とある未来の青猫機械   作:クリップ使い

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9巻・10巻
非常に遅くなってしまいすみません。
課題に追われてました。→期末試験に追われていました→部活に追われていました


10話:裏切をもっていこう

学園都市。人工230万人・東京都の西半分を占める科学サイドの頂点。

ローマ正教・ロシア成教・イギリス清教の3大勢力によって

まとめあげられている魔術サイドに対して科学サイドは学園都市の一極集中だ。

それは科学技術において学園都市が圧倒的なリードでもって纏め上げていることを意味すると同時、

地中を侵食した竹林が失われれば斜面の崩壊が起こるように

学園都市が失われれば学園都市ありきで成り立ってきた科学サイドは

崩壊の一途をたどるという脆弱性でもある。

 

大覇星祭の開会式が始まった。

学園都市の頂点たる超能力者(level5)は広告塔でもある。

その超能力者(level5)による開会宣言で学園都市のイメージを高めることも狙いであった。

ただし超能力者(level5)のチョイスを間違えたらしく、

どうにもマッチは最悪でその目的が達成されたとは言い難いが。

そんな開会式を終えて上条当麻は最初の試合会場へ向かっていた。

「あ!居たッ!」

そんな声が聞こえたかと思うと、体操服の襟の対地速度がゼロになる。

雑踏の中、上条当麻が後ろにしりもちを搗くと、

周りの人が割れ襟をつかんだ張本人が姿を現した。

「いってててててて・・・み、御坂!?」

「そうよ!見つけたわ・・・アンタ、大覇星祭の勝敗の規則は知ってるわよね?

今度こそ厳正な勝負よ!」

「お前なぁ、勝負勝負って・・・一体何が目的で勝負しないといけないんだ?

お前勝って俺をどうしようってんだよ!?」

「そ、そうね・・・私が勝ったら何でも言うこと聞きなさい!」

「{何でもって!?まさか一晩中超電磁砲(レールガン)キャッチボール(ただし俺が一方的な受け)とか

言い出さねぇよな、こいつ!?}だ、だったらお前も同じ条件だ!

お前も買ったら俺の言うこと聞けよ!」

まさか飲むとは思えないような条件を提示し、御坂が引くのを予想していたが・・・

「じょッ上等じゃない!飲んでやろうじゃないの!」

どうやら、初めから断る気はなかったらしい。

そんな時、こちらを眺める3人の大人を見つける。

「やぁ、当麻。そちらのお嬢さんは当麻のガールフレンドかい?」

「あらあら、当麻さんったら、やっぱり刀夜さんの血を引いていますのね?うふふふふふ?」

「あら~美琴ちゃんったらいつの間にカレシなんか作ってたの~?」

これこそが波乱に塗れ浸された大覇星祭の始まりだった。

 

第1種目・棒倒しに参加した後、御坂の手によってインデックスと引き離された上条は

合流のため自立バスのバス停に向かっていた。

大覇星祭に通常の運動会のような棒倒しや借り物競争、パン食い競争、玉入れなど

意外にシンプルな競技が多いのはそのほうが能力の派手さが引き立つという

上層部の思惑なのだろうか。

そんなことを考えつつも上条がバス停の近くまでたどり着いたとき、

明らかな疎外感のある2人組を発見した。

真っ黒で特殊な修道着に赤い髪、口の端にタバコを咥え話す相手は

金髪グラサンピアスアロハシャツに長身という

不良に必要な要素を再結晶させたような風貌である。

そしてその二人は上条当麻の知り合いである。

声を掛けようと近づくと2人の話し声がうすっすらと聞こえる。

「・・・・・・・・・・・・・・侵入・・・・・・・危険・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・監視・・」

侵入と危険という二つの単語に上条の耳が反応し、話しかけるトーンが変わる。

「おい、それってどういうことだ?」

「カミやん、聞いてたか」

いつも見せるヘラヘラとしたソレではなく

いつにない真剣な凄みの表情でこちらを見つめ返してくる。

「また魔術師がここに侵入した。名前はオリアナ=トムソン。

ここでは話すのに具合が悪い。向こうのテラスできちんと話そう」

指さされた方を見るといつぞやのプラスチックテーブルがあった。

 

「今回侵入した魔術師・オリアナ=トムソンは

リドヴィア=ロレンツェッティという魔術師ともグルらしくてね。

明確な侵入はオリアナしか確認されていないが、

おそらくこちらも学園都市に侵入しているものと思われる。

全く面倒な奴がやってきたものだよ」

「にゃー。なんせ、告解の火曜(マルディグラ)追跡封じ(ルートディスターブ)、二つ名付きが二人ぜよ。

追いかけなければならない方にとってこれほどつらい組み合わせもないぞ」

「それでその魔術師どもは何のためにここに侵入したんだ?

