随分久しぶりなのでら覚えている方が居るでしょうか…?(汗
今回は前後編で構成します
それは、何時ものような日常だった。
イッセーが休んだという違いはあるが、普段と変わらずに1日が過ぎていた。
「ったく、彼奴らは…」
「ホント、懲りない人達ですよね」
「同じ男としても、ちょっと引きますよ…」
俺は、偶然にも帰るタイミングが重なったワン公と仁村の三人で学校から帰っている最中だった。
「あ、俺はこっちなんで」
「五十嵐くんもなんだ?」
通学路の途中、俺とワン公達は別れそれぞれの家へと足を運ぶ。
だが、この時の俺は忘れていた
今日までの日常が余りにも変わりなかったために。
俺は、とっくに非日常へと足を踏み入れていたって現実を。
「小太郎が帰ってない?」
家に帰って数時間が過ぎた辺りか、携帯にワン公の家から電話がかかってきていた。
電話の向こうに居るお袋さんも心配そうにしていて、見つけたら帰るように伝言を頼むのを聞くと、俺は電話を切って時計を見た。
(おかしい…仁村を送るにしても、遅過ぎるだろ)
少し考えたのち、俺はワン公の携帯に改めて電話を掛けてみることにした。
一回、二回、三回…。
10回とコールが続き、ようやく電話が繋がった。
「おい、ワン公。お前何処に…」
『…先輩…』
電話の向こうから聞こえてきたのは、女の声。
それも、数時間前まで一緒に居た後輩だった。
「…仁村か?ワン公はどうした?」
『っ、先輩…助けて…』
俺の言葉を聞くと、仁村は堰を切ったように涙声で悲痛な声を洩らす。
そして
『五十嵐くんが…堕天使に…!』
俺の耳に、信じられないような言葉が飛び込んできた。
俺は、仁村の言葉を聞くや否や上着を羽織って家を飛び出していた。
ワン公達と別れ、二人が帰っていった方向へと我武者羅に走っていると、携帯のバイブが着信を知らせてくる。
『マサト、聞こえますか?』
「支取か?!」
電話の向こうから聞こえた凛とした声…支取の声に、足を止め耳を傾ける。
『五十嵐と流留子は私と椿姫が保護しました』
「ワン公は無事なのか?!」
『…詳しくは病院で説明します』
支取の言葉を最後に電話を切ると十字路を右折し、俺は駒王中央病院へと急いだ。
病院に到着した俺は、すぐさま受付に確認を取るとワン公の居る病室へと走った。
「支取!」
「…こっちです」
階段を駆け上がり、廊下を走って4階まで上がった先にある病室の前に立っていた支取に声をかけると、支取は俺を一瞥したのちに病室へと促す。
バクバクと煩い心臓を落ち着かせながら中に入り…ベッドを見た俺は、息を呑んだ。
ベッドに寝かされたワン公には、生気が感じられなかった。
首から下は包帯で隠れてない所を探す方が難しいくらいだ。
「…私と椿姫が見つけた時には、既に」
「正直に言うと、生きている事が奇跡です」
呆然と立ち尽くしている俺に支取と真羅が話しかけてくるが、随分と遠くから聞こえた気がする。
視線を動かすと、ベッドの側にある椅子に座り、嗚咽を洩らす仁村の姿が見えた。
「…帰ってる途中、堕天使に襲われたんです」
涙を滲ませ、声を震わせながらも仁村は口を開く。
「五十嵐くんは私の手を掴んで一緒に逃げてくれたんです…でも、行き止まりまで追い詰められて…っ、五十嵐、くんは…会長達が来るまで…」
「…解ったから、もう喋るな」
ぽつぽつと話していくうち、再び堰を切ったように涙を流す仁村の頭を撫でると、俺はもう一つの隣に座ってワン公を見た。
「、まさと…さん?」
「…おぅ」
微かに目を開けて俺を見るワン公に、ぶっきらぼうに返事を返す。
その目は辛うじて開けられていて、焦点も微かに定まってない事から…素人でも、コイツがもう、長くない事が理解できた。
「随分とやられちまったな」
「すみません…庇うのが…精一杯、でした」
自分でも驚くほどに穏やかな声でワン公に話しかけると、ワン公は薄らと苦笑する。
「…仁村、さんは?」
「擦り傷一つねぇよ…やるじゃねぇか、女を護る事が出来たんだぜ?」
隣に座る仁村の姿が見えてないのか、問いかけてくるワン公に答え、少し乱暴に頭を撫でてやると目を細める。
「…疲れたろ、ゆっくり休め」
「はい…。真人さん」
「起きたら…また、喧嘩のしかた…教えて、くださいね…」
俺の言葉に小さく頷き、小さく…本当に小さく笑みを浮かべると
ワン公…いや、小太郎は、息を引き取った。
病室に、仁村の泣き声が虚しく響く。
亡くなった小太郎の姿を暫く見て、俺は立ち上がると出口へ向かった。
だが、そんな俺の学ランの袖を掴み、待ったをかける奴がいた。
「…何処へ行くつもりですか、マサト」
そいつ…支取は袖を強く握ったまま、意思を込めた強い目で俺を見ている。
「…ワン公を殺った堕天使をぶちのめしてくる」
「っ…貴方は、自分の言ってることの意味が分かっているのですか?」
出口を睨んだまま呟いた俺の言葉に、仁村を支えている真羅が非難の目を向ける。
「我々悪魔にとって、光は猛毒…命を落としたら、2度と蘇る事はないんですよ?!」
「…だからって、舎弟を殺られてじっとしてられるか…!」
真羅の言葉にギリ、と歯を食いしばりながら呟く。
強く握っていた拳は爪が皮膚を破り、微かな痛みと血が流れる感触を伝えてきていた。
「…貴方は、この私…ソーナ・シトリーの下僕です」
袖を掴んだまま、俯いた姿勢で支取が呟く。
表情を伺い知る事は出来ねぇが、声音からして怒っているのは間違いない。
「私の許可もなく、勝手な真似を赦す訳にはいきません」
「…今更俺を、鎖で繋ごうってか?」
すっかり頭に血が上った勢いをそのままに、俺は支取の胸倉を掴む。
その様子を見て真羅は敵意を剥き出しにして立ち上がるが、支取はそれを手で制して俺を見る。
「この件に関しては、グレモリー眷属が動いています。マサト…貴方が出る幕はないんですよ」
「テメェ…」
俺を見据え、真正面から言葉を紡ぐ支取に怒りは頂点に達し殴りかかろうとする。
だが。
「だからマサト…貴方は家に帰りなさい。最近は郊外にある教会に不審者が屯してるらしいので、くれぐれも近づかないように」
胸倉を掴む手にそっと自分の手を重ねて俺を見据える支取の言葉に、頭の中に渦巻いていた怒りが止まった。
「…そうかよ」
支取の胸倉から手を離すと、深く溜息を吐いて扉を開ける。
そして、思い出したように支取の方へ振り返った
「あぁ、そうだ。帰る途中に買い出しを頼まれて…万が一不審者に出くわしてぶちのめしても俺は悪くねぇよな?」
「…仕方ないですね、その時は正当防衛という事で反省文で勘弁してあげます」
俺と支取は、互いを見合って確認を取る。
出会って短い付き合いだが…
「…小太郎のこと、頼んだ」
「えぇ、頼まれました」
そこには、信頼に近い何かがあった。
「ソーナ、貴女…」
「…大神さんの言うとおりだったわね」
椿姫の言葉を背に、私は握っていた拳をゆっくりと開く。
その掌はじっとりと汗ばんでいて、私がどれだけ力を込めて拳を握っていたかを物語っている。
『真人
マサトが駒王学園に来る前、彼のお祖父様から聞かされた言葉。
その意味を、今になって理解した。
野生の動物は、餌を与えることで人に慣れさせる事は出来る。
しかし、飼い慣らす事は不可能。
どれだけ尽くそうとも、野生に生きてきた獣は人の世に繫ぎ止める事は叶わない。
「マサトの生き方は単純…自分の
そんな単純な生き方で…だからこそ、曲がることも折れることもない。
「だったら、私達が出来るのは…一つだけ」
彼が帰って来る、奪われた日常の一つを取り戻すだけだ。
走る。疾る。ただ只管に、夜の街中を。
満ちた月の影響で、普段以上に効く鼻を頼りに、アイツを殺った奴の匂いを辿る。
町外れにある教会…支取の言っていた場所から、嫌なニオイを感じる。
イッセーを殺し、俺を殺し…小太郎を殺した、黒い翼を持つ害鳥のニオイ。
もう少し、もう少しで奴らに辿り着く。
再び鎌首を擡げ、湧き上がってきた黒い感情に口元が歪み始めた時だった。
「夜遊びとは感心しないな…大神」
見知った3人が、教会への道を阻むように俺の前に立っていた。
いきなりの展開ですみませんorz