もしも彼が生きてたら   作:憧れのまつたんぼ

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激動

(半径20km圏内に生体反応がないことは確認済み…。ゾンビマンもちゃんと離脱したみたいね。まあアイツの場合直撃しても死にはしないだろうけど…)

 

 

 

直径は30〜40m程度の隕石を選別。被害範囲を可能な限り制御するため破砕分裂しないよう念力で表面を固定する。

"一つ目の細胞"の強度を鑑みてもノーダメージでは済まないだろう。

タツマキにとっても隕石は非常にコストパフォーマンスの良い攻撃手段である。地表の岩石と異なり、大気圏に突入させてしまえば僅かな軌道修正のみで弾道ミサイルに匹敵する火力を生み出せる。

災害レベル竜を記録するような怪人すら木端微塵となるだろう。

 

 

ーーしかしそれは、直撃した場合の仮定(・・・・・・・・・)に過ぎない。

 

 

 

「大気圏外まで念力を伝えられるのか。素晴らしい。

ーーー若かりしゲリュガンシュプを思い出す。」

 

 

 

おもむろにボロスが人差し指を立てると、そこにゴルフボール程度の小さな光球が浮かび上がり、ゆっくりと上昇していく。

徐々に速度を上げ、肉眼では捉えられなくなった瞬間、

 

強烈な爆発音が、タツマキの耳を劈いた。

 

 

 

「なっ…によ、これーー…!」

 

 

 

5月、黒く濡れたアスファルトが、渇く間も無く雨に降られるこの季節に、ぽっかりと青空が顔を出した。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

「隕石と謎のエネルギー弾が衝突…。恐らくあの怪人が放ったものだな。」

 

 

 

安全圏に離れたゾンビマンは、目の前で繰り広げられる超次元の戦いを冷静に観察していた。

先ほど対敵した際にも感じたことだが、離れていても尚感じる違和感、ボロスを名乗る怪人"一つ目の細胞"には全く敵意がなかった。

タツマキの猛攻にも反撃どころか防ごうともしない。恐らくタツマキ自身も思っているだろう。

単純な破壊衝動ではない。

戦いが目的なら反撃しない理由が不明。

他に目的があるのか?

何にせよこの怪人の行動原理がなんなのか見当がつかないのだ。

 

 

 

ジジッ『タツマキ、聞こえるか。これ以上は無駄に地形を変えるだけだ。一旦引こう。』

 

 

「ちっ…わかったわよ!」

 

 

2人の判断は正しかっただろう。これ以上戦ったとしても得るものはなく疲弊していくのみ。

一度体制を立て直し、確実にこの怪人を討てる算段をつけるべきだと。

 

その様子をボロスは静かに窺った。実際には彼に目的などなく、異星観光を適当に楽しんだ後、母星へと帰還する予定だったのだが。

しかし、先の戦いで全ての部下を失ったボロスは、タツマキのと戦闘である目的を得たのだ。

 

 

(…帰る前に、部下の一人でも居らねば格好つかんな…)

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

会議室の空気は重く、静まりかえっている。

タツマキは早々に帰ってしまったため報告者はゾンビマンのみ。彼の口から余りに残酷な状況を打ち付けられた。

 

 

 

「…タツマキはヒーロー協会の最高戦略だぞ…!それを子供のように遇らうなどッ…!」

 

 

「……まぁある意味予想していた結果ではあるかな。そう簡単に事が済むなら、あの人は態々僕に声はかけてこない。」

 

 

 

S級5位"童帝"は会議の場であることを弁え、冷静に振る舞っているが、内心では大いに焦っていた。

同時に子供の前ですら焦燥を隠せない大人たちに辟易しながらも、今後の対応について考える。

 

(取り敢えず積極的に人を襲うタイプではなさそうなのが、せめてもの救いかな…。あとは目的がわからないのが問題か。)

 

 

 

「ゾンビマンさん、申し訳ないんですけど、引き続き"一つ目の細胞"の監視をお願いできますか?」

 

 

「…了解だ。そういえばヤツはボロスと名乗っていた。"一つ目の細胞"では少し長い。今後の報告ではこの名前で統一させて貰う。

…ヤツはタツマキとの戦闘では全く本気を出している様子ではなかった。災害レベル竜との見立ては間違いないが、場合によってはそれ以上も考えられる」

 

 

 

童帝にばかり頼り切るなよ、と言い残し、ゾンビマンは会議室を後にした。

 

 

 

 

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