大覇星祭に乗じたってことは普通は侵入できない目的ってことなんだろ?」

「こちらではとある霊装の取引とにらんでいる。これだ」

土御門が携帯電話を差し出すとメーラソフトに黒を背景とした画像が表示されていた。

その物品は、柄と同じくらいの長さのおおきな鍔に

某縦横者の大王剣のような、縫い針のような杭状の刀身を備える。

「変な形の剣だな・・・いったいどんな能力を持っているんだ?」

「どうにも正しいことが判明したわけではないのだが・・・

その剣は刺突杭剣(スタブソード)と呼ばれているらしい。

こいつは英国博物館の記録書類を漁りに漁って

うちの暗号解析班が見つけ出したたった1つの画像だ。

そして、その剣は処刑と刺殺の意味を極限まで抽出・濃縮している。

神の子がどうやって処刑されたか知ってるか?」

「あ~十字架に磔にされて焼かれたんだっけ?」

「おしいな。正確には磔にされたのちに杭を刺されて死んだんだ。

その"刺す"という行為が殺すためだったのか死亡確認のためだったのか、

はたまた念には念を入れてということなのか、その辺はいまだ論争が行われている。

だが今大切なのは、刺したことで死が確定したということだ。

これは神の子に対応するもの、また刺した杭に対応するものの関係についても適用される。

神の子に対応するものというのは神の子の性質を受け継いだ人間、

つまりは聖人のことだ。

この刺突杭剣(スタブソード)という霊装は聖人を一撃で葬り去る力を持つ。

いや、一撃どころではないな。

ただ切っ先を向けただけで間に何があろうともその先にいる聖人を殺すんだ」

聖人の恐ろしさは上条もよく知っていた。

なぜならばその聖人たる神裂火織に記憶をなくす前にボコボコにされているからである。

記憶を映像で見せられた時には思わず冷や汗で全身が濡れるほどだった。

しかも彼女にとってはあのレベルで軽いジョギングにも満たないよう。

そんな聖人を向けるだけで殺せてしまうものなのだから。

「ちょ、そんな恐ろしいものを取引するってのかよ・・・・」

「あぁ、そしておそらく取引相手はロシア成教と思われる。

あそこは自分から何かしようってことはしないが、漁夫の利を狙ってくるからな」

「あ、そうだ!おい土御門、ステイル!心強い仲間がいるぞ!

ちょっと電話するから待ってろ!」

ステイルと土御門にそう言い放つと携帯電話を取り出し電話帳からインデックスの番号を呼び出す。

「あぁ、カミやん、今回は禁書目録の知識は借りられないぜよ?

オリアナ=トムソンとリドヴィア=ロレンツェッティの侵入が判明したことで

禁書目録の周囲を世界中の魔術師が警戒してるからな」

「別に警戒してても気づかないとは思うが・・・

俺が電話するのはインデックスじゃねぇよ」

発信ボタンを押して8コール目で件の人物が出た。

「もしもし、インデックスか?

・・・・

そうだ。ドラえもんに代わってくれ」

スピーカからインデックスがドラえもんを呼ぶ声が薄く聞こえる。

『もしもし?僕だよ』

「ドラえもんか?よかった。ちょっと頼みたいことがあるんだけど・・・」

『あぁ、当麻くん、言い忘れてたけど今回僕はオリアナ=トムソンの味方だからね?』

スピーカから聞こえてきたのは信じ難い言葉だった。

 

オリアナ=トムソンは学園都市の市街を歩いていた。

つなぎのような生地の作業着に身を包み、自分の身長より長いかという看板を小脇に抱え悠然と歩を進める。

しかし看板業者にはあり得ない装いだ。

自分の身長よりも長いような看板を運ぶなら2人以上で看板の前後を持って運ぶべきであるし、

その作業着の上着は第2ボタンでしか留められておらず、この場に作業監督者がいれば、

いや安全意識のある者が1名でもいれば即座に咎めるであろう格好だ。

それでも誰も彼女をとがめようとしないのはひとえに表裏の沈黙(サイレントコイン)という術式のお陰である。

声をかけられそうになったらそっと反対側を向くだけで声をかけようとした人は興味を失い、

その事を永遠に後回しにしてしまう。

「はぁ、誰にも構われずに歩き回るってのも疲れるものね。1人で始めちゃおうかしら」

右向こうの方で男女の学生が言い合いをしながらこちらに歩いてくるのが見える。

痴話喧嘩だろうか。少し考えた後に、仲裁に入ることにする。

そちらに歩みを進めようとすると、男子学生の携帯電話が突然鳴り出した。

電話に出るととたんに険しい表情になり、女子学生を差し置いて何かを話している。

女子学生は初め注意しようとしたがその険しさに圧倒される。

特別ぶつかることに問題はなさそうなので、とりあえずぶつかって間に入ることにした。

とん、と肩を少しだけあてる。

男子学生はこちらに視線を預けたままだ。当然か、とオリアナは思った。

今の自分は相当に扇情的な格好をしているわけだから。

「あらあら、ごめんなさいね?あなたもいつまでも画面の向こうに気をとられていないで

現実でイイことした方がいいわよ?」

そうだな、と一言言うと男子学生は右手でこちらの手をつかみ

そのままオリアナが来た方向から90度の方へ歩き出す。

右手で掴まれた瞬間、虚空から金属が割れる音がする。

暫時、自分の知識を根本からと思う現象であった。

女子生徒はどこから音がしたのかと警戒したようだが、

オリアナにとってこれは単純に鳴った時の比でなく危険な音だ。

少年は尚も先導してオリアナを連れ去ろうとする。

こちらに背を向けてはいるものの、その意思が鈍ろうとする気配はない。

視界から外れることなきよう、オリアナが真後ろに入らないよう、

手が100度を越えることはない。

「強引ねぇ、相当溜まってたのかしら?」

そんな軽口を叩きつつ、彼女は自分の意識を落ち着かせようとする。

雇い主に何度言われようとも、彼女の地はコレであり甚だ治す気などない。

この結界は、今はまだ破られるはずではなかった。

計画の根本に関わる事項であるが彼女は輸送作戦立案実行逃走のプロであり、

そこからついた2つ名こそ追跡封じ(ルートディスターブ)

