批判覚悟で書くしかねぇ!………止めて!批判しないで!作者の豆腐メンタルが壊れちゃう!!
作者は常に優しさを求めています(ヘタレ)
そんなこんなで始めよう!
彼は戦場を駆ける。手に握っているのは九五式軍刀であり、彼が傭兵を始めてからずっと使い続けてきた愛刀でもある。より実践向き且つ丈夫に作られたそれは長い月日を経て傷だらけであり、いつ刀身が折れてもおかしくない。しかしその軍刀は未だ妖しい光を刀身から放ち、衰えを訴える事はない。 彼はそんな相棒に頼もしさを感じながら、建物の陰から飛び出して一人の兵士に九五式軍刀を振るう。その兵士は突然の奇襲に反応しきれず、その手に持ったAK47の銃口を向ける間もなく首を斬られ絶命した。これで彼が殺したのは7人。数十人といる敵の一部でしかないが、彼にとってこんな状況は幾度もあった。故に彼は悲観することなく雇い主の為に敵を殺すのだ。
彼は斬り殺した兵士の持ち物であったAK47を回収し、マガジン内の残弾を確認してから兵士の懐を漁る。そして予備のマガジン一つを回収した後に再び走り出す。道中遭遇した兵士に容赦なく発砲し、マガジンが切れれば敵にマガジンを投げつけ、遮蔽物を上手く利用しながら予備のマガジンを装填して発砲する。弾が切れマガジンも切れれば未練なくAK47を鈍器代りにして敵を殴り殺し、時に凶弾に対する盾として扱い、ダメになれば即座に投げ捨てて九五式軍刀で斬りかかる。おおよそマトモとは思えぬ戦い方だが、これは彼の親代わりであり彼の傭兵としての師でもある男から教わった戦い方でもあった。
『使える物は何でも使え。身近にあるものは全て人殺しの道具だと思え』
それが彼が師より教わった戦い方であった。真っ向から戦う必要はない。武器を奪い取る方法なら幾つも叩き込まれた。そこら辺の石でも人は殺せる。何ならボールペン一本あれば一人は殺せるのだ。敵を殺せば武器は敵から手に入る。彼が殺す敵もまた人殺しなのだから。
彼が参戦している紛争、シリア内戦では彼以外にも雇われの傭兵が少しいる。現在は彼等と雇い主の元々の戦力である兵士と協力して事に当たっているが、彼はこの紛争は此方側の敗北であると悟っていた。先程から銃声が少なくなってきているのだ。これだけならば此方側が敵を押しているのでは?とも考えられるが、彼が合流地点に赴く度に合流する手筈だった味方達が合流先で死亡しているのだ。彼はそれに不信感を募らせていた。
先程から発見する味方の死体の殆どが雇い主の元々の戦力だった兵士達だ。彼以外に死んでいる傭兵の姿は一人二人、しかも死体の対面からして恐らく同士討ちであると彼は推測した。
「……裏切ったのか……」
彼は誰に言うわけでもなく、ただボソッと呟いた。別段無いことではない。雇い主よりも金払いが良ければ、傭兵としては敵に寝返ることも多々あるのだ。無論それを行えば元の雇い主からの信頼はがた落ちし、それが広まってしまえば傭兵の身としては非常に肩身が狭くなってしまう。あり大抵に言えば傭兵としての仕事が無くなるのだ。それでも腕が良ければ金を積んで雇う人間もいるものだ。それほどまでに傭兵としての戦力は大切なのである。
彼が雇い主の元へ仲間が裏切った事を伝えようと動き出した時、一人の味方兵士が汗だくになりながら走ってくるのが彼には見えた。見たところ傭兵ではないようだ。
「どうした?何があった?」
「う、裏切りが!貴方以外の傭兵達が裏切りました!!今すぐ本陣へお戻り下さい!敵本体が攻めこんで来ていて!!」
「っ!分かった!すぐに戻る!」
今回彼を雇った人物は彼が前に世話になった恩人であり、彼は今回の紛争で恩を返すために格安で雇われたのだ。そんな恩人の身が危ないとなれば彼が急いで本陣へ戻ろうとするのは仕方ない事であった。彼は傭兵としては人間らしすぎた。故に振り向き様に見える筈だった味方兵士の歪んだ笑みを見落としてしまった。
バンッ!
「がっ……はっ……」
後ろから聞こえた一発の銃声に反応出来ず彼の左胸から血飛沫が舞い、彼は力なくその場に倒れ伏せる。薄れゆく意識の中で瞳に映ったのは、下卑た笑いを浮かべながら拳銃をプラプラと弄ぶ味方兵士の顔だ。
「はっ!傭兵の癖にお人好し過ぎんだよ。そんなんで良く生き残ってきたもんだよな」
男は倒れ伏した彼の側に近寄ると、彼が腰に下げていた九五式軍刀をひったくり刀身を確認する。
「はん?未だに軍刀なんざ使ってる傭兵なんて古すぎるだろ。軍人気取りのド素人が!」
彼には男の言っている言葉が殆ど聞こえていなかったが、それでも必死に軍刀を取り返そうと手を伸ばす。しかしその手は満足に動くことは叶わず、空を切るだけだった。
「まぁいいさ。こいつは貰っていくぜ。マニアに売ればそこそこ金にはなるだろうしな。もうすぐ死ぬお前には必要ねぇだろ?ははは!」
男は死に体の彼に興味を失ったのか、ゴミを見るかのような視線を送った後にその場を去っていった。
彼は最後の力を振り絞って仰向けに転がり、ただ空を見つめる。
(俺が生まれた意味ってなんだったんだろうな)
彼は生まれながらに親に見捨てられ、気が付けば師が彼の親代わりになっていた。己の存在意義を見出だせず、半ば半死体のように生活していた彼の身を案じた師は彼に傭兵としての生き方を教えた。師にはそれ以外の生き方を教える事が出来なかった。師もまた彼と同じように傭兵としての生き方を教えられた者であった為だ。それでも彼の心の隙間を埋められるものになるようにと願いながら教えたのだ。
結果として彼は無事に傭兵となった。師から教えられた殺し方、生き残り方、傭兵としての知識を貪欲に吸収した彼は最早一個の兵器でもあった。そして彼が無事に傭兵として生きて行けるようにと師が彼にプレゼントしたのが九五式軍刀であった。彼はそれ以降、その軍刀を己の半身のように扱うようになった。例え誰もが彼を裏切ろうとも、その軍刀だけは決して彼を裏切ることはなかった。
そんな大切な物を最後の最後で、しかも味方の裏切りによって奪われてしまったのだ。それに師と約束した『己の存在意義を見つける』という約束も果す事が出来なくなってしまった。
(師匠……すまない……結局約束守れなかった……)
どんどん霞んでいく空を眺めながら、彼は死に逝く最後くらいは楽しい事でも考えようと模索する。そしてふと思い出した。彼が昔から好んで読んでいた神話の物語を。
何故彼が神話に興味を持ち、好き好んで本等を読み始めたのかは彼自身分からない。しかし神話を知ることで知的好奇心が満たされていたのもまた事実だった。
(まだ……知らない神話が沢山あるんだろうなぁ……)
願わくば、せめて夢の中で神話に関われる事を祈りながら。彼はそっと目を閉じ、己の生涯に幕を下ろした。
眩い光に当てられ、彼は目を覚ます。辺りを確認しようとすると、彼の視界いっぱいに映ったのはウサギの耳を生やした不可解な女性だった。
初めはね、三十二式軍刀甲にしようと思ったんだ。けどいつの間にか九五式軍刀にすり替わっていたんだ!!
(なお作者はキノが三十二式軍刀甲を持っている画像を見てビックリした模様)
でも九五式軍刀良いですよね。めっちゃ格好良いですやん。……欲しい。
そんなこんなで次回もゆるりとお待ちください。