ハイスクールD×W   作:ジャッキー007

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深夜テンションって怖い


運命の分岐点

目の前に広がる色は、紅だった。

それが、俺と目の前に居る馬鹿を起点に広がっているなんて、信じる事が出来なかった。

身体から力が抜けていく。

熱が抜けていく。

視界が霞み、端の方から暗くなっていく。

辛うじて捉えているのは、黒い長髪の女とコートを着た男。

アイツらが、俺と目の前に居る奴を紅く染めた。

許せねぇ。

怒りが内側から沸き起こる…だが、身体が言う事を聞いてくれねぇ。

 

なんで…こうなっちまってるんだ?

確か…

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、そうだ。

始まりは、一週間前くらいだったか。

珍しく早く起きた俺は、爺に小言やら説法を聞かされる前に学校にトンズラしようと家を出た。

学校へ向かう途中は、イッセー達駒王学園の連中が通る道と同じで、よくよく考えりゃアイツらと会うのは必然だった。

「……まぁぁぁぁぁぁさとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「あん?」

煙草をふかしながら歩いていると、後ろから俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきて。

振り返れば、此方に向かって爆走してくる坊主と眼鏡の馬鹿が二人。

ぶっちゃけ、近所迷惑なうえにウザってぇ。

だから

 

 

 

 

 

 

 

「朝っぱらからウッせぇんだよ、ボケが!」

二人をアスファルトに沈めた俺は悪くねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

「イッセーに女だぁ?」

「そう!そうなんだよ!」

「あのイッセーに彼女が出来て、何故俺たちに彼女が?!」

後頭部にコブを拵えて、エイプリルフールにゃまだ早い事を宣う馬鹿の名前は松田と元浜。

中学時代の悪友で、イッセーを含めて「エロ三羽鴉」と呼ばれた変態の馬鹿野郎共だ。

そんな馬鹿二人が、イッセーに女が出来た事に対して憤慨してるが…知ったこっちゃねぇし、その理由は自分で蒔いた種だろうが。

「んなこと知るか、辺り構わず猥談かましてっからそうなんだよ」

休み時間にAVを机に広げるのは序の口。女子の更衣室を覗きに行って、その度に粛正されてるのに全然懲りてねぇ。

コイツらの性欲ってのは化け物か?

そんな事を話していた時だった。

「オーッス!」

噂をすれば何とやら、って奴だ。

イッセーが女と手ぇ繋いで来やがった。

「よぉ、イッセー。お前に惚れた物好きが居るんだってな?」

「初っ端から辛辣だなお前?!まぁ良い、この子が俺の彼女の夕麻ちゃんだ!」

「えっと、はじめまして。天野夕麻です」

俺の言葉にツッコミを入れながらも、イッセーは隣に居る女…天野とかいう奴を紹介してきた。

だが…。

 

「ん…?」

「?どうした、真人?」

不思議な事に、天野とかいう女から妙なニオイを感じた。

体臭がどうの、とかそんなもんじゃねぇ。

形容し難い嫌な気配…それが、ニオイとして感じられた。

目の前に居る女を見ると、ソイツは俺をみて小首を傾げている。

(気のせいか…?)

なんでもない、と小さく答えると、俺たちはそれぞれの学校に別れて行った。

 

 

 

あれから一週間が経った休みの日、俺は街を歩いていた。

家を出る前、爺から

「今日は夜までに帰って来い。良いな、夜までにじゃぞ?」

なんて念押しされたが、ガキじゃあるまいし。

聞き流す程度で家を出た俺は、暇つぶしに駅前にあるゲーセンに向かっていた。

そんな時だった。

「きゃっ」

「っと」

向かい側から歩いて来た誰かとぶつかったらしいが、相手が転びそうになったのを見て、咄嗟に手を掴んで踏ん張った。

「…」

相手を見たとき、俺は思わず呆けてしまった。

相手は、見た目小さな女の子だった。

俺の胸元辺りまでしかない小さな身体。

肩までで切りそろえられたショートカット。

整った顔立ちに赤いフレームの眼鏡。

力を入れたら折れちまいそうな細い腕。

そのどれもが、俺を惹付けていた。

「あ、あの…」

「あ、悪ぃ」

相手の言葉に、長い間手を掴んだままだったことに気がついて、居心地悪そうに手を離す。

よく見たらビラみたいなのを持ってる所から、バイトの途中だろう。

地面にも、彼女が持っていたビラが数枚落ちている。

「悪かったな、此方の不注意で」

「いえ、此方こそ…」

落ちていたビラを拾って渡すと、相手も小さく頭を下げて謝ってきた。

なんというか、律儀な奴だ。

けど、このままだと埒があかないのも事実な訳で…。

互いに謝った後、再びゲーセンに足を運ぼうとした時だった。

「あの」

さっきの奴が、俺に一枚のビラを渡してきた。

表には「あなたの願い叶えます」と書かれた文字に、妙なマークが書かれたものだ。

妙な勧誘かとも思って断ろうと考えたが、これでチャラになるか、と考えた俺は、そのビラを貰ってゲーセンへと向かった。

 

 

ゲーセンで遊び日が沈みかけた街を歩いているとき、妙なニオイを感じた。

それは、数日前に嗅いだあの嫌なニオイに似ている。

辺りを見回していると、近くにある公園からニオイがしている事に気づいた俺は、自然とそっちに歩いて行っていた。

噴水の近くまで歩いて行くと、見知った後ろ姿が見えた。

イッセーと、天野っていう彼女だ。

一見すれば、いい雰囲気にも見える。

だが…そのとき、途轍も無く嫌な予感を感じて声を掛けようとした時。

 

 

天野が、イッセーを刺しやがった。

 

それから、俺の行動は早かった。

全力疾走でイッセー達との距離を詰め、思いっきり拳を握りしめる。

そして

「なにしてんだ、テメェェェェェェェェェェェェェェェ!」

天野の顔を、殴り抜いた。

「っ!?」

いきなり俺が来た事に驚いたんだろう。

天野は俺の拳を顔面で受け止め、後ろに飛んだ。

地面に倒れた天野を無視して、後ろで倒れているイッセーを見る。

腹に風穴が空いて、其処から止めどなく血が流れている…このままだったら、助からないだろう。

いや、連絡したにしても間に合わない。

そんな事を考えていたとき...ふと、昨日の事を思い出した。

寝ようとした時、イッセーの馬鹿が電話を掛けてきやがった。

天野とデートするんだが、こんなプランはどうだなんて、スゲー楽しそうに話してたのを覚えている。

初めてのデートだ、彼女が喜んでくれるようにしないと。

そう言って、笑いながら話していた。

なのに。

「なんで血ぃ流して倒れてんだよ、オイ…」

小さく、俺は呟いた。

「あら、貴方…イッセー君のお友達だったかしら?」

背後から、耳障りな声が聞こえてきた。

少しよろめいてはいるが、なんて事ないと言いたげな表情が気に障る。

「本当ならイッセー君だけ殺して終わりなんだけど…見られたなら、仕方ないわよね?」

「…おい」

天野の言葉を聞き流して、俺は声をかけた。

「イッセーとのデートは、楽しかったか?」

「えぇ、初々しい子供のままごとに付き合えたわ」

何故イッセーをやったのか、なんて理由は俺が知った所じゃねぇ。

だが、アイツが。

あの馬鹿が一生懸命考えたデートプランをままごとだと言いやがった。

「そうかい…それが聞けて十分だ」

そう…それで十分だ。

俺が、お前をボコる理由は、それだけで十分だ。

 

 

天野が手から何かを出して俺に放とうとする。

それを振り向きざまに蹴り上げ、がら空きになった胴を…肝臓を殴り抜く。

「ぐ、ぉ…」

自分の攻撃を弾かれた事に驚いた隙に受けたリバーブローが効いたんだろう。

天野はくぐもった声を洩らした。

「誰が頭下げて良いって言ったよ?あ?」

前屈みになった天野の前髪を掴み、乱暴に持ち上げると、再び顔面を殴りつける。

一発

二発

三発。

殴る度に天野の顔に痣が出来、口の端から血が流れる。

「こ、の…下等な人間風情が…!」

憎らしげに俺を睨んだ天野が、右手を開いた。

何かを使用としてんのは分かるが…

 

グチュッ

 

「ぎ、あぁ…!」

眼球殴ったら、それにも集中出来ねぇだろ?

右目を抑えて踞る天野を見ながら拳を振り上げたその時だった。

 

 

ドンッという衝撃と同時に、地面に膝を突いていた。

「あ…?」

衝撃の後に感じた熱を追って行けば、眼に入ったのは俺の腹から生えた一本の槍。

これで、俺は刺されたんだろう。

だとしたら、誰からだ?

視線を移せば、コートを着た男が俺の後ろに立っている。

コイツが、俺を刺しやがったのか?

「大丈夫ですかな?レイナーレ様」

「っ…えぇ…」

男は、眼を押さえて踞る天野に声を掛ける。

漸く痛みが引いたんだろう、天野は俺を憎らしげに睨んできた。

「この人間はどうしますか?」

「殺してやるわ…崇高な私に傷を付けて只で済ませられるものですか…」

天野の言葉を、そのまま返してやりたいが…声が出ない。

それどころか、感覚や意識が薄れて行ってやがる。

霞む視界の中、天野が手品みてぇに槍を出し、俺に向けて構えるのが見える。

このままだと、俺は死ぬんだろう。

だが…。

(まだ、殴り足りねぇ…)

イッセーの思いを踏みにじったこの女もそうだが、人の喧嘩に横槍入れやがったあの野郎も気に入らねぇ。

目の前のコイツらを潰すまでは…。

(俺は、死んでも死に切れねぇ…!)

 

残った力を振り絞って、拳を握りしめたその時。

俺と、後ろ…イッセーの辺りで何かが光った。

赤くも暖かいその光りに包まれて意識を失う瞬間

何処か、嗅ぎ覚えのあるニオイがした。

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