クロスアンジュ 天使と黒い鳥の輪舞   作:砂岩改(やや復活)

15 / 16
ダイヤモンドローズ騎士団

 

 

 合流地点海上、そこにはリベルタスの旗艦《アウローラ》が静かに浮上し仲間の合流を待っていた。

 

「上空に機影、信号確認。ヒルダ機とロザリー機です」

 

「上部ハッチ解放、収容準備」

 

「イエス・サー。上空ハッチ解放」

 

 アウローラの艦長席となる椅子には司令官であるジルと並ぶようにJが座り指揮を執っていた。

 全体的な指揮官はジルが執っているがアウローラ自体の決定権は艦長として座っているJの判断に任されていた。

 Jをあのおぞましい機体に乗せたくないと言うジルの思いもあったためである。

 

「念のためにCIWSを展開しますか?」

 

「いらん。緊急時はすぐに潜る、弾丸も有限だからな」

 

「分かりました」

 

「J、ここを頼む」

 

「はいよ」

 

 落ち込んでいる者たちにリベルタスの事を告げ、賛同者を集めるためにジルは格納庫に向かう。

 

「30分後に出航する。それまでに合流できなければLOSTとみなす」

 

「イエス・サー!」

 

(サリアは無理か…)

 

 一向に帰ってくる気配がないサリアを残念に思うが戦場なんてそんなものだ。

 こちらの駒はヒルダとロザリーの二人、アンジュとタスクって奴も消えてしまった。

 

「飛車角落ちだな…」

 

「ヒルダ機、ロザリー機収容完了」

 

「7時の方向より巡洋艦3隻接近中」

 

「デコイ射出。ベント開け、バラストタンク全注水。潜航後、両舷前進最大戦速」

 

「イエス・サー」

 

「警報鳴らせ」

 

ーー

 

「なんだ?」

 

 やっとの思いでたどり着いたと思えば天井のハッチがかなりの速度で閉まり、艦内に警報が鳴り響くと艦が大きく揺れる。

 

「もうなんなんだよ!」

 

 ロザリーの愚痴に内心同意しつつもヒルダは愛機のアーキバスに掴まる。

 アンジュの活躍により艦隊を壊滅させたがこちらも拠点であるアルゼナルを失い、アンジュやサリアたちも行方不明。

 

「絶望だな…」

 

ーー

 

「現状報告」

 

 会議室に主要メンバーが集まった時、Jがそう告げる。

 

「ご存じのとおりパラメイル隊は私とロザリーの二人だけだよ」

 

「機体はノーメイクが2機積んであるけど予備パーツとかはない。弾薬もほとんどない」

 

 ヒルダとメイの報告にジルは苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「医療品も手で運べた分だけだ。乗員の負傷者を満足に治療できる量すらない」

 

「残念ながらパラメイル以外の弾薬もほぼ皆無だ。拳銃の弾すら余分はないよ」

 

 続いてマギーとジャスミンの言葉をJは椅子を回しながら聞いていた。

 

「明日、アルゼナルに一度戻って補給しよう」

 

「大丈夫なのかい?」

 

「弾薬的にも1、2戦ほどは持つだろう。もし勘づいて襲ってきても対応できる筈だ。一番恐れるべきは俺達が飢え死にすることだ。それに俺達にはアルゼナルしか物資を手に入れられる場所はない」

 

 アルゼナルなら運が良ければ戦闘を行うことなく補給を行える可能性がある。

 それにアンジュたちも戻ってきている可能性も捨てきれないと言うのが言葉には含まれていた。

 

「明日の丑三つ時頃にアウローラはアルゼナルに向かう。ヒルダとロザリーは上甲板で警戒、緊急時は迎撃に出てもらう」

 

「分かった」

 

「他は搬入作業に注力しろ。班編成はジルに一任する」

 

「分かったが司令官は私と言うのを忘れてないか?」

 

「艦長を任せたのはお前だろ。それに現場指揮は俺の方が長いしな」

 

「…まぁ、いい」

 

「じゃあ、明日の1600に現地点から移動を開始する。それまで各自休息を」

 

ーー

 

 その後、アウローラは島陰に隠れるように停泊していた。

 そんなアウローラの甲板で煙草を吹かすJの元にジルがやってくる。

 

「どうしたジル」

 

 ジルはJの隣で同じく煙草を吹かし始める。

 

「補給を済ませてどうするつもりだ?」

 

「さぁね」

 

「早くエンブリヲを」

 

「ヴィルキスもないのに?」

 

 アウローラに乗り込んでからジルことアレクトラの焦りは積もるばかりだ。

 まずは偵察だ、国の規模からしてミスルギ皇国が怪しいのでスパイでも潜り込ませて敵の本拠地を探さねばならない。

 スパイは監察官が適任だと思うが今となっては身内に裏切られてアウローラの数少ない酒を独占し酒浸り状態、常に酩酊状態だ。

 モモカを説得してやるしかないか。

 

「ジル。お前、視野狭すぎだろ」

 

「なんだと?」

 

「お前はリベルタスよりエンブリヲの方が重要だもんなぁ」

 

「……」

 

「あまり俺を失望させるな。じゃねぇと殺すぞ」

 

「……」

 

「まぁ、せいぜい頑張れよ」

 

 煙草を捨て、その場から立ち去るJをジルは見届けるのだった。

 

ーー

 

