだ大柄な男は、自分の状況に疑念を抱いていた。

何故自分はここにいるのか、何故自分はーーー生きているのか

 

確かな記憶は一つだけ、遠い異星で見つけた極上の獲物に挑み、そして負けたこと。その戦いの壮絶さは失った左腕が痛ましく物語っている。

 

 

 

「考えても解らん。兎に角、進むしかないか」

 

 

実際には何処に進めばいいのかも定かではないが、仲間を失い1人になった彼は、今の状況を大いに楽しんでいた。

最強の男たらんとするプライドも、覇者としての責任も、彼には何一つ残っていない

そんな孤独に、この上ない自由を感じていたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

「童帝からの情報を元に奴の移動ルートを幾つか予想してきた。これで居場所もかなり絞られるはずだ」

 

「やっぱり面倒ね。こんなみみっちい事は他のヒーローに任せればいいのよ」

 

 

ランキング〈S級2位〉"戦慄のタツマキ"

ヒーローとしても希少な超能力者であり、非常に強力な念力を操る

完全自由主義のS級1位"ブラスト"を除けば実質の最強戦力であると言える

 

 

(確かにタツマキは諜報向きではない…つまり今回の標的はそれほど危険視されている、ということか

流石にタツマキが負けることは考えにくいか…?いやしかし油断は出来ない。…気を引き締め直す必要がありそうだ)

 

 

ランキング〈S級8位〉"ゾンビマン"

不屈の闘志と不死身の肉体で怪人を追い詰め、勝利をもぎ取るヒーロー

戦闘力はさほど高くないものの、その耐久力を生かし数々の怪人を討ち取ってきた

 

 

S級ヒーローの中でもそれぞれ諜報力・戦闘力に秀でたヒーローであり、未知の怪人調査に置いてはこれ以上ない布陣だろう

協会も様子見に留まらず、これで決着だと楽観視する者も少なくなかった

ーーー彼らからの報告を受ける、その時までは

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

「まずはそうだな…街にでも降りてみるか」

 

 

外見を隠すため羽織ったローブを頭まで覆い、歩き出した。彼は見た目こそ人間離れしているが背丈は怪人として比較的小柄であり、街に出ても怪しまれることはないだろう

 

 

街に降りると彼はひたすらに歩いた。

駆け回る子供たち

見たこともない料理を扱う店

そこに争いなどなく、みな平和に日々を過ごす

それら全てが彼にはとても新鮮で、興味深かった

 

 

 

(闘い以外に関心を持つのは初めてかもしれないな…)

 

 

彼自身も、自分が少しだけ高揚しているのを感じていたのだ

全宇宙を支配下に置いた覇者は、こうした平和な日常につくづく縁がない

 

 

「キャー!!怪人よーッ!!」

 

 

そんな穏やかな時間を崩したのは、一体の怪人だった。

10mは優に超えるかという巨体に加え、二股に別れた尻尾を持つその怪人は地面を突き破って現れるやいなや、瞬く間に人々を蹂躙した

 

 

「ぎゃーはっはっは!!!オイラの名はハガネマッスル!!力自慢はいねぇかあ!!」

 

「誰かヒーローを呼んでくれ!!怪人が出たぞ!!」

 

 

 

ヒーロー、怪人

彼は思考する。聞いたこともない単語が飛び交い

見たこともない生物が人々を蹂躙している

彼は知らない。この星において彼自身も、紛れもない怪人であるということを

 

知らないからこその行動と言えるだろう

彼は自分自身も理解出来ない行動をとる、それは…ーー

 

 

 

 

 

「失せろ、カイジン」

 

 

 

 

 

突如鳴り響く轟音、そして衝撃波

駆け付けたヒーローすら何が起きたか分からなかったという

現場に残されたのは焼き付いたアスファルトと、粉微塵になった怪人の死骸だけ

 

 

ーーー灰色のローブの男は、姿を消していた

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

「ハガネマッスル…災害レベルは鬼に分類される未退治の怪人だ。その所以はS級ヒーローでさえ歯が立たなかった強靭な筋肉、それをここまで粉砕するとは…」

 

「戦った奴が弱かっただけでしょ。このくらい私でもよゆーよ」

 

 

 

ゾンビマンは、これを件の"一つ目の細胞"によるものと睨んでいた。確定的な根拠はないが、直感でそう感じたのだ

S級でも苦労する怪人を、恐らく一方的に倒したのだろう。状況から察するに一撃で

彼は畏怖していた。もしや自分たちは途轍もない化け物を追っているのではないかと

 

 

 

「……タツマキ、これをやったのが今俺達が追っている怪人だとすれば、どうだ?…お前は勝てるか?」

 

「少なくとも、あんたは勝てないでしょうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

タツマキから帰ってきた答えに、ゾンビマンは黙るしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 




たぶん…続く
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