全くと言っていい程に更新出来ずに申し訳ありません。
作品の構想をしていたのもありますが尿路結石が再発し、そのために通院していたり職場でインフルエンザが蔓延して慌ただしかったというのがありまして。
こんなのでもよろしかったら、今年もよろしく御願いします。
「……あ?」
鳥の囀りと瞼を突き刺すような日の光に俺は瞼を開けた。
春先の暖かい日の光に照らされながら体を起こし…俺は、観るも無惨な室内を見た。
壁や畳…至るところに深々と刻まれた爪痕。
それらを見て、俺は昨日の夜を思い出した。
「…これ、全部俺がやったんだったな」
俺が生きている理由や血筋の秘密を聞いた、あの満月の夜…俺は獣になった。
体の中を暴れ回る力の奔流に呑まれ、理性を失い、本能の赴くままに暴れ回った俺は、爺に文字通り本気で叩き潰された。
それでも、骨折をしなかったのは俺に与えられた『悪魔の駒』…塔が持つ頑強な防御力の恩恵なんだろう。
「起きたか、真人」
「爺…」
不意に離れの扉が開き、爺が入ってきた。
が、その姿は痛々しいものだった。
腕や着流しの胸元から覗く肌には包帯が巻かれている。
肋骨を二本やっちまっていたが、支取が応急処置を行って大事には至らなかったそうだ。
「悪かったな…」
傷から目を離し、俺は小さく呟いた。
理性がなかったとはいえ、唯一の家族を傷つけた。
その罪悪感が、重く伸し掛かる。
「…悔いておるなら考えろ。その力をどう使うのか」
俯いたままの俺を見ると一息吐いて、爺は母屋の方へと戻っていく。
その音を聞きながら…俺はただ、開かれた右手を見ていた。
もやもやとした気分のまま母屋に戻った俺は顔を洗い、学ランに着替えて居間で飯を食っている。
普段の光景だ。
ただ…一つ違っていた。
「すみません、大神さん。泊まらせていただくだけでなく、朝食まで御馳走して戴いて」
「構わんよ。真人と同年代の女子を夜遅くに帰らせるわけにもいかんだろう?」
いつもなら俺と爺で囲んでいた食卓…そこに、俺の命を拾った女…支取が加わっている。
二人は普通通りに話しながら飯を食っているが、俺の手は止まったままだった。
「…そうじゃ、真人」
ボーッとしていた俺に、思い出したように爺が声を掛けてきた。
「なんだよ?」
「昨夜…お前を抑えた後で蒼那嬢と話をしたんだが」
「大神さん、それは私の口から言わせてください」
言葉を続けようとする爺を制した支取に疑問を浮かべるが、何処か意を決したような表情を浮かべる二人を見て口を噤む。
そして…。
「大神君…あなたには、明日より駒王学園に通っていただきます」
「…寝言は寝てから言いやがれ」
予想していなかった言葉に、碌な悪態も思い浮かばなかった俺は小さく呟いた。
「…はぁ」
互いに…俺にとっては最後の学校があるから、と玄関で支取と別れた俺は重たい足取りで学校へ向かっていた。
公立九頭竜学園高校。
近隣の住人にとっては一番近い進学校であると同時に…俺たち不良の巣窟としても知られている学校だ。
此処で生活するのも最後…そう考えると、喧嘩に明け暮れていた日々だったが何とも言えない感情がこみ上げてくる。
小さくため息を吐いた俺は、校門を潜り、学校へ入って行った。
真人が校内へ入っていく時、彼は気付かなかった。
その姿を3つの視線が見ていた事に。
九頭龍高校の屋上、其処には3人の男が集まっていた。
「…その話、本当か?」
黒いジャケットの袖を捲った優男がタバコを咥えたまま、真ん中に立っていた生徒に声をかける。
「昨日の夜、奴の祖父自ら理事長の元へ電話があった。今日付けで此処を抜け…駒王に行くそうだ」
「…駒王か」
詰め襟の制服を正しく着こなした青年が答えながら真人を睨む横で、2mの長身に長ランを羽織った男が腕組みをしたまま呟く。
其々服装や佇まいは違うが、内側から溢れんばかりに迸る気迫は強者の証。
各々の思いを胸に、彼らは拳を握りしめた。
そして…時間は放課後へと流れる。