意識の中で瞬時に他の手段を作り出し、評価する。

さすがに予想外すぎたため原案は存在しなかったが、

それでもいくつか案は出てきた。

(応戦・逃走・計画前倒し。

応戦してここで潰したいところだけど、この衆人環視の下戦闘をやるのは避けたいかな。

おねえさん羞恥プレイはあまり好きじゃじゃないし。

計画を前倒すにしても"条件"が決まってるから。結局、逃げに徹するのが一番なのかしら。

それにしても"条件"を悟られたらこの計画は失敗。

人海戦術でどうにでもなってしまうものね)

勝利手段が少ないこともよく理解していた。自分の劣勢がわからない指揮官は失格である。

しかしそこさえクリアすればいくらでも対処のしようがあるというものだ。

まだ希望はあると信じオリアナは駆け出す。

力の入れ方、回転方向を工夫し手にあり得ないモーメントをかければ

手首を破壊することなど造作もない。

少年はとっさに握り手を解いたことで手首の破壊は逃れたようだが、

それでも再び拘束し続けることはできないだろう。

角を曲がると都合のいいことに路地裏に出た。

さっさといくつかのノブを蹴破って逃走手段の数を増やしておく。

たとえそこから逃げることはできなくとも、一瞬でも逃走経路を増やすことは

全ての経路を評価する必要のある追跡者と一つでも条件を満たす経路が存在すればいい逃走者の間には

絶対的な格差が存在するはずなのだ。

いくつかの経路を計算し、少なくとも最適な経路を見つけ出しそこを突き進む。

もちろん、途中でさらに枝分かれさせることも忘れない。

あまりやりすぎても経路の深さを評価基準にされてしまうので意味はないが適度に分散させておく。

オリアナは自身の逃走技術に相応の自信を持っていた。

ただしそれには、自身の逃走風景を追跡者が見る手段を持っていないという前提条件の下での話だ。

例えば『スクール』所属の弓箭猟虎の持つ嗅覚の痕跡特定による追跡ならば、このような攪乱は無意味となる。

一介の学生にそのような技術はないという判断の上の行動だったがはたして・・・・?

 

上条当麻は混乱していた。

余りにも錯綜した情報は何が正しいのか、何が間違っているのか、それとも決定不能なのか。

足りない情報を埋めるための情報が定義されておらず、何をやっても堂々巡りになる。

結んだ端から結んでいない場所にたどり着くのだ。

誰を信じ誰を敵とするのか。

これまでさんざん頼りにしてきたドラえもんが突然敵側についた。

(もう、誰を信じればいいんだよっ!!)

高々高校1年生に世界情勢にもつながる善悪を決定し、

自分の回答に従って行動することを求めるのは酷なことかもしれない。

言動1つで第3次世界大戦につながってしまってもおかしくはないのだから。

自分が信じるべき基準を求めた点ではオリアナ=トムソンも同じことだった。

彼女が旅先で助けた若者は 偶然にも 敵国へと奇襲をかけようとしていたものだった。

今も、純粋なる善意に従ってケンカを仲裁しようとしたものの相手は 偶然にも 敵対者のようだ。

自分の行い1つ1つについてその結果をいちいち思案するなど不可能のラインに漸近する。

何せ思案するという行動について思案する必要があるからである。

そういう観点で見れば行いの善悪はベクトル量といえるだろう。

ベクトル量というのは基準を変えるたびにその大きさが変わるものだ。

例えば、静止衛星が分かりやすい例である。

静止衛星は地球上のある地点の上に止まっているように見える衛星のことだ。

あなたが衛星の下に立ってその衛星を観察したところで衛星の速度は0だろう。

しかしここで地球を出て月から観測したとしよう。

そこから静止衛星を見たあなたはきっと驚くはずだ。

静止衛星が恐るべき速度でで地球の周囲を公転しているために。

静止衛星のカラクリとは、

衛星が軌道上を地球の自転速度と同じ速度で――正確には角速度だが――公転していることである。

結果についての思考は、試行でもありそのたびに自分自身は異なる系へランダムに転移してるのだ。

思案する(≒系を変える)たびにもたらされる結果は変動し可能性を取る。

例えば"切り替え式タイムスコープ"を使えば自分の行動とその先の未来をかなり近い精度で知ることができるが、

必ずしもその未来になるとは限らない。

これを防ぐためには原点すなわち基準を決めておく必要がある。

そのためには転移先の極限値が必要だがこれを下から取ることはできない。

なぜなら、思考についての転移の関数はランダムであり、

非連続関数であるから極限値を求めることができないためである。

極限値が存在しないにもかかわらず、未来はただ一つに収束する。ならば未来を上から押さえればよいのだ。

"タイムマシン"や"もしもボックス"はこれを可能とする存在である。

自分の行動による結果を先取りすれば、自分の思った通りの未来にたどり着くことも可能かも知れない。

もしも彼女の前にドラえもんが現れたならば、きっとそれを欲することだろう。

 

オリアナ=トムソンがある曲がり角を曲がると先から余りにも場違いな服装の2人組位があらわれた。

(コスプレイでもしているのかしら…?)

