中央暦1639年
日本 江戸城
そこでは忙しなく馬車や蒸気自動車が
出入りしていた。
ここは江戸城のとある場所
そこで徳川慶喜に幕臣達が転移についての報告書を読み上げていた。
「上様、琉球方面よりクワ・トイネ公国に接触した調査隊の報告が上がって来ております」
「そうか、申してみよ」
「はっ! では、えぇー、琉球方面より
クワ・トイネ公国と接触を果たした調査隊は、その後クワ・トイネの首相と直接会談し、我が国にクワ・トイネ公国の使節団の派遣を決定したそうでございます」
「そうかそうか、友好的で何よりだな」
「それでこれは重要な事なのですが、
この世界ではワイバーンという火を吐き、空を飛ぶ蜥蜴の様なものがおり、それがこの世界の軍で使われているらしいのです」
そういうと、幕臣の1人がワイバーンの写真を渡す。
「と、蜥蜴が火を吹いて空を飛ぶのか!?」
慶喜が驚く。
「なのでワイバーンを我が軍でも保有し、幕府空軍を新設する方向で準備を整えております、後は慶喜様の許可だけでございます」
「う、うむ、空軍の設立の許可をしよう、頼んだぞ」
この時空軍設立について言及した、蒲鉾
弘義はのちの空軍総裁となるのであった。
◇◆◇◆◇◆
数週間後
幕府海軍の蒸気船
「……なんと、これは凄い……」
ハンキは管詰(昔は缶詰をこう呼んだ)
の鮭や鯖を、目を輝かせながら頬張る。
「ハンキ様、すこし落ち着いてください……」
「おお、すまんすまん、まさか海の上でこんな新鮮な物を食べられるとは思ってなくてな」
すると
「どうです? お気に召しましたか?」
外国惣奉行役人の田中がにこやかな笑みを浮かべて聞いてきた。
「ええ、この管詰というものは素晴らしい、これがあれば海魚は殆ど干物の内陸部や山岳部でも新鮮な魚を食べることが出来ます、まさに食の革命が起こるでしょう」
ヤゴウがそう答えると、田中は満足そうに頷いた。
「是非ともこの技術を我が国に取り入れたいな」
「ええ、そうですね、この技術はなんとしてでも手に入れなければなりません……」
蒸気船はもうもうと煙を吐きながら、日本へと向かった。
◆◇◆◇◆
横浜港から上陸し、外交団は蒸気バスへ乗り込みとある場所へ目指す。
「これから皆様に、陸軍の訓練を見学していただきます」
「ほう、ニホンの軍隊か」
「気になりますね、一体どんな武器を持ってるのでしょうか?」
◇◆◇◆◇
とある練兵場
ザッ! ザッ! ザッ! ザッ!
歩兵達が隊列を組んで何か荷車の様なものを、数個程運んでいる。
「ハンキ様、あれは何でしょうか?」
「さぁ、皆目見当も付かん」
荷車の上にはパイプを6つ程円形に並べたものがあり、後ろにはハンドルがくっついている。
「よぉ──い!!」
上官と思われる兵士が命令すると、手際よく荷車のソレが準備される。
ソレを遠くの的に向け、狙いを合わせる。
「……あれは何をしているのでしょうか……」
「パーパルディアで[魔導砲]という物を見たことはあるが……、それとはまた形が違うな……」
すると
「撃てぇー!!」
上官が命令をすると、兵士はソレについてるハンドルを回し始める、すると。
バン! バン! バン! バン! バン!
円形のパイプが回転を始め、爆音と共に白煙があがる、そして的は蜂の巣の様に穴だらけになっていた。
「どうですか、これが我が軍が誇る新兵器、ガトリング砲です」
その様子を唖然とした表情で見ていたハンキとヤゴウに、田中は誇った顔でそう言った。
ハンキは、この兵器がこれまでの戦場の常識を変えてしまうということを直感的に感じていた、もしあの兵器が要塞に置いてあったら、攻める側は一方的になすすべなくやられるだろうと。
◇◆◇◆◇◆◇
今回はとりあえずどの様な国か、確認するための外交団だったが、これからは国交樹立を視野に入れていかなければならないだろう、クワ・トイネ外交団はその様な思いを秘めながら、国へと帰っていった。
幕府空軍とかいう衝撃ワード