ということで今日も今日とて亀さん行進!
アルジオ領ホードの小さな町の孤児院で、俺はエル先生の授業を聞いていた。大人しくしている分にはお咎めは無いようなので黙って授業を受ける。無論、やはりと言うべきか隣では例の黒髪の男児ことリュートが俺と同じように黙って授業を受けており、時折チラチラと此方の様子を伺ってきている。俺としては特に話す事もないのでそのまま授業を聞いているが。
今回はこの世界の歴史についての授業だった為に、他所に気を配れる程の余裕はない。
因みにこの世界の歴史を簡単にまとめると───
・約10万年前に天神様と呼ばれる神様が天上界と地上界のふたつを作り出し、平和に統治していた。
・ある日、6大魔王が天神様が使う神法と呼ばれる秘法を盗みだした。
・魔王達は神法を自分達にも扱えるよう魔法に劣化改造し、地上界へと逃げ延びた。
・6大魔王は、魔法の力で地上界を征服した。
・5大大陸に住む5種族の勇者達が立ち上がり、魔王から魔法の秘法を盗み出し、自分達が扱えるように魔術へと改造した。
・魔術と仲間の力によって6大魔王の内、5大魔王は倒し、封印。
・今でも最後の魔王は、魔物大陸の奥深くで存命し息を潜めていると伝えられている。
・5種族の勇者達のお陰で再び地上界に平和がおとずれた。
───ということらしい。歴史と言うより一種の物語のようにしか聞こえないが、周りの反応を見るにこれは本当の事らしい。尽く此方の考えを予期せぬ方向で裏切ってくる辺りに頭が痛くなるが、素直に受け入れるしかない。
因みに話に出ていた勇者と言うのが以下の5種族だ。
人種族:普通の人間。この世界でもっとも人口が多い。
妖精種族:エルフやドワーフ、妖精などを指す。
獣人種族:エル先生のようなウサギ耳など、獣の容姿が顕著に出た種族を指す。
竜人種族:人種族と姿形は似ているが頭に龍の角が生えている。5種族中、もっともプライドが高い一族。
魔人種族:この種族の分類は難しく、他4種族以外を魔人種族と呼ぶ場合もあるらしい。
因みに、今でも5種族の勇者達は『5種族勇者』として親しまれており、童話や英雄譚などの下地によく使われているそうだ。
話を聞く限りじゃ人体構造自体は人間と変わらないかどうか微妙なラインだ。もし同じなら多少の強度の差はあれど殺るには問題ない筈だ。
この時、俺の瞳を見たリュートが若干震えていた事に俺は気付くことはなかった。
次に魔術についてだ。魔術というのは、魔王が盗んだ魔法を劣化改造することによって大陸種族でも扱えるようにした魔法の事らしい。
そして案の定と言うべきか魔術にもランクがあるらしく、ランクが高ければ高いほど優秀な魔術師として扱われる。ランクについては以下の通り。
────────
SSS級:簡単に言えば神の領域
SSプラス級
SS級:魔王と同じ領域
SSマイナス級
Sプラス級
S級:化け物と評されるレベル
Sマイナス級
Aプラス級
A級:天才と評されるレベル
Aマイナス級
Bプラス級
B級:優秀な魔術師
Bマイナス級
Cプラス級
C級:魔術師として絶望的
Cマイナス級
─────────
因みに、ランクが高いほど高い地位に着けるらしい。まぁ地位に関しては現時点でさほど重要視していない。自分が生きていけるのは傭兵としての生き方のみだ。むしろそれ以外の生き方を知らないのだから。
さて、この魔術についてだがこれにも4つ種類があるらしい。
・属性魔術
文字通り属性を操る魔術。魔力を炎やら氷やらに変換して操る魔術。
・無属性魔術
属性魔術以外の魔術攻撃がこう呼ばれるらしく、魔力そのものを操ったりする魔術。
・回復魔術
こちらも文字通りの魔術。これに関してはそのままな為に説明を省く。
・補助魔術
身体能力の向上などが行える魔術。攻撃魔術以外はこれに分類されるようだ。
ここまで黙って聞いてきたものの、やはり理解するのが難しい。そもそもどうすれば無から有が作れるのか、魔力を各属性に変換するとはどんな原理なのか、考え始めるとキリがない。
(……こればっかりは実践あるのみか。頭の中だけでごちゃごちゃ考えるよりは良いだろう)
一通りの授業が終え、エル先生が出ていった後をリュートが追いかけていった。俺はその後を追うことはなく、年少組がいる部屋へと戻る。
自分にはまだ年少組の子守りという任務が残っている。
「……まぁ、こんな生活も悪くはないかもな」
されど俺には傭兵としての生き方は捨てられないのだが。
部屋に戻ると、スノー率いる女児組が年少組の子守りをしていた。相変わらず子守りという任務に関しては手際が良いようだ。その才能を少しでも分けてもらえれば此方としても楽なのだが、無い物ねだりをしても仕方あるまい。
「あっ!ネヴァンくんまたエル先生の授業に行ってたの?」
「あぁ、子守りを任せて悪かったな。だがスノー達の手際が良いお陰で俺も良い勉強が出来た。感謝する」
「むー、ネヴァンくんも手伝ってよね!それで、リュートくんは何処に行ったの?リュートくんもエル先生の授業に行ってたよね」
「む?リュートならエル先生の後を追って行ったぞ。大方授業に関する質問でもしてるのだろう」
スノーにそう説明すると、いかにも不服ですと言わんばかりにご機嫌斜めになってしまった。彼には悪いことをしてしまったかもしれない。今度は気を付けるとしよう。
「さて、それでは今日もスノー先生に子守りの仕方をご教授させてもらうとしよう」
「ふふん、任せて!スノーがしっかり教えてあげる!」
ふむ、相変わらずチョロいな。まぁ子供ならこれくらい可愛いものだろう。
(それにしても……こんな風に子供の相手をするなんて随分と久し振りだ。最後に子供の相手をしたのはロシアの雇い主の娘さんだったか)
因みにスノーに教えられた通りに実践するも、幼子達が俺を怖がって近寄って来ることはなかった。
凄い!なんて進行度の遅さなんだ!(自虐)
次は少し飛んで、もしかしたら戦闘回……になれば良いなぁ……