上条当麻は学生である。夏休みには課題が出る。
しかし上寿当麻は夏休みの半ば以前の記憶の記憶を失っていた。
つまるところ夏休み課題の存在を8月31日になってようやく思い出し焦る羽目に陥っている。
上条当麻は居候のおかげで個室サロンを貸切ることができて、そこで缶詰になっていた。
そしてこの夏休み最終日にはもう一人の
彼の名は
今は風化され、能力名で呼ばれることの方が多くなっていた。
そして彼は、荒らされた部屋で侵入者とともに眠りについていた。
小さな侵入者は
少女は薄水色の毛布に身をくるみ、大テーブルの上に寝ていた。
一方通行は
もっとも、上条当麻の介入により実験中に
今は学校をさぼっている生徒でしかないのだが。
負けるはずのない戦いに敗北したことで一方通行の
今でも学園都市最強を誇り、序列でも第1位である。
午前8時
「とりあえず数学、やっと終わった・・・まったく、1小問80題で21小問なんて多すぎだろ!
数学の先生、終わること考えてないわー」
「そういえばいくら疲れないとは言ってもお腹はすくんだよなー。
とりあえずなんか朝ごはんでも食べに行くか・・・」
個室サロンの中にドラえもんが用意していたメモによると『"プッシュドア"に君の寮を登録しておいたよ』
とのことらしい。見れば個室のドアに変な機械が取り付けてある。これが"プッシュドア"らしい。
機械に一つだけついているいかにもなボタンを押してドアを開くと学生寮のお風呂についた。
「インデックス、ちょっと出かけてくるぞー」
「あ、とうま、帰りにアイス飼ってきてほしいかも!」
「はいはい、お金が余ってればね」
インデックスと呼ばれた少女は陶磁器のような修道服をきてテレビにかぶりついていた。
普段の様子からして物理的にかぶりついてもおかしくはないが、比喩的にアニメに夢中である。
学生寮を出るといつもの二人がいた。
「ようカミやん、どうしたんや?」
「今日は8月31日だぜい?カミやんのことだから宿題と交戦してるんじゃないかにゃー」
「よくわかったなあこの野郎ああこの幻想を打ち壊してぇ!」
そのまま3人はとある学園の学生寮まで歩いた。
「お、ここはかの名門、常盤台の学生寮やないかい」
「そうだぜい。俺の妹の舞春がメイドやってるとこでもあるにゃー。やっぱ妹×メイドが最高なんですたい!」
「まったくお前ら、俺が宿題と格闘してんの分かってるのか?居候にしてもお前らにしてもほんとに頼りがいのないこと」
「まぁまぁカミやん、その居候は精力剤くれたらしいにゃー?」
「ただ眠くなくなるものの何が精力剤だ!」
「ていうかカミやん、夏休みにいろいろラブコメ的イベントあったらしいやないかい?
ここの子を手籠めにしたらしいしなあ」
「なわけあるか!この二次元星人め」
「はぁ?虹だけじゃないでぇ。ボクぁ落下型ヒロインのみならず、義姉義妹義母義娘双子未亡人先輩後輩同級生女教師幼なじみお嬢様金髪黒髪茶髪銀髪ロングヘアセミロングショートヘアボブ縦ロールストレートツインテールポニーテールお下げ三つ編み二つ縛りウェーブくせっ毛アホ毛セーラーブレザー体操服柔道着弓道着保母さん看護婦さんメイドさん婦警さん巫女さんシスターさん軍人さん秘書さんロリショタツンデレチアガールスチュワーデスウェイトレス白ゴス黒ゴスチャイナドレス病弱アルビノ電波系妄想癖二重人格女王様お姫様ニーソックスガーターベルト男装の麗人メガネ目隠し眼帯包帯スクール水着ワンピース水着ビキニ水着スリングショット水着バカ水着人外幽霊獣耳娘まであらゆる女性を3次元で迎え入れる包容力を持ってるんよ?」
「いやいや何を言う青ピ。妹一本こそがただしい道というのをいまだ理解してないみたいニャー。
家の舞春に勝る女性なんて考えられないぜい」
「お前らもう帰れよ!」
そんな3人を見る者がいた。
(・・・海原から逃れるためにはこれしかないっか・・・)
「ごめーん、待ったー?」
(くっそリア充め!爆発しろっ!)
「待ったー?って言ってんでしょうが無視すんなやゴラァアアアア!」
「突然後ろから女の子がぶつかってきた!?
カミやん、突撃系ヒロインなんて新しい属性を発掘するとは・・・恐ろしいんやで」
午前10時前。上条当麻と御坂美琴はホットドッグ屋に並んでいた。
「まったく、もう朝ごはんかお昼ご飯か分かんねぇなこれ」
「あら?私からのもらいものなんだからもっと喜びなさいよ!」
「はいはい、美琴センせーのお恵みありがとうございます」
「それに・・・代役とはいえデートなんだから!もっと恋人らしいことでもしなさい」
「こ、恋人らしいこと?そんなの付き合ったことのない人にはわかりませんのことよ?」
「いいから!」
二人はまだ知らない。恋人という公理から明確な定義を求めることの難しさを。
「ともかくホットドッグも買ったことだしそこのベンチででも食べよう」
「そ、そうね」
簡易的な机といすに座る。
座面裏の表示によればマイクロオゾンバブル封入の紫外線対策された学園都市モデルらしいが
緊張に凝り固まった二人にそんなことを考える余裕などない。
「ん、んーと、そういえば妹はどうしたんだ?元気にやってる?」
「あ、うちの学校に入学して元気にやってるわよ。ただ・・・」
「ただ?」
「アンタも見たでしょ?あの後輩。毎日毎日あの子にちょっかい出してて・・・。
あの子もあの子で素直すぎるのよねー。毎回止めに入る私の身にもなれっての」
あの子というのは妹達のことだ。ただし今は全員が合体して御坂の双子の妹として
常盤台中学校にlevel4で入学している。
自身の中に丸っとミサカネットワークを取り込んだために
かけられる電圧は美琴の100分の1にも満たないが、
出力電流は10000倍近くなって致死量の数十倍にも及ぶ電流を流せたり、
最終信号との通信能力を持っていたりすることとも合わさって常盤台第2の電撃姫となっている。
「そうか。あいつが普通の生活に戻れてよかった」
(ってかデート中にほかの女の話をする恋人っているのかしら)
この後ホットドッグ取り換えっこ詐欺に合ったり古文を教えてもらったりした上条は、
御坂がハンバーガを買いに行っている間に当の海原光貴と話すことになる。
「ですから、御坂さんは人への行為と敵意を区別すべきだと思うんですよ。
出ないと敵に同乗して不意打ちに合うなんてことになりかねません――あ、その答えは③ですよ」
「とはいってもなぁ、あいつは優しい奴だし・・・。どっちかに決めるなんて難しいんじゃねぇの?」
「その優しさが人を気づつけることだってあり得るんですよ。あ、そこは②が答えです」
「サンキュ。・・・あれ?」
「どうかしましたか?」
「さっきの店にお前とよく似た人が入って言った気がしたんだ。多分気のせいだと思うけどな」
「本当に気のせいですか?この町には
「それもそうだな。御坂なら自分で何とかできそうな気もするけど、念のため様子を見てくるよ」
御坂の様子を見るために席を立つ上条、その姿を海原は後ろから見ているはずだった。
「ぐはっ・・・う、うっ」
「どうにも人をだますのは苦手ですね」
海原光貴は上条の背中に刃物の柄で突を入れていた。
「な、にするんんだ・・・」
「それはこちらの台詞です。あなた、自分がなにをしたのかわかっているのですか?」
「は、ぁ?」
「とぼけないでください。夏休みの間だけで4つも問題に対面して、さらに解決しているじゃないですか。
これだけのことをしておいてその言い方は許せませんね」
「まて、それはおれだけのちからじゃな」
「えぇ、そうです。あなたを中心として上条勢力が形成されつつある。上はそれを危惧したんです」
「上?背後に誰かい゛っ」
さらに肺の中身を吐き出させるように攻撃を加えてくる。
「何もかも、その異能消しの右手がいけないんですよ。どんな異能でも消し飛ばすんですから」
「ごふっ・・・」
午前10時30分
海原から逃げて路地裏までやってきた上条当麻のもとにあるものが飛来した。
「うぉっ、魔術を使ってくるなんて反則だぞ!」
「はぁ?私はまだ変装術しか使っていませんがっ・・・」
「後ろだ後ろ!」
「そういわれて振り向く人がいますか」
上条は海原の体術をすんでのところでかわし強制的に視線を背後に移すため、
海原の背後に右手を突き出しつつ回ると、そこにそれは上条の右手が刺さった状態でいた。
「は?」
あまりのことに両者は疑問符を浮かべることしかできない。
何せ、上条当麻の右手があからさまな異能に直接触れているのになにもおきないのだから。
そこにはお化けがいた。
「これお前の魔術じゃねぇのかよ!」
「し、死霊術は専門ではないのですが・・・。魔術でなくとも異能に違いはないでしょう、なぜ消えないんです」
お化けはうらめしげなうめき声を出している。
「シュクダイヲヤレェ・・・」
「ひぃいいいい、追ってきたぁー!」
「助けてくれぇ―!!」
もはやどちらのものとも思えぬ悲鳴がこだまし、彼らは路地裏から逃げ出すことになる。
午前11時30分
「ゼー、ゼー、ゼー・・・」
「はっはっ、はっはぁ・・・」
建設現場に逃げ込んだ二人はお化けに追いつかれるももはや逃げる体力すら残っていなかった。
「な、なぁ、お前の魔術で何とかならねぇの?これ」
「いえ、私が今持っている霊装ではとても太刀打ちできませんよ・・・。
あなたの
「俺にできることなんて数少ねぇよ。ちょっと電撃を消したりできるくらいさ。
電撃といえば・・・お前、御坂のこと好きなのか?」
「・・えぇ、そうです。でも、いつかは襲わなければならない対象のリストにあるんですよね・・・。
もしそんなことになったら、彼女を私から守ってくれますか?」
「そんな暗い未来ばかり見やがって。お前にだってできることはまだあるぞ!
たとえば・・・俺のことを過小評価したうえで上に報告する。幻想殺しは幽霊一つ殺せない弱い能力だってな。
そうすれば、いくら俺が広い交友関係を持っていたって当人が何の力も持たない空問題はないはずだろう?」
「なるほど・・・現に今幽霊にとりつかれていますしね。論争の証拠としては十分です。
まさか、になろうとはね。」
「ということは、あきらめてくれるのか?」
「あきらめはしないでしょう。上があなたの注目を受けていることに変わりはないはずです。
もしかしたら、自分やほかの者がまたあなたの周りの世界を壊しに来るかもしれない。
もちろん自分もそういうことにならないよう、努力はします。でももう一度問いておきます。
それでもまたこんな事態になったら、彼女を守ってくれますか?」
上条は黙って彼の問いを受ける。しかしその答えは疾うに決まっていた。
「いつでも、どこでも、誰からでも、、何度でも。このようなことになるたびに、
まるで都合のいいヒーローのように駆けつけて彼女を守ってくれると、約束してくれますか」
上条は決めていた答えを示す。
たとえ彼に幻想殺しがなくとも、たとえ彼に記憶があっても、この答えは変わらなかっただろう。
そんな二人を見つめる影がお化けのほかにあったのは内緒の話。
午後3時15分
上条当麻は個室サロンにこもっていた。お化け付きで。
「あぁーもう、mol計算なんか分かるかよっ!何なんですかぁ?勝手に溶液の量何か指定していいんですか!」
ギロリ、とお化けが睨む。
(おちおちトイレもいけない・・・全くこいつは何なんだ・・・はぁ、不幸だ)
午後5時30分
魔術師・闇咲逢魔はとある学生寮の前に立っていた。
「ここか」
右手に装着された特殊な梓弓を操作する。籠手の操作だけで弦を引けるからくり付きだ。
「風魔の弦」
そう呟いて弓を撃つ。弦が空気をかき鳴らす音が響くと、その場にずんぐりむっくりとした風の渦が生じた。
目も開けずに飛び乗ると、そのまま7階まで上昇する。
「衝打の弦」
もう一度惹かれた減が響かせる音とともに、見えない鉄球のような衝撃波がガラス窓へ一直線に伸びる。
しかし、ガギンッという鉄が裂けるような音とともに衝撃波が弾かれた。
闇咲は異常事態に若干取り乱すものの、平常を保ち中を確認しようとする。
一瞬でカーテンが閉まったものの透明なガラス窓の中に人はいなかった。
念のため見えない部屋も確認しようとしたが、さらなる異常事態によってそれは阻まれた。
ベランダに置いてあった物干し竿がまるで意思を持った槍のように闇咲にまっすぐ向かってくる。
ハンガーが飛んだかと思えばさす叉を思わせる動きで飛んできた。
あっという間に洗濯用具に包囲された闇咲はそれ以上の詮索をあきらめ地上に降りた。
洗濯用具たちもそれ以上追撃を加えてくることはなかった。
「ふむ、食事にでも出かけたか」
もう一度籠手を操作して弓を引く。その音は第7学区中に響き渡った。
「捜魔の弦」
拡散する音は反射を繰り返し、やがて闇咲の元へ戻ってくる。
なぜか学生寮内を除く、学区中の情報を持って。
10分前
「ただいまー」
「おうドラえもん、お帰り」
「お、ちゃんと見張ってくれてるね。えらいえらい」
「・・・は?今なんつった?」
「『えらいえらい』」
「その前だ!」
「『お、ちゃんと見張ってくれてるね。』」
「お前かこのお化けの犯人は!」
「え、えぇと怒ってる?」
「このドラ猫タヌキ―!」
ドラえもんに馬乗りになった上条がほっぺをもって左右に引っ張るともちのように伸びた。
「ほふはふひほへひふー(僕はタヌキじゃない―)! うにょーん」
「まったく、早くなんとかしてくれよ、おちおちトイレもいけやしない」
「僕がいないときっとさぼるから見張りとして置いておいたのに」
ブツクサ言いながらもドラえもんは置時計のようなものを操作する。
いくつか操作すると上条に散りついていたお化けがウソのように消えた。
「はー、たすかったー」
「どのくらい進んだ?」
「あと4分の1ってとこだな。海原や御坂が手伝ってくれたおかげでだいぶ進んだよ」
「そりゃあよかった。そろそろ晩ご飯でも食べに行かないかい?インデックスもお腹を空かせているころじゃないかな」
「それもそうだな。インデックス―?」
"プッシュドア"で学生寮に行くとインデックスはまだカナミンを見ていた。
「なるほどッ、この
「(いや魔法少女にはまりすぎだろこの
「!? わぁーい!やったー!」
「"プッシュドア"に新しいボタンを挿してっと」
「んじゃ、牛丼屋でも行きますか。待ち時間に読書感想文でも書きますかね」
午後6時10分
「はぁ、不幸だ・・・」
上条当麻の目の前には大盛りの白米があった。
「げ、元気出しなよ。3枚はちゃんと書いたんだから僕がきれいにしてあげるからさ」
すみませんすみませんと横で頭を下げまくってるウェイトレスをよそ眼に上条は掘削作業を開始した。
お詫びにご飯代は半額にしてくれるらしいがそんなもので安らぐ気分ではなかった。
上条たちはボックス席に座っていた。
目の前では再び運ばれてきた定食2人前をインデックスがバクバク口に運んでいる。
何となく窓の外に目をやるとスーツの大男がこちらを見ていた。
学園都市にも少ないものの大人もいるので別段珍しくない。
(やっぱこの大食いシスターとわけわからん何かを連れてるとこ、目立つよなぁ」
男が右手を上げると上条はギョっとした。右手の先には意味の分からない弓が取り付けられている。
上条の本能が警鐘を打ち鳴らす。
「やべっ」
とっさに右手を掲げると同時、男が弓を引く。
衝撃波のような何かでガラスが割れ、何かはまっすぐ上条の右手に向かって進む。
右手に触れた途端何かはガラスのように砕け散ったが、後から来た風でそこらの物が宙を舞っていた。
「透魔の弦」
さらに弓を弾くと大男の姿が見えなくなった。砕け散ったガラスが部分的に音を立てていることから
こちらに歩み寄っているらしい。大男は急に上条の背後へ姿を現す。
「先ほどから異常事態続きだがこれはいい方に転んだな。お前、この子は借りていくぞ」
「おぉいお前!何てことしてくれたんだ!
もうこれじゃあ上条さんの課題読めないどころか見つけられもしないじゃないですか!」
「知ったことか。透魔の弦」
もう一度弓を弾くと今度はインデックスごと姿が消えた。どうやら外に出たらしい。
町行く人が何事かという様子で覘きこんだり、透明な何かにぶつかって悲鳴を上げたりしている。
「くっそ、ぜってぇ許さんぞ!おーいドラえもん!」
呼ばれた本人はというと・・・椅子と一緒にほかの席まで吹っ飛んでいた。
慌てて引っ張り出すと背後に異様な圧力を感じる。
「君、ちょっとこれどうしてくれるんだい」
そこにはいかにも怖い人っぽい男がエプロンを着て立っていた。胸元の名札には店長とある。
「ごめんなさい何とかしますから何とかしてくれよー!」
「まったく・・・。これは本人もどうしようもなかったんです。
壊れたものを修復したら許してもらえませんか」
「修理ってそんなことできるのか?」
「もちろんです」
ポケットから"復元光線"を取り出すと周囲一帯の物に当てる。
机や椅子をはじめとして、食器、食べ物、カバンやほかのお客の書類などにも当てていくと
すべてが元通りの状態となった。
「いやーこれは驚いた。君すごい能力持ってるね。ちゃんとご飯代払ってくれたら見逃してあげるよ」
「はいっ! ほら当麻くん、払って払って」
「あ、え、ぇーと財布財布・・・」
こうして無事お店を出ることができた上条たちはインデックスの追跡に向かう。
「なあ、これからどうする?」
「"強力匂い追跡鼻"~!これをつけてインデックスちゃんのにおいをたどろう!」
箸のにおいを利用してまるで警察犬のようにインデックスのにおいを追跡する。
何と追跡した先にあったのは上条が利用していた個人サロンだった。
午後7時
「なかなか早い到着だな」
「インデックスを放せ!」
「それは困る。私はどうしてもある魔導書を必要としているのだ」
「魔導書なんかに手を出してもろくなことにならないんだよ!やめるんだよ!」
「悪いというのか。たとえこの身を呈してでも私はそれを手に入れなければならん」
「お前、どうしてそんなに必死なんだよ。まったく、どいつもこいつも盲目的なんですか?」
「断じて違う。そう言い切らなければならん。断魔の弦!」
ビュンと音を立てて風の刃が向かうものすべてを蹴散らす。
しかし上条の右手によって空気の刃は叩き割られる。
魔術の頭脳、科学技術の結晶、よく分からない力の権化にかなうはずもなく
あっさりと闇咲は取り押さえられ、組み伏せられてしまった。
「なぁ、魔術師、いったい何でこんなことをしたんだ?こんなことになってからであれだけど、
俺たちでよかったら協力するぞ?」
「なぜ、そんな言葉を掛けられる?」
「仕返しさせてもらったからだ。インデックスが受けた苦しみはもう十分返した。
ここからは、お前の受けた苦しみを返す番だ」
「・・・ふん。私が手に入れようとしたのは抱朴子と呼ばれる魔導書だ。
そこの魔導書図書館ならこの意味が分かるだろう」
「抱朴子。中国文化における不老不死の方法を記した本。
とうまにも話した錬丹術について詳しく記載されている本だよ」
「不老不死ってお前、そんなものを目指していたのかよ」
「違うよとうま。錬丹術は確かに仙人を目指す学問でもあるけど、それによって得られる薬には
いかなる呪いや病をも解くという作用があるの。
あなた、助けたい人がいるんでしょう?きっとあなたはその人に恋をしているんじゃないかな?」
「な、なぜそれを・・・あ、あの女はそんな対象ではない!」
「わかるよ。こんなに恋心に鈍い人よりずっとわかりやすいんだよ」
「ようはその女の人を助ければいいんだな?」
「そんな簡単に言ってくれるが、そいつは死の呪いにかかっているんだぞ」
「だったらなおさら簡単だ。そいつにこの右手でちょっと触れるだけで済むんだからな。
アンタも見ただろう?この右手。異能の力ならどんなものだってたちどころに消してしまう。
たとえそれが
闇咲逢魔は涙していた。それがいったい何に対する涙なのかは分からない。
自身の諦めを恨む気持ちからか、突如現れた救済に対してか、はたまた彼女を思い出したからなのか。
しかしそれは誰にも分らず分からなくていいい。大切なのは彼女が救われたという事実のみ。
午後8時12分
一方通行は
ここは第7学区のはずれ、とある遺伝子研究のの前の空き地だ。
止まっているレクサスは廃墟に見合うかのように、タイヤはつぶれ半円形に、
左のフロントドアは無理な力でも加わってひしゃげていた。
彼は自分の体と能力を
ひしゃげたドアには天井亜雄が挟まっている。
彼は打ち止めの脳にウイルスを入力し、ミサカネットワークでつながっている他の妹達を
世界各地で暴れさせるテロの実行犯たる研究者である。
(よし、あと残り書き変えるべきコード数は23891)
「邪魔を・・・する・・・なっ」
戸に挟まっていたはずの天井亜雄がいつの間にか手を動かせるようになっており、拳銃を引き抜いていた。
狙いはもうついている。あとはこの手を放すだけだ。
残りコード数 16342
残りコード数 7001
天井亜雄の震える手が拳銃の引き金に掛けられた。
ゴムの伸びる音がする。
残りコード数 945
残りコード数 102
天井亜雄は極限状態にいた。逃げ出したいと思った。
パシュっという音がした。弾丸がついに発射されたらしい。弾着後、即座にそれは自身の機能を発揮する。
残りコード数 13
残りコード数 0
午後8時27分
天井亜雄は月を見上げていた。
体は動かない。視界の端で白いものが舞っているのが見える。
(あれは何だ?私はどうなった。・・・・・・・・・・生きている!あの学園都市第1位を相手して生きているぞ!)
「あら?お目覚めのようね。」
聞き覚えのある声が彼を包む。
「悪いけど、あなたは拘束させてもらったわ。
わたしが甘いだけかもしれないけど、目の前でひとに死んではもらいたくないもの」
「お前は・・・芳川桔梗・・・」
「えぇ、全く、楽しい経験をさせてもらったものよ。
人生でたった一度でも小さな子供のために奔走する先生のようなことができたのだから」
「お前が言う子供ってのはどっちのことだ」
「もちろん、両方よ」
ワゴン車の後ろからもう一つの人影が現れた。
「よォ三下、目覚めごごちはどうだァ?」
午後9時
撃つ直前、天井亜雄の襟首につけられた"いやなことヒューズ"によって
彼は気絶させられていた。
一方通行は無事にコードの書き換えを行い打ち止めを救うと、
彼を車の部品を利用して地面に完全に固定した。
芳川桔梗はそこへ乗り込んできたのだ。
「しっかしおまェも間抜けだなァ、撃つ時に気絶すったァ」
「そいつは私が責任をもって処理するから」
「あァ、死ぬよりひどい目に合わせてもらわないとせっかく生かしてやった
俺の気がすまねェからよォ、ちゃンとやってくれ。」
「ふふっ、まかせて」
「ひ、ひぃいいいいいいい」
夜の廃墟に一人の男の声がこだました。
同刻、廃墟の茂み
「さて、これで
そこにはドラえもんがいた。
"いやなことヒューズ"で狙い打ったのはもちろん彼だったのだ。
「さて、もう一度呪術師の所へ行かないと・・・」
午前0時3分
「やっと帰ってこれたぁー!でも宿題は絶望的だ・・・」
「そんなことはないよ!」
「とうま、がんばって。もう寝る・・・」
"プッシュドア"で女の人の所へ行き呪いを消した上条たちは
その足で呪術師の所へ行って更なる戦闘を繰り広げたのだ。
「"時間貯金箱"ー!これで時間を作ればいいさ。
特別に僕の24時間を使わせてあげるんだからちゃんと終わらせるんだぞ!」
「ははぁー!ドラ様―!」
彼らの長い夏休みがやっと終わる。
前回予告したひみつ道具は"お化けタイマー"と"いやなことヒューズ"でした。
寝落ちしてごめんなさい。
本来なら金曜日のうちに書き上げるはずだったのですがこんなことになってしまいました。お詫びします。
一万文字近くになりました。さすが主人公が多い。天井先生は更生させよう。
それから、6巻に関しては飛ばさせていただきます。
あまり介入の余地がないので・・・。
風斬、シェリー好きの方、重ねてお詫びします。
今回のひみつ道具。
"プッシュドア"
ドアに付けて使う道具で、ボタンが12個ついている。
任意のボタンを取り外し、裏に目的地を書いて戻すことで目的地が登録される。
普段はただボタンを押すだけで目的地とつながるためどこでもドアより手軽。
"お化けタイマー"
指定した時間になるとお化けが出てきて、事前に決めた仕事をする。
"復元光線"
壊れたものなどに当てると自動で修復、再構成して元通りになるようになるライト。
"強力匂い追跡鼻"
鼻に付けると、ものすごく嗅覚がよくなって
わずかな臭いでもたどって標的を見つけられる道具。嗅覚センサーの発展型。
"いやなことヒューズ"
襟元に付けておくと、いやなことがあったときに気絶するようになる。時間は15分間。
"必中ゴムパチンコ"
狙いをつけたところに必ず当たるパチンコ。