背の高いほうの席初の少年の胸に掲げられた小さな金属片。

それは十字教徒なら誰もが持っているアイテムにして各自の宗派の色濃く表れるアイテム。

イギリス清教の十字架だった。

彼が個人的な理由でこの大覇星祭に来ていることも十分考えられるが、

彼の胸ポケットに入っているドクロを見てオリアナは確信した。

あのどくろは携帯電話のストラップを模してこそいるものの通信用の霊装であると。

ならば、この者たちは自分の敵対者か。

現状追跡されている以上彼らは追っ手の一員だと考えるのが妥当であると思われる。

先ほどの学生は他の学生とも十分な面識があるようだったので

おそらくこちらに雇われた仮のメンバーだったのだろうと思考し、

追っ手を打ち払うために彼女は単語帳を構える。

速記原典(ショートハンド)ともよばれるそれのうちの1ページを口に咥えて千切り取ると、

千切ったページにWind_Symbolの黄色い文字が浮かび上がる。

礎を担いし者(Basis104)!!」

コンマ数秒、自分の周囲の半径500mm~556mmのドーナツ型の領域(フィールド)が真空と超高圧の空気に苛まれ、

凄まじい暴風が吹き荒れる。

その領域(フィールド)は面積を保ったまま広がっていき、

触れるものを押しつぶし引きちぎって切り裂く風の刃となって半径数十mに広がるまで衰えない

群がる追っ手を一掃するための攻撃であった。

発動する瞬間、金髪がニヤリとしたのが気になったがそのときにはもう遅かった。

刃が対象へ到達する寸前、バギンッという音を立てて砕け散った。

振り向くと、先ほど自分のことを掴まえてきた少年が息を切らして後ろに立っていた。

「よう、魔術師。追いついたぜ」

ステイルがルーンのカードをかまえると、背後に炎の巨人、魔女狩りの王(イノケンティウス)が顕現した。

上条はそんなステイルを右手で制する。

「魔術師、いったい何が目的なんだ?」

「あらぁ?お姉さんが素直に話すと思ったのかしら?」

そういうと速記原典(ショートハンド)を口に咥え、リングから切り離す。

単語帳に赤い文字でFire_Symbolの文字が浮かび上がる。

「生命と再生の象徴である火の象徴。

そこに更に火の象徴の赤を重ねがけしたら、いったいどうなるのかしらね?」

その言葉を皮切りに、上条の体を駆け巡っていた違和感が増大する。

本来、肉体としての疲労は血液循環と腎臓によって緩やかに体内から排出されるべきものである。

魔術によって回復速度を過剰に上昇させるということは、

筋肉から疲労物質を血液中へ高速で析出させるということである。

その弊害として浸透圧の変化による脱水も起こり、のどの強い乾きや吐気、痙攣等の副作用を引き起こす。

「くぁっ・・・かっかくきあ・・・・」

言葉にならないうめき声をあげつつ、上条は己の下半身をたたく。

直ぐに魔術による回復は終了したが体に残った脱水状態は残ったままだ。

意志の力でそれらを抑えつつ、しずかに立ち上がる。

「あら?意外と持つのね?早々に腰が砕けてしまうかと思っていたわ」

「・・・・・・・っ、答えろよ、魔術師。お前は本当に戦争を引き起こしたいのか?それとも、世界を救いたいのか?」

上条の口からもたらされた問いに、その場の3人は固まる。

 

遡ること午前11時、上条当麻は自分の寮に戻ってドラえもんといた。

上条は学生という立場のため、大覇星祭の競技に出場しなければならない。//出席単位は大切にね!!

更に腹ペコシスターと電撃姫の相手もしなければならないので中々に時間が取れないのだ。

競技の合間を縫って自室に戻ったところ、部屋ではドラえもんがよく分からない地図を広げていた。

更にその地図には4つの丸が表示されておりマップ上を動いていた。

「お帰り、当麻くん。オリアナのことなら任せといてね」

大きくため息をつくと台所に行って水を飲む。

(電話で呼び出されたから帰ってきたのになんなんですかこの対応は)

「まったく何の用だ?」

普段に比べてツンツンした口調で問う。

「ちょっとこれを持ってくれるかな?」

そういってドラえもんが差し出してきたのは謎の機械だ。

握り手から伸びた棒にはパラボラアンテナがついていたり球体がついていたりとわけが分からない。

その後指示に従うt

「・・・・ん?なんで俺寮に戻ってるんだ?」

上条が気付くと自分の部屋に座っていた。

目の前にはドラえもんがいて、上条の携帯を差し出している。

「何言ってるの?君が電話でメールの意味が分からないって聞いてきたんじゃないか」

丸い手で器用に携帯電話のボタンを操作し、そのメールを表示する。

ゴムまりみたいな手でよく操作できるなと思いつつ画面を見ると、

たしかにメールは外国語で書かれており上条には読めなかった。

「そ、そうだったっけ。何とかできるのか?ってか敵対してなかったか?」

「え~?そういうこと言うんなら助けてあげないよ」

「そ、そんなこと言わないで教えてくれ!」

「しかたがない、"ほんやくコンニャク"~」

ポケットから取り出したのは何の変哲もないように見えるコンニャクだった。

「さ、これ食べて」

嫌悪感を感じつつも齧ってみるととくに臭みとかはなくほぼ無味でコンニャクの食感だけする代物だった。

「(モグモグ)これを食べたら読めるようになるのか?・・・読める!読めるぞ!

