ハイスクールD×W   作:ジャッキー007

1 / 11
プロローグ

人差し指からゆっくりと曲げ、力を込めていく。

親指まで曲げ終えたそれは拳の形となり、力を溜める。

拳銃の撃鉄を起こすように、拳を掲げ、弓を引くように構える。

腕を曲げる事で上腕二頭筋が膨張し、力を凝縮させていく。

肩幅に足を開き、左足を半歩前に踏み出す。

その動作だけで、言い知れぬ高揚感と血が沸き立つような錯覚を覚える。

口角が吊り上がり、犬歯がむき出しになる。

それを感じ、俺は漸く自分が笑っている事に気がつく。

目の前には、獲物が牙を持って待ち構えている。

鉄パイプ、木刀、金属バット...どれも、人を殺傷する能力を有するものばかりだ。

だが、それがどうした?

そんなもの、此所では関係ない。

強い奴が立ち、弱い奴は倒れる。

此所は、そんな世界だ。

獲物の一人が、鉄パイプを振りかぶって向かってきた。

血が、筋肉が、本能が暴れる。

喰らえ、潰せ、叩きのめせと五月蝿く囃し立てる。

まだだ、まだ早い。

まだ獲物とは距離が離れている。

あと五歩。

零。

獲物が射程距離に入った瞬間、俺は力を解き放つ。

足から腰、胸...そして腕へと力が伝達され、溜め込まれていた力が増す。

此の瞬間が、何とも言えない感覚を与えてくれる。

絶頂にも似た高揚感に包まれながら

「オラァッ!」

俺は、拳を振り抜いた。

 

 

俺、兵藤一誠には二人の幼馴染みが居る。

一人は幼い頃に遠い国に行ったけど、もう一人はずっと一緒につるんでいた。

幼稚園から小学校、中学校。

高校はそれぞれ別の学校に入ったけど、関係は全く変わらない。

俺が何かしようと言えば、面倒くさそうについてくる。

俺とアイツの関係は、周りから見れば俺に振り回されている、と言われるだろう。

俺も一度はそう思って、アイツに聞いた事が有る。

そのとき、アイツは俺にこう言ってきた。

『俺が居なかったら誰が馬鹿どもを止めるんだ?それに、俺は自分の意思でお前に付き合ってるだけだ』

馬鹿呼ばわりされたのにはムカついたけど、アイツは今まで一度も嫌だとは言っていなかった。

それが嬉しくて、俺達は未だに仲良くつるんでいる。

俺達が騒ぐ後ろを、アイツがついてくる。

ばか騒ぎしすぎれば、実力行使で止めに入る。

アイツの拳はすげぇ痛いけど、それも含めて毎日が楽しい。

それが、俺とアイツの関係で。

「お」

そんな事を考えていると、件のアイツが前を歩いていた。

黒い学ランに教科書の入ってないだろうぺたんこの鞄。

逆立って夕日の色に染まる髪は、生まれつきの銀色。

所々についた傷は、アイツが少し前に喧嘩していただろう事を如実に現している。

俺を見てくる瞳は黒く、気怠げに開かれた瞼が仏頂面を更に強調させる。

でも、一緒に居て息苦しさを微塵にも感じさせない。

「よぉ、イッセー」

「また喧嘩したのかよ、真人?」

それが、俺...兵藤一誠の幼馴染み、大神真人だ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。