 翌深夜アルゼナル。

 必要物資の回収作業を行うアウローラは静かに速やかに行っていた。

 

《無傷のパラメイルを発見》

 

《搬入作業予定の七割方終了です》

 

「作業から2時間経過しています。予定よりかなり遅れてます」

 

「アルゼナルの損壊状況が予想を上回っていますね」

 

「全部隊に通達しろ、あと1時間で出航すると」

 

「「イエス・サー!」」

 

 艦長席に座るJはいつもと変わらない様子で暇そうにしているのだった。

 

ーー

 

「なんで私まで」

 

「ぼやくなよ。人が足りないんだから」

 

「分かってるよ…」

 

 ロザリーとヒルダは自身のパラメイルで搬入作業を行っており大まかな搬入作業を終え終了の目処が着いていきた頃。

 

「レーダーに反応!」

 

「駆逐艦三隻、巡洋艦一隻こちらに向けて進行中」

 

「警報鳴らせ。機関最大、両舷全速」

 

「機関最大、両舷全速」

 

「あぶねぇ!」

 

 艦内に警報が鳴り響くと同時に艦が大きく揺れ前進を始める。その際にまだ固定されてなかった荷物が崩れ下敷きになりそうになる船員をパラメイルで救出するヒルダ。

 

「敵艦からの攻撃を確認」

 

「フレアを撒け、上部ハッチ閉塞急げ」

 

 指示の直後、アウローラに着弾の衝撃が走る。

 

「状況報告」

 

「上部ハッチ接合部に着弾。閉められません!」

 

「これじゃ潜航できない!」

 

「メイ」

 

「分かってる。10分待って!」

 

 Jは矢継ぎ早に指示を出し敵艦との距離を伸ばす。

 

「魚雷です!右舷真横、距離400ヤード」

 

「そんな距離に?」

 

 近距離からの攻撃に違和感を覚えつつもレーダーを見つめるJ、この方向ならここままでも抜けれる。

 

「面舵一杯、ソナーは?」

 

「潜水艦と思われる反応なし」

 

「指定座標に対して爆雷投下」

 

「イエス・サー!」

 

 アウローラから射出された爆雷が着水し大きな水柱を上げる。

 

「現在爆発音沈静化待ち。状況不明」

 

「面舵、方位110」

 

「面舵、方位110」

 

「ソナー反応、敵潜捕捉?方位001、距離400ヤード。かなり小さい?」

 

「面舵一杯、方位065」

 

「面舵一杯、方位065」

 

 絶え間なく動き続けるアウローラで揺られながら必死に荷物を固定する船員たち。

 

「反応消失、ソナーの死角に入られました」

 

「上がってくるぞ。CIWSを海面に向けろ」

 

 格納されてたCIWSが起動したと同時に二機の黒いヴィルキスが空中に飛び上がる。

 

「ヴィルキスタイプ…ヒルダとロザリーを上げろ!CIWS迎撃開始」

 

「休ませてくれよ!」

 

「くそっ!」

 

 迎撃のために唯一無二の戦力である二人が飛び立つとジルがやっと艦橋に戻ってきた。

 

「すまない」

 

「遅いぞ」

 

 そうすると入れ替わるように艦橋から出るJ。

 

「なにをするつもりだ!」

 

「俺も出るんだよ。指揮を引き継げ」

 

「おい!」

 

ーーーー

 

 潜水艦ではなく水中航行したヴィルキスタイプでの魚雷攻撃に虚を突かれただろう。

 その結果、ヒルダとロザリーの迎撃が明らかに遅れている。

 

「ターニャ、クリスはヒルダとロザリーを引き付けて。エルシャ、イルマは対艦攻撃を」

 

「「イエス・ナイトリーダー」」

 

 遥か上空に待機していたエルシャ、イルマは急降下し迎撃に出たヒルダたちの脇をすり抜けアウローラに向かう。

 

(呆気ないわね)

 

 そんな感想を抱いた瞬間、緑の障壁がエルシャとイルマを吹き飛ばすと姿を表す巨大な黒い機体。

 それを見たサリアはクレオパトラを一気に加速させN-WGⅨ/Vに接敵する。

 剣を特殊粒子で防御するとバックブーストで距離を取りライフルで弾幕を形成する。

 

「凄いわ!J!」

 

「その声、サリアか?」

 

「そうよ、驚いた?」

 

「いや、嬉しいよ!」

 

 激しくぶつかり合う両者に呆気にとられる一堂。

 接近と同時に蹴り飛ばされ吹き飛ぶサリア。

 

「ナイトリーダー!」

 

「邪魔をするな!」

 

 エルシャとイルマはサリアを援護するために斬りかかるがサリアの怒号に足を止める。

 

「ンフッフッフッフ」

 

「フフッ」

 

「J、撤退だ」

 

 N-WGⅨ/Vの各所がオレンジ色に輝き始めた瞬間、ジルからの通信が入り冷静になるJ。

 いや、水を差されてやる気がなくなったと言った方が正しいかもしれない。

 そんな彼の雰囲気を感じてサリアも剣を降ろす。

 

「まだここじゃないみたいだな」

 

「そうね」

 

 潜航準備を進めるアウローラを見て二人は互いに視線を合わせると撤退を始める。

 

「ナイトリーダー?」

 

「撤退するわ、向こうにヴィルキスどころかアンジュすら居ない。それが分かれば充分よ」 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。