『題名:使徒十字に関するレポート。送信者:オルソラ=アクィナス』!?

本文は・・・開かなきゃだめか。『本文:拝啓土御門元春様――』間違いメールだったのかよ!」

オルソラ=アクィナスとは、元ローマ正教のシスターで、

ややあって今はイギリス清教の暗号解析班でシェリー=クロムウェルとともに従事している。

その後に続いていた文章は使徒十字(クローチェディピエトロ)と称される霊装の管理法や管理者の様子についてで、

年に一度昼間に光が入らない部屋で掃除をすることという規定の存在や

管理者がホロスコープで遊んでばかりいることなどが記されていた。

「ふんふん、『――PS、今朝は間違いのメールを送ってしまい申し訳ございませんでした。

神裂さんがおいしいお団子のお店を教えてくださったので土御門さんもいかれてはどうでございましょうか?』

って、相変わらず会話の脈絡がわっかんねーな!ん?PSに書いてある今朝のメールってなんだ?」

土御門に送られたはずの今朝のメールとは、刺突杭剣(スタブソード)についてに写真付きメールのことだろう。

それに間違いがあったというのはどういうことなのか。

頻出している使徒十字とは何なのか。

分からないことが多すぎる。

とにかく行動しなければと思って上条は外へ出る。

エレベータを使っている時間を惜しみ階段を駆け、学生寮の入り口まで下りてくるとそこで吹寄制理に捕まった。

「まったく、試合の応援をさぼって学生寮に帰って行ったなんて聞いたから呼び戻しに来たのよ?」

「す、すまない吹寄・・・」

「どうしたのよ?ひどく困った顔をして。・・・・・・・・・・・・もしかして、戻りたくないの?」

「いや・・そんなことはないし俺だって今朝みたいにバカやってボロボロになるまで頑張りたいさ。

でもな・・・・・・悩んでいるんだ。困ったことが多すぎて」

「悩んでいる?上条らしくもないわね。ほら、この吹寄さんに話してみなさい?

それとも話せないような悩みなの?」

「そうだなー、なんて言ったらいいんだろうか。

分からないことが多すぎて何が分からないのかもわからなくなって決断に迷ってるって感じだな」

そう告げると、彼女は少し考えるそぶりを見せた後にフフッと笑って

「そんなの、分かるようになってから考えればいいことなのよ。

元から頭が弱いんだから分かるようになるまで時間が掛かるのは当然じゃない。

決断のときに向けて、何があってもいいように準備するの。間違えたって、リカバリも含めて決断なのよ」

「そうだな。吹寄だってよくヘンなマッサージ機とか買う決断しているけど、間違えてばっかだし。」

「あ、あれは買うときはほんとに良いものと思って買ったのよ!?でも届いたらなんか違うなーって・・・・・・・・」

「やっぱ間違えてるじゃん!」

そうこう言い合いをヒートアップさせていると上条の携帯が鳴った。

 

時は戻って路地裏。

固まった3人の中で上条は更に話し続ける。

「お前が運んでいるその霊装、本当は使徒十字と言うんじゃないか?

そんな名前で偽って、いったい何をしようとしているんだ?」

「ちょ、ちょっと待つんだカミやん。今、使徒十字といったか?」

「あぁ、そうだ。この名前になにか問題でもあるのか?」

「Croce di Pietroとはイタリア語で、こちらの言葉に直すとペテロの十字架という。

上条当麻、いったいいつ刺突杭剣(スタブソード)使徒十字(クローチェディピエトロ)だと気づいたんだ?」

「あら?もうバレちゃったのかしら。これは剣などではないわ。

使徒十字(クローチェディピエトロ)、この世に平穏と幸福をもたらす絶対の存在」

「幸福だと?その名の通りなら、この世界にもたらされるのはローマ正教にとって都合のいい未来だけだ!」

使徒十字(クローチェディピエトロ)という言葉に対し、三者三様の大きなリアクションを見せる。

いずれにせよ、オリアナ=トムソンとリドヴィア=ロレンツェッティの取引していた霊装は

使徒十字ということが確定した。

「おい土御門、使徒十字(クローチェディピエトロ)について詳しいことを教えてくれ!」

「カミやん、時間がないから簡潔に話すが、

使徒十字(クローチェディピエトロ)ってのは聖ペテロが死んだときにバチカンに立てられた十字架ですたい。

その影響はすさまじく、立てたところを中心としてローマ正教の支配が広がるほどぜよ」

「支配って・・・まさか学園都市を制圧する気なのか!?」

「支配といっても物理的な支配になるとは限らないぜ?

