ハイスクールD×W   作:ジャッキー007

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中途半端な気がしますが、長くなりそうなので上下二本という事で。



語られる真実 上

雀の囀りと瞼を突き刺す陽光に、気怠げに眼を開ける。

「……」

クソッタレな夢を見た。

イッセーが女に刺され、妙な男に後ろから刺される夢だ。

俺には昨日、遊びに行った日の夜以降の記憶が無い。

気づいたら朝で、俺は寝室で眠っていた。

「…ありゃあ、本当に夢か?」

身体を起こし、右手を見る。

夢にしては、感触がやたらリアルに感じた。

女の顔面を、眼球を殴った感触も。

膝をついた地面の感触も。

腹を貫く妙な槍の痛みも。

「…っ」

ズキン、と穴の空いてない腹に痛みが走る。

あの夢が現実だ、とでも言わんばかりに痛みを与えてくる。

仮にあの夢が現実に起きた事だとして…俺はなんで生きてるんだ?

「…アホらし」

頭を振って小さく溜め息を吐くと、俺は制服に着替えて居間に向かった。

 

 

 

「……」

「……」

カチャカチャと食器が奏でる音が居間に鳴り響く。

俺の向かいに座って、朝食を食っている爺の名前は大神玄狼斎。

唯一の肉親だ。

両親は俺がガキの頃に死んで、親戚中を盥回しにされそうになった時、爺が一喝して俺を引き取ってくれた。

普段は憎まれ口を叩いちゃあいるが、俺にとっちゃ感謝してもしきれねぇ奴でもある。

「…真人よ、お前…何か変わった事でもあったかの?」

「…いや、ねぇよ」

爺の言葉に、小さく返事を返す。

だが…その返事は嘘だ。

何せ、夜以降の記憶が全くないのだから。

「…」

爺が薄く眼を開いて俺を見てくる。

大方、俺の言葉が嘘かどうかを見極めようとしているんだろう。

「…ふむ」

小さく呟いて、爺は再び飯を食い始める。

それに倣って味噌汁に手を付けようとしたときだった。

「時に、腹の傷はもう痛まぬか?」

「…あ?」

爺は、突拍子もない事を聞いてきた。

「腹の傷なんて、俺が何時怪我したって……」

其処までで言葉を切り、俺は眼を見開いた。

腹を怪我した。

唯一思い当たるのは…あの夢。

それを知っているのは、俺だけの筈だ。

いや、あれが本当にあった事だなんて確証は全くねぇ。

なのに…。

「爺」

「…今日は学校を休め。お前に話さねばならん事があるでな」

なんで、爺があの夢の事を知ってるんだよ?

 

 

『夕刻に客人が来る。その時に全てを話そう』

爺がそう言って出かけてから時間が過ぎ、昼になった。

寝室のベッドに寝転び、俺は今までの事を考える。

あの夢が現実だとしたら、俺は何故生きている?

イッセーは死んだのか?

いや、それはない。

イッセーが死んだとしたら、朝食の時に訃報を知らせる筈。

「っあ〜…クソ…」

訳が分からなくなり、頭を乱暴に掻き毟って立ち上がる。

そのとき、ケータイから激しいロックミュージックが流れた。

世界的には有名だが、日本ではあまり知られてないバンドの曲だ。

ケータイを開けば、表示されたのは「イッセー」の文字。

通話ボタンを押して、電話に出た。

「イッセーか?」

『…真人』

電話の向こうから聞こえるイッセーの声は、酷く沈んでいた。

まるで、この世の終わりを見ているかのように。

『真人は…夕麻ちゃんのこと、覚えてるよな?』

イッセーの言葉を聞いて、夢の内容が一気に蘇る。

「…何があった?」

『…松田も元浜も夕麻ちゃんの事を知らないって…夕麻ちゃんの学校に行って聞いてみたけど、そんな生徒いないって…』

ポツポツと話をするイッセーの声は震えていた。

今起きている事が信じられず、混乱しているんだろう。

『どうなってんだよ、いったい…』

「…イッセー、お前…あの女に殺される夢を見たろ?」

 

イッセーの話を聞きながら、俺は単刀直入に聞いてみた。

「俺も、昨日の夜からの記憶がねぇ…それどころか、お前があの女に刺されて…俺が殺される夢を見た」

『真人…お前、何…』

俺の言葉に、イッセーは途中で言葉を区切り、息を呑んだ。

俺も同じ心境だから、よく分かる。

『あの夢…真人が出てきてた…』

「信じたくねぇが…恐らく、現実なんだろうな。二人同時に、同じような夢を見るなんて馬鹿げた事があるか?」

『それが本当だとして…なんで、俺たち生きてるんだよ?』

イッセーも、俺と同じ疑問に行き着いた。

声の調子も、電話してきてすぐと比べて随分落ち着いている。

「俺が知るかよ…ただ、爺なら...」

『玄狼斎さんが?』

爺…アイツは、全てを話すと言っていた。

それはつまり、俺たちに起きている事を分かっているという事だろう。

「あぁ。今日の夕方に話をするっつってた…イッセー、お前は来るか?」

『…』

電話の向こうでイッセーは黙る。

自分に起きた事を知りたい、だが怖い、という所か。

「気が向いたら来い。強制はしねぇ」

『…あぁ』

小さく溜め息を吐きながら手短に言葉を区切り、俺たちは電話を終えた。

イッセーの事だ、悩みに悩んで、来る事を選ぶだろう。

そう思っていた。

 

 

 

 

 

だが…。

その日、イッセーは来なかった。




前話で真人が出会った女の子についての件については次回で明らかになります。
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