咲き行く道に死戦あり   作:黒三葉サンダー

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今回は彼のポンコツ回……


傭兵、密航する

魔人大陸行きへの奴隷船の底で、壁に背を預け目を閉じる。俺自身船旅は嫌いではない。むしろ波に揺られる感覚は好きだと言える。

 

孤児院を出てから俺は魔人大陸行きへの奴隷船に無断無断で船乗していた。前にリュートと話していた商人が孤児院に来た時に腕利きの鍛冶屋を知らないか尋ねたところ、どうやら魔人大陸に腕の良い鍛冶師がいるらしいと聞いたので魔人大陸行きの船を探していたのだ。けれど魔人大陸に行くには船を乗り継ぎしていかなければならず、俺達がいた妖人大陸から魔人大陸へ直接向かう船はこの奴隷船しかなかった。手持ちの金では乗せていってはもらえないだろうから、船乗員の目を盗んで船底の奥で息を潜めている。幸い水は魔力で作れる為、食糧だけは時々忍び込んでほんの少しだけ拝借している。

この手の潜入は嫌と言うほど師匠に叩き込まれたので抜かりはない。最早それは傭兵のやることなのか?と師匠に問いただした頃が懐かしい。……まさか本当にやることになるとは思わなかったが。

だがこうしてのんびり船旅を満喫できるのであれば捨てたものではないなと思えるものだ。

 

この時にはまだあんな事になるとは思ってはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いたぞ!追え!」

 

「逃がすな!捕まえろ!」

 

「意外と速いな……」

 

森の中を駆け抜けながらそんなことを呟く。今追ってきている相手は二人、残りの10人弱は恐らく先回りしている可能性が高い。流石に魔人大陸の土地勘は無い為に此方が不利だ。

 

(はぁ……元はといえば俺のせいだが……)

 

魔人大陸に上陸後、こっそり抜け出す予定だった。幸い密航したときと同じルートの警備が手薄だった為そこから抜け出したのだが、その際に奴隷商人に連れられていた女奴隷に姿をガン見されたのだ。その様子に気付いた奴隷商人がそれを報告、俺を捕まえる為に警備隊がやって来て今に至る。

 

(だがあの女奴隷……どうやって俺の気配を察した?気配は完全に消していた筈だ。現に商人達や他の奴隷達には気付かれなかった。俺に気付いたのはあいつだけだ……)

 

何故かあの女奴隷をみて悍ましさを感じた。恐怖でも何でもない。ただただ不愉快だった。俺ではなくて、『俺ではない何か』を見ているかのようだった。奴には一体何が見えているのか。何にせよあの女奴隷には警戒レベルを上げておかなければならない。

 

「来たぞ!射て!」

 

「っ!」

 

考え事をしていた為に正面から飛来する大量の矢に気付くのが遅れ、矢が俺を射ぬかんと襲い来るがそれをギリギリでかわしていく。どうしても避けきれないものは手斧で叩き落としながら矢の雨を掻い潜る。現在の身体能力向上はBランクで行っているが充分のようだ。

 

「なんだあの動きは!?手練れか!?」

 

「馬鹿か!相手はどう見てもガキだろうが!運が良いだけだ!」

 

明らかに相手に動揺が走っているが、それは此方としては好都合。冷静さを欠いた攻撃ほど避けやすいものはない。そのままの勢いで弓兵隊に接近し、弓兵の体を盾にしながら駆け抜ける。彼等は同士討ちを避けるために迂闊に矢を射る事は出来ない為に容易く抜けることが出来た。

 

「っ!何をしている!相手はガキ一人だぞ!?」

 

「はえぇ!?Bクラス相当の魔術師か!」

 

「くそっ!逃げられるぞ、射て!射て!」

 

再び飛来する大量の矢を姿勢を低くして避ける。流石に背後の矢を避けるのは億劫なので荒い手段に出ることにした。

イメージするのはブーメラン。投げたら円を描きながら戻ってくるブーメランだ。そのイメージをしながら双斧に魔力を込める。魔力を込め終えた双斧を左右に投げ飛ばす。すると面白いように双斧はクルクルと左右に飛んでいき、周りの木々を切り倒しながら円を描くように手元に戻ってくる。それを上手くキャッチしたところで、斬り倒した木々が弓兵達を中心にして倒れていく。

 

「なっ!なんて出鱈目な!」

 

「に、逃げろ!散開しろぉぉ!」

 

「ぎゃあぁぁ!?」

 

 

 

自分でも惚れ惚れするくらいに上手く木々が相手を分断し、パニック状態に陥る。その隙をついて身体能力向上をB+ほど引き上げてその場を逃げ去る事に成功したのだった。

 

 

 




完璧超人だと思ったか?残念だが意外とポンコツな所は彼にもあるのだ。

次回はオリヒロイン回かなぁ……
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