でも、いずれにしろ学園都市がローマ正教から大きな影響力を受けることになるのは確定だにゃー」

「お姉さんたちはね、この世界を一つにまとめたいの。

様々な主義主張の柵が入り乱れ混じっている今の世界から柵を取り去って、

ローマ正教という一本の柱を中心として一つの方向へと導く」

「そんなの、多数決の原理の名のもとに少数意見を踏みにじって台頭してるだけじゃねえか!!!」

「そうかもしれないわね。でも、そこには争いも憎しみも、踏みにじられた人の恨みも1塵の失敗さえもない。

素晴らしい世界だとは思わないかしら?」

「失敗、か。もしもよ、自分のやることなすことすべての正解を教えるものがいたとしたら、

そいつを選ぶことは正しいことなのか?」

「そうよ。そんな都合のいい存在がいたならば、私はこの世界のすべてを託すわ」

「そうか。でも、そいつの言っていることは本当に正しいことなのか?

結局そいつを選ぶか選ばないかは自分の判断なんだろうう?

この世界全てを託すような決断だって、結局は自分自身でしか決められないんだ。

人に任せたってなんにも解決しねぇ。結局毎回毎回自分で決めていくしかないんだよ!!!」

「でも!雑多である限り、自分が正しいと思ってしたことも失敗に終わるかもしれないじゃない!」

「だったら、失敗してもまたやり直せばいいだろ!

失敗した先を救い続ける覚悟もないのに、軽々しく世界を一つにするなんて言うな!」

そのトリガーをきっかけとして、オリアナ=トムソンが崩れ落ちた。

勝利を祝うように花火ようなの小さな音がしたがそれに気付くものはいなかった。

素早く上条が体を掴む。

オリアナを確保した後、一匹の猫が駆け寄ってきた。

上条は土御門に使徒十字について早急に調査するようお願いしている。

実は、これは半ば確定した事象なのだが、上条がそのことを知る由はない。

オリアナのことをステイルと土御門に任せ、ドラえもんと話すために人のいないところへと移動する。

「なぁ、お前は俺の敵か?味方か?」

「僕は、君を助けるために来た猫型ロボットだ。君を傷つけるつもりはさらさらないよ」

「そっか、なんだか少し安心した。安心したら喉渇いたな・・・・・」

「水でも飲むかい?"どこでも蛇口"~」

お腹から蛇口の取っ手だけを取り出し、近くにあった取っ手へ器用に取り付けた。

更にコップを取り出して蛇口をひねると水源にはつながっていないはずなのに水が流れ出てコップを満たす。

「お前はまったく、この世の理ってものに少しは従ったらどうなんだ?」

そんなことを言いながら渡されたコップの水を飲みほした。

「リドヴィアの居場所、分かるか?」

「もちろん探すことはできなくもないけど、今は情報を集める方が先じゃないかな?

ステイル君や土御門君はなぜ君があの霊装の正しい名前を知っていたのか気になっているはずだよ。

これ以上君が情報を渡したりしたら不審に思われてしまう」

「それもそうだな。あのメール、いったいなんて書いてあったっけ」

上条がメールを確認しようと携帯を開くと電池残量の警告が表示された。

「・・・やべっ、携帯の充電あと5パーしかないじゃん!

おかしいな、開会式の時は45パーあったし、5パーで1時間は持つはずなんだけどな・・・?

ドラえもん、持って帰って充電しといてくれないか?」

「オッケ~」

そう言い残してドラえもんは携帯をポケットにしまい、

上条の肩からぬるりとした動きで地面へ降りて上条の寮へと帰って行った。

「さてと、とにかく土御門たちと近くを探すしかないよな」

彼らと合流すると、シェリー=クロムウェルと電話していたところだった。

『あ゛ぁ゛?使徒十字(クローチェディピエトロ)って霊装について調べろだ?こっちはさっき上からそれについて調べるように言われたのよ!?

上はもっとちゃんと連絡しろや!!あとオルソラ!そこでマフィン食うんじゃないって言ってるでしょ!

あーっボロボロこぼれてる!食べながら話すな!!』

なんだか罵声が聞こえたりステイルのぼやきが聞こえたりしている気がするが上条は気にしないことにする。

 

午後3時ごろ

上条は土御門たちとともにいた。お昼ご飯を食べているときに

御坂家の襲撃にあったり、御坂美琴の母親である御坂美鈴が

御坂妹を普通に受け入れているのを見て美琴が驚愕したり、

一緒にご飯を食べていたドラえもんを問い詰めたりと

それはそれは混沌とした形相になっていたのはかふぇにいた者しか知らない。

「家族写真もなぜか御坂家と一緒になってるし。御坂と共有したらなぜか赤面するし一体どうなってんだかな」

ちなみに携帯電話はお昼ご飯の時に取り急ぎ30パー位充電した状態でドラえもんが持ってきてくれた。

「にゃー、カミやんも罪な男ぜよ。それじゃ、本題行くニャー。

オルソラから送られてきたメールを転送してくれ」

上条が携帯電話を操作すると2人へメールが転送された。

このメールはついさっき上条の携帯に送られてきたものだった。

(イギリス清教の誰かを通じて俺のメールアドレスを知ったんだろうが、土御門と間違えるとは・・・

今朝も来たし間違いすぎじゃないか?インデックスならこんなミスはしないんだろうけど。

てか今度はいったい何のメールなんだ?登録外からのメールの内容は表示しない設定らしいけど、

オルソラは電話帳に登録しとこうかな。)

そんなことを思いながらポチポチとすると3人でメールが共有される。

「どうだ?何か分かったか?」

「あまりよく分からないな。どうにも使徒十字(クローチェディピエトロ)は光に関係するようだが・・・」

「だったら、日陰は除外できるな。土御門は何か分かることないか?」

「光、ホロスコープ、都市支配という大規模な効果・・・・まさか、星座か?」

「星座?」

「君は知らないだろうが、魔術において星座というのは大きな意味を持つ。

単純な平面図形ではあるが、何分巨大なのでね」

「平面図形って・・・星座は星を頂点につないだものでもないし星の配置は立体的なはずなんだがな」

「カミやん、魔術における星座は物理における星座と違って、

天球上に見える星をつないだ図形その物なんぜよ。カミやんの言う心配は特に気にしなくていい」

「しかし、だ。

星の配置は使徒十字(クローチェディピエトロ)が最初に使われた時と同じでなければならないんじゃないか」

「その通りだ。使徒十字(クローチェディピエトロ)が最初に使われた時と今日の夜空で一致する星座は、

天頂付近及び西方向の一部の星座のみ。おそらく、その辺にトリックがあると思われる」

「そうか・・・じゃあ、少なくとも西側に開けているとこという条件はあるんだな。

それだけ分かったら、地図アプリで虱潰しに調べれば良さそうだ」

「日没まであと3時間半・・・・ギリギリ行けそうだ。カミやん、地図で条件に当てはまるところを出せ。

ただし、大覇星祭の侵入可能区間のみだ。他は警備員や風紀委員が警備しているから、可能性は低い。

敵は少なくとも学園都市の機能を奪う機出るとみていいだろう。

だから、調べたら中心に近く行政区画が集中する第1、第5、第7学区及び学園都市中心部から優先して捜索だ」

 

1時間半後

「結局どこにもリドヴィアはいないじゃないか!」

そもそも学園都市には大量の高層ビル群が存在しており、条件に当てはまる場所がもとから少ないのだ。

一番苦労したのは第23学区だったが、

土御門が謎のコネを利用して監視カメラの映像を横流ししてくれたので確認は早かった。

「まさか、 外 か?」

「まさかな。だがそうだとしたら、相当厄介だぞ。こちらから向こうの居場所を特定できない。

オリアナの通信術式から分析しようとしたんだが、

あの戦いが終わった後どこを探しても速記原典(ショートハンド)が出てこないんだ」

「(こうなったら、しかたがないか・・・)・・・・2人とも、ここは俺に任せてくれないか?」

「いったいどうする気だ?」

上条の意外な発言に魔術師たちは当惑する。

「ちょっくら俺が言って解決してくる。土御門がやったように、俺にも変なコネがあるんだよ」

 

30分後、電話して呼び出したところにドラえもんがやってきた。

「なぁ、やっぱり場所を特定するのを手伝ってくれないか?」

「まぁ、ここまで自分たちの力で頑張ったんだ。あとは僕に任せなよ」

そういってドラえもんはポケットからピンクのドアを取り出した。

「さぁ、リドヴィアの居場所へ!」

上条がドアを開くとそこは東西に広い廃飛行場のようなところだった。

が、ドアをくぐって見渡しても周りににリドヴィアはいない。

あちゃーという声が背後から聞こえ、ドラえもんが上条に下を見るように促す。

そこには白い修道服を着た女性が鼻血を流して倒れ込んでいたのだ。

どうやら突如目の前に出現したドアが開いて顔面を強打したらしい。

彼女の傍に大理石のようなものでできた1メートルはあろうかという十字架があったので

とりあえず右手で触ってみるとパキンという効果音とともに真っ二つになってしまった。

どうしようもないので十字架をドラえもんに運んでもらい、自分はリドヴィアを負ぶう。

もう一度"どこでもドア"で学園都市までもどってステイルたちの所まで連れて行く途中、

リドヴィアが目を覚ました。

「ここは・・・・・・?――んっ!離れろ!異教の猿がっ!」

//本人はイタリア語で話していますが"ほんやくコンニャク"のおかげで上条には普通に聞こえています。

「まったく、顔の手当てしてやったのはこっちなんだぞ?」

「手当?はっ、使徒十字(クローチェディピエトロ)使徒十字(クローチェディピエトロ)は!?」

「壊したよ。俺が右手で触ったらな、真っ二つに折れてこの通りだ」

折れた使徒十字(クローチェディピエトロ)をドラえもんが無言で差し出すと、

リドヴィアは意気消沈といった様子で上条の背中にうなだれる。

「これでは、これでは、救済ができない・・・・・救済、救済――――――」

「なぁ、救済っていったい誰を救済するつもりだったんだ?

そもそもなんでこんなことを始めようと思ったんだ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私がバチカンにいたとき、とある日本人男性に出会いました。

その時、悩みの相談を受けたのです。その悩みは、自分の息子が不運すぎて心配であるというものでした。

もともと私は学園都市を攻め落とすつもりでいましたので。

これを受けて、戦略を変えました。攻城から、救済へと。

使徒十字(クローチェディピエトロ)が破壊された今、救済の手段がなくなってしまいましたので。お土産が効いているとよいのですが」

「なぁ、その日本人て、もしかしてこういうやつか?」

そういうと、上条は自分の携帯を左手で操作し、先ほど撮った写真を画面に表示する。

「そう、その方です――まさか!?」

写真に写っている人物を見てリドヴィアは驚愕する。

そこに写っていたのは上条当麻と――その父親、上条刀夜を含む家族だった。

「俺は今、すっげー不運だけど、それでも同じくらい幸せだ。

人の幸不幸なんて、勝手に決めつけていいいようなもんじゃねぇ。

人から又聞きした情報からならなおさらだ」

ロリドヴィアは言葉に詰まり、ただ連れて行かれるのみだった。

 

午後5時。

上条はインデックスに噛みつかれていた。

今朝御坂に首を引かれて頭ではなく頬に噛みついてしまったショックから立ち直ったらしく、

もはやお決まりの光景となっている。

その後リドヴィアとオリアナをステイルたちに任せ、ぎりぎり今日の最終種目に間に合いそうだったのだが・・・。

「お腹すいたんだよとうま!いったいどこに行っていたのかな!?スフィンクスもちょくちょく抜け出していたしインデックスはとっても寂しかったんだよ!競技に参加してないってこもえからとうまのこときかれるしみことからとうまとの関係について言及されるしこうなったらとうまの頭をかみ砕いて今日のおやつにしてやるもんねーっだ!!」

「うわぁー、痛い、痛いぞ!噛みつきから咀嚼にまで急速進化した攻撃を喰らわせるのはやめてくれほんとごめんインデックスさん~!」

上条の叫びがひとしきり響き渡ったあと、

歯形の付いた上条は父さんと母さんに電話する必要があることを思いだした。

あ、父さんたちに電話しなきゃ!・・・・・・・・電話がねぇ~!」

「まったく仕方がないなぁ・・・・"取り寄せバッグ"~」

スフィンクスがお腹から女物のカバンを取り出し、上条に携帯を思い浮かべつつ手を入れるように要求する。

が、手を突っ込んで触れる感触は携帯電話の固い感触ではなくフニフニとした感触で、

なぜか突然例の音がしたかと思うと黒こげの壊れた携帯電話がカバンから飛び出してきた。

なぜかその後御坂と御坂妹からひどく怒られることになったのだが、一体どういうことか上条は知ることもない。

「まぁまぁ当麻くん、君のおかげで特別なものも手に入ったしよかったよかった」

「何が手に入ったんだ?」

「ふっふっふ、大覇星祭期間限定選手応援どら焼きだよ!秋の味覚の芋餡が入ってるんだ~!」

紙袋をひけらかすドラえもんに

お前は俺を走りまわしといてそんなことしてたのか―!という上条の心の叫びが伝わることはない。




今回のひみつ道具はこの道通りゃんせチャートでした。
えらい長くなりましたね。誤字・時系列のミスがあったら教えてください。
ホントは年末にはもう前の方が書けていて、年明けに投稿するつもりだったのですが
家族の用事で書くことができず申し訳ありませんでした。
あと速記原典はいろいろ遊べていいですね。
とりあえずオリジナルの魔術を一つ。あと真空刃について考えてみました。

今回のひみつ道具
"この道通りゃんせチャート"
部屋の壁一面ほどの巨大な地図。
範囲は指定でき、黒い"障害チップ"をチップセットすると逃亡者は白いチップで、
追っ手や邪魔者は黒いチップで地図上の位置をバレバレにされてしまう。
"チップストッパー"
水切りのような形をした道具。
"この道通りゃんせチャート"上の"障害チップ"を引き留めることができ、
チップが引き留められると対応する人も追跡を妨害される。
妨害のされ方はドラえもんいわく「荒っぽい」。
"切り替え式タイムスコープ"
未来を見ることができる望遠鏡のようなひみつ道具。
上のレバーを切り替えることによって
自分が行動を変えたときの結果も知ることができる。
その通りに行動すればその未来にたどり着く。
"タイムマシン"
絨毯のような力場発生シートに机くらいの操縦装置、
赤い椅子と各種レバーにエネルギータンクと
アンテナのような部品などで構成されているタイムマシン。
時間を行き来するための時空間航行機能と空間を移動するための空間移動機能がある。
"もしもボックス"
電話ボックスの形をしたおなじみの並行世界移動装置。
受話器を取ると上のメーターが動き始め、
メーターが反転するまでにいきたい世界の内容を言うと
ジリリン、ジリリンという音ともに望んだ世界へ移動することができる。
必要な世界が存在しない場合空いている世界に世界を作る機能もある。
元居た世界に戻りたいときは同じ手順で元に戻れと言えばよい。
"ほんやくコンニャク"
一口齧ればあらゆる言語を理解できるようになるおなじみのコンニャク。
自分が話す言葉は相手に応じてその言語に自動で翻訳されて聞こえ、
書いた文字は読み手の言語で書かれているように見えるようになる。
"どこでも蛇口"
壁などどこでも取り付けて蛇口をひねると水がいくらでも出てくる。
"取り寄せバッグ"
必要なものを思い浮かべながら手を突っ込むと
空間を歪めてカバンの中がその物の近くにつながるおなじみのカバン。
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