俺がネヴァンと最後に会ってから翌日、あいつはまるで此処に居なかったかのように忽然と姿を消した。その事に気付いたのは同じ部屋にいた奴だったが、どうやらあいつは律儀にも書き置きを残していったみたいだ。内容はこうだ。
『今までお世話になりました。エル先生や皆様には大変ご迷惑を御掛けしました。何も残していけない己の身の不甲斐なさをお許し下さい。せめてもの恩返しとして、森の中の掃除をしておきました。これで子供達も気兼ねなく外で遊べるかと思います。ですが念のために何回かは森の中を哨戒した方が良いかと思います。それでは私はこれで失礼します。皆様に5勇者の加護があらんことを。
───ネヴァードールより』
なんという身勝手な奴なんだろうか。この書き置きを読んだエル先生は倒れそうになって、スノーは今にも泣きそうな位に寂しそうな顔をしていた。だけどそれも仕方無い。スノーはネヴァンを兄のように慕っていたし、かくいう俺もネヴァンの事は兄貴のように思っていた。だからこそ昨日あいつから言われた言葉がショックだった。
『足手まといだ』
この言葉は容赦なく俺の心に突き刺さっていた。心底悔しかった。俺は確かに努力をしてきたし、魔術液体金属のお陰で何とか『S&W M10』を作る事が出来た。そしてこの銃で、自分の力でスノーと子供達を助ける事が出来て嬉しかった。でもそれだけだった。あの後ネヴァンが来なかったら俺達は数の暴力で殺されていたかもしれない。でもあいつが助けに来てくれて、俺達は皆生き残る事が出来た。けど、俺が不甲斐ないばかりにあいつに消えない怪我が残ってしまった。それが悔しかった。
もっとやれる事はあったんじゃないか。
銃があることで自分は戦えると油断してしまっていた。
だからあいつは傷付いた。負わなくていいはずの怪我を負ってしまった。
それが堪らなく悔しい。このままじゃ駄目だ、このままじゃあいつだけじゃなくてスノーも守れなくなる。それは駄目だ。何よりもあいつに認められないなんて嫌だ。
確かにあいつは凄い。俺とは違ってSSクラスの魔力の持ち主で、俺とは違って色んな物事をそつなくこなしてしまう。授業の時の模擬戦だってそうだ。あいつは魔力を使わなくても年長者を打ち倒した。俺は魔力を使っても勝てるか勝てないかの瀬戸際だった。そんな何でも出来るあいつが羨ましかった。憧れた。
でも周りの奴等は違った。皆がネヴァンを怖がった。あいつは昔から感情表現が乏しかったから、尚の事誰もがあいつから遠ざかった。でもあいつはそれを良しとした。それが正しいと肯定した。あいつは誰も責めなかった。俺にはその姿が昔俺が見殺しにした友人とそっくりに見えた。だからこそ助けたかった。一人にしたくなかった。二度と同じ過ちを繰り返したくなかったから。
でもあいつは居なくなった。きっとあいつの事だ。自分が居なくなれば孤児院の皆が伸び伸びと生きられるとでも考えていたんだろう。事実その読みは間違ってはなかった。この数日間、ネヴァンの話題は全く出ることはなく皆の中からあいつの存在が薄れていってる気がしている。それがとても辛くて寂しかった。
俺の目的は『旅に出て、困っている人や救いを求めている人を助ける』事だ。だから世界中を旅しているうちにネヴァンにも会えるかもしれない。それでもし出会えたら、盛大に1発ぶん殴ってやろう。俺やスノー、エル先生に心配を掛けさせたんだ。それくらい許されるだろう。
「だから、絶対に今より強くなって見返してやるからな。首洗って待ってろよ、ネヴァン!」
さて!そうと決まればさっさと『AK47』の制作の続きをしなきゃな!
一方その頃。
彼は奴隷船に乗せられて大陸を渡っていたのだった。
傭兵、まさかの奴隷として売られる。パッと見た感じ凄いマヌケだな……。