咲き行く道に死戦あり   作:黒三葉サンダー

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たとえ低評価を付けられようとも、豆腐メンタルで乗り越えていきたいと思う。

いつかはこの作品のオリ主とオリキャラのイラストを書きたいものだ……(  ̄- ̄)ガリョクナイケド




傭兵、巻き込まれる

『フラウ・ヴァン・ドラクル』に身柄を買われるという非日常体験をした俺は現在、彼女の住まうドラクル邸にいる。最悪な事に腕を売り込むつもりがガッツリ買われてしまったのでむしろ俺が働いて返さなければいけない状況に追い込まれた。やはりこの大陸の女性には関わるべきではない。さっさと金を稼いで鍛冶屋で武器を揃えたい。だが、彼女に鍛冶屋の話をしたところ衝撃の事実が判明した。

 

「ん?鍛冶屋?……それは竜人大陸の方じゃないか?」

 

「なん……だと……」

 

そう、この大陸では無かったのだ。こんなことなら縛り上げてでも正しい情報を吐かせるべきだったと後悔した。やはり焦りすぎなのだろうか。だがどうにも在るべき場所に在るべき物がないと落ち着かないのだ。生まれ変わってもなおそれは変わらず、未だに満たされない毎日を過ごしている。

 

客室に案内された俺は赤いソファに腰を落ち着けると、彼女も対面のソファに座り足を組む。スカート越しに微かに見えているのだが、別段気にしていない様なので俺も気にしない事にした。するとメイドが二人ぶんの紅茶を運んできたので、彼女が「ありがとう」と言葉を掛けるとメイドは一礼して客室から出ていった。

 

「さて、それじゃあ改めて自己紹介しよう。私はフラウ・ヴァン・ドラクル。年齢は君と同じくらいの筈だから気軽にフラウと呼んでくれるといい」

 

「……俺はネヴァードールだ。親の顔も知らんし自分の本名すら正しいのか分からないが、取りあえずはネヴァードールという名前になっている」

 

「ネヴァードール……うん、じゃあ君の事は『ネリー』と呼ぶことにするよ」

 

「俺は不本意ながら買われた身だ。主人が猟犬をなんと呼ぼうと主人の勝手だ」

 

「おや?意外と従順だ。てっきり鎖を噛み千切ってでも逃げ出すか抵抗するかと思っていたんだが」

 

「本来ならそうしたいところだ……だが金が関係するのなら俺はそれを反故に出来ない。噛みつくにしても払うものを払った後だ」

 

「ほう……君は中々面白い考え方をするんだな。窮屈じゃないか?」

 

「それが仕事だからな。それにこれは約束でもあるからだ。そんなことよりもわざわざ俺を買った理由を言ってもらおうか」

 

「それはあの時に言った筈だよ。私は君が気に入ったから無理してでも買ったんだ」

 

「戯れ事は止めてもらおうか。面倒くさい手順を踏むのは好きじゃないんだ」

 

「……ふーん。どうしてそう思うのかな?」

 

「フラウ・ヴァン・ドラクル。あんたの情報を集める度にとある名前もちらほらと出てきた。『ビュルッケネン・ブラッド』と『ザナルディー・ブラッド』の二人の名前がな。流石にビュルッケネン・ブラッドの噂はよく聞いた」

 

ヴァンパイア族本家兼当主であるビュルッケネン・ブラッド。兄弟はラビノ・ブラッドとダン・ゲート・ブラッドの三人兄弟で、ビュルッケネン・ブラッドとラビノ・ブラッドの2名は三男のダン・ゲート・ブラッド伯爵に資産を追い抜かれた事を根に持っており戦争も仕掛けた事がある。最近ではザナルディーという魔術師を己の養子として迎え、自慢しまくっている。

ザナルディー・ブラッドに関してはまだ情報が少なかったが、取り敢えず分かったのは魔術師学校を首席で卒業するであろう魔術師ランクB+程の優秀な魔術師だということ。そして『フラウ・ヴァン・ドラクル』に対してゾッコンであるということだ。正直二つ目の話に関しては思わず鼻で笑ってしまった。

 

「どういった経緯で目を付けられたかは知らんが、面倒事を抱えているのだけは間違いない。そもヴァンパイア族の当主と養子に目をつけられている時点で面倒事の臭いしかしない。このタイミングで俺を買ったということは明らかに俺を利用するつもりなんだろう。どうやら俺の隠していた手斧も見つけていたみたいだしな」

 

そう、この女は俺の懐に潜り込んできた時に俺の装備を盗み見ていたのだ。それに気付いたのは警備兵が『手斧を装備している子供』というワードに対して何のリアクションも取らなかった時だ。普通なら手斧を装備している子供なんて聞いたら此方を警戒してくる筈だ。だがこいつは平然と俺の素顔を白昼に晒した。凶器を持っている相手にそんなことが出来るのは予めどんな装備かを知っている奴か余程馬鹿な奴かだろう。

恐らくだがこいつは実力はある。魔力量にしたってそこら辺の魔術師よりも比べ物にならない。そんな『化け物』クラスの魔術師なら手斧など何の驚異でもないだろう。故に可能性が高いのは前者だ。事実こいつの前に手斧を置いても「どうした?」としか言われなかった。

 

因みに、今は彼女は嬉しそうに此方を見ている。どうやら本当に面倒事になっているようだ。

 

「うん……うん!君を買って良かったと思うよ。そこまで理解してくれているのなら私としても有り難い」

 

先程まで嬉しそうにしていた彼女だが、コホンと咳を一回溢すと真面目な顔になった。これからが本番だろう。

 

「本題を話す前に私のことを、『ドラクル』のことを話しておこう」

 

彼女はすっかり冷めてしまった紅茶を一口飲んで顔をしかめるが、話を続けていく。

 

「元々は私もブラッド家の一人だった。本家とは離れた遠い親戚みたいなもので、 私の両親は少なからず本家であるビュルッケネン達と交流があったのさ。二人とも何とか本家に取り入ろうと画策していたみたいだが、必要最低限の交流しか出来ず方法を模索している時に私が生まれた。こう見えても私は魔術師としては恵まれているようで、魔術師としてのランクはSとされているんだ。けれどランクが高ければ高いほどやっかみは多くなる」

 

「……」

 

フラウの言葉には少なからず同感出来る。俺だって前までは孤児院で似たような境遇だった。

 

「詳しい事は言わないが、結果として魔術師学校でも私は孤立し、両親は私を使ってビュルッケネンに取り入ろうと画策し始めた。それが嫌になった私はブラッド家から離れて『ドラクル』と名乗るようになって、デザイナーをやり始めたんだ」

 

「デザイナー?」

 

「聞いたことはなかったかな。『ロザリア』というブランドなんだ」

 

「ロザリア……あぁ、あのゴスロリのブランドか……」

 

「ゴスロリ?」

 

「いや、こっちの話だ。確かに聞いたことはある。まさかあれを作ってるのが『フラウ・ヴァン・ドラクル』だとは思わなかったが、素人目から見ても凄いものだと思う」

 

「ふふん、そうか。そう言われれば悪い気はしないな」

 

俺の言葉に少しだけ胸を張るフラウだが、いかんせん張る胸がさして無いせいで少し虚しさを感じる。まぁヴァンパイア族は成長が遅いという話を昔聞いた気がするから、まだまだ諦めるには早いということか。

 

「……ネリー、今失礼な事を考えなかったか?」

 

「……いや」

 

「……まぁいい。今は少し気分がいいからな。これ以上の追求は止めておこう。とにかく、私の名前がブランドとしても有名になってしまったせいで思いっきり目をつけられてしまった。幸い両親とは縁を切っているから向こうから強気には出れない筈だが、ビュルッケネンが動くとなると話は別だ。いくらブランドで名を売っても相手はヴァンパイア族の本家兼当主だ。どう足掻いても権力では向こうには勝てない。対抗戦力を揃えようとも考えたが、財力の差は圧倒的だ。残念ながら私では一人二人がギリギリだし、正直君一人買うだけでも結構無理をしたんだ」

 

それでも、と彼女は続ける。

 

「君を買ったのは間違いではないと思っているよ。一人で妖人大陸からここまでやって来て、しかも戦闘もこなせるみたいだ。何よりも君、実力を隠しているだろう?」

 

「……」

 

「ふふ、そんな警戒しないでくれ。私は君には何もしない、と言うより出来ないだろう」

 

「……どうしてそう思う?」

 

「私は目もいいんだ。それに化け物としての境界を越えてしまっている以上嫌でも分かるよ。私では君には勝てない。『真っ向勝負』では、ね」

 

「……なるほど。上手く隠せていると思っていたんだがな。どうやらあんたにはお見通しらしい」

 

彼女の目の良さに思わずタメ息が溢れる。隠すのは自信があったんだが、どうやら考えを改めなければいけないみたいだ。

 

「長々と話してしまったが、本題といこう。ネリー、君には私を守る番犬となってほしい。これから1年間、君には執事兼護衛として働いてもらう。それで今回の借金はチャラにしよう。結果次第では君を正式に雇いたいと思う」

 

なるほど。条件でいけばこれほど俺に有利なものはない。たった1年間の働きだけで己の身代金を代替できて、しかも結果次第では正規雇用してもらえるというのだ。

 

「俺にとっては旨い話だが、あんたには損しか無いんじゃないか?」

 

「いや、そうでもないよ。確かに金銭面で言えば私の損失は大きいが、それ以上のものが手に入るかもしれない。ならその程度切り捨てる事くらいならするさ。それほどに君は手放すには惜しい」

 

「おいおい、俺の実力を見てないのにそんなに期待していいのか?」

 

「その事なら問題ないよ。嫌でも見れるだろう」

 

「む?それはどういう───」

 

「失礼します」

 

フラウの意味深な言葉に疑問をぶつけようとしたとき、控えめなノック音と共に先程紅茶を運んでくれたメイドが現れた。

 

「お嬢様、ザナルディー様がいらっしゃいました」

 

「そうか、ありがとう。隣の客室まで案内してやってくれ」

 

「かしこまりました」

 

慎ましく扉を閉じて去っていったメイドを見送りながら、早速面倒事がやって来た事に頭が痛くなる。もしやこいつはこれを見越していたんじゃないだろうな。

 

「ふふ、そう怖い顔をするな。何にせよ仕事はしてもらうよ、ネリー?」

 

「……了解した」

 

妖艶に笑うフラウに俺は頭を抱えながら、起こるであろう面倒事を想像して逃げ出したくなっていた。

 

さっさと竜人大陸へと向かいたい。そんな思いが強くなっていくのだった。

 

 

 




作者にね、政治的な事を詳しく書くなんて出来ないんだ……。

暫くは魔人大陸での話かなぁ……クリスちゃん出したい(切実)
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