咲き行く道に死戦あり   作:黒三葉サンダー

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やだ、なんかタイトルがちゃっちぃ!

何やってんだ傭兵ぇ!




傭兵、リバーシで遊ぶ

この孤児院でこの世界の事を学びながら更に数年。俺は伸ばし放題にしていた銀髪を後ろで結い、一人で森の中へと移動する。本来ならエル先生やら誰やらに止められるであろう行動ではあるが、誰も俺の行動を咎めようとはしなかった。

 

まぁわざわざ自分から『化け物』に近寄ろうとはしまい。逆に俺にとっては好都合だ。今や俺に変わらず接してくるのはエル先生と幼馴染みであるリュートとスノーの三人だけである。年下達は言わずもがな、年長組も俺から距離を取っている。

 

事の発端は魔術の実践授業の時だ。相変わらず俺とリュートは年長組に交じって授業を受けていた。おおよそ三歳の子供が二人も授業に紛れ込むのは些か不自然だが、それでも静かにしてる分にはお咎めは無いようなので此方も黙って授業を受ける。何せ魔術なんていうよくわからない物を学べるチャンスなのだ。逃すわけには行かない。そう意気込んで授業を受けてみたものの、結果は予想以上のものだった。

 

補助魔術の障壁?を見様見真似で試してみると、いとも容易く出来てしまったのだ。使う前に頭の中で鮮明なイメージが沸き上がり、それを実践してみたら成功してしまったのだ。その後も何度か障壁を張ってみるが、体がそれを覚えたのか息を吐くように出来るようになった。何か釈然としなかったが、使えないよりはマシだったとプラス思考で行くことにした。因みに、リュートは調節を誤ったのか一気に魔力を使ってしまい気絶した。彼は起きた際にスノーとエル先生に叱られていた。

 

これだけならまだ『優秀な魔術師』で収まったかもしれない。けれど二回目の魔術授業の時にそれは起こった。

 

二回目の魔術授業では補助魔術である身体能力向上の魔術を使う授業だった。此方も脳裏に鮮明なイメージが沸き上がり、無事に成功。遥かに高い出力で身体能力の向上に成功した。その時点で気付くべきだったのだ。

いくら魔術で身体能力を底上げしても、たかだか踵を軽く振り下ろした位で『地面が大きく抉れる』事などあるはずがない。これには俺も年長組も驚いたが、エル先生だけは難しい顔をしていたのを見逃さなかった。

因みに、この授業でもリュートは魔術制御に失敗してジャンプ中に空中で気絶。しかも落下した先で後頭部を石で打ち付けるという事故が発生し、エル先生が青い顔をしながら慌ててリュートに回復魔術を掛けに行った。

その後目を覚ましたリュートに待っていたのは地獄(物凄く怒ったエル先生)だったそうだ。そしてリュートはついに魔術授業を受ける事が禁止されたらしい。ことある毎にスノーに愚痴られる俺の気持ちも考えてほしい。

 

それはそうと、俺の異常な魔力に関してエル先生に質問すると想像を絶する答えが帰ってきたのだ。

 

「……ネヴァンくんの魔術師ランクはSS級です。ごめんなさい、今まで話すことが出来なくて……」

 

と言うことらしい。つまり、俺は魔術師としては魔王クラスという事になる。流石にこれを聞いたときは俺の事だが若干引いた。前世とはいえたかだか雇われの傭兵をやっていただけの俺が何故こんな有り余る力を持ってしまったのか。これなら人間と魔族のハーフとか言われた方がまだ納得出来る。たかだか孤児の子供に持たせるようなものではない。

エル先生もそれはずっと隠していたようで、最早SS級だと周りにバレてしまえば畏怖の目で見られるようになってしまうかもしれないと心配してくれていたみたいだ。そしてそのエル先生の心配が現実になってしまった訳だが、生まれ持ってしまったものは仕方ない。要は俺が有り余る魔力を制御出来るようになってしまえば解決なのだ。それからは俺は皆から離れて一人で特訓することにした。

 

とまぁ、こんな感じで周りから距離を取られるようになった。むしろそれを知っても平然といつも通りに話し掛けてくるリュートとスノーの存在に俺は驚いていた。リュートは目をキラキラさせて魔力の制御について聞いてくるし、スノーは俺が変に無理をしないか心配してくれる。我ながら良い幼馴染みに恵まれたものだ。前世ではそんな相手がいなかった為に尚更そう感じる。いつかは彼等の力になれれば良いのだが。

 

「……ふぅ。始めるか」

 

こうして俺は森の中で一人特訓を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

ここ最近、ずっと子供達の世話をしていたスノー達がついに爆発した。爆発対象はリュートだ。彼はスノー達が子供達の世話をしている最中、ずっと部屋の隅で魔力の制御の特訓をしていたのだ。エル先生の授業に出れない以上自分で特訓するしかないリュートはこういうときに地道に特訓していたのだが、スノー達はそんな事は知らないので彼女達からすればリュートはただ隅っこでサボってるようにしか見えないのだろう。俺が世話をしても良いのだが、生憎と子供達が泣いてしまうので俺が行くのは悪手である。スノー以外の女児も離れていくのでこの上ない悪手である。故に俺は見守る以外の選択肢はなかった。

そしてリュートがサボってた(厳密に言うと特訓していた)事をチクらない代わりに、リュートにおままごとでペット役をやらせるというある種の地獄が始まったのだ。無論俺は見守るだけだ。下手に動くとスノーとリュート以外が泣き出してしまう恐れがある。ほとほとSS級魔力には困ったものである。

 

こうしてリュートのペット(役)生活が始まった訳だが、僅か4日目にしてリュートの我慢の限界が訪れた。

 

「俺が(前世の記憶を頼りに)作ったこのリバーシで勝てたらペット役をやってあげるよ」

 

「「「リバーシ?」」」

 

彼が彼女達に反旗を翻す為に用意したのは、表面と裏面がそれぞれ黒と白で別れた石と8×8の64マスで区切られた木の板を用いたゲーム───オセロだった。これで漸く確信した。彼は俺と同じ前世の記憶持ちである。でなければこんなあからさまなゲームは用意出来ないだろう。

そしてまんまと口車に乗せられたスノーがどんどん盤面を白色に変えていく中、リュートは余裕を崩さず、俺は微笑ましいものを見るかのように見守っていた。盤面を白色に変えていく度に、スノーの耳がピクピクと動いている。楽しんでいる証拠だ。

 

「リュートくん、自分が作ったゲームなのによわーい」

 

「はっはっは。スノー、冗談を言うならもっと面白いことを言わないと。足し算も引き算もまだ出来ないスノーに、このぼくが知的遊戯で負けるとでも?」

 

「むぅー、やな感じ! だったらリュートくんが負けたら、金色マルマル役の他に、スノーの命令をひとつ聞いてもらうからね!」

 

「望むところだ。もしぼくが勝ったら犬耳と尻尾を思う存分モフモフさせろよ」

 

「犬耳じゃなくて、狼! スノーは白狼族なんだから!」

 

「はいはい、約束忘れるなよ」

 

パッと見ケンカしているように見えるが、案外仲は良いのだろう。ケンカするほど仲が良いなんて言葉があるくらいだ。それにしても、『金色マルマル』とは一体どんな生物なのだろうか。個人的にそこが気になる所だ。

 

程なくして、結局場面は黒色に塗り替えられてスノーは敗北した。まぁそれも仕方ないだろう。明らかにオセロを嗜んでいる玄人と初めてオセロをやった初心者では力の差は歴然だ。

 

「うぅぅうぅ……負けました」

 

「素直に負けを認めるとは潔し。でも、モフモフの件は忘れるなよ」

 

「わ、分かってるよ。……夜、寝る時に触らせてあげる」

 

「お、おう」

 

スノーの台詞に顔を赤くするリュートを見て、イギリスで見た男女の子供達を思い出した。彼等もこんな感じに初々しかったのを覚えている。

 

「どうしたのリュートくん。顔、赤いよ。風邪でも引いちゃった?」

 

「い、いやなんでもない。次の相手は誰?」

 

取り繕うように他の対戦を探すリュートに、スノーは少しだけご機嫌斜めだった。その後も女児二人が挑むも全員完敗、リュートの尊厳は無事に守られた。

 

「スノー達はよく頑張ったと思うぞ。相手は(この世界では)ゲームの発案者だ。実力差があっても仕方ない」

 

特に落ち込んでいるスノーの頭をポンポンと撫でて、彼女達に何処が悪かったのかを指摘する。流石に彼女達もやられてばかりでは悔しいだろう。その証拠に俺の指摘にウンウンと頷いている。

 

「なんならネヴァンもやるか?リバーシ。まぁぼくが勝つけどね」

 

「む?」

 

「むぅー!ネヴァンお願い!リュートくんの鼻を折っちゃって!」

 

「「うんうん!」」

 

「ふむ……」

 

余程自信があるのか、リュートは少々天狗になっているようだ。こちらとしてはただ微笑ましいだけだが、どうやら彼女達は違うらしい。彼女達は期待の篭った目で俺に訴えかけてくる。こうなってしまってはやらないわけにはいかないだろう。

 

「……分かった。相手をしよう。よろしく頼む」

 

「ふっふっふ、相手がネヴァンだろうと手加減しないからな」

 

「頑張れー!ネヴァン!」

 

「「やっちゃえー!」」

 

ふむ。応援されるからには多少真面目にやるとしよう。

お互いに黙ってパチパチと石を打ち始めてから数分後───

 

「ま、負けました……」

 

「あぁ、良い試合だった。また今度頼む」

 

 

盤面は白色で埋まっていたのだった。

 

久し振りにオセロをやったが、まだまだ俺の腕は捨てたものではないみたいだ。

 

 




戦闘(リバーシ)……

戦闘回だと言ったな?……あれは嘘だ。

作者もオセロは結構やってましたが、腕前は可もなく不可もなくです。一番リアクションが取りづらい立ち位置ですね。まさにリアクション殺し。作者が一番苦しい立ち位置です(震え)
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