その日、ボロスは街に降りることなく森の中で夜を明かした。
肉体的に疲れていたわけではないが、新鮮な経験の数々に目を回していたのかもしれない。この夜、夢は見なかった。
厚い雲に覆われていることもあり、まだ薄暗い明朝に目が覚める。彼は本来食事を必要としないが、適当な野生動物の腑を頬張りながら昨日のことを思い出していた。
「
昨日の反応から鑑みるにニンゲンとカイジンは敵対しており、俺は奴らの言うところのカイジン…簡単ではないな。」
思えば自ら仲間探しをするのは初めてかもしれない。これまでは圧倒的な強さに魅せられ、あるいは屈服し追従してきたものを配下としていた。
しかしこの星では、何故か殆どの生物が彼の内在エネルギーを見抜けないのだ。恐らく強さの判断基準が宇宙の常識と著しく異なっているのだろう。
昨日の戦闘を経て、彼の目標は決まっていた。
新たな配下を獲得し、再び全宇宙の覇者として返り咲くこと。
それはつまり、
「今の俺では到底ヤツに及ばん。策を弄するか…人数で押し切る手もあるな……
クク…片腹痛いわ。」
元・全宇宙の覇者"ボロス" 彼の名を出せば赤子は泣き止み、星を呑む大怪獣すら小水を撒き散らして退散する。
そんな男の闘いに、選択肢などないのだ。
「正面から一対一で勝つ。それ以外にはない。」
◆◆◆
ーーーーーー同刻
湖の畔には、もう誰も住んでいない洋館があった。
洋館の主人は明治の終わりに死んでしまい、遺されていたのは丑三つ時を指し示したまま止まったホールクロックと、錆びついた西洋甲冑。
およそ100年、風の吹き抜ける音と、雨粒が床に跳ねる音しかなかった空間に、金属の擦れる不快音がぎしぎしと響き始めた。
◆◆◆
駄菓子チョコレート界に革命を起こした超人気商品「にゃんにゃんチョコ」
その売上は鰻登りでとどまることを知らず、株式会社TIXの看板商品として、低迷しつつあった駄菓子業界を大いに盛り上げた。
しかし発売から6年後、原材料の価格高騰の影響により10円値上げ、更にライバル企業が同系統の商品を「にゃんにゃんチョコ」の半額程度の価格で売り出したことにより急激に売上を落とす。
その影響は全社に波及し、大規模なリストラを敢行するも却って社会的イメージを失墜させ、あっという間に倒産に追い込まれた。
取締役社長のコレートは記者会見当日、会場には現れず行方不明となり、現在も居場所が分かっていない。
◆◆◆
「ーーー女王。本当に、行ってしまわれるのですか…?」
普段はピンと立っている彼女の耳が、恭しく伏せてしまっている。
その様子に心を痛めつつ、少し愛らしくも感じてしまう。
「あぁ、すまない。私はもっと広い世界で、自分が何を成すべきなのか見定めたいのだ。無責任だと思っている。だがーーーー
案ずるな。君なら彼らを導ける。あとの事は任せたぞ。」
うむ、やはり君の耳は天に向かっているべきだ。
元女王の私は心より君を応援しているよ。
目の周りを腫らしながらも真っ直ぐに私を見つめる彼女の瞳には、確かな覚悟が宿っていた。
◆◆◆
未確認飛行物体X、と呼ばれる船には正確には名前があった。
「テラフォーマー・ノア」
それが船の正式な名称であり、乗船していたのは全宇宙の覇者ボロスを船長とする、宇宙海賊ダークマターの船員達。
彼はその師団長の一人である。
災害レベル "鬼"
闇討ちヘッドカッター
「ボロス様…何処へ…」
◆◆◆
燃え盛る家に、取り残される妹の夢を見る。
その度に確認するんだ。大丈夫、大丈夫。俺は確かに彼女を助けたんだ。
燃えろ、燃えろ。あの時の炎より大きな大火で、肉の一片まで燃え上がれ。
ボロスさんが仲